岡本かの子全集

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岡本かの子著

先生が以前ラジオで岡本かの子の朗読をなさったことがあって、その朗読を聴いていた。 聞いて、その世界を垣間見た?のではあるけれど、実際手にとって読んでみようとは思わなかった。
ちょっとばかり重苦しいし、じっとりと絡みつくような湿っぽい情緒がご遠慮申し上げたい!という気にさせたのだろう。 耳から入ってくるその世界は少々異界の気味があって、現在を暢気に生きている私には理解が難しいだろうと思われたこともある。
それなのに、私の課題に「何か一つかの子さんの作品に挑戦してみろ」・・・と、まぁけしかけられたのだ・・・ろう?
それでとうとう手にとることになったのだが・・・この一冊を読み終わる頃には、私はすっかりイメージを入れ替えることになった。
古臭い情緒のように思われていたものの奥に、思わぬ柔らかい・・・確かに湿っぽくはあるのだが、女なら何処かに抱いている、思いがけなくも自分の底からひっぱり上げられる、そう忘れていたような意識していなかったような感覚を思い出させられた・・・といった風だろうか。 好きではないし、分かったともいいたくないのだけれども、それでも・・・本当は私もこの世界知っている・・・というような。
そしてその中の美しさをも確実に読んでいる私は感じているのだということも白状しなくてはならないだろう・・・と、思う。
描き出そうとした世界は確実に受け取ったという気すらする。
表現できるとは思わないながらも、共感とか同感とはずーっと遠いながらも、心当たりのあるこの世界を暫くさ迷ってみようかな?と・・・私はとりあえず?課題を「家霊」にすることにした。 母から娘へ譲り渡される情念の呪縛みたいな物を、そこに絡む意志や諦念や糾える様々な柵や運命や・・・怖い世界ではあるけれど・・・とまだ思いながらも。

英雄の書

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英雄の書 上 英雄の書 上毎日新聞社 2009-02-14
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宮部みゆき著
これは・・・呆然としてしまいました。 出版されて直ぐ申し込んだつもりが後れを取ったらしく? 今頃ようやく手にしたのですが・・・これだけ待ったのだからさぞかし沢山の人が読まれたことでしょうが・・・皆さんどう思ったのでしょうか?
私は「いや、どうしよう・・・」ってあいまいな気持ちで読後記録を書き始めました。
「その意気やよし!」って言葉がまず頭に浮かびました。
ある意味非常に直截に作家の言いたいことが腑に落ちてきます。
語りたいこと、この物語を通して伝えたいと思っておられたのだろうことが・・・わかるような気がします。 でも・・・でも、なんです。
読み始めて直ぐ、なんだ「ブレイブストーリー」に続く似た物ファンタジーなのか!・・・っと、ちょっとがっかりしました。 だとするとロールプレイングゲームの物語みたいになっちゃうのかな?と思ったからです。宮部さんの作品の凄いところはそれでも読ませてしまうところなのですが、それでは私にはちょっとつらい。
読み進むにつれて物語の姿が朧に見えてきたら、今度は子供に読ませたいという気持ちのせいか(青少年読者を意識しすぎか?)、主人公を11歳の少女にしたことから生まれたある種の破綻が気になってきました。そこはファンタジーですから印を戴く者として大人びてもそれは現象なんですが、それでもかなり無理が生じたような気がしてなりません。 違和感がどうしても消えません。
感情的に寄り添ってあげたいと思うと途端に隔てられる感じでしょうか。むしろこの女の子に負わせた「その意気」が大きすぎて物語IN物語の方向がばらついてしまったのではないか・・・それで・・・どこをどの筋を拾っていけばいいのだろうと迷ってしまったようなのです。中途半端な大人なので・・・私。
光まばゆい誰もが憧れ信じる英雄の影の部分黄衣の王が背中合わせにあるという単純な図式の上に今の社会で起こりうる加害者と被害者の背中合わせ、何時どちらに転ぶかもしれない危うさを乗せているのだと受け取ったのですが・・・この物語性が反対に実際の社会をきちんと見据えないあいまいさに陥れたのではないかという気もしています。 どこを受け取りどこを主たる綱にするか迷いながら読んでしまったせいか・・・読み終わって中途半端に置かれたような・・・呆然という状態になったのかも?
これは・・・永遠の一部を切り取ったもの、世界の全ての輪廻の回転中の一時のことなので・・・続編は無いと思いますが、そう思うと益々消化不良に陥った感がするのであります。
作家というのは・・・これで結構つらいのよ・・・物語を生み出して・・・それが見事に一つの世界を生み出せたとして(ひょっとしたらいい作品を書けば書くほど)・・・作中の人物やイデオロギーが長生きして読者に影響を与えちゃうのよ・・・毒を生み出す事だってあるのよ・・・でもそれは物語だから・・・それはその輪の中で終ってるものだから・・・なんていうグチめいたものが聞こえたような気も?

f 植物園の巣穴

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f植物園の巣穴 f植物園の巣穴朝日新聞出版 2009-05-07
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梨木香歩著

「家守綺譚」が面白くステキだったのでまた梨木さんの本を検索して同じ傾向の作品が無いか探してみました。
ちょっと不思議で、ちょっとミステリアスで、ちょっと優しくて、そして心なし古風で風雅?格調があって?そんなテイストの作品があったら・・・という気持ちで。そしたらありました!読み始めたときにはこれ続編かしら?って気がしたのですけれど・・・違いました。ちょっと「夢十夜」を思わせるテイストもあるように思いましたが・・・。
読んで感じる時代感覚は「家守・・」と同じなんです。そして主人公が醸すなんと言うか繊細だけれども鷹揚な・・・ある種育ちのよさ?そんなものも似通っているような。不思議な世界の不思議な動植物に彩られて・・・私も読みながら「迷路に落ちたぞ!」状態になって・・・どこへ連れて行かれるのだろう?と、いぶかり恐れながら怖いもの見たさ、先を見たさで付いて行くような感じでした。主人公より大分腰が引けていましたね。そうかこの主人公は自分の過去に取り落としてきたものを見つけ理解し今立つ場所をしっかり固める旅をしているのか・・・今風に言えば自分探し?いいえ、自分がしっかり向き合わなかったものに向き合う旅にあるんだ・・・。
坊が出てきてからは・・・なんか読む私の心まで涙もろくなるような・・・同調、シンクロする感じが快くありました。
人の記憶が人の心の中を操作する経験は多かれ少なかれあります。
都合いいように自分を擁護してくれる。でも多分そのままに放置することは見えない傷を塗りこめるのと同じことなんだろうな・・・なんて。歯の穴、木の洞、穴の中を下へ下への旅。導くもの、暗示するもの、同行するもの、人には導いてくれる何かが憑いているのかも。良心、思いやる心、受け入れる心、そんなものの事を考えていました。水の流れと時の流れ・・・素直に流れていくことと流されていく事をも。
 

嘘をもうひとつだけ

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嘘をもうひとつだけ (講談社文庫) 嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)講談社 2003-02
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東野圭吾著

この作家のいわゆる「ガリレオシリーズ」はかなり読みましたが・・・「探偵ガリレオ」「予知夢」「容疑者Xの献身」「聖女の救済」「ガリレオの苦悩」と5冊?
たまたま、この本を借りてまたこの作家に「加賀恭一郎シリーズ」といわれるものがあるのを知りました。で、このシリーズで私が読んだ最初の作品は五作品の短編集でした。まだ1冊だけですから湯川さんと加賀さんのどちらがより好きかということは断定できません。私の性格からいっても?多分断定は出来ないかも・・・と、まぁ今の状態では思っているところですが。なにしろこういう探偵ものは読めるだけで、存在してくれるだけでありがたいとさえ思ってしまう私ですから・・・。そういえば今朝の朝刊にコーンウェルの新刊の広告がありました。満を持して?題も「スカーペッタ」!読みたい!
加賀さんはなかなか男前の気配ですが・・・なんとなくコロンボが手帳をひっくり返しているところを連想してしまいました。質問を重ねる口調まで。追いつめるしつこさも。彼も1匹狼系?刑事二人でつるんで聞き込みに回るタイプではなさそうです。この本面白かったので慌てて検索。ガリレオさんを超える8冊が出ているのですね。それで加賀シリーズとこの本の終りに書いていなかったらうっかり気が付かないところでしたが・・・記憶の何処かを軽く刺激する聞いた名のような気がしましたよ・・・「赤い指」でもう既にお目に?かかっていたのでした。うかつ者!
さて、この5つの短編・・・「嘘を・・・」は美千代さんの動機にみえる矜持があわれです。「冷たい灼熱」は多発する同種の事故を思いますね。何でああいうことになるのか?その一つの心理を描いていますが妻の嘘はともかく子どもの死体の処理が厭でした。ほかの作品も皆・・・全く女は・・・と思いながらこの作品の女性達にため息をついたのですが、加賀さんの推理は見事です。加賀さん登場の最初の作品から図書館に予約しました。この若さで、このスタイルで・・・コロンボねェ・・・? 「赤い指」ではそんな風ではなかったので期待して待ちましょう。
 

家守綺譚

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家守綺譚 (新潮文庫) 家守綺譚 (新潮文庫)新潮社 2006-09
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梨木香歩著
久しぶりに「私の本だ!」と同類感を満腹させてくれた小説に出会った!
これだけ心にぴたっとフィットする本にはなかなか出会わない。先回であったのは・・・吉田篤弘さんの「つむじ風食堂の夜」
庭のうろの大きなサルスベリに懸想された主人公もいいし、隣家の何事にも動じない物知りのおばさんもいいし、掛け軸の白鷺を追い立てて舟を漕いで何気なく?現れる高堂もいい、狸にしょっちゅう成り代わられる和尚さんもいいし・・・河童やサルスベリと格闘する花の咲いた竹もいいし・・・ゴローもいい・・・すべてが奏でる世界がいい!
ある夏、南禅寺の妙にしらっと明るい庭にサルスベリが印象的に咲いていたのを見たことがある。桃より濃い色のピンクが見事に咲き誇っていた。あの光景と裏の水路閣~蹴上げの風景を頭に思い浮かべながら楽しく不思議な物語を読みました。
描かれた風景と主人公の青年征四郎君の佇まいと彼の周りで関わってくる動植物の織り成す日々を豊かに楽しませてもらってそれでいいなぁ・・・。目次の純和風の植物名がいいでしょう?
適当にのんびり開いたところから1節づつ声に出してゆっくり読むのもいいなぁ。ただね最初の「サルスベリ」を読まないと話が見えないのね。それが惜しい!久しぶりに買ってしまいました!
子どもの時から図書館で読んで二度読みたい本だけ買うというのが私の石橋をたたく性格。それが久しぶりに出ましたなぁ・・・嬉しい!
実を言うと諦めきれずに年末の朗読会で「1章サルスベリ」を読みました。意外なことに?何人もの方から面白かったと声を掛けていただきました。読んでみたいと作家の名と作品名を確認された方々がいて・・・我が意を得たり!
 

おちゃっぴい -江戸前浮世気質

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宇江佐真理著

「たば風」で宇江佐さんに大期待を抱くようになって、さらに回ってきたのがこの作品です。多分こういう短編集がこの作家の独壇場なのだろうと思います。「深川恋物語」と同系列で同じくらい好感を抱ける作品群です。良いです!この六作品に登場する人々は同じ町内の馴染みの顔ぶれのように私はすっかり顔見知りになってしまいました。毎朝「おや、はっつぁん、お早いお出かけだね」なんて声掛け合っているような。
この作家は物語の舞台で登場人物を生かせる術を本当によく知っている人なんだ!という嬉しさ。
先日「下駄屋のおけい」を朗読材料に取り上げたいとサークルのある人が言っていたけれど、私は「概ね、よい女房」を取り上げたいな・・・と、思う。家賃を払えるか払えないかのキリキリの生活の中での長屋の女房達の気概も優しさも物凄く良い!けれど、その仲に入り込んできた不協和音のおすてを受け入れるまでの経緯がなんともいえない!そしてその傍らを流れる男たちの奏でる曲想も実にいい。良質の絡み合い!
人付き合いの下手な私でも明日は何とかなるかもしれない・・・という期待を抱かせてもらえる。ちっとも心を開けないくせに・・・明日上手く心を開けるかも・・・小さく開けた隙間から誰かが微笑みか何気ない一言を注いでくれるかもしれない・・・みたいな?
生活からにじみ出る慰めやいたわりが思わずこぼれる小さなグチや悲しみを柔らかく揉みほぐしてくれる・・・まるで体内に入り込んだ異物を粘液がくるみこんで痛みを消してくれる・・・そんなような世界。
 

鬼の跫音

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鬼の跫音 鬼の跫音角川グループパブリッシング 2009-01-31
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 道尾秀介著

道尾さん5作目。意識してホラーと書かれた物は外しているのだけれど、
この作品は微妙だなぁ・・・。私はホラーだけは苦手。で、この作品の底に漂う背筋を這い登るようなおぞましさはホラーの匂い。とは思うものの、それでもやはりただのホラーと言い切れない何か違うものも併せ持っている。
なんなんだろう・・・厭なもの読んでいるよ・・・と心の中の声は小さく呟いているのだけれど、目はどんどんどんどん吸い寄せられていく。
確かに怖いもの見たさに似ている。って言うかそのものなんだと思うよ・・・と、認めたくなく頷いている。帰りたいけど足は前に進んでいるみたいな?悪夢に近い。
「S」だよ。ウン、又「S」だね。ああまた「S」だよ。「そろそろSが何か考えるべきだよ。いや、いいんだよSは統一感、既視感、永続する悪意の象徴なんだから。余計なもの付け加えなくて良いんだよ。それその気持ちが余計なものじゃない。」ぼやきながらの読書です。
Sは人の底に棲む狂わせる暗黒の物を引き出す触媒のようなものかと思いながらSに囚われました。でもそれは枝葉です。
6作。どの作品の題も余り良い感じを受けません。開いた時にケモノ「犭」の字が真っ先に目に飛び込んできて「鈴虫」も「よいぎつね」も塗りこめてしまいました。そしてその印象は読み終わった読後感をあらかじめ教えてもらったようなものでした。全ての作品が心に棲む「犭」を描いているのだと思いましたから。
「ケモノ」や「悪意の顔」は道尾さんらしい?「今」が匂っています。
実際こんな事件が後を断たない今があります。やり直す時を与えない社会があります。一刻も無駄に出来ない(と思われる?)限られた時を生きる人々。それなのに実際には人に充実した時を与えない世に住んでいる。やりきれない。その気持ちにSが注がれる・・・と・・・。
「冬の鬼」に漂う耽美性は見覚えがあります。私達の世代には懐かしさも感じられます。「よいぎつね」には輪廻の空恐ろしさが漂います。ここにも記憶の襞をゆする何かがあります。そこには若い作家にとって新しい道を探る手がかりがあるのかしら?とも思えました。
芽を出さないで終る種もたっぷり持たされて人は生まれてくるのかもしれません。芽を出さないで終る種は哀れなのかしら?安らかなのかしら?水をやり光を当てる種を見きわめる目が欲しいものです。
心を目の詰んだ網で浚ってみると(この作家のこの作品はそんな感じです)この正反対の何かをも引き上げられるのではないか・・・と、思えてきて・・・次回作は振り子がそっちに振れてくれると良いのになぁ・・・なんて思ったのです。

アイスクリン強し

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アイスクリン強し アイスクリン強し講談社 2008-10-21
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畠中恵著

この本は作家を知らずに読んでも多分誰か想像が付きそうです。
自分の世界を築きあげるって凄いことです、しかもそれが気持ちのいい世界であるとなれば・・・
というわけで、しゃばけシリーズの作者のちょっと現代に近づいた明治が舞台の青春群像シリーズ?みたいです。この主人公たちもシリーズ化されるのでしょうか?出来そうな入り口です。
「さびしがり屋でお人よし」の主人公とおきゃんで利口な金持ち娘と頭がいいが調子もいい巡査の親友とその仲間達。
個性はちょっとパターンながら?でもいいんじゃない?青春時代を真っ直ぐに生きている情けも心意気もある青年たちなんだから。それにマドンナが入れば・・・なんとも楽しげな応援したくなるようなグループですもんね。こういう青年たちとスウィーツ(彼らはこんな括り方知らないと思うけれど)が結びついたら鬼に金棒。若旦那と三春屋の和菓子が最強コンビ?なのを、ここでもちょっと踏襲?
時代設定が変革期とはいっても、その時代に特別に抗うのでもなく、なかなか融通も利き目端も利く活きのいい青年たち・・・何時の時代もこういう青年達が結局は時代を作るのかもね。
序章で提出された謎は・・・忘れられたかに見えますし、どだい解けるはずの無い難問そうに見えて・・・お話そのものが解決へのそのものずばりのアプローチという展開もわかりやすい。物語にはかなり悲惨な?あくどい?筋立てが噛まされながら主人公たちの持ち味と後ろからほのかに香るアマーイ洋菓子の佇まい?が心地よいハーモニー。今現実にワッフルスが熱い!し。
序で明治への時代の移り変わりを見てきたように?箇条書き?にしてくれますが・・・若い読者には親切かもね。
 

江戸市井図絵  時代小説の楽しみ(5)

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縄田 一男新潮社 1994-12
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18作18作家

「時代小説の楽しみ」全7巻の家の5。縄田一男編・新潮社。

「全7巻の中から、とりあえず市井もの主体の作品群を選んでみた。
縄田さんという人が何者かよく知らないが、時代物の本を探していると結構この人の編というアンソロジーに突き当たる。多分?時代小説専門の評論家か出版社の編集者か何かだろう?
読み終わって彼の解説を読んでみたが、ま、頷けるものもあり・・・そうでないものもあり。好きな本をいっぱい読んで編者になって解説を書いている仕事って妙に羨ましい?解説者とか批評家とかいうお仕事って嫉ましさ募って?反発も受ける仕事だろうけれど・・・これだけうまく品評できる人が作品を作り上げられないって不思議だ・・・と、常々思ってもいる。
スポーツの世界なんてもっとそれが著しいけどね。
「父と呼べ」「ちっちゃなかみさん」「こんち午の日」は既読。しかも好きな本ゆえに別格。殆ど掲載の作家の作品は何かしら読んでいるが、馴染みの無いのが伊藤桂一さんと小松重男さん。小松さんは何かのアンソロジーで「蚤とり侍」1篇を読んだ記憶があるくらい。
それぞれに面白く読んだけれど別格以外では、やはり柴田錬三郎さん、池波正太郎さん、北原亜以子さん、山手樹一郎さんの作品が巧いし面白い!私が好きだと思う作品は結局終りの口当りのいいものなんだ・・・単純なんだと思うけれど、こういう短い作品を読んでいちいち苦い思いを噛み締めたくは無い。特に時代物には娯楽を求める傾向がある。
さもなければしっとりとした時代感、人間関係がもたらす哀感の中の温かみを感じさせてもらえるもの・・・に傾く。
そういう意味ではこの作品群は皆かなりいい線で纏まっていると思ったけれど、「浅草小町・・・」には厭な後味が残った。全ての人が自分に正直に生きたらどうなるんだろう?一途とか必死とか夢中、盲目、若い時って生きるのが難しいのね。あおりを食う多くの人のことがないがしろにされているような気配を感じ取ったから・・・厭なのかな。
「母子かづら」もやはり心の通じ合いが無い小説で、読んでいて心がじっとり重くなった。こんな母も娘も、こんな生き方も読みたくは無かったよ・・・とぼやいてしまった。
同じく「江戸前にて」も哀しすぎて。
「代金百枚」は面白い味わいがあった。主人公も長屋の人々も医者もそれぞれの持ち味が面白く綯い交ぜになっていて、「蚤とり侍」より良かった。
江戸っ子の始まりから明治の初めまでに渡る江戸の庶民の生きようを描いた作品をまぁ・・・巧みに集めてあるなあ・・・と思いました。
いつか「江戸っ子由来」朗読してみるかなぁ・・・。

イノセント・ゲリラの祝祭

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イノセント・ゲリラの祝祭 イノセント・ゲリラの祝祭宝島社 2008-11-07
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海堂尊著
やっと、やってきました。・・・というわけで完全にこの人脈に絡め捕られてしまった私です。仕方ないやね? お馴染みの知人たちが右往左往しているのだもの。この作品は時系列のどこに填まるんだ?なんて思いながら・・・どうしたって気にならないわけにはいかない。
こんなに簡単に?世界を作り上げてしまっていいのだろうか?と、思いながらすっかりその世界の住人になってしまっている?気がつけばもう10冊も読んでいるってこと?そしていっぱしに医療と厚生労働省のあり方に疑問と不安を掻き立てられて、意見まで持ち始めているのですよ。いるのですよ。
今回は先回の「ジーン・ワルツ」のように小説を読んでいるぞ!って感じではなかったのですけれど、作家さんが言いたいことは箇条書きで並べられた以上に実によく理解できたと思いますよ。そう、このコミカルに造形されたおなじみの人々がどんな現実を見せてくれるのかと興味津々です。
形態的には「ジーン・ワルツ」のようなの好きですけれど・・・
とにかくしょっぱなの目次と登場人物の羅列には驚きました。
「えらいこっちゃ!最近脳軟化症!この膨大な登場人物たち、ちゃんと私の脳が捌ききれるかしら?交通整理が大変そう?」って、懸念・・・読み始めたら直ぐ吹っ飛びました。例によってこの作家の恐るべきところは登場人物の設定というか表現の実に巧みな?個性付け!
おかしな渾名、それぞれの表情の見事なレリーフ。一人一人が直ぐに頭の中に定着します。それに定着しなくてはならない人物は主に数人。それもあらかたは存じ上げていますし。麗々しく登場人物と書き連ねられていても、ほんのちょい役さんも。でもこれだけきっちり紹介されるということは・・・この厚生労働省がらみのAi導入問題の真の解決までにまだ数作上梓される可能性があるということでしょうか?
厚労省の会議は踊り続けるのでしょうか?(踊ってくれればこちいのもの?)
とりあえずエイアイ導入は既定の事実になったのですよね?
なにしろ白鳥さんが絡むとコッチの頭も混乱するので・・・。しかもあの鵺のような知識人の会議!世の諮問会議というのは本当にあんなものなのかも・・・背筋が凍ります?
それにしても解剖というものに絡む警察司法医学の混乱は全く私には異次元の問題のようですが・・・病理と絡んでくるとやっぱり妙な不安が生じてきます。なんにせよ問題が大きくて、単に医者不足を嘆いていれば済むっていう状況じゃないことは分かりますし。
なんだかこの作家の本を読むと妙に追いつめられて何かできることは無いかしら?と、頭の中が右往左往してついでに体の方までなんかガタガタしてしまいます。楽しくおかしく読んだのにね。
 

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