ゆんでめて

題名INDEX : ヤ行 No Comments »
ゆんでめて ゆんでめて
畠中 恵新潮社 2010-07
売り上げランキング : 22998Amazonで詳しく見る

by G-Tools

yundemete1.jpg

畠中恵著

 

この作家特有の?江戸言葉の表題です。 今は失われた?こういう言葉は楽しくもありますけれど「あまた」みたいにあまりに煩雑に思われるとうっとうしく思うこともあります。   表題にこのひらがなだと…何のこと?と思う人も多いでしょうが、畠中さんの作品を愛する人には…わかるのも楽しみでしょう。ゆんで、めてはまだ死語じゃないでしょうけど。       さて、図書館頼りの私、なかなか発表順に読んでいるか自信がないので、読み始めてしばし「あら、やっちゃった。なんか一作抜けたわね?」と、思いました。だから妙に不安で、わかっているんだかわかっていないんだか…でもそれにしてはなんかまじないにかかっているように道がある感じで…だんだん…そうか!そういう趣向か?意表を突かれました。          映画にもこんなのが結構ありましたね。 生きるか死ぬか?  あっちかこっちか? あの時あっちの道を選んでいたら…?たいていは選んだ道がなじむ道であるっていう落ちなんですが。   畠中さんのこの作品はずーっとそこに屏風のぞきさんの喪失感を引きずっていたので…奥行きができたようです。ちょっとマンネリか?と思わないでもなかったので、起死回生の一作かとも思えました。 

床下の小人たち

題名INDEX : ヤ行 509 Comments »
床下の小人たち (岩波少年文庫) 床下の小人たち (岩波少年文庫)
ダイアナ・スタンレー岩波書店 2000-09
売り上げランキング : 542
おすすめ平均 Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ariettei1.jpg

ariettei.jpg

 メアリー・ノートン著
「借り暮らしのアリエッティ」という題で宮崎さんのアニメが進行中・・・だそうで・・・たまにはアニメの前に原作を読んでしまおうかな? 情報がいきわたるとまた図書館では借りられなくなりそうだから・・・それに丁度いい作品なら小学校で読んで上げられるかもしれない?
その思いは駄目でした。15分の読み聞かせ時間ではどうにもなりません。 しかも・・・これは翻訳に難があるのかしら? 子供が読むには読みにくい日本文かも・・・と言う気がします。
訳し方では、もっと面白く勢いよく楽しく読めるのではないかと思うのですが・・・それともこの躊躇しがちな文章は原作の匂いに忠実なのでしょうか? 物語はイギリスの伝承民話小人ものの一つになるのでしょう。 が、この小人達は面白い理屈で生きています。
人が生活の中でいつの間にか見失ったと失念している物、うっかりなくしちゃったわと思っているもの・・・それは床下の小人が借りていったものなんです。 人からの借り物で生活しているから、借り暮らしの小人なんですね。 人が寝ている間に掃除していってくれたり、靴を作り上げてくれるタイプの小人ではないんです。 人に見られたらおしまい・・・だから彼らはどんどん減っていくのです。 多分イギリスのどの家からももう居なくなっているのでしょう。 多分アリエッティの家族が最後の床下族だったのかもしれません。 このなかなか臆病ながら意気軒昂な家族が自分の床下から逃げ出さなければならなかった・・・凄く残念ながら・・・でも、でも彼らはしぶとく生きぬくための素晴らしい場所を見つけたようなのでほっとして・・・ハテ?アニメはどこをどう描くのだろうと楽しみになりましたよ。
 

吉原御免状

題名INDEX : ヤ行, 未分類 501 Comments »
吉原御免状 (新潮文庫) 吉原御免状 (新潮文庫)新潮社 1989-09
売り上げランキング : 17335
おすすめ平均 Amazonで詳しく見る
by G-Tools

yosiwaragomen.jpg

隆慶一郎著

「捨て童子・松平忠輝」「一夢庵風流記」「見知らぬ海へ」に次いで4作目になります。前三作で三人の男、漫画だったら?さしずめ「漢」の字をつかうのかしら?とにかく主人公の三人の男にすっかり魅せられてしまいました。
男の人を、具体的に性格の魅力を、見せ付けるのが上手い作家だと思います。この作品が小説の第一作目だそうですから、これから読むべきだったかも。
司馬遼太郎さんも初期の小説群は本当に男を魅力的に描くのに秀でた人でしたが、それと通じるものがあります。「梟の城」とか「尻啖え孫市」などの主人公に・・・
隆さんの作品の主人公は歴史上の人にしてもあまり今まで脚光を浴びていない人を取り上げているので自由に思う様伸び伸びと描けているのだろう・・・と、思っていました。その意味ではこの作品の主人公は到底歴史上の人物ではない、全くの創作の人だと思われるので、本当はもっと伸び伸びしても良さそうなのに、意外にそうなってはいないのです。
むしろ妙に有り得なさが際立ったような気がします。
といってその嘘臭さがこの松永誠一郎という人物をつまらないものにしていると言うわけではありません。やはり見事な男です。でもこの作品の場合、主人公の魅力は二の次になったようです。吉原の開町に関する家康との密約?その経緯と柳生との複雑な関係の方がより一層面白くて松永さんは割りを喰っている感も。この第一作でもう家康影武者説が柱になっているのですね。次は「影武者徳川家康」を読まねばなりませんね。
この作家の作品の中では女性に魅力があるのは私が読んだ中ではこの作品だけです。二人の花魁の哀しさが、哀しさに花があるというと変だけど、そんな感じで心に迫ってドラマチックが盛り上がります。
それでも圧倒的に男を描くのが上手い作家だなという気は残りますが。
女性をもっと描いてもらいたかったなぁ・・・。
見事な男が増えていきますが、一番心引かれる男はまだ向井正綱です!
 

夜明けの街で

題名INDEX : ヤ行 509 Comments »
夜明けの街で 夜明けの街で
東野 圭吾角川書店 2007-07
売り上げランキング : 22177
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る by G-Tools

東野圭吾著

読み始めて・・・なんか・・・「嘘でしょう?」という感じがしました。
軽い乗りの一人称で始まり・・・「あれ、普通に不倫話で、コミカルに持っていくのかなぁ?」これでは・・・この一冊持たないでしょう?
ここのところチョイスした東野さんの作品は皆重い話でしたから「こういうのあっても良いのかなぁ・・・でも、なんかあるでしょう?これから?」という気持ちで読み進み・・・「そうかこう来るのね?」とサスペンスミステリーを期待していました。
しかし「男ってどいつもこいつも同じなのね?」と諦め?の気持ちで読んでいたのですが・・・(って、我が家の宿六?さんがそうだというわけではないのですよ、念のため!少なくとももう一つ悧巧だと思いたい私です)男って悧巧な女性には軽く手玉に取られるものなのね?って。秋葉さんも妻の有美子さんも彼より上手です。
期待し始めた事件の方は余り興味をひきつけるほどの謎にはなりえず、それでも不倫の色付けとしては2時間サスペンスドラマ風ではあるけれど・・・読ませる上手さはちゃんとあって。
凄く男性が書きそうな気のする?卵のサンタさん、ああいう怖さは映像より筆です。一生懸命アドバイスしている新谷さんも「なにかありか?」と、思ったのに案外でした。結局二人の男は同じ道を歩いたということですね。秋葉さんがもう一つ捩れた強い女であったということだけで?どちらにしてもイベントのたびに必死になる主人公は面白い見ものでしたが、慰謝料と養育費を払っているただのサラリーマンと再婚するのは大変なことですよ!なかなか・・・!
愛と誠意で人生幸せになれるものなら・・・と、大向こうのオバサンは思っちゃいました。何気なく見せる技は妻の技巧、終末の切れの良さは愛人の技巧。将来の見切りの良さが女の命綱?
女二人の掌で転がった男の話で落ちたような気がします。やはり次に予約してある「流星の絆」と「ガリレオ」シリーズに期待しましょう。次を期待できる作家であることに変わりはありません。
ちょっと中年になってしまった男への人生の味付け?でも、塩を摺りこまれた後の赤剥けの痛みを忘れるまでは時間がかかるのよ。人生の終りで妻が忘れてはいなかった事を思い知らされる・・・タイテイはね!

夢十夜

題名INDEX : ヤ行, 未分類 259 Comments »
夢十夜 他二篇 (岩波文庫) 夢十夜 他二篇 (岩波文庫)
夏目 漱石岩波書店 1986-03
売り上げランキング : 109259
おすすめ平均 Amazonで詳しく見る
by G-Tools

souseki.jpg

夏目漱石著

私の読書体験は少年少女世界文学全集から始まりました。確か少学校の3年生の時この全集が世に出て、私は毎月のお小遣いをこの本の購読に当てていました。今考えるとこの本を買うためにジャストこの本の値段のお小遣いを貰っていたような・・・?
それで好きになった本のあらかたは翻訳物でしたから、私の読書傾向はそれで決まったようなものです。学校の教科書で読んだものの他は明治以降の文豪作品でさえ読んでいない有様です。
例外は芥川龍之介さんと森鴎外さんくらい?それが朗読をはじめたら、基本的に「翻訳物は止めて下さい」なんです。翻訳は訳者の技量次第ってところがあって「文が日本語文として不自然である」という宿命を持っている場合が多いということらしいです。ま、分からないでもないです。
小泉八雲さんを時々読みますが、訳者によって様々なバージョンがあって、なかには確かにひどいんじゃない?というものも有ります。
ところがサークルに入ってみたら皆さん実によくこの明治の文豪作品を読むのですねぇ・・・で、私の偏った読書傾向を今になって修正せねば?という次第です。樋口一葉、林芙美子、志賀直哉、川端康成・・・等。圧倒的人気なのは森鴎外・芥川龍之介!短い作品が多いからでしょうか?(そういえば今のところ谷崎潤一郎・幸田露伴・田山花袋とかは聞きませんね)
中でも人気抜群なのはこの作品。教室生の大抵の方が一度は自分の課題として持ってくるらしいです。それで気が付いたのですが・・・それこそ「坊ちゃん」くらいしか覚えていないのです、私。で、今頃読んだというわけで・・・言い訳が長い!
正直、練習なさるお教室生の方の朗読を聞いても、何でこんな面白くない作品を?と、思わないでもなかったのです・・・ところが聞くと読むとはやっぱり違った!読むほうによほどの技量がないと・・・この世界は心に落ちてきません。人の夢の話・・・聞かされるほうって案外うんざり。その割には私も時々話したくなりますが。
「こんな夢を見た」で始まる(のは、厳密には4話)10の短編(この場合小品と書くべきか)。そのどれもが厭な夢!語られる夢の中で主人公は前世の恋の香につながれ、手に入れられない境地に絡め取られ、前世の過去の罪業を暴かれ・・・夢という時空でがんじがらめになっている・・・動けない、先に行けない、助からない!逃げ出せば、逃げ出したで、逃げ出さない方が、行方も分からないほうがよかったと思っている。私までどん底に落ちそう。
読みながら、一体私はどうすればいいんだ・・・と、途方にくれた。
これは、私には朗読はできない!ということだけが分かった。
 

役にたたない日々

題名INDEX : ヤ行 147 Comments »
役にたたない日々 役にたたない日々
佐野 洋子朝日新聞出版 2008-05-07
売り上げランキング : 3604
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る by G-Tools

yakunitatanaihibi.jpg

佐野洋子著

「シズコさん」を読んで、あんなにきついと思ったのに、気が付くとまた佐野さんの本を予約していました。それも「またきつそうだな?」と思われる題の本をよりにもよって?
たまには等身大で?自分を広げて晒してくださる人の日常を読ませていただくのも何か一種、人生の覚悟に繋がるのかも・・・という気がして。そしてやっぱり「案の定きつかった!」                                            目次を見ると分かるとおり、エッセイというか日記のようです。ですけれど、やっぱりこれは作者の時々の、折々の書かずに入れれないような何かの発露の様でもありました。でも何故か随想とか随筆という言葉は重い内容をもっと重たくしそうで使いたくないな、って感じがします。
エッセイを読む時って大抵は自分と引き比べて、「へー、そう思うんだ?」とか「なるほどそうだよねぇー?」とか「ほう、そういう見方も出来るか?」とかみたいな?が普通。
でも佐野さんのこの本に関する限り一切自分と引き比べることが出来ない感じがしました。
勿論していること、思っていること、考えていること、過ぎていく日々の有様、その中に何かしらの同感・共感を抱いてはいるのだけれど、「あぁ、私にもこんな日があるなぁ・・・」なんてことも思うのに、ここまで自分を晒して開き直っている人に安直に「本当ね」なんて言えやしない。余りにも壮絶すぎて余りにも後が無くて、退路を断っていて。この方は今誰にも何をも求めていないんだな。ただ生きてきて最後の時がわかって、「こんな人が一人ここに居たよ!」って言っておきたいんだな。なんて、感じられたので。
感嘆するような事を書いていても、馬鹿な事を書いていても、頷きたくなるような事を書いていても、呆れるような事を書いていても、その全部に「・・・それにしても凄いなぁ!」をくっつけざるを得ないって感じなんです。
「義務はみな果たし、したい仕事も無い」そんな風にして死を迎えられるのは、その覚悟がつくのは・・・本当の所どんなことなのか私にはまだ分からないのです。でもやっぱり凄いな!って感じは感じちゃうのです。「シズコさん」と「役にたたない日々」を読んで「役にたつ自分」を生きた一人の女性の姿を感じたところです。彼女は人生で非常に格闘した人なんですね、と。

寄席紳士録

題名INDEX : ヤ行, 未分類 483 Comments »
寄席紳士録 (1960年) 寄席紳士録 (1960年)
安藤 鶴夫文芸春秋新社 1960
売り上げランキング :Amazonで詳しく見る
by G-Tools

yise1.jpg

yose.jpg

 安藤鶴夫著

「本牧亭の人々」を読んだらこの本が読みたくなりました。
「本牧亭」で出てきた芸人さんたちがとてもユニークだったので・・・「どれどれ、どんな方たちだったのかな?伝説の芸人さんは?」って気持ちでした。でも想像をはるかに凌駕、というよりも、その埒外っていうか、想像なんて追いつくはずも無いという驚きでした。
いやいや芸人さんって奇人とか変人とかの枠を越えている!人間の埒さえも超越した異星人みたいなものだ!
それなのに何処か畏敬の念も起こさせる。普通の人の欲とは違った、根本から別物の欲を持っていて、全くもって自分だけの自分なんだ?
そして何か物凄く普通の人(私から見てだろうけれども)から欠落したものがある。その上にこそある異能!
少なくとも安鶴さんがここに上梓した10人の芸人さんと湯浅さんとおでこさんの特異性といったら・・・凄いや!だけど安鶴さんはこの凄い人たちを何故か大事に愉快にそのままを見ている。事実ばかりかどうかは分からなくとも、ここに敬意を持って?活写された人々はリアルに生きていたという感じで読んでいる私を圧倒する。
「こんな人たちがちょっと前まで居たんだ!」と圧倒される。
「本牧亭の人々」でお近づきになったおひでさんのご亭主、春本助治郎さんならなんとかお付き合いさせていただけるか・・・?というところでしょうかねぇ。せいぜいでそこまでですよ。なめくじ長屋の志ん生さんの逸話はまだ私に一番近いでしょうか?それにしてもあの方の奥さんが務まった方がいらしたから、私はあの志ん朝さんの落語に惚れさせていただけたんだ!と感謝したいような気持ちでした。彼らの周りで彼らを支えて、または付き合って、仕事をさせた人々もまた凄いや!です。
TVがかなりの仕事場になった今の芸人さんにここで肩を並べられるような人はもう出てこないんだろうなぁ・・・と、この本を読んだ後では淋しいような心持がしましたけれど・・・多分むしろあの人たちそのものが今の社会じゃ「赤貧して」すら生きていけないかもしれません。
昔の芸好きな人たちの鷹揚なカラー、彼ら芸人さんの存在を心から楽しんだ隠居さんたち?という客そのもの、寄席そのものが「もうどっこもなくなっちまった!」というところでしょうか。そういう意味では世間は本当に狭くなったんでしょう。異常な事件を引き起こす人が増えたのも・・・居所が狭まったからでしょうか?と、そこまで思われました。どんな人にも居所があってこそ、世間ですよねって。

夢見る黄金地球儀

題名INDEX : ヤ行 194 Comments »
夢見る黄金地球儀 (ミステリ・フロンティア 38) 夢見る黄金地球儀 (ミステリ・フロンティア 38)
海堂 尊東京創元社 2007-10
売り上げランキング : 76231
おすすめ平均 Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ougonntikyugi1.jpgougonntikyugi.jpg

ougon.jpg

海堂尊著

いつもと同じ桜宮市がフィールドのようですが、珍しく?東城大学シリーズじゃないのか?と思ったら、やっぱり東城大学も少し絡む桜宮市中事件でした!この市どこにあるのかなぁ・・・首都圏の端で名古屋言語圏に近いってどっかに書いてなかったっけ?あれ?ってことは・・・浜松近辺?まさかそんなに広い首都圏有るはず無いでしょ・・・私の勘違い?・・・それはまぁどうでもいいことで・・・前半あおられるように笑いながら勢いよく読みましたけれど・・・途中からなんだかごちゃごちゃ・・・えー、私分かってるのかな?このすり替え作戦進行状況?と、ちょっとあやふやな足取りになりました。
思い返せば・・・一番面白かったのはプロローグだったような?
あぁ、それからこの作家のお得意な際立つ人物造形!今回は豪介親父もとぃー豪介社長!双子のような小山田課長と小西課長(あの小錦体形の二人の苗字に「小」の字の名を付けるか?)それに忘れちゃいけない主人公。へこんだり、脱力したりに忙しいのに、なぜか保険をかけることには通?の理科系知識人平平(へいへい)こと平沼平介君。
ただね、ここまでこの作者の作品読み続けていると、知り合いに会えるからやっぱり行かなくちゃ・・・みたいな乗りになります。
小夜さんに再会して「へー、歌で生きているという設定以上の劇的付加価値が付与されているのね」と、驚くものの、その怪しさは懐かしさでごまかされちゃうし・・・ン?厚生労働省?「誰かさん」が居ましたっけ?
そうか海堂先生、完全に桜宮市黒幕と化したのですね?
確かに所々抱腹したかもしれないけれど、絶倒とはいきませんでしたが、大学病院に続いて市役所、同じタイプに過ぎるような気もするけれど、揶揄して笑いものにする絶妙のセンスをお持ちの上に、憎まれない明るさも調子のよさも・・・やっぱり笑ったわ!
エピローグのふろしきの広げ方も楽しかったし。
勢いで書いているという生きのよさも持ち味なんでしょうね。さて、桜宮市は次にはどんな事件が起こるのでしょう。そのうちに誰かファンが地図を作ってくれるかもしれませんね?そこを目指して構築し続けてください!と、エールを送ることに致します。
「桜宮市水族館別館・深海館」はどの辺りにあるんでしたっけ?
 

ゆめつげ

題名INDEX : ヤ行 231 Comments »
ゆめつげ (角川文庫 は 37-1) ゆめつげ (角川文庫 は 37-1)
畠中 恵角川グループパブリッシング 2008-04-25
売り上げランキング : 3035
おすすめ平均 Amazonで詳しく見る
by G-Tools

yumetuge1.jpg

畠中恵著

畠中さんの作品はこれで7冊目になるのかな?お江戸・時代物・ファンタジー系・・・の。この作品も江戸も後期、明治維新の足音が聞こえだした頃のお話である。しかもこの作家の作品は結構血が流れる。この作品も始まりは辻斬りから・・・江戸の暗い幕末の世相から入っていく。そして人殺しが次々起きる。そうなのよねぇ・・・と思う。そうなのに読み終わってみると血の臭いは結局綺麗に払拭されて、主人公のおっとりというかのんびりというか、その設定の印象に支配された楽しい読み物だったような気がしている。春風駘蕩?柳に風?それもほんのそよ風だったような?
それだけ主人公の設定がうまいって事だろうなぁ・・・どこといってどうってほど本人が魅力的なわけではないのに・・・彼の持つ能力に惹かれてしまう。
妖怪が見えて、家にいっぱい出入りしていたり、付喪神が付いているお道具に取り巻かれていたりと。ここでの主人公は夢告ができるという、いわば神が憑依するという特殊能力のあるおっとりした神官ということで、これはこれでなかなか興味惹かれる人物である。
事件に迫られて、人情に絡め取られて、続けてはできない夢告を何度も行ううちに彼の能力は飛躍し・・・?これもシリーズになりうるねぇ・・・と、期待するまでになってしまう。
何時も通り謎解きがあって、「実の子は誰でしょう?」という命題以外にも養い親たちを殺した犯人は?問題を持ってきた神官の怪しさは?と物語を引っ張っていく面白さもあって一気に読めたのだ。
しかしそれ以上に面白かったのは明治元年の神仏分離令を予期した神官たちの動き、またそれに対する寺僧らの気分などを背景に取り込んだ意外さだった。これが物語りの謎を重層的に膨らましている。確かあの時代尊王に働いた神職上がりの志士たちもいたなぁ・・・?
廃仏毀釈運動に流れ込んでいく時代。時々里帰りしてくる海外へ流出した仏像を見ると本当に惜しくて悲しいもの。あの頃貧乏した寺が売り払ったものだものね。「神も仏も大事にしておきたいわねぇ・・・日本人なら」と無心論者の私もこういう時はそう思うのです。
エアコンも使わない、風も止んでいる、集中力も途切れるこの真夏の昼下がり、畠田さんの「しゃばけシリーズ」はうって付けの、涼しくなる?最高の楽しみになると思うのですが、読者の思いは同じ?シリーズ残りの本がなかなか順番が回ってきませんね。

八日目の蝉

題名INDEX : ヤ行 388 Comments »
八日目の蝉 八日目の蝉
角田 光代中央公論新社 2007-03
売り上げランキング : 9034
おすすめ平均 Amazonで詳しく見る
by G-Tools

youkamenosemi11.jpg

角田光代著

この作家の本を読むのも初めてです。
読み終えて最後の「著者紹介」で、色々な賞を取った方だと知りました。「遅いよ!」と突っ込まれそうですが、何でこの本を最初に読むことになったのかというと、新聞の書評で図書館に予約を入れたら何百人待ちもだったのでとりあえず!でした。先ず1作読んでからその作家を読み続けるか決めようと思っていますから、他の作品を検索してみなかったのです。この作家のファンだったら先ず何をお奨めしてくれるのでしょうね?
正直なところこの作品は女である私、母親でもある私には重い作品でした。静かに始まって静かに終っていくその合間の切羽詰ったドラマはこの作家の持ち味なのでしょうか?非常に押えた筆致で、うっかりすると読み落としてしまいそうです。何事も無かったみたい!って。こういう事件って何年かに一度、全く同じではないけれど目にするようです。
そういう意味では普遍的な命題でもあるかもと思ったとき何故かドキドキしました。
0章から1章へ、1章の終わりに0章’みたいなのが付いて2章へ。そこで語り手が加害者(というべきか?)から被害者に替わります。
そこでまた思うんですよ。人は何らかのモノに対して加害者でもあるし被害者でもある。そういう二人がまたなんというか、別な意味で別な思いで人生を重ね合わせているんですよ。そこが切ない。ある種トラウマ?を負った過去は人格を作りそこなうものなのか。生きる時には傷つけ、傷つけられるなんて、当たり前の事を正面切って言わなければならないとしたら・・・なんと生きるのって難しいことでしょう。
でも、どんな形であれ寄り合い寄せ合う情や具体的な援助という救いもあるのです。そういう社会の中で自分を自分として認めるには何が必要十分条件か?と考えさせられました。
その意味ではエンゼルさんのスタディは面白いというか手段の一つとなりえるかも・・・と思ってしまいました。が、この手の集団が消え去らず何度も何度も社会面に顔を出す理由もちゃんとあるので、やっぱり人間は悲しいという気分になってしまいました。いやだなぁ。でも物語の二人は(千草さんも含めて3人?家族も含めて6人?)7年以上かかったけれど、脱皮できて?道が見つかってよかったねぇ。
それでも、からっぽ、がらんどう、蝉の抜け殻・・・のイメージはいやだなぁ。
最後のメッセージを書き抜いておきましょう。忘れないように。
「7日で死ぬよりも、8日目に生き残った蝉のほうがかなしいって、あんたは言ったよね。私もずっとそう思ってたけど、それは違うかもね。八日目の蝉は、ほかの蝉には見られなかったものを見られるんだから。見たくないって思うかもしれないけど、でも、ぎゅっと目を閉じてなくちゃいけないほどひどいものばかりでもないと、私は思うよ」
この行を思いついたときにこの本が生まれたみたいね。
 

Design by j david macor.com.Original WP Theme & Icons by N.Design Studio
Entries RSS Comments RSS ログイン