おちゃっぴい―江戸前浮世気質 (徳間文庫) おちゃっぴい―江戸前浮世気質 (徳間文庫)徳間書店 2003-05
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宇江佐真理著

「たば風」で宇江佐さんに大期待を抱くようになって、さらに回ってきたのがこの作品です。多分こういう短編集がこの作家の独壇場なのだろうと思います。「深川恋物語」と同系列で同じくらい好感を抱ける作品群です。良いです!この六作品に登場する人々は同じ町内の馴染みの顔ぶれのように私はすっかり顔見知りになってしまいました。毎朝「おや、はっつぁん、お早いお出かけだね」なんて声掛け合っているような。
この作家は物語の舞台で登場人物を生かせる術を本当によく知っている人なんだ!という嬉しさ。
先日「下駄屋のおけい」を朗読材料に取り上げたいとサークルのある人が言っていたけれど、私は「概ね、よい女房」を取り上げたいな・・・と、思う。家賃を払えるか払えないかのキリキリの生活の中での長屋の女房達の気概も優しさも物凄く良い!けれど、その仲に入り込んできた不協和音のおすてを受け入れるまでの経緯がなんともいえない!そしてその傍らを流れる男たちの奏でる曲想も実にいい。良質の絡み合い!
人付き合いの下手な私でも明日は何とかなるかもしれない・・・という期待を抱かせてもらえる。ちっとも心を開けないくせに・・・明日上手く心を開けるかも・・・小さく開けた隙間から誰かが微笑みか何気ない一言を注いでくれるかもしれない・・・みたいな?
生活からにじみ出る慰めやいたわりが思わずこぼれる小さなグチや悲しみを柔らかく揉みほぐしてくれる・・・まるで体内に入り込んだ異物を粘液がくるみこんで痛みを消してくれる・・・そんなような世界。