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島田荘司著

世に言うホームズもののパスティーシュ。
私はその手の作品は読まないことにしていたから、この作品の知識も当然無かった。図書館でこの作品を見つけたときも読むべきか迷ったのだが、以前倫敦へ行った時、ホームズの足跡を辿ると漱石さんとかなり被さるのに気がついた。ベーカー街に並んで走る道を歩いていた時、漱石の通ったクレイグ先生の家も見つけたし、もう少し先へ行くとワトソンの開業したクイーン・アン街も大英博物館も意外に近い。漱石の最初の下宿もこの辺り。
しかも漱石が下宿を代えて行く先はホームズの事件の舞台とも重なっている。時も重なる。何より漱石の「倫敦塔」は好きだったしなぁ・・・。
おかしなことにその頃、風太郎さんの明治物を読んでいたので、風太郎さんならこの事を知ったら絶対漱石とホームズを作品の何処かで接近遭遇させるだろうな・・・と思ったのだ。
違う作家だったが、この作品を見つけたとき、「あ、やっぱり!このことに気が付く人って結構いるんだろうな?」と思った。って言うよりホームズが好きな人は大抵知っている?
なら、例外としてこの作品を読んでみようと思って借りてきた。
この作品のホームズを許せるか許せないか人によるだろうけれど、ホームズが奇人になるとき、まともに近く?なるとき、マイクロフトの扱い方・・・さて、これは問題だぞ!私は余り好きじゃないな・・・ぼやきながら読み進んだ。ワトソンの性格はかなり把握の仕方が私とあっているぞ!っていう気もするが。その優しさ、穏やかな知性、ホームズに対する忠誠。ま、遺憾なく描かれているのだけど。何せこのホームズじゃ・・・女装は止めてもらいたい、このふざけ方・・・ため息も出ようというもの。
それでも、事件そのものというよりその前哨となる漱石の悩まされた幽霊の事件の解決がとにかくいい!そう繋がるのか!この部分というかこの連結?が見事だから・・・お遊びだし・・・と、思うことにした。
この微妙な違和感がやっぱりパスティーシュはなぁ・・・もう一つ楽しみきれないよ。ホームズに対する愛着も人により様々だからこのジャンルは多分どんな言い作品を書いたとしても評価が高くなることは無いのじゃないかと思う。たとえどんな新しいトリックや見事な解決を編み出したとしても。
やっぱりこれだったらホームズを読み返すわ!っていう気分?
ところがとんでもないおまけがついていた!
巻尾の解説に「島田荘司は山田風太郎のホームズと漱石を描いた作品を知らなかっただろう・・・云々」というようなことが書かれていたのだ。
やっぱり!風太郎さん二人を出会わせていたんだ!
そんなわけで「これ」は「これ」より読まなくちゃいけないでしょう!と、早速図書館へ出向いた。それは山田風太郎作「黄色い下宿人」で、次回に!