カディスの赤い星
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逢坂剛著
ひさしぶりにハードボイルド。 先日藤沢周平さんの本を片っ端から読み返していたら、後書にこの本のことが出ていた。そうそうずーっと読もうと思っていてまだ読んでいなかったと思い出して借りてきた。
原尞さんの作品を読み終わってしまった後、ハードボイルド作品を探していて突き当たった作品だが…そういえば原さんの作品もちゃんと感想を書いていない。これは老後?もう一度読み直してからのことだな。
さて、この作品。PRマンの漆原亮というのが主人公だがPRマンとしての資質を見せつけた後、その有能さを引っ提げて探偵のような仕事に駆り出されてしまう。日本で一体どうしたらこんな資質を持った人材が育てられるのだろう?とハードボイルドの主人公にお目にかかるたびに思ってしまうのだが、その例に洩れず、この主人公も実に魅力的で後を引いてしまいそう。
舞台のスペインが又いい! マドリードからグラナダ、カディスへと舞台は移っていくのだが、こんなにスムースに?違和感なく登場するスペイン人達とお付き合いしてもいいのかしら…という気分は読み進む5分のうちに?消えてしまって、この冒険と追跡に魅せられていってしまった。
読み終わってみれば痛快感がドカン!…と行きたいところだったのに、何でここで死なせてしまうかな?と必要もない事故にがっかりしてしまった。
男はこれだからねぇ…。そこまでかっこつけないでよと憤慨している。
だからハードボイルドの主人公は王子様中の王子様になり得るのに、ならない。っていうかなってくれない。
この舞台の背景になっている時代についてはスペイン旅行へ行く前に漠然としたものではあっても一応眼を通している。それに加えて、スペイン内戦と言えばヘミングウェーの「誰がために鐘は鳴る」、「武器よさらば」などを昔読んだな。 ここでは内戦後のフランコ独裁の後期のスペインが舞台。しかしどうしたって探偵にしか思えなくなってくるこの主人公はそのスペインの内情通から土地勘まで…凄い!とにかくすごい!
そんなわけでハードボイルドって、気分が落ち込んでいるときにはすごくいい薬になるわと夏風邪を引いて引きこもっていた私は大満足で読み終えた。
この作家の他の作品にも遅ればせながらアタックしてみようかな?
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