一色一生

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一色一生 一色一生
志村 ふくみ求龍堂 2005-01
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志村ふくみ著

友人が「本を探すアンテナに」と言って貸してくれたのですが「読み終わったら「あなたの郵便局に寄贈してくれていいわよ」なんて言うから後回しの後回しになっていたのが、この本ではなくて「読書入門―人間の器を大きくする名著―」齋藤孝著なんですが。大体本でお薦めの本を探すのもなんかなぁ・・・と思うでしょ?そこへ持ってきて「器を大きく」って今から大きくしてどうするの?頭心デブ?なんて茶々入れて。大体私の郵便局って・・・あれは牛込郵便局です。寄贈本の図書コーナーがあって借りたりあげたりしています。
そろそろ牛込まで返しに行く本があるので、急いで読み始めたらこの本に目が留まったのです。志村さんなら伝統工芸展で着物に何度もお目にかかっています。着物のイメージが浮かびました。あの方が本も書いていらっしゃるとは知りませんでした。というわけでここでお薦めの「色を奏でる」を図書館に予約する前に志村さんの本あるかな?と図書館を覗いてみて見つけました。座り込んで読み始めてみたら・・・文章の言葉の美しいこと!折り目正しいこと!ちりばめられた色彩の名前の美しく雅なこと・・・つい気が付くと1時間経っていました。そんなわけで借りてきたのがこの本です。
特に出だしの樺の木の木屑の真紅の話にはゾクリとしました。
色鮮やかな血のような色が生々しくも美しく目の前に見えるようでした。
しっかりと読み応えがあります。美しい文で清潔に書いていらっしゃるのですけれども、中身はじっくりしみこんできます。職人さんの言葉には時々「はっ」とさせられることがありますが、まさしくこれは「はっ!」で出来ているようなのです。
色というのはありがたいものです。この世がモノクロームの世界だったら・・・って思って御覧なさい。日本の湿潤な四季が生み出す様々の植物から生まれ出る色の個性とそれに名前を付けた感性が、過去の人々からの賜物で、今もそれらを大事に愛して仕事をしておられる方々がいるということに無条件に感謝します。伝統工芸展ではいつも「あぁ、これ欲しい!」と切実に思う作品に出会います。勿論手の届かぬ物ばかりですが・・・こんな素晴らしいものがいつも身の回りにあったなら、その中で育ったなら、人の感性はどこまで磨かれるでしょうか?豊かな人になるだろうなぁ・・・と、思います。でも今は本当に立派な仕事をなさる職人さんの生み出す物は一部のお金の有る趣味人の下にしかないのですけれど。でも見る機会があればその機会を大事に心を育てたいと居住まいを正して思いました。
挟み込まれていた作品の写真を一枚コピーしましたが、読み始めた頃はこの他の「個人蔵」となっている作品、着られることはあるのでしょうか?どんな方が着られるのか実際着ていらっしゃるところを見てみたいなぁと思いました。作品は仕事ならなお更、着られてナンボですもの・・・と。ところが読み進んでこのお仕事のどれだけの手数か辛苦か・・・思い知れば知るほど、また職人さんや女性の仕事の探訪の記録、特に弓浜絣の項など読んでしまうと、とてもその作品着れる人は居ないと思えてきました。心を込めて織り上げた人の愛しい人かご本人しか着る資格は無いだろうと。
それにしてもなんと美しく一生懸命生きてこられたことか・・・一生を託す何ものかに出合うということは宝物にぶち当たったみたいなものでそれは天からのさずかりものなのでしょうか。大変で辛くとも羨ましいなと・・・今からでも見つかるかなぁ・・・などと夢見ているところです。93歳まで女性の寿命は延びる可能性があると今朝の新聞で読みました。ならまだ30年もあるのです?  また志村さんはなさってきた事を丁寧にそのままに的確に美しく表現できるなんて素晴らしい方です。手仕事の作品に詩心が溢れているわけもわかったような気がしました。

ブラックペアン1988

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ブラックペアン1988 ブラックペアン1988
海堂 尊講談社 2007-09-21
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海堂尊著

凄い勢いで書き続けていらっしゃるようですね。
順番めちゃめちゃで読んでいるのですけれど、この東城大学医学部から桜宮病院に至るシリーズの過去に遡ったようです。
なのに?この作品が今まで読んだ中では一番昔を書いているのに文章が円熟しているような気がします。それはただこの作品が一番おとなしく描かれているからというだけの事かも知れず・・・
語り手となった主人公の世良君が未熟なのに合わせてはじけ過ぎなかっただけなのかも知れず・・・
でも、まぁ、文章的には一番読みやすいと言うか、エネルギーを要求されないと言うか、ハイテンションに置き去りにされずに済んだというか・・・内容的にも一番落ち着いて纏まったんではないでしょうか。それだけにあえて言えば今までのこの作家大好き読者たちには色彩が淡く感じられたかもしれませんね。でも今までで一番医者が書いたんだということが納得できました。勿論門外漢の私には今一使われる手術の用具の意味合いが理解できているとは思えないのですが、この作家の一番の持ち味「主張したい事を極彩色で劇画タッチで華々しく語る」という点は今回も諒解できました。
高階学長の若き日、速水君や田口君、桜宮病院長の名前など懐かしい人々?の若き日にも遭遇できると言う特典つきです。
娯楽と言う点では今回も及第点ですし、主張が理解しやすいと言う点でも及第点です。しかし本当に情緒が無いなぁ・・・と言うより実に見事に?感情を簡単な単語一つでクリアしてしまう辺り・・・これが現代なのかなぁ。しかし医者というのはやっぱり変人ぞろいだ。その個性を生かして存分に育っていってください・・・と祈りたくなります。ドクター・コトーにめぐり合うチャンスはまず無いし、救急車で病院に運び込まれたら、こんな先生・看護婦たちにめぐり合うのかもしれないものね。まぁ、とりあえず東城大学には田口先生が居るし、優秀な外科医も育っていく可能性はとても?高そうだし!いつも庶民は期待することしか出来ないのだから、せめてこの小説を楽しみましょう。手厚い医療行政をひたすらお願いするだけの庶民のために主張をどんどん繰り広げてくださいませ。
医療の本質は患者を生還させ、良質な術後生活を保障してくれることです。本当にお願いしますよ!と、今回もお医者さん方に頭を下げて読了と致します。
「夢見る黄金地球儀」が後一月足らずで届くと思いますし、「医学のたまご」が百人待ち「ジーン・ワルツ」が110人待ちといったところです。やっぱり読むの楽しい作家です。
 

イニシエーション・ラブ

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イニシエーション・ラブ (文春文庫 い 66-1) イニシエーション・ラブ (文春文庫 い 66-1)
乾 くるみ文藝春秋 2007-04
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乾くるみ著 

「こりゃー、どうなんだろうなぁ?」と、文庫の後ろに書かれた「二回読みたくなる・・・傑作ミステリー」という惹起文に惹かれて読んでしまった私は疑問です。
ミステリーと思っていなければ多分既に最初の方で「なんだぁ・・・こりゃあこの時代のノーマルな学生世代の恋物語に過ぎなかったじゃないか~」と、不満に思ったことでしょう。
実際ばかばかしいほど(失礼)丁寧に一言一言、一状況一状況、一足一足、書かれた恋の進行状況は平均的に普通の経過を辿るもの以上のものには思えなかったからです。眉唾的な調子よさも「?」です。何百の恋を足して、何百かで割って?みたいです。せいぜい確かに実に見事に時代と流行歌の題がシンクロしていて・・・くらいのところでしょう?
あほらしいような、それでも少し懐かしいような・・・?
特にミステリー読みとしては非常に大雑把で注意力散漫な私は「夕樹に たっくん だって?ひどいこじつけの愛称!」とか「『アインシュタインの世界』?フーン、やけに怪しげに出てきたね、ここか?」
「あれ、数学科で富士通じゃなかったっけ?でも、蹴ったのね?学科が間違ってたっけ?」「こういう男が失敗して妊娠させるはず無いけどなぁ・・・」程度でさぁーっと読み進んでしまって、まさしく最後の二行目で「そういうこと?」となったわけです。
「たっくん?」って普通の声で繭ちゃんが電話にでるわけだよねぇ?そうかぁ!ヒョットすると・・・歌曲の年代順番も考えるべきなのかな?
だから確かに二度目?本に目を通しました。それは拾い読みで、まずは「辰也」って言う名前「確かにそれまでに出てきていないよね?」という確認と「他にどこで何を読み落としたのだろう?」という二つの確認作業でした。二回読みたいと思うほど面白い本だ!とは思えなかったのですが、確かに二回読まされたわい!という変な気分です。
こういうのやっぱりミステリー?
 

臨場

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臨場 (光文社文庫 よ 14-1) 臨場 (光文社文庫 よ 14-1)
横山 秀夫光文社 2007-09-06
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横山秀夫著

記念すべき?横山さんの十冊目になる。全部来るたびに父が「読み終わった。いいぞ!」と言って置いていったものである。
おかげさまですっかり横山さんのファンになってしまいました。
今では好きな作家の五本の指に入ると思っています。
そしていつも読んで裏切られることはありませんでした。
一寸異色の「出口のない海」にしても。
横山さんの魅力の「警察もの」の中でも「臨場」は娯楽性が強い方だと思います。なぜならいつもどおり本当に面白さに引きずられて夢中で読んでしまうのですけれども、彼の警察ものの中にはとても厳しいものもあるからです。人間の心の中が余りに細かく解剖されて「きついなぁ・・・」と主人公たちに言ってあげたいくらいの時も多々ありますものね。
その点、この主人公の切れ味鋭い解決はとても小気味がいいのです。しかも彼には一風代わった人間味がその体のどこか奥底に蠢いているのが感じられて、嬉しいのです。勿論この作品の主人公も健康面で危うい感じです。ひょっとするとこの神がかり的な洞察力は研ぎ澄まされた精神・神経のせいで、それは諸刃の剣で彼自身をも切り刻んでいるのではないか?と危惧させられてしまうからです。彼が魅力的であればあるほど、素晴らしい手腕を発揮すればするほど心配でなりません。彼の活躍する次作が期待できなくなってしまうではないですかと。彼の生き方の意固地さはなかなか組織では発揮できないものです。そこを警察の組織というものに多分本物の警察官以上に?熟知している横山さんがごり押しして?書いてくれているのが面白いのです。こんなプロがアッチコッチの警察署で生きていてくれるといいなぁ・・・なんて魅力的な登場人物に会うたびに思ってしまいます。横山さんの作品を読んでいると多分付き合いにくい奴らだろうなぁ・・・と、思っても、何故かいとおしくてその個性を受け入れてしまっている自分を見出すのです。個性って魅力的な資質のことかもしれないなぁ・・・って。特になにかに取り付かれたようにがむしゃらに進んでいく時に人は!なんて。
ところでこの作品はその魅力的で破天荒な組織のハグレ者の調査官倉石さんが八つの事件を解決に導くのですが、または部下を導くのですが(育てると言っていいかな)、その一つ一つの事件もまた様々で一つ一つに関係してくる捜査官たちの葛藤が読み応えあって、被害者たちの失われた人生もそこにはちゃんとあって・・・。「ゆかりは哀れだなぁ、その辺に居そうな子だけどとか、智子は面白いキャラクターだけど」とか、出てくる人物がきちんと性格を造形されているので全くのよそ事にならないのです。「餞」はいい読後感だったし・・・倉石調査官のキャラクターの色彩が暖かくなって・・・といったところなど楽しめる要素が豊かです。こんな?年季の入った個性的な警察の方たちが大量に定年になっていく現在「大丈夫なのかなぁ・・・警察は?」です。
 

ダイイング・アイ

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ダイイング・アイ ダイイング・アイ
東野 圭吾光文社 2007-11-20
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東野圭吾著

東野さんは今絶頂期の作家なんでしょうか。この本「出た!」即「予約登録」やっと手元に。でも今現在の段階でまだ560人も予約しています。「流星の絆」は800人待ちを記録しているようです。私は確かまだ「夜明けの街で」が200人待ち「黒笑小説」が20人ほどの待ちですか。こんなですから本当は「待ち」の無い彼の作品からどんどん読んでいけばいいと思うのですが・・・油の乗っているのは「今」かもしれない?東野さん、私はこれが5作目になります。
読む気になれば本当に作品はいっぱいあります。
「赤い指」も犯罪事件でしたが、家族の事件といった趣でした。
この作品は犯罪者の贖罪がテーマだと思いました。
最後まで引っぱるミステリーは読み応えありましたし、自動車事故と加害者の記憶喪失とが織り成す謎の解明は一寸オカルトなテイストも加味して一気に読ませる力がありました。
読後感もだから「赤い指」より気分は楽?で(親だからね)、一つずつ真実に近づいていく主人公の雨村慎介という男の執拗さと悪さ小利口さが魅力でもありました。全く悪い男がいい人より人をひきつけるのってなんででしょう?これも永遠の謎ですか。
それにしてもよっぽどいい男だったのでしょうか?どうしても解からないのは瑠璃子の復讐のあり方です。瑠璃子は江島に「あなただったのね、私を殺したのは・・・」と言うまで慎介だと思っていたのでしょう?それでは復讐のあり方が慎介の場合の複雑さと、江島とわかってからの直裁さの間にある物はなんでしょう?慎介には何を望んだのでしょう?(状況的に仕方なかったと、思ってみる?)この辺がわからないですねぇ、しかもこの部分がかなり引っぱる・・・作者のサービス精神?まさかね?猟奇性を狙ってみた?
一人の女性を轢き殺してしまった二つの車、その二人の運転者と二人の代理犯人・・・面白い設定でした。実際この手のすり替えは明るみに出た以上のものが実生活の中には隠れているのでしょうね。
とてもありえるリアルな設定です。そこに被さる被害者そっくりの女性の謎、その目の魔力・・・オカルトか?とその部分で一寸退くきましたけれど、変なところが随分あるようでしたけれども、読み終わってみたら・・・テーマに妙な納得感がありました。
多分大抵の読者がそう思うかもしれませんね。
やっぱり罪は直ぐその場で償いを始めなければ駄目なんだ!と言うことでしょうか。(犯人を)隠してやる、護ってやるということは却って傷を深くするという当たり前すぎる納得になって胸にしっかり降りてきました。交通事故死も殺された本人家族にとっては殺人にまぎれもありません。もし無念に死んでいく人がその間際に犯人にあの「ダイイング・アイ」を捩じ込めたら、「死刑論議」(それにしても最近やたらに精神鑑定が多すぎじゃありません?無罪になった人がまた事件を起こしたら鑑定を要求した弁護士はどんな責任を負えるのでしょう?)を省いて犯人を罰することが出来るのに・・・でもそば杖を喰らう危険もあるなぁ・・・実際精神を病まずにいられないような社会に私たちは住んでもいるし・・・交通事故は運が悪かったと言いたいような状況もあるし・・・と、まぁ色々様々な事を思っていました。作家の若い(私より10歳も!)才を感じさせられました。以前の作品を読んでいないのですが作家が多作だと・・・楽しみにしているくせに・・・一寸雑にならなければ・・・いいけどなぁ・・・って思ってしまいます。

流星の絆 流星の絆
東野 圭吾講談社 2008-03-05
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夜明けの街で 夜明けの街で
東野 圭吾角川書店 2007-07
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使命と魂のリミット 使命と魂のリミット
東野 圭吾新潮社 2006-12-06
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花の下にて春死なむ

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花の下にて春死なむ (講談社文庫) 花の下にて春死なむ (講談社文庫)
北森 鴻講談社 2001-12
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北森鴻 著

「香菜里屋」シリーズの工藤さんはなかなかいいと聞いたのですが、
おまけにこのシリーズはもう4作も出版されているらしいです。
それって、この話に魅せられれば凄く楽しみができるということでっすよね。一寸幼くはあっても(失礼)今、結構「しゃばけ」シリーズにはまっているみたいに。楽しみが増えるのって大歓迎ですもの。「ガリレオ」シリーズももっと増えますかね?って感じに。
だから聞いた以上?ソレッとばかり第一作に飛びつきました。
で、今、困ったぞーと思案投げ首、優柔不断状態!
う~ん、微妙。悪くはないのですが・・・いまいちハギレが悪いと言うか、味が薄いというか・・・コクがないのです。
工藤という人の感じ、悪くないのです。作家が狙っている線もよくわかります。それがもっと上手く表現できていたらなぁ・・・惜しいなぁ・・・って感じでしょうか。水準は言っているけれど、文章も会話もちょっと舌足らず、香辛料がなにか欲しい、練って欲しい!繊細に丁寧に情感を湛えて欲しい!
工藤さんを表現する言葉に見えてくるものが、印象を刻み込むものが足りない上に、狂言回し、事件を運んでくる常連にもう一つ愛情がもてないのが一寸辛いです。
それに事件そのものが余り面白くないのよ・・・と思ったのですが。
どんどんよくなっていくのでしょうか?第二作、三作と?
工藤さんのイメージが際立ち、常連さんが作る店の味わいが深くなるのでしょうか?新たな風を運んでくる事件に魅力が増すのでしょうか?それが気になるので・・・これは降りだ!と決められないでいるのです。そうなる要素は多分にあるという気もなくはないのです。その将来性が丁半どっちらか?なんて賭けてみたい何かはあるんです。
でもなぁ・・・時間は惜しいしって、こればかりは好みの範疇、自分で読んでしか決められないのよねぇ・・・優しい人が集まる美味しい場所って魅力的だし・・・おかしな問題の推理話をするのもそそられるし・・・私も行きたいような場所設定ではあるのだけれど・・・

巷談 本牧亭

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巷談本牧亭 (1964年) 巷談本牧亭 (1964年)
安藤 鶴夫桃源社 1964
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安藤鶴夫著

なんで今頃?と、思う本だ。子供の頃?既に父の本棚に何冊かの安鶴さんの本は並んでいた。あの頃父は落語が好きで鈴本に通っていたのを横目に?一寸羨ましく見送っていたっけ。だからか安鶴さんの本も愛読していたのだろう。でも結構父に隠れて父の本棚の本を背伸びして読んでいた私も安鶴さんの本に手を出そうとは思わなかった・・・のだ。それが今頃読んだのは、父がこっそり我が家に運んできたからである。父と弟の二世帯住宅の2階には贅沢なことに弟の書斎の隣に図書室なるものがある。同居した時父の沢山の蔵書もそこに収まった。ところがあの家は皆読書家。本がどんどん増えていき床が落ちかねない?というわけで弟夫婦は黄色くなった古い本の大処分に踏み切った。・・・となると当然まずは父の本だろう?大事だったはずの藤村全集・谷崎源氏始め明治大正期の文豪の作品集は一括りに玄関先に。その中から美術全集と安鶴さんをかろうじて父は救い出したらしい。周五郎さんの黄色くなった文庫は私が駆けつけて拾い上げた。そんなわけで昭和39年から我が家にあった本を今頃読んだのである。で、なんで今まで読まなかったのだろう!と、思いつつ私は次の「寄席紳士録」に取り掛かるところである。
凄い!のだ。素晴らしいのだ。面白いのだ。ここに登場してくる芸人さんとその芸人さんを愛する人々の日常が本当に(むくむく心の中で蠢くほどに)活写されていて生き生きしていて個性的で魅力的で泣きたいほど可愛いのだ。
この登場人物たちはもう既に殆ど全部の方がこの世にはいらっしゃらないのかもしれないが、確かに居たのだ!という実感がものの見事に!確かなのだ。皆好きだ、皆見事だ!そういいたいほど。
特に私は桃川燕雄さんが大好きだ。川崎福松さんとの生活が見事だ!そうとしか言えない。こういうお二人を読んでいると、なんと今の私たちの騒々しく饒舌で中身の無いことか!と、我ながら感嘆してしまうほどである。服部伸さんとこのお二人が故障した信号の前で立っている姿を思うと・・・この本の終わりの佇まいがそのままある一つの美しい時代の終わりの佇まいに思われてくる。
それに本牧亭のおひでさんは私の高校の先輩だったのだ。クラス会の場面のなんと心にしみたことか!だからこの本の中の地名は全部私の縄張りだったのだ・・・なんと遠くなったことか!いや、遠くしたのは私自身。私の怠惰だったと思われて、妙に忸怩としたものも有るのだけれど、それを押し流す勢いで何故か私の覚えているはずの無いあの頃の芸人さんたちが懐かしく迫ってくるのである。
「ああ、桃川燕雄という人が居たんだ!」
田代光さんの挿絵がまたなんとも言えず味わい深いのだ。

シズコさん

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シズコさん シズコさん
佐野 洋子新潮社 2008-04
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 佐野洋子著

きっつい本だったなぁ・・・と、読み終わって思っている。
何が重かったのか・・・って考えなければならないことがまたきつい。
読んでいる最中もきつかったがこの本は納豆みたいに結構しっかりした後を引く。読んだ全ての「誰かの娘だった人」はいやでも自分と母の関係について再考させられるだろう。幸せな関係であったとしても何らかの反省と共に、だから幸せではなかった関係の人にとっては・・・しかし結局は「いわんや悪人をや?」であるかのような結末が待っていて・・・ほっと出来るのではなかろうか?とも思うが?いやいや母娘の関係はその関係の数だけのパターンが有るから・・・読み終わって許し許された二人に訪れた穏やかな日をただただ羨ましいと思う人も多かろう。それにしてもシズコさんの亡くなったのは90歳で洋子さんは既に70歳近く?なんと言う長い旅路であったことか!そして洋子さんは死ぬのは怖くないといえる心境にある。「そちら側に すぐ行くからね」と締めくくる。
開けっぴろげに、隠さずに、弄さずに、投げ出されたようにシズコさんとの来し方が書かれ、お二人がすぐそこに投げ出されているみたい。そのまんまそこに。どちらも凄いなぁ!「情が無い」も「情が有り」も、どっちも凄い。人生の終わりを見切ってしまったらこれだけバシャッとありのままを投げ出せるのかな?
私の母はシズコさんと違ってパタッと倒れて翌日には亡くなってしまったから老後の関係はぶつ切れで終ってしまった。だからだったのだろうか?ありがたいことに私と母は絆を結びなおす期間を必要としないほど上手くいっていた。思い出す限り「いい母だったなぁ・・・」なのである。本当にありがたいことに!
それなのに洋子さんの本を読んでいると洋子さんが母シズコさんを背負っている重さが不思議なことにまるで羨ましいかのようにみっしりと感じられるのだ。傷を付け合った深さの分、流した血の量に比例して、人間の関係は深く、絆は強くなるのかもねぇ・・・とため息をつく。
静かで穏やかで当たり前すぎるほど当たり前の親子であったので、さらさらとした肌合いの母子だったので、捨てたとも捨てられたとも負の感情を一滴も持たずに私は穏やかに母と別れられた。
周りを見て不思議に思うのは愛されなかった子ほど親に優しいということだ。「あなたのお母さんこそお母さんよね?」羨ましい羨ましいといっていた友人はやはり兄夫婦に捨てられた母を看取ったし、兄弟の中で一番出来が悪いといわれ続けていた息子は優秀な兄たちが都会に出て行った後の親を一手に引き受けたし。
今99歳の母を近所に抱えている友は「本当に意地悪で口の悪い厭な人だったのよ・・・だからこんなに長生きしていまだに私にも妹にもヘルパーさんにも意地悪し放題している。」と言いながら通っている。
子に愛情を注ぎ尽くした親は、安心して育ち情緒安定して独立した子供にさらっと忘れられるのかも?彼らは親に執着せねばならぬ何ものをも持たされてはいないから!
人の関係の中で一番最初に結ぶ関係で人の一生の背骨になるのが親子関係。いずれにしても当分母を、母との様々なシーンを根掘り葉掘りしてしまいそうだな。

おひとりさまの老後

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おひとりさまの老後 おひとりさまの老後
上野 千鶴子法研 2007-07
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上野千鶴子著

「おひとりさまの老後」読んだ?と聞かれましたから「ああ、売れているらしいけど・・・読んでいないけど・・・」と、歯切れ悪く答えました。読んでいない本を腐すのはいけません。
「読み終わったから貸してあげる」「面白かったの?」「面白かったよ」「今読む本いっぱいあるからいいわ」お断りしたつもりでしたが・・・次に会ったとき渡されました。読むっきゃない?
なんとなく後ろ向きだったのは作者さんの経歴をなんとはなく知っていたからかなぁ?私より年上の方としては余りにお仕事の分野で一流過ぎやしません?おひとりさまはお一人様でも彼女の言うおひとりさまと私がなるかもしれないお一人様との間には越えられない溝がドッカーンとありそう・・・でしょ?読む前から感じちゃう。
着々と一人の老後を迎えるつもりで準備を進めてこられた方とうすぼんやりとでも家族の傘の下でぼーっと暮してきた私とでははなっから覚悟が違う?この分野では(‘この’だけでは無いかもしれないけれど・・・)すでにして勝ち組と負け組み?なんてね。
そしたらのっけから結婚生活を続けていらっしゃらないご自分を負け犬とおっしゃっているではありませんか。ほう、そう来ましたか?
確かに準備おさおさ怠り無く!過ごしてこられただけに、なかなかのソフトの充実振り!感服しました。しかも何度もおっしゃるとおり、こっちは「子供はいても・・・」の世代で夫がいるから「準備も遅れ・・・」の来し方で、亭主が定年迎えて友人ネットワーク構築にもまさにヒビが入りかねない現状・・・のご指摘どおりの遅れをとった負け犬状態。
後はお金?ご指摘どおりにそう思いますが、それもご指摘どおりの有様!だから読むのいやだったのよ・・・と、ぼやきながら、読了。
しかしまさかこの方に限って・・・多くの未婚で着実にネットワーク作りにも、資金作りにも着実な成果を上げてこられたほかの方々とは違って・・・結婚生活なんか維持しちゃって、同居という罠に落ちそうな立場の人を、見下してはおられませんでしょうね?と、なんだかいじけてしまったところでございます。なんだか「末は皆お一人様」という宣告の陰には高らかに‘未婚勝ち組オーラおら’ファンファーレが漂っている気配。
実際役立つソフトはあるし、なるほどと頷かされるところはあるし、石橋叩いて万全策かと感嘆もしたけれど・・・でもいちいちいちいち・・・ま、いいか。
だって、何を言おうとも、上野先生には理論武装に隙は全くあろうはずが有りません。どんな反論にも!気分にも?絶対確実な答えが待ち受けていることは確かですものね。全方位十重二十重四面楚歌?って感じ。
この本貸してくれたがった方はお子さんが無く10も年長のご主人がおありです。立場によって、一人一人、役立ち方も棘の感じ方も違うかもしれないわねぇ・・・しかし確かに、やな感じ!

ずらり料理上手の台所

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クウネルの本 ずらり 料理上手の台所 (クウネルの本) クウネルの本 ずらり 料理上手の台所 (クウネルの本)
お勝手探検隊マガジンハウス 2007-09-20
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お勝手探検隊編

正直なところこの本が見たいなと思って図書館に予約した時、こんなのが(失礼)百数十人も待つとは夢にも思いませんでした。
人の台所に興味津々な人って結構いるのですね?
「家政婦は見た!」じゃなくとも・・・?
他人様の台所は宝の山です。
時々友人の家になど行くと凄いヒントが降ってくることがあります。
でも、私の平凡極まりない台所は余り他人様のお役にはたたないだろうな・・・と、忸怩たる思いがあります。・・・した!でも、この写真集を見てこれでもいいのだとほっとした思いもあります。
この料理上手と呼ばれている人たちのお料理、食べてみたことはありませんから、その点「はてな?」マークつきですが、お台所は楽しめました。写真も美しくって、センスに溢れていましたから・・・それでカバーされた部分も?
料理上手は台所の整理整頓も上手!と言うのは思い込みだったようです。要はその人が使いやすいか?ということだったのですね。
その点では私の無様な台所も私には使いやすい!と言う1点でそこそこ優秀です?乱雑さも含めて。
何よりどこに何があって何の時はどこから何をサット取り出せるかってことがすべてです?
色々なものが実に様々に見えるところに全部出ている台所もあれば、こんなにコンパクトで本当に料理しているのかな?と思うのまで実に様々なようです。
私も転勤で9軒の家に住みましたから9の台所生活を経験したわけですが、どこも住めば都で?1ヵ月後には使いやすい台所になっていましたね。私の特技は柔軟性?染まりやすい?いい加減?ですか。
でも忘れられない台所が二つあります。
23歳まで過ごした実家の台所と、私が実際設計して作った我が家の台所です。一つは母と並んで過ごした懐かしさの甘いオーラに包まれていますが、後のは売り払った時点で泣きたい位惜しい台所でした!大好きな向日葵色のタイル張りにした出窓が今も惜しくてたまりません。
今の台所はそこそこ憧れの初めての対面式だと言う点で評価していますし、旦那と二人だけの調理をするにはうってつけの狭さが気に入りです。
ただ出窓が・・・ないんですね。これも憧れの譲れないものの一つではあったのですが・・・はずでしたが。もう諦めが付きました。何にでも人は慣れる?
こうして色々な人の台所を見ると、確かに台所はその家の家事担当者を映す鏡なんですね?この本の中にすんごいシステムキッチンなんかがなかった(ひとつ、「みたいの」があったかな)のが嬉しかったな。ぱらぱらめくるたびに楽しくて、図書館に返すのが久々に惜しい本ですよ。

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この黄色、私の作った台所と同じ色なんです!
懐かしい!母の台所とは違うのに、母を思い出させる台所です。

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これも懐かしい感じがするのですが、右の方は東京暮らしではゆめゆめまねてはいけません。地震の時・・・?

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