お正月に「プライドと偏見」という題で映画が公開されましたから、
その原作であるこの本を読んだ人も多いかもしれませんね。
私がはじめて読んだのは学生時代でしたが、彼女の作品は「エマ」と「高慢と偏見」と「分別と多感」が図書館には並んでいました。
実際オースティンは42歳に満たない短い人生の中で6篇くらいの作品を残しているだけです。
私が「高慢と偏見」を見つけた頃には未だこの3冊しか翻訳されていなかったのかも知れません。
でもその頃たまたま手に取ったこの作品は、私の人生を通しての愛読書となり、多分これからも折に触れて私は手に取ることでしょう。
18世紀後半から19世紀初頭のイギリスの田園で繰り広げられるこのドラマは21世紀になった今でもちっとも色あせることなく読む人に色々なものを与えてくれるようです。
物語愛好家にはロマンチックな恋物語を、モットまじめに人生を考えたい人にはちょっとした人生のヒントを、人生を厳しいと感じている人には人間の愛すべき滑稽さとその中にある救いを与えてくれるのではないかしらと思います。
私にとっては只「楽しい時間を!」です。
人生がちょっぴり色あせたと思う時、私の周りがちょっと厳しいと思える時、只単純に体調が思わしくない時、私はこの物語を手に取ります。
「エマ」の方が傑作だという人も入るようですが、「エマ」は私にはきつい時があって、体調の充実しているときには「エマ」を読み直すことが出来ますが、「高慢と偏見」はどんな時でも「OK!」なのです。
むしろ辛い時の慰めにお勧めしたいくらいの作品です。
今と全く時代相も、社会相も違う世界なのに、ここに生きている人々はそんな事を蹴飛ばして私に慰めと勇気を与えてくれるのです。
勿論「結婚」にいたるのが人生の幸せだなんていう幻想はもう私だって抱いていません。
だから彼女たちの、いえ特に、彼女たちの母の世代の結婚観は大いに笑えます。
でも、あの時代違う階層の人との結婚は非常に難しく、本当に上手くめぐり合わなかったら同じ階層の人との結婚も難しく、しかも結婚できなかったら男の兄弟の厄介になって人生を終えなければならないと言う状況に置かれやすかったという事を思えば彼女たちの結婚観を笑えませんね。
日本の江戸時代も似たようなものでしたが。
今と全く女性の置かれていた立場が違うと言うことは読む前に念頭に入れておかねばなりません。
しかしやはりこの物語には人間の普遍的なものがしっかり根底にあるのです。
だからこの色とりどりの姉妹たちの誰かに読む人は共感をもてるでしょうし理解も出来るような気がします。
ジェーンの心の美しい佇まいに心引かれ尊敬もし、又主人公のエリザベス(リジー)の心の闊達さと行動力と自分を素直に飾り気無く表現する生き生きとした姿勢に心引かれもするのでしょう。
間違いをおかし右往左往し、自由自在に人をけなしたり、いい加減に評価したりする過ちを私もしょっちゅう犯しているのですから。
そしてそれにちゃんとしっぺ返しを喰っちゃうんですから。
だからあちらこちらで笑っちゃえもするんですよね。
色々な人物に大いに笑って、ちょっと成り行きにはらはらして、終わりで「よかった!」と、胸をなでおろして。
にっこり本を閉じられるのです。
私の「永遠の一冊?」の一つです。