吉原御免状 (新潮文庫) 吉原御免状 (新潮文庫)新潮社 1989-09
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隆慶一郎著

「捨て童子・松平忠輝」「一夢庵風流記」「見知らぬ海へ」に次いで4作目になります。前三作で三人の男、漫画だったら?さしずめ「漢」の字をつかうのかしら?とにかく主人公の三人の男にすっかり魅せられてしまいました。
男の人を、具体的に性格の魅力を、見せ付けるのが上手い作家だと思います。この作品が小説の第一作目だそうですから、これから読むべきだったかも。
司馬遼太郎さんも初期の小説群は本当に男を魅力的に描くのに秀でた人でしたが、それと通じるものがあります。「梟の城」とか「尻啖え孫市」などの主人公に・・・
隆さんの作品の主人公は歴史上の人にしてもあまり今まで脚光を浴びていない人を取り上げているので自由に思う様伸び伸びと描けているのだろう・・・と、思っていました。その意味ではこの作品の主人公は到底歴史上の人物ではない、全くの創作の人だと思われるので、本当はもっと伸び伸びしても良さそうなのに、意外にそうなってはいないのです。
むしろ妙に有り得なさが際立ったような気がします。
といってその嘘臭さがこの松永誠一郎という人物をつまらないものにしていると言うわけではありません。やはり見事な男です。でもこの作品の場合、主人公の魅力は二の次になったようです。吉原の開町に関する家康との密約?その経緯と柳生との複雑な関係の方がより一層面白くて松永さんは割りを喰っている感も。この第一作でもう家康影武者説が柱になっているのですね。次は「影武者徳川家康」を読まねばなりませんね。
この作家の作品の中では女性に魅力があるのは私が読んだ中ではこの作品だけです。二人の花魁の哀しさが、哀しさに花があるというと変だけど、そんな感じで心に迫ってドラマチックが盛り上がります。
それでも圧倒的に男を描くのが上手い作家だなという気は残りますが。
女性をもっと描いてもらいたかったなぁ・・・。
見事な男が増えていきますが、一番心引かれる男はまだ向井正綱です!