夢十夜 他二篇 (岩波文庫) 夢十夜 他二篇 (岩波文庫)
夏目 漱石岩波書店 1986-03
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夏目漱石著

私の読書体験は少年少女世界文学全集から始まりました。確か少学校の3年生の時この全集が世に出て、私は毎月のお小遣いをこの本の購読に当てていました。今考えるとこの本を買うためにジャストこの本の値段のお小遣いを貰っていたような・・・?
それで好きになった本のあらかたは翻訳物でしたから、私の読書傾向はそれで決まったようなものです。学校の教科書で読んだものの他は明治以降の文豪作品でさえ読んでいない有様です。
例外は芥川龍之介さんと森鴎外さんくらい?それが朗読をはじめたら、基本的に「翻訳物は止めて下さい」なんです。翻訳は訳者の技量次第ってところがあって「文が日本語文として不自然である」という宿命を持っている場合が多いということらしいです。ま、分からないでもないです。
小泉八雲さんを時々読みますが、訳者によって様々なバージョンがあって、なかには確かにひどいんじゃない?というものも有ります。
ところがサークルに入ってみたら皆さん実によくこの明治の文豪作品を読むのですねぇ・・・で、私の偏った読書傾向を今になって修正せねば?という次第です。樋口一葉、林芙美子、志賀直哉、川端康成・・・等。圧倒的人気なのは森鴎外・芥川龍之介!短い作品が多いからでしょうか?(そういえば今のところ谷崎潤一郎・幸田露伴・田山花袋とかは聞きませんね)
中でも人気抜群なのはこの作品。教室生の大抵の方が一度は自分の課題として持ってくるらしいです。それで気が付いたのですが・・・それこそ「坊ちゃん」くらいしか覚えていないのです、私。で、今頃読んだというわけで・・・言い訳が長い!
正直、練習なさるお教室生の方の朗読を聞いても、何でこんな面白くない作品を?と、思わないでもなかったのです・・・ところが聞くと読むとはやっぱり違った!読むほうによほどの技量がないと・・・この世界は心に落ちてきません。人の夢の話・・・聞かされるほうって案外うんざり。その割には私も時々話したくなりますが。
「こんな夢を見た」で始まる(のは、厳密には4話)10の短編(この場合小品と書くべきか)。そのどれもが厭な夢!語られる夢の中で主人公は前世の恋の香につながれ、手に入れられない境地に絡め取られ、前世の過去の罪業を暴かれ・・・夢という時空でがんじがらめになっている・・・動けない、先に行けない、助からない!逃げ出せば、逃げ出したで、逃げ出さない方が、行方も分からないほうがよかったと思っている。私までどん底に落ちそう。
読みながら、一体私はどうすればいいんだ・・・と、途方にくれた。
これは、私には朗読はできない!ということだけが分かった。