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岡本かの子著

先生が以前ラジオで岡本かの子の朗読をなさったことがあって、その朗読を聴いていた。 聞いて、その世界を垣間見た?のではあるけれど、実際手にとって読んでみようとは思わなかった。
ちょっとばかり重苦しいし、じっとりと絡みつくような湿っぽい情緒がご遠慮申し上げたい!という気にさせたのだろう。 耳から入ってくるその世界は少々異界の気味があって、現在を暢気に生きている私には理解が難しいだろうと思われたこともある。
それなのに、私の課題に「何か一つかの子さんの作品に挑戦してみろ」・・・と、まぁけしかけられたのだ・・・ろう?
それでとうとう手にとることになったのだが・・・この一冊を読み終わる頃には、私はすっかりイメージを入れ替えることになった。
古臭い情緒のように思われていたものの奥に、思わぬ柔らかい・・・確かに湿っぽくはあるのだが、女なら何処かに抱いている、思いがけなくも自分の底からひっぱり上げられる、そう忘れていたような意識していなかったような感覚を思い出させられた・・・といった風だろうか。 好きではないし、分かったともいいたくないのだけれども、それでも・・・本当は私もこの世界知っている・・・というような。
そしてその中の美しさをも確実に読んでいる私は感じているのだということも白状しなくてはならないだろう・・・と、思う。
描き出そうとした世界は確実に受け取ったという気すらする。
表現できるとは思わないながらも、共感とか同感とはずーっと遠いながらも、心当たりのあるこの世界を暫くさ迷ってみようかな?と・・・私はとりあえず?課題を「家霊」にすることにした。 母から娘へ譲り渡される情念の呪縛みたいな物を、そこに絡む意志や諦念や糾える様々な柵や運命や・・・怖い世界ではあるけれど・・・とまだ思いながらも。