五郎治殿御始末 (新潮文庫) 五郎治殿御始末 (新潮文庫)
浅田 次郎新潮社 2009-04-25
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浅田次郎著

江戸から明治に移り変わる激動の時代。その時代においてきぼりにされたような武士の姿を描いた短編集6編。
浅田さんは本当に凄いストーリーテラーだ! 改めて感嘆しつつこの6作を読んだ。 この武士たちの生き様をすべて肯えるわけは無いのだが、その描き出された心模様は心に忍び込んでくる。
特に「椿寺まで」の小兵衛と新太の二人には素直に泣かされた。
そう、こういう時代にこういう星の元で生まれたなら・・・こう生きていく男たちに心を惜しむまい。そう思えるほど生き様がいじらしく男らしい。 男ってこういう見事ないきものだったんだねぇ・・・って 周五郎さんの小説の中ではおなじみだったような男達だわ。それなのに本当に久しぶりに出会った様で、感嘆してしまった。
「五郎治殿御始末」 曽祖父のスケに語る父五郎治殿の生きた道をその力があれば私も朗読で語ってみたい。そう思うほど真っ向からのめりこんだ。最後の御始末では私も笑い泣き。 「苦労は忘れてゆかねばならぬ。頭が忘れ、体が覚えておればよい」 はい、胆に命じます、と私は答えていた。「己の身の始末は決して逃げず、後戻りもせず、能う限りの最善の方法で」見事に老後の指針じゃない?
「西を向く侍」は「西向く士・・・二、四、六、九、士(11)月」小の月の覚え方。いったい何時習ったのだろう?完璧に身に付いたこの覚え方を。その覚え方を成瀬勘十郎に負っていたとは。
この知識人の潔い消え方とともにこの名を記憶にとどめるべきか。
残り3編も笑いとともに心にしみこむ情を見事に綴って・・・上手い!なべて後味のよい、読み終えて満足の吐息の出る作品群でした。
満腹だ!