f植物園の巣穴 f植物園の巣穴朝日新聞出版 2009-05-07
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梨木香歩著

「家守綺譚」が面白くステキだったのでまた梨木さんの本を検索して同じ傾向の作品が無いか探してみました。
ちょっと不思議で、ちょっとミステリアスで、ちょっと優しくて、そして心なし古風で風雅?格調があって?そんなテイストの作品があったら・・・という気持ちで。そしたらありました!読み始めたときにはこれ続編かしら?って気がしたのですけれど・・・違いました。ちょっと「夢十夜」を思わせるテイストもあるように思いましたが・・・。
読んで感じる時代感覚は「家守・・」と同じなんです。そして主人公が醸すなんと言うか繊細だけれども鷹揚な・・・ある種育ちのよさ?そんなものも似通っているような。不思議な世界の不思議な動植物に彩られて・・・私も読みながら「迷路に落ちたぞ!」状態になって・・・どこへ連れて行かれるのだろう?と、いぶかり恐れながら怖いもの見たさ、先を見たさで付いて行くような感じでした。主人公より大分腰が引けていましたね。そうかこの主人公は自分の過去に取り落としてきたものを見つけ理解し今立つ場所をしっかり固める旅をしているのか・・・今風に言えば自分探し?いいえ、自分がしっかり向き合わなかったものに向き合う旅にあるんだ・・・。
坊が出てきてからは・・・なんか読む私の心まで涙もろくなるような・・・同調、シンクロする感じが快くありました。
人の記憶が人の心の中を操作する経験は多かれ少なかれあります。
都合いいように自分を擁護してくれる。でも多分そのままに放置することは見えない傷を塗りこめるのと同じことなんだろうな・・・なんて。歯の穴、木の洞、穴の中を下へ下への旅。導くもの、暗示するもの、同行するもの、人には導いてくれる何かが憑いているのかも。良心、思いやる心、受け入れる心、そんなものの事を考えていました。水の流れと時の流れ・・・素直に流れていくことと流されていく事をも。