県庁おもてなし課

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県庁おもてなし課 県庁おもてなし課
有川 浩角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-03-29
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有川浩著

この作家さん、4作目。…にして、何でこんなにお年寄り、否、先達者親世代に優しいか…かつ特におじさんに優しいのか?分りました。 お父様を尊敬いや敬愛していらっしゃるということが根底にあったんですね。 人柄がいい作家さんなんだ!
そんなことが素直に伝わってくるんですね、そして同じくらいしっかり持っていらっしゃるユーモア感覚! 実に良い組み合わせです。 この作家さんでも毒を吐くことがあるのだろうか?なんだかそっちに興味がわきました。まだ4作でそんなこと言っちゃいけません!
これは得難くも心休まる作品です。 そして無駄にではなく前向きになれます。 具体的に進化の順序が提示されて…あらゆる進歩の余白のある人々への楽しい指針にもなり得ます。 うん、まさにそれですね。
キャラクターの立ち方が劇画世代を思わせますがついている色彩は明るく切れがよく鮮やかで温かい。だからほとんどすべての人の心に抵抗なく受け入れられすべての心に何かの光乃至熱を呼び起こすだろうな…そこまでいかなくてもぬくもりを?
すぐやる課とかこのおもてなし課とか…行政のちょっと前からよくやる手ですよね。初めてのすぐやる課の時のニュース覚えています。 すぐに興味が覚めたところを見るとそうすぐやったものでもなかったのかな? 実際の功罪を私は知りません。
今、観光課ってこうなの? なんて興味で読みましたが…そういえば浅草の雷門の箱もののニュースを昨年見ましたね。 今頃箱もの作っているようじゃ…と思ったものですが…そういえばあのニュースの行方見張っておくべきでした。 こういう区民がいるから行政は生ぬるくいられるっていうのが、これまた一つの事実なんでしょうけど。 反省点は多大に都民・県民・市民・区民の皆さんにあります。民間意識を高く掲げられると片腹の痛いこと痛いこと!
それも全部棚に上げちゃって、とても楽しい読み物でありました!
熱くなっていく人ってかわいい! カッコよくなりたい男ってイケてるかも!
阪急電車さんもだけれど、それにしても高知県さんはおいしかったろうな、この本。

刑事のまなざし

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刑事のまなざし 刑事のまなざし
薬丸 岳講談社 2011-07-01
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薬丸岳著
久しぶりの?薬丸さんでした。が、何か新鮮さに欠けると思ったら…東野さんの加賀さんを思い起こさせるタッチだったからかもしれません。そしてなおいうなら…加賀さんの方が作品により出来不出来はあるかもしれませんが…すぐれていると思います。
いい連作短編でした! それはそう思うのですが…読んでいて稚拙な感じも受けました。置かれている状況、夏目さんの人生の選択、人格…すべてがちょっと簡単にきれいすぎたかもしれません。 勿論、そういう人格の男を描きたかったのでしょうが…それがもう一つ納得を生む表現が足りない…なんかそういう食い足りなさでしょうか。
「オムライス」は嫌な話でした。 でもこの母親は自分のしたことに本当に気が付いたでしょうね…。
「黒い履歴」は悲しい兄弟の物語でした。この弟はきっとちゃんとおじさんをして生きていくでしょうね。でも…大変だろうなぁ…。
「ハートレス」は主人公が輪郭を見せてくれました…同じような境遇の男が踏ん張ってくれるかもしれない…希望もありました…。
「傷跡」は取り戻せない時間と向き合わされました。こんな沼に落とされた男をどうしてあげられるんでしょうね。傷跡の多い女の子より殺人をしてしまった男を救う手だてが…。
「プライド」は何とも…。
「休日」は男たちがかっこよくありませんか?なんだかドラマでちょくちょく見ているようなお手軽な設定で、いいけど…どうかなぁ…。
「刑事のまなざし」表題ですが…。いい話にしたくてこれは反対にひねくり回されてしまったという哀れさが行間から漂ってくるような…テーマを設定してそれを文字だけで考えたというか…そんな…小理屈をねじ込まれたような…素直に共感して罪と罰を考えるのを反対に遠ざけられたような…なんか挟まったような…。
そんなこんなで…もう少し熟成を必要としたんじゃないかなぁ…?夏目さんも、彼の周辺も。

カッコウの卵は誰のもの

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カッコウの卵は誰のもの カッコウの卵は誰のもの
東野 圭吾光文社 2010-01-20
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東野圭吾著

膨大な?作品群の中のまだほんのわずかしか読んでいない…と言ってもいいのでしょうが、私の読んだ東野作品の中では「夜明けの街で」と「パラドック13」とに続いて…えー思ったよりつまらなかったなぁ…でした。
遺伝ねぇ…これもパラドックスと同じようにアイデアはあるんだね!って感じはしましたから…作品としてやっつけの感じがどうしてもしてしまう残念さがあります。
じっくり練り上げる時間が不足しているんでしょうか?
中途半端な詰め込み過ぎが原因かとも思いますが…たぶん登場人物の誰一人魅力的ではありませんでした…というところに尽きるかも。 これは本を読むとき痛いです。
読む私の目線が定まらないし、共感も生まれませんし、結果満足もできません。
父親の気持ちだけ暴走しますが…娘は、存在が希薄です。
遺伝を追いかける姿勢に肝心な人を見る目線に根本的な優しさがありません。作品はパッパッパと進みますが、何もかもが中途で描き切れていないもどかしさがあります。
続いて父から回ってきた「白銀ジャック」に期待しましょう。 と言っても題名がなんだか今一何で。

いつか見た人

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いつか見た人 いつか見た人
香取 俊介双葉社 2000-09
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香取俊介著
新聞の書評でかなり以前「銀座線がモチーフだ」と読んだのを思い出して…というのは、伊集院静の「浅草の女」というのを図書館の本棚で見つけて…この作家読みたいと思ったことはないけれど浅草に惹かれて借りてきた。 それで、外から見ると浅草って色っぽさがあるのかなぁ…なんて思ったのだけど、不意にこの作品のことを思い出した。 銀座線なら…浅草よね?っていうのが私の基本?
銀座線の駅を順番に舞台の一部にした短編群だった。だから駅数と同じ…じゃなくて12の短編。 省かれた駅の可哀そうなこと、理不尽だ!って、気分は悪い。  でもこの短編…ほとんど気分が悪い。  何で?だってこの路線私には幼少から青春時代までの路線だったけれど…この作家の作品は…老残! いや熟年を扱ったものが多いのだけど…うらびれている…という感じが強い。  確かに銀座線は古くて…小さくて…暗くて…汚いよ…今では。 でも地表に近くて階段は少ないし…昔の、昭和の風情をせっかく色濃く残しているんだよ。 何でセピア色が勝った、懐かしさがやさしい、もう少し情緒がきれいな物語を紡げなかったんかねぇ…とタメ息が出る。悪い話はないのだけど…なんだか忘れるのがいいような…忘れるべきだよってお話が…ちょっとねぇ。それに男と女の関係で終始するっていうのも嫌だ。勝手なこっちの思いで作家には迷惑な話だね。

五郎治殿御始末

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五郎治殿御始末 (新潮文庫) 五郎治殿御始末 (新潮文庫)
浅田 次郎新潮社 2009-04-25
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浅田次郎著

江戸から明治に移り変わる激動の時代。その時代においてきぼりにされたような武士の姿を描いた短編集6編。
浅田さんは本当に凄いストーリーテラーだ! 改めて感嘆しつつこの6作を読んだ。 この武士たちの生き様をすべて肯えるわけは無いのだが、その描き出された心模様は心に忍び込んでくる。
特に「椿寺まで」の小兵衛と新太の二人には素直に泣かされた。
そう、こういう時代にこういう星の元で生まれたなら・・・こう生きていく男たちに心を惜しむまい。そう思えるほど生き様がいじらしく男らしい。 男ってこういう見事ないきものだったんだねぇ・・・って 周五郎さんの小説の中ではおなじみだったような男達だわ。それなのに本当に久しぶりに出会った様で、感嘆してしまった。
「五郎治殿御始末」 曽祖父のスケに語る父五郎治殿の生きた道をその力があれば私も朗読で語ってみたい。そう思うほど真っ向からのめりこんだ。最後の御始末では私も笑い泣き。 「苦労は忘れてゆかねばならぬ。頭が忘れ、体が覚えておればよい」 はい、胆に命じます、と私は答えていた。「己の身の始末は決して逃げず、後戻りもせず、能う限りの最善の方法で」見事に老後の指針じゃない?
「西を向く侍」は「西向く士・・・二、四、六、九、士(11)月」小の月の覚え方。いったい何時習ったのだろう?完璧に身に付いたこの覚え方を。その覚え方を成瀬勘十郎に負っていたとは。
この知識人の潔い消え方とともにこの名を記憶にとどめるべきか。
残り3編も笑いとともに心にしみこむ情を見事に綴って・・・上手い!なべて後味のよい、読み終えて満足の吐息の出る作品群でした。
満腹だ!

岡本かの子全集

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岡本かの子著

先生が以前ラジオで岡本かの子の朗読をなさったことがあって、その朗読を聴いていた。 聞いて、その世界を垣間見た?のではあるけれど、実際手にとって読んでみようとは思わなかった。
ちょっとばかり重苦しいし、じっとりと絡みつくような湿っぽい情緒がご遠慮申し上げたい!という気にさせたのだろう。 耳から入ってくるその世界は少々異界の気味があって、現在を暢気に生きている私には理解が難しいだろうと思われたこともある。
それなのに、私の課題に「何か一つかの子さんの作品に挑戦してみろ」・・・と、まぁけしかけられたのだ・・・ろう?
それでとうとう手にとることになったのだが・・・この一冊を読み終わる頃には、私はすっかりイメージを入れ替えることになった。
古臭い情緒のように思われていたものの奥に、思わぬ柔らかい・・・確かに湿っぽくはあるのだが、女なら何処かに抱いている、思いがけなくも自分の底からひっぱり上げられる、そう忘れていたような意識していなかったような感覚を思い出させられた・・・といった風だろうか。 好きではないし、分かったともいいたくないのだけれども、それでも・・・本当は私もこの世界知っている・・・というような。
そしてその中の美しさをも確実に読んでいる私は感じているのだということも白状しなくてはならないだろう・・・と、思う。
描き出そうとした世界は確実に受け取ったという気すらする。
表現できるとは思わないながらも、共感とか同感とはずーっと遠いながらも、心当たりのあるこの世界を暫くさ迷ってみようかな?と・・・私はとりあえず?課題を「家霊」にすることにした。 母から娘へ譲り渡される情念の呪縛みたいな物を、そこに絡む意志や諦念や糾える様々な柵や運命や・・・怖い世界ではあるけれど・・・とまだ思いながらも。

獣の奏者

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上橋菜穂子著

Ⅰ、闘蛇編
Ⅱ、王獣編

Ⅲ、Ⅳ、も出版されているようですが、今のところⅢ、Ⅳは130人待ちで、何時手に入るか分かりませんし、この2冊で一応物語としては十分終っているような気もします。
友人から年末に「正月用に借りてきた」メールに続いて、あけましておめでとうメールに続いて「夢中で読み終えて・・・面白くて面白くて最近稀な読みふけり方をして・・・図書館でこの作家の手に入るすべてを借りこんできた!」と。
本の虫の彼女の「ファンタジー好きのあなたには絶対お薦め!」でした。ただ静岡では棚から拾える上橋さんの本。調べてみたら江東区では長い「待ち!」
とりあえず手に入ったこの2冊ですが、本当に読み始めたら・・・もう夢中でした。
すでに私の中では「ロード・オブ・ザ・リング」に次ぐ傑作!です。上橋さんは当然沢山のファンタジーを読んでこられたのでしょうが・・・過去の沢山の作品の上に素晴らしい物語を構築なさったと万歳気分です。日本にはこんなに素晴らしいスケール感もあるファンタジーは無かったなとさえ思います。って、実は私はあまり日本の作家のファンタジーは読んでいないんですが。
その世界に引き込んでくれる力さえあったなら、ファンタジーに関して書く感想は要らないと思っています。
そしてこの作品は覗き込む私にこの世界この王国を目に見せ感じさせ生きさせてくれる力を十分以上にもっていました。5感すべてにこの世界もこの世界に住む人も動植物全ても社会さえも、あらゆる物にリアリティを感じさせてくれました。この世界の片隅で生きられると思いましたね。そしてこんな小さな力ながらもエリンを支える助けになりたいと願いましたね。それで十分じゃないですか?
わたしはこの世界の一人になりました。この王国の良い面も悪い面も私は愛し始めています。この後私の心の中でこの王国はどんどん広がって厚みを増していきそうです。草木一本まで私は見分け、色を付けるでしょう。凄いロマンスです!
そんなわけで・・・これを書いている間に、Ⅲ,Ⅳを待つ余裕は無くなったかもしれません。・・・ああ、でも文庫はまだ出ていないのかな?勿論最初に書いたようにこれはこの2冊で十分だとは思います。実際その後は、私の頭の中でうまれつつあります。 でも・・・この作家によって書かれたなら・・・エリンのその後もリランとのその後も・・・王国の全ての人々のその後も・・・当然王国そのものも、その後も私は知らねばなりません!
どうやら久しぶりに買い揃える本に出会ったようです!嬉しい!!!
ここまで描いたらまたメール。「『守り人シリーズ』も読み始めたら面白いよ。」
困る!この作者いっぱい作品があるんだってことに気付いて驚いたところなんだから。

みじかい眠りにつく前に

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金原瑞人YAセレクション みじかい眠りにつく前にI 真夜中に読みたい10の話 (ピュアフル文庫 ん 1-10) 金原瑞人YAセレクション みじかい眠りにつく前にI 真夜中に読みたい10の話 (ピュアフル文庫 ん 1-10)
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 真夜中に読みたい10の話
              金原瑞人YAセレクション

十作家による十作品
有島武郎の「小さき者へ」は別格として、いしいしんじ著「サラマンダー」と恩田陸著「飛び出す、絵本」は既読。二つとも好感の持てる作品で覚えていました。
他は初めて。
で、取り立てて心に残るだろう・・・と、思うのは1作。寺山修司「踊りたいけど踊れない」
寺山修司さんの名は本当に良く知っていながら・・・私は読んだことが無い。全く作品に接したことのないまま、多能多芸多作多趣味の変人風なイメージがあって作品に出会いたいとすら思ったこともありませんでした。それがこんな小さな作品でばったり出会って・・・不思議な感じでした。
知らないまま作られていたイメージと随分違ったので。
どちらかと言うと青年期の記憶に似ています。自分が分からなかった頃というより自分を分かろうとしていたなぁ・・・知ろうと足掻いていたなぁ・・・という時に近い。今は自分がちっとも分かって居ないけれど自分がなんであろうともまぁいいやぁ・・・そんなものじゃないの・・・違ってても別にいいのよ・・・みたいにいい加減になっているけれど、いい加減ではいられなかった頃の記憶・・・それを呼び覚まされたような懐かしさ。
なんとなく抱いていたイメージより正直な人だったのかも?と、たった一つの可愛らしい作品でふと思ったのですが・・・

おちゃっぴい -江戸前浮世気質

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宇江佐真理著

「たば風」で宇江佐さんに大期待を抱くようになって、さらに回ってきたのがこの作品です。多分こういう短編集がこの作家の独壇場なのだろうと思います。「深川恋物語」と同系列で同じくらい好感を抱ける作品群です。良いです!この六作品に登場する人々は同じ町内の馴染みの顔ぶれのように私はすっかり顔見知りになってしまいました。毎朝「おや、はっつぁん、お早いお出かけだね」なんて声掛け合っているような。
この作家は物語の舞台で登場人物を生かせる術を本当によく知っている人なんだ!という嬉しさ。
先日「下駄屋のおけい」を朗読材料に取り上げたいとサークルのある人が言っていたけれど、私は「概ね、よい女房」を取り上げたいな・・・と、思う。家賃を払えるか払えないかのキリキリの生活の中での長屋の女房達の気概も優しさも物凄く良い!けれど、その仲に入り込んできた不協和音のおすてを受け入れるまでの経緯がなんともいえない!そしてその傍らを流れる男たちの奏でる曲想も実にいい。良質の絡み合い!
人付き合いの下手な私でも明日は何とかなるかもしれない・・・という期待を抱かせてもらえる。ちっとも心を開けないくせに・・・明日上手く心を開けるかも・・・小さく開けた隙間から誰かが微笑みか何気ない一言を注いでくれるかもしれない・・・みたいな?
生活からにじみ出る慰めやいたわりが思わずこぼれる小さなグチや悲しみを柔らかく揉みほぐしてくれる・・・まるで体内に入り込んだ異物を粘液がくるみこんで痛みを消してくれる・・・そんなような世界。
 

漱石と倫敦ミイラ殺人事件

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島田荘司著

世に言うホームズもののパスティーシュ。
私はその手の作品は読まないことにしていたから、この作品の知識も当然無かった。図書館でこの作品を見つけたときも読むべきか迷ったのだが、以前倫敦へ行った時、ホームズの足跡を辿ると漱石さんとかなり被さるのに気がついた。ベーカー街に並んで走る道を歩いていた時、漱石の通ったクレイグ先生の家も見つけたし、もう少し先へ行くとワトソンの開業したクイーン・アン街も大英博物館も意外に近い。漱石の最初の下宿もこの辺り。
しかも漱石が下宿を代えて行く先はホームズの事件の舞台とも重なっている。時も重なる。何より漱石の「倫敦塔」は好きだったしなぁ・・・。
おかしなことにその頃、風太郎さんの明治物を読んでいたので、風太郎さんならこの事を知ったら絶対漱石とホームズを作品の何処かで接近遭遇させるだろうな・・・と思ったのだ。
違う作家だったが、この作品を見つけたとき、「あ、やっぱり!このことに気が付く人って結構いるんだろうな?」と思った。って言うよりホームズが好きな人は大抵知っている?
なら、例外としてこの作品を読んでみようと思って借りてきた。
この作品のホームズを許せるか許せないか人によるだろうけれど、ホームズが奇人になるとき、まともに近く?なるとき、マイクロフトの扱い方・・・さて、これは問題だぞ!私は余り好きじゃないな・・・ぼやきながら読み進んだ。ワトソンの性格はかなり把握の仕方が私とあっているぞ!っていう気もするが。その優しさ、穏やかな知性、ホームズに対する忠誠。ま、遺憾なく描かれているのだけど。何せこのホームズじゃ・・・女装は止めてもらいたい、このふざけ方・・・ため息も出ようというもの。
それでも、事件そのものというよりその前哨となる漱石の悩まされた幽霊の事件の解決がとにかくいい!そう繋がるのか!この部分というかこの連結?が見事だから・・・お遊びだし・・・と、思うことにした。
この微妙な違和感がやっぱりパスティーシュはなぁ・・・もう一つ楽しみきれないよ。ホームズに対する愛着も人により様々だからこのジャンルは多分どんな言い作品を書いたとしても評価が高くなることは無いのじゃないかと思う。たとえどんな新しいトリックや見事な解決を編み出したとしても。
やっぱりこれだったらホームズを読み返すわ!っていう気分?
ところがとんでもないおまけがついていた!
巻尾の解説に「島田荘司は山田風太郎のホームズと漱石を描いた作品を知らなかっただろう・・・云々」というようなことが書かれていたのだ。
やっぱり!風太郎さん二人を出会わせていたんだ!
そんなわけで「これ」は「これ」より読まなくちゃいけないでしょう!と、早速図書館へ出向いた。それは山田風太郎作「黄色い下宿人」で、次回に!

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