ブラックペアン1988 ブラックペアン1988
海堂 尊講談社 2007-09-21
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海堂尊著

凄い勢いで書き続けていらっしゃるようですね。
順番めちゃめちゃで読んでいるのですけれど、この東城大学医学部から桜宮病院に至るシリーズの過去に遡ったようです。
なのに?この作品が今まで読んだ中では一番昔を書いているのに文章が円熟しているような気がします。それはただこの作品が一番おとなしく描かれているからというだけの事かも知れず・・・
語り手となった主人公の世良君が未熟なのに合わせてはじけ過ぎなかっただけなのかも知れず・・・
でも、まぁ、文章的には一番読みやすいと言うか、エネルギーを要求されないと言うか、ハイテンションに置き去りにされずに済んだというか・・・内容的にも一番落ち着いて纏まったんではないでしょうか。それだけにあえて言えば今までのこの作家大好き読者たちには色彩が淡く感じられたかもしれませんね。でも今までで一番医者が書いたんだということが納得できました。勿論門外漢の私には今一使われる手術の用具の意味合いが理解できているとは思えないのですが、この作家の一番の持ち味「主張したい事を極彩色で劇画タッチで華々しく語る」という点は今回も諒解できました。
高階学長の若き日、速水君や田口君、桜宮病院長の名前など懐かしい人々?の若き日にも遭遇できると言う特典つきです。
娯楽と言う点では今回も及第点ですし、主張が理解しやすいと言う点でも及第点です。しかし本当に情緒が無いなぁ・・・と言うより実に見事に?感情を簡単な単語一つでクリアしてしまう辺り・・・これが現代なのかなぁ。しかし医者というのはやっぱり変人ぞろいだ。その個性を生かして存分に育っていってください・・・と祈りたくなります。ドクター・コトーにめぐり合うチャンスはまず無いし、救急車で病院に運び込まれたら、こんな先生・看護婦たちにめぐり合うのかもしれないものね。まぁ、とりあえず東城大学には田口先生が居るし、優秀な外科医も育っていく可能性はとても?高そうだし!いつも庶民は期待することしか出来ないのだから、せめてこの小説を楽しみましょう。手厚い医療行政をひたすらお願いするだけの庶民のために主張をどんどん繰り広げてくださいませ。
医療の本質は患者を生還させ、良質な術後生活を保障してくれることです。本当にお願いしますよ!と、今回もお医者さん方に頭を下げて読了と致します。
「夢見る黄金地球儀」が後一月足らずで届くと思いますし、「医学のたまご」が百人待ち「ジーン・ワルツ」が110人待ちといったところです。やっぱり読むの楽しい作家です。