プラチナデータ

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プラチナデータ (幻冬舎文庫) プラチナデータ (幻冬舎文庫)
東野 圭吾幻冬舎 2012-07-05
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プラチナデータ DVD  プラチナ・エディション プラチナデータ DVD プラチナ・エディション東宝 2013-09-27
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東野圭吾著

「これを読み終わったところ」と知人に言ったら、「娘もちょうど読み終えたと言って家にあるけど…あの子東野さんのファンなのよね、面白い?」と聞かれた。
「まずまず面白かったよ。東野さん当たり外れはあるけれど面白いのいっぱいあるんで目を離せないのよ。」と答えたら「娘も全く同じことを言っていた」と笑われた。 だからこの本は読んでみようかな…というのが彼女の結論だったのだけど…
はたして彼女に面白いか?と思ったら急に心もとなくなった。 ガリレオさんか加賀さんなら絶対おすすめなんだけど…まだそれにも手を付けていない人にはどうかな?
近未来を扱った映画などの既視感があって、 着想そのものがものすごく新しいわけでもない。 人間も新しい階級制度に…というか階級制度から未来も逃れられないんだ…なんてきっとそうなんだろうね…と、私には厭世観?に近いものがある。 最近の日本に生きていると私が生きてきた時代は最高に日本が生きやすかった時代だと思ってきたけれど…それも終末に近づいているんだなぁ…等と素直に思ってしまえるところが何かなぁ。 政治家のせいだ!それを選んだ自分たちのせいだ…だから結局は自分が悪い!みたいなスパイラルに陥って、明るい未来をまた指の隙間から取り落としてしまったような気がする。
このDNA管理社会は結局同じ遺伝子を持った者が互いを縛りあう村社会みたいなものになって…戦中の隣組か? 血族共同責任社会か? 背番号だって進まないのに…いややっぱり進むのか? なんてなんとなく納得してしまったよ。 今の日本ってするべきことがちっともできない国になっているものね。 で、気が付いてみたら、だから作家はどうだっていうのよ?となんだかそれで終わったの?それで終わっていいの?みたいな尻切れ感が惜しいような。

弁護士探偵物語 天使の分け前

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弁護士探偵物語 天使の分け前 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 弁護士探偵物語 天使の分け前 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
法坂 一広宝島社 2013-01-10
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法坂一広著

読み始めて、錯覚を起こした…原尞さん?…原さんを読んだのは随分以前のことだけど…5冊読んで…そのあと作品を見かけていない。 絶対ファンはいるはずなのに…父のほかにも…ってこの5冊も父から回ってきたのだったっけ…
それくらい原さんを思い出すくらい…当然マーロウを思い出すことにもなったのだけど…。 私はぼんくらな読者であまりしっかり読み込む性質ではなくて…物語だけを楽しむただの活字中毒読者だから、何と言っていいのかわからないのだけど、感覚の上では原さん二世?その末枝?って印象。
だから当然読みやすくて私にとっては慣れた読みやすさで…この男っぽいのだか独りよがりなのか照れなのか…その饒舌さが少々うるさいながら、まぁ好もしい…と言ってあげようかってタイプ? 時々笑えて、時々なんだ? え、なんなのよ。
で、作品。 弁護士としてのスタンスが面白いから…つられて探偵?になってからも読み進めてしまった。 弁護士事務所の京子さんになったような気持ちだったのかも。 医療の腐敗というより特定の病院の不祥事はいくらでも思いつきそうだけれど…私もプラセボといえば…父の飲んでいた睡眠薬の半分はそれじゃなかったか?と内心怪しんでいるところだ。眠れない夜のために父から分けてもらっていたけれど…時にまったく効果の出ない夜がある。父も全く効かない夜には夜中に半錠追加してみるとよく言っていたっけねぇ~? この手の薬の半分はそうなんじゃないか?なんて…旦那にぼやいてみたらそんなことがあるかと一笑されたっけ。
でも金になるなら…なんて、
この話にはだから?まぁ乗って行けたってわけ。
最後まで読んだらこの作品は第10回このミステリーがすごい!大賞受賞作だと書かれていて…選考者たちの批評まで乗っていた。 4者4色の批評がみんななんとなく納得できたような…だけどその選考評まで本に乗せてくれなくてもいいのに…余計なお世話だったと憮然としている。(読まない自由も当然あったのに…) でもこの饒舌な(過ぎる)お人の作品が又読めるなら私は多分読んじゃうだろうな。原さんのように何作読めるか、先が見えないから心配なんだもの。

蜩の記

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蜩ノ記 蜩ノ記
葉室 麟祥伝社 2011-10-26
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葉室麟著

葉室作品3作目。 なかなかいいな…と思う、さりとは周平さんや周五郎さんを読んだ時のような熱狂は起こりようもなく…それでも乙川さんより素直に読めるか?という期待を抱きつつ…3作目は?と期していたら…直木賞! 受賞前に予約しておいたのでこの段階で手にすることができた。
この作家の作品の中では今までで一番いい。
周平さんの「必死剣鳥刺し」を思い出した。
大名がいて、家来がいる。武家の不条理。独りよがりな理不尽な刑。
「鳥刺し」の主君よりましだろうか? 与えられた十年は死へ向かう10年で。 疑義を抱きながら仕えつくす数年とは違う。どちらがつらいか…想像でしかないが。
いずれにしても、凛とした佇まいの武士の姿を描き出したことは確かだろう。
その姿には瞠目する。 しかしこの作品で最も瞠目すべきは…というよりいやでも引っ張られてしまうのは源吉の姿である。 身近に手本もなく、生きてきた時間は余りにも短い。なのになぜ彼はこうも出来上がっているのか? 短命の人は生き急ぐ。早く大人になりすぎた。あり得ない…そこへ行きつく。 自分の息子があの年であのように出来上がっていたら…親は立つ瀬がない。 しかしその域を超えて源吉の佇まいは感動を呼ぶ。 かなわないと思う。 かなわないといえばこの家族全部がそうだ。 日常が忙しければ忘れていられるというものでもないだろう…常に終わった一日をため息とともに数えなおす日々だろうのに。
立派過ぎると思いながら教えられることはその中に確かにある。 10年と限られなくとも人は皆有限の中に生きているのだから。 私は悔いと忸怩で生きている。

さて、先日殆ど半年以上振りでこのブログをアップした。これは昨年読んで記しておいたものを遅ればせにということなのだが…どこで気が抜けたのかこの半年ほとんど読んだ本の感想を記していない。そうして顧みれば…ナント読んだ本すら覚えていない…あんまりだこの老け方は…物忘れの段階ではない。だから今年今から遅ればせにまた書き始めようと思っている…が…。この…が非常に多くなっているようで、これまた心配点ではある。

ハードラック

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ハードラック ハードラック
薬丸 岳徳間書店 2011-09-28
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薬丸岳著

薬丸さん5冊目になりますか。 長編。
今度は犯罪者の立場での?作品でした。 特に前半。 新聞を読んでいるといやでもこういう若者のニュース出てきますよ。 名義まで売るようになる…悪事と承知で出し子になる…そんな転落の奇跡です。  こういう若者がこういう風に落とし穴に落ちていくのか…いかにも簡単に?
簡単…って!本当に簡単…気が付いたときはしゃぶりつくされて…犯罪者としてしか生きる道はなくなっている。
そうか新聞のニュースなどで読む詐欺師集団の捕まったお兄ちゃんたちはこういう風に…そうか、まさにまっさかさまに…なんだ。
わたしにはどうして?という気持ちがずーっとあったんです。 どうしてそこに行く途中で踏ん張れるところはなかったのか、引っかかりになってくれる人はいなかったのか? どうしてそこまで行ってしまったんだろう?
それがふっと…ああこんな風に…可哀そうに…怖いなぁ…。 いつもながらの薬丸さんの世界と言ってしまえばそうなんでしょうね。 今現在の社会の生み出しているもの…不安で落とし穴だらけで…一生懸命まじめにやれば…が、通じない世界。
絆は切れやすく、結びにくい世界。大体繋がれるところってあるのか?の世界。  こうして突き詰めていく勇気と知能があるんだったら、そこまで行く間に…もっと利口だったらよかったのに…なんて思うのはそれこそ心無い他人のセリフですよね。
家族が…出来る事ってこんなにも少ないのか。 母親ができることってこんなにもわずかなのか?  最後の最後にちょっとほっとさせてもらえて…でもいつからこんなに社会は冷えちゃったのでしょう。 昔はこうじゃなかったですよね?そうですよね?不安に駆られていますが。

引かれ者でござい ・ 待ち伏せ街道 ー蓬莱屋帳外控ー

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引かれ者でござい―蓬莱屋帳外控 引かれ者でござい―蓬莱屋帳外控
志水 辰夫新潮社 2010-08
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待ち伏せ街道―蓬莱屋帳外控 待ち伏せ街道―蓬莱屋帳外控
志水 辰夫新潮社 2011-09
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志水辰夫著

「つばくろ越え」を読んでから…当然これはシリーズ化されると踏んで…待っていましたから「蓬莱屋帳外控」と銘打って出版された「引かれ者でござい」はすぐ読みましたし…「待ち伏せ街道」も広告を見てすぐ図書館に予約しました。
ロードムービーはどんな時でも興味深く楽しめますが、この長飛脚という設定は志水さんの文章を読むのに最高のめっけものの題材、シチュエーションだとこの2作を読んで思っています。
「引かれ者でござい」は「引かれ者でござい」「旅は道連れ」「観音街道」3編。
「待ち伏せ街道」は「なまくら道中」「峠ななたび」「山抜け女道」3編。
ただ、これらの作品群は終わりに行けばいくほどぐいぐいひきつけられてくるのですが…忍耐力を要求するという点でハードルがどんどん高くなっているような気がします。
かなり微細な地図が必要ですし、行程を一緒に歩く根気も要求されます。 しかも実に先が見えない。 本当に一行ずつ、一枚ずつ、章ごとにようやく一枚一枚道の、登場人物の姿の、霧が晴れていく…という感じでしょうか。 正直かなりもどかしさを感じつつ、それでも読みふけっていき…最後にやっぱりそうだったんだなぁ…と腑に落ちてほっとさせられ、この主人公たちを改めて好きだなぁ…と思わされるのです。
全くどうしてこんな横道に入っていくのかなぁ…それが分からないうちはじりじりじりじり頭を焼きますね。だからこそ最後が嬉しいのですか? そこでやっと私は笑っちゃいます。
男って!と。 この!が何とも好きですね。
男を見込んで仕事の裁量を任せる勝五郎も忠三郎も見事なら難しい仕事を見事なし終える飛脚陣も見事!一仕事の後引っかかった脇道をとことん追っていく飛脚たちも凄い。そしてまた彼らもその仕事を引き受ける自分自身の背景を背負っているところも読みどころ。かかわったものに人にきっちり結末をつけてみせる器量に脱帽して読了する。もう強靭でしぶとくてかっこいい!この完璧感!街道や山越えの詳細が又限りなく興味を惹き起こす!関わってくる村人通行人が面白い。
3冊読んだところでようやく重い腰を上げて蓬莱屋の手ごまの飛脚さんたちのプロフィール帳を作ろうかな?なんて思い始めました。 仙造さんが好きで彼の登場を待っているのですが…他にもどんどん地味(そう)でしたたかで頭のいい目覚ましい男が排出されてきそうで…こっちも頭も心も整理して迎え撃たなくては…という境地?ですよ。
暇になったら三冊また読み通そうって思っているのだけれど…今が暇じゃなければいつ暇が来るんだ?というのが私の痛い処。

ブレイズメス1990

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ブレイズメス1990 ブレイズメス1990
海堂 尊講談社 2010-07-16
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海堂尊著

「外科医須磨善久」を読んでいたので、ハートセンターといい?読み始めになんだか須磨さんを下敷きのコメディを企んでいるような感じを受けた。 読み進んでみれば、かなり神妙な主題というか医療現場の課題はあるのにね。
しかし面白いもんだなぁ…と本を読んでいて…と言っても私の好む「探偵・警察・医療」もの限定だけれど…うならされたものほど、警察官や医者に不信の念がわく。 と言うよりむしろ正確には警察機構や医療体制そのものになんだろうけれど…「う~ん、腐敗しているなぁ…」
何かあったとき、警察に救いを求めてもいいんだろうか?本当に警察は庶民の味方・正義(ま、何が正義かという問題はさておき)の味方なのだろうか?」という素朴な不安に満たされるし、同じことで大病になったとき大学病院ないし大病院の(まぁ小さな病院でもなんだろうけど)権力闘争をしている医者たちに期待できるか?っていうこれもまた非常に質素な不安が押し寄せてくるんだね。彼らの隙間に私ら落っことされちゃうんじゃないか?って。 こういう心配の根がちゃんと!育ってしまう。 だから「神様のカルテ」なんて読んでしまうと…反対にひっくり返りそうに安心できるんだけど。  海堂さんの小説は思わずくすっと笑った分だけちゃんと苦い。 この作品は時代をチーム・バチスタをさかのぼること…何年だ? とにかく高階先生がまだ講師の設定だから…チーム・バチスタでは…同じ桜宮市のハートセンターへの言及はあったっけ? はて?結局できなかったのか? 世良先生…「光の剣」「ブラックペアン」「極北」…全部の本を持って確認しながらでないと年代や関係がそろそろ怪しくなってきた…タメ息が出る。 最初の頃はおなじみになった世界のおなじみの住人が出てくるとなんとなくそれだけで嬉しいような…仲間気分に浮かれていた?けれど、だんだんごちゃごちゃして来たよ。 ここでは「ブラックペアン」の2年後らしいが、世良さんはまだ医者の入り口で右往左往している。主人公天才心臓外科医天城雪彦氏は…当然…この後続編でお目にかかれるはずだと思っていますが…これでは壮大な物語の序章で、天城先生の紹介だけですものね。 何とか急いで書き続けてくださいね。それで世良先生の過程もわかりますように!と頼みますよー心境で本を置きました「ウソ―!」ですよ。この先こそ興味の的です。

漂砂のうたう

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漂砂のうたう 漂砂のうたう
木内 昇集英社 2010-09-24
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木内昇著

遊郭といえば吉原、その様々な時代を描いた小説はいくつも読んでいるけれど…またはその末にあるというか対極にあるというか場末の、または土手で何とか生き抜いていく女たちを描いた小説も多々あるけれど…根津遊郭の話は記憶にないなぁ…。 しかもそれが明治になって、明治も10年という妙に半端な?不思議な時を舞台にして、主人公が男、店の立ち番をする男というのだから…。維新の命を懸けた先駆者たちはあらかた亡くなり、生き残ったのは権力を手にしたものと何とか時代に乗り遅れまいとあがくもの、あがく気力も奪われてただただ流れていくもの。 その時間の流れの中でただただ転がっていく小石もわずかずつ岸辺を洗いかすかな痕跡を…残すのだろうか…残せるのだろうか?
何しろ主人公が、御家人崩れのこの青年という字の持つ若々しさも青臭さももうすでに失って年だけは若くても若さのかけらもとどめていないような…根もなければ意地も消え果たような男なのだから…読んでいて…いらいらが募る。
しかしこの男を翻弄するこの町をうろつく人間たちの綾なす怪しさが奇妙な夢心地に読む私を魅了する。
気が付けば主人公にいらだつあまり…私は龍造に惚れ、円朝に惹かれ、時代の荒波を漕ぎ渡ろうとする群像にめまいしていた。 そしてこの小さな悪党たちの中で…やっぱり女だね…地に足をつけて生きるものは…女ですよ。…と、頷いている。 主人公を甘やかす遣り手も、そして何より小野菊のなんかすっきりとした立ち方のいなせな涼やかさ。 何と魅力的なことか。  自由という旗印で男たちは舞い上がるけれど女は得るべく得る!
なんとなく松井今朝子さんの「吉原手引き草」のあの葛城を思い出してしまった。 やるねぇ…花魁って流石!な人たちだったのか!   「茗荷谷の猫」に次いで楽しませていただいた。

阪急電車

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阪急電車 (幻冬舎文庫) 阪急電車 (幻冬舎文庫)
有川 浩幻冬舎 2010-08-05
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有川浩著

グッドタイミングで図書館から届いたので、映画を見に行くことになったとき、ちょうど半分まで読み終えたところだった。 で、私だったらこんな脚本にするかなぁ…という方に頭が行ってしまった。 なんか程をよくしすぎて…だってこの本が実に程がいいのだから…もう少し押し込んでもいいんじゃないか?って気がしてしまったのよ、あ、映画の方ね。
で、この映画、保護司をしていらっしゃる人と見に行ったのだけれど、彼女の日常とほとんどシンクロしてしまったのが…ちょっとできすぎだった。 宮本さんの演じた醒めた常識的な口出しのきちんと!できるお祖母さんは、そのまま一緒に行った人だったから。
案の定、見終わったら「あれ、普段の私がしていることじゃないのね。何が珍しいんだか」と彼女は言った。
つくづくこのごろ人は絆を、縁を求めているんだなぁ…。震災の後だったからなおさらヒットしたのかもね、この本も映画も。本当は都会に出てきて、都会で住んでいる人の多くは濃密すぎる近所付き合いはごめんです!っていう人だったはずなのに。
田舎はうるさくて…この都会の無関心さがありがたいと思っていたはずなのに。 誰かが誰かに声をかけて、それが心に響いたから、今度はその人が他人に声をかけて…連鎖反応をしていく。それって一昔前の東京では当たり前のことだったのに。っていうか近所付き合いってそういうものだったはずなのに…なんか新しい優しい世界を見ちゃったような気がしている。 近所のおじさん、おばさんって、私が子供の頃はあんなもんだったよ。お隣のおじいちゃんは縁台に座っていて通っていく子に声をかけたり怒ったり。おとなしい私でさえ弟の面倒をちゃんと見ているかっていつもチェック入れられていたっけ。
近所のおばさんに手をひかれたり、叱られたり…あああ、あのおばさんたち、おじさんたち、私の母のように、もうみんなお亡くなりになったんだろうなぁ。
そして今、彼女が普通にしていることが…奇跡…って言われるんだ!震災後の当分だけの現象だろうか?それとも取り戻したい何かに気が付いたのだろうか?
それだけ声をかけるというただそれだけのことが普通じゃなくなっているんだ…そのことに奇妙なほど実感があった。
奇跡じゃないよ、これは郷愁!!!

本と映画を一緒に読み見て…しまったので変な風に感想が一緒になっちゃった。

阪急電車 片道15分の奇跡 特別版 [DVD] 阪急電車 片道15分の奇跡 特別版 [DVD]
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廃墟に乞う

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廃墟に乞う 廃墟に乞う
佐々木 譲文藝春秋 2009-07-15
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佐々木譲著
主人公は休職中の刑事仙道孝司。 これがまた見事な繊細な感性と思考力と技量を持った見事な!刑事。  休職中の彼を頼って持ち込まれる事件が6件続きます。
私がこの作品で一番心に残ったのは北海道そのものでした。 現在の北海道の地方が寒々と荒涼と現れてくるその描写でした。 地図を眺めながら読むことができます。 よく出かけたニセコあたりの山並みを懐かしんだり、栗山町・栗沢町・岩見沢…エー、どの街が吸収合併?なんて考えたり、浜頓別~江差へかけての海岸線を思い浮かべたり、十勝平野の広がりを思い起こしたり、静内~日高へかけての牧場地帯の美しさを心に描いたり…。
外国人ときしみを生じている街、消え去った廃墟の残る炭鉱町、寂れかけた漁業の村…ですからトーンは大体の作品に通じて暗く陰鬱です。
そして、この刑事ゆえに問題を抱えこんで傷ついてしまった刑事を通して、様々な殺人事件というか殺人そのものが人間にどんな傷を負わせるか、なぜか具体的に身につまされるように感じさせられました。 描かれたのはこの大地とそこでの人々の狭い世界とそれ故に否応なく起こる軋轢とその結果による殺人。そしてそれに向き合わなければならない警察の人間たちです。
殺人などという凄惨で悲劇的で悪辣でおぞましいものと否応なく向き合わされる職業って…絶対必要でありながらも人間的ではいられないものなのではないかなぁ…少なくともどこかで精神を病まなければやっていられないものなのじゃないかと思って痛ましく読んでいました。 その意味ではとても読みごたえがありました。 非常な世界に生きながらそれでも人間と向き合って再生していく主人公の人間性でしょうか。
佐々木さんの警察小説は好きだ!と、思って読んできました。
「笑う警官」の佐伯さんも良かったですし…3代にわたる警察一家も魅力的でしたし川久保巡査も好きです。でもこの作品で描かれた仙道さんの繊細な知性と痛みを知る人柄が最高に魅力的でした。 明日?復職したら…その時はどんな刑事として現れるのでしょうね。 この休職中の在り様が素敵だっただけに気になります。

ファミリーツリー

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ファミリーツリー ファミリーツリー
小川 糸ポプラ社 2009-11-04
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 小川糸著
―長野県穂高美しく壮大な自然に囲まれた長野県安曇野の小さな旅館で生まれた弱虫な少年、流星は「いとこおば」にあたる同い年の少女リリーに恋をした。料理上手のひいおばあさんや、ちょっと変わったおじさんなど、ユニークなおとなたちが見守るなか、ふたりは少しずつ大人になっていく

この作家の作品三作目。 で、その読み終わったどの作品にも、とてもいい部分を、いい何かを感じさせてもらいながらも・・・食い足らないなにかもどかしさというか、味わいの足りなさを感じている。
この作品も、まさにそうで、前半この作品はいいものになる・・・という予感に楽しみに読み進んでいたのだが、途中で息切れがし、気分が停滞し、放り投げたくなってしまった。 
子供時代の描写には、彼らの世界には魅力があった。 風変わりな大人たちにもそこはかとない魅力があった。 だが年とともに主人公の彼らには魅力がなくなっていった。 これを時代の・・・と捉えるべきなのかもしれないし、また今の子供たちの草食系物足りなさと捉えることも出来るかもしれないが・・・でも駄目だ。
私には作者がこの中に溢れさせようとしている優しさの正体に疑問がある。それはむしろあやうさともうそ臭さとも思え、いらだたしい世界になってしまった。なにかちょっとした段差に足を取られたような不快な違和感が拭えない。
 

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