ロング・グッドバイ

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ロング・グッドバイ ロング・グッドバイ
レイモンド・チャンドラー 村上 春樹早川書房 2007-03-08
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レイモンド・チャンドラー著
             村上春樹訳

海外の作家の作品を翻訳者の名前で検索しようなんて思ったことも無かった。
確かに、誰が翻訳したもので読んだかということは翻訳書の場合ズーッと後々まで後を引くことはある。
私にとって外せないのは、堀口大学訳の「ルパン」物。但し堀口さんはルブランの全作品を翻訳していないらしく、他の訳者で読まなければならないものがあるのが、最初のルパンを堀口さんで読んだ私とすれば残念。同じく「赤毛のアン」も村岡花子さんとは切っても切れない。しかしそれは皆、たまたま最初に読んだ時の翻訳者がその人だったために過ぎない。そしてそれなりに個性があった!から。
この作品は多分学生時代に「マルタの鷹」などのダシール・ハメットの作品群と一緒に読んだっきりの作品だ。あの頃面白く読みはしても何度も何度も読み直したい作品にはならなかった。何しろ読みたい本が目白押しだった。最もそれは今も変わっていないけれど。
しかも村上春樹さんの膨大な作品群の中の1冊さえも私は読んでいないというのに・・・?何で今この人の翻訳だからといって読もうという気になったのか?ミーちゃんハーちゃんだからにすぎないのでしょう!よ。
図書館で翻訳者の名前で検索できるんだ!今「新訳」を謳う本が多く見られるから役に立つかも?でもなぁ・・・?いずれにしても私には久しぶりの翻訳小説だ。
翻訳者の違いによるのかもしれないが、昔読んだ時はこんなに寄り道というか薀蓄というか蛇足というか・・・主筋に関係ない話がこんなに膨らんであったのか気が付かなかったよ・・・という気が先ずした。司馬遼太郎さんの本も晩年になればなるほど筋から離れた薀蓄が多くなって、それは時には面白く読めたが、時には「邪魔だなぁ・・・」というため息にもなったっけ。
ふっとそれとオンナジジャン!と思ってしまった。そして訳者の長い後書きの中で訳者がその部分を痛く気に入っていて、やはりその部分がチャンドラーのチャンドラーらしさを際立てているらしいと思ったのだが。若かった頃には私はその部分をすっ飛ばして筋を読んでいたのだろうか。膨らんでしまった、または膨らませざるを得ない作者の傾向嗜好を楽しめる読者ではなかったのだ。
それでもフィリップ・マーロウの名をサム・スペードと共に忘れることは無かったのだから、主人公の魅力には十分惹かれたのだろう。
実際読み直してみて、多分この数十年間の時も彼の魅力は全然減じることは無かったのだなぁと改めて思っている。男の究極の姿勢として頷ける気がする。彼の姿勢を貫く様は一つ一つの彼の科白が際立たせる。その姿は女性が愛しさを感じずにはいられない不器用さを備えていて・・・可愛い!
こういう男と永遠に付き合える女性はいないかもしれないが、彼に惹かれない(または反発と同義?)女性もまたいないだろうと思われる。
図書館に帰そうとして玄関に置いておいたら、目ざとく見つけた息子が「いいな、いいな、読む時間があって。読みたいのにコッチは時間が無いんだよ。」と、ぼやいた。そういえば学生時代の彼の本棚では村上さんがひしめいていたっけ。だからこの本だけ読む気になった私はなんとなく・・・なんで?・・・申し訳ないような気持ちになってしまったじゃない。

楽園

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楽園 上 (1) 楽園 上 (1)
宮部 みゆき文藝春秋 2007-08
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楽園 下 楽園 下
宮部 みゆき文藝春秋 2007-08
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宮部みゆき著

友人から「お薦め」とメールを貰って直ぐに図書館に申し込んで待つこと半年余り・・・いやそろそろ1年近くかな?「東京タワー」も千人待ちだったけれど・・・「ハリポタ」500人待ちもあったけれど、これも400人近く待った。今現在最高に待っているのは「流星の絆」東野圭吾著700人です。
で、待った甲斐あったか?って、「まぁ、ありました!」
それで何故「まぁ」が付いたか?ってことですよね。
これが謎解きものだとしたら・・・(でしょう?)謎は半分残ってしまったからです。上下二冊は長かったのですが、長いと感じずに読みきりました。その意味では宮部さんは本当に凄い!読ませてしまう天才です。作品の巾、守備範囲の巾最高です。私は時代物優先で読んでいますが・・・超能力物も好きです。日常から遊離すればするほど好きっていう部分もあるかも?しかしこの作品の場合読ませる力と物語の集中力は比例しませんでした。どうなるのかどう進むのかどう結末がやってくるのか・・・人参求めて・・・ひたすら読み進みました、面白かったし、主人公前畑滋子さんは心ある婦人で、思索力にも行動力にも優れていましたし、周りに魅力的な人材が多数輩出・・・って?そう夫を始め登場する人物像はなかなか見事に書き込まれ、私など一人一人にこのキャラ惜しい!これだけで終るのか?ってなものでした。
萩谷敏子さん・・・どんどん膨らんでいきませんでしたか?
最後には本当に素晴らしい母として人として、魅力的でしたね。
高橋弁護士、野本希恵刑事、秋津警部夫妻?クリーニング屋の兄ちゃんから米やの姉ちゃんまで等等・・・魅力満載って感じでした。
だから読まされちゃった・・・「作者はやっぱり宮部さんだ!」でしょう。
何より作品構成力?あのところどころ挟まる「断章」には翻弄されました。目次見てください、5章あるんですが、これはどういう目的で挟まれたのだろうか?この余りに哀れな愚かな少女はどういう役割を担っているのかと。引っぱられましたねぇ。
それに主人公の誠実さが伝わって、彼女への好意でも気持ちよくお話に引っり込まれましたし。
でも、読み終わってやっぱり、あれれ・・・確かにそろそろお話は終息に向かう頃だけど・・・えぇぇ?これで終らないでしょう?
等君が三和と接点があって、あの絵が描けて、で、シャンパンのボトルの首はどうなるのかな?読み落としたのかなぁ?でも暫くは読み返せないでしょう、図書館へ返さなくちゃならないから。困っちゃうなぁ。
この作品の骨は「どうすればよろしいというのでしょう。幸せになるためには。・・・・・誰かを切り捨てなければ、排除しなければ、得ることのできない幸福がある。」あのページ・・・ここで読者を頷かせてしまう・・・そこへ読者を見事に引っぱりおおせたうまさに唸りました。
作者も作中の自分が生みおとした子供に引きずられるのでしょうね。
というわけで?ボトルが気に掛かるし、次の作品でも?等君の絵が鍵なら「滋子&敏子」さんにお目にかかれるかもしれませんね。そうなれば楽しい待ち時間ですが。
 

八日目の蝉

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八日目の蝉 八日目の蝉
角田 光代中央公論新社 2007-03
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角田光代著

この作家の本を読むのも初めてです。
読み終えて最後の「著者紹介」で、色々な賞を取った方だと知りました。「遅いよ!」と突っ込まれそうですが、何でこの本を最初に読むことになったのかというと、新聞の書評で図書館に予約を入れたら何百人待ちもだったのでとりあえず!でした。先ず1作読んでからその作家を読み続けるか決めようと思っていますから、他の作品を検索してみなかったのです。この作家のファンだったら先ず何をお奨めしてくれるのでしょうね?
正直なところこの作品は女である私、母親でもある私には重い作品でした。静かに始まって静かに終っていくその合間の切羽詰ったドラマはこの作家の持ち味なのでしょうか?非常に押えた筆致で、うっかりすると読み落としてしまいそうです。何事も無かったみたい!って。こういう事件って何年かに一度、全く同じではないけれど目にするようです。
そういう意味では普遍的な命題でもあるかもと思ったとき何故かドキドキしました。
0章から1章へ、1章の終わりに0章’みたいなのが付いて2章へ。そこで語り手が加害者(というべきか?)から被害者に替わります。
そこでまた思うんですよ。人は何らかのモノに対して加害者でもあるし被害者でもある。そういう二人がまたなんというか、別な意味で別な思いで人生を重ね合わせているんですよ。そこが切ない。ある種トラウマ?を負った過去は人格を作りそこなうものなのか。生きる時には傷つけ、傷つけられるなんて、当たり前の事を正面切って言わなければならないとしたら・・・なんと生きるのって難しいことでしょう。
でも、どんな形であれ寄り合い寄せ合う情や具体的な援助という救いもあるのです。そういう社会の中で自分を自分として認めるには何が必要十分条件か?と考えさせられました。
その意味ではエンゼルさんのスタディは面白いというか手段の一つとなりえるかも・・・と思ってしまいました。が、この手の集団が消え去らず何度も何度も社会面に顔を出す理由もちゃんとあるので、やっぱり人間は悲しいという気分になってしまいました。いやだなぁ。でも物語の二人は(千草さんも含めて3人?家族も含めて6人?)7年以上かかったけれど、脱皮できて?道が見つかってよかったねぇ。
それでも、からっぽ、がらんどう、蝉の抜け殻・・・のイメージはいやだなぁ。
最後のメッセージを書き抜いておきましょう。忘れないように。
「7日で死ぬよりも、8日目に生き残った蝉のほうがかなしいって、あんたは言ったよね。私もずっとそう思ってたけど、それは違うかもね。八日目の蝉は、ほかの蝉には見られなかったものを見られるんだから。見たくないって思うかもしれないけど、でも、ぎゅっと目を閉じてなくちゃいけないほどひどいものばかりでもないと、私は思うよ」
この行を思いついたときにこの本が生まれたみたいね。
 

つくもがみ貸します

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つくもがみ貸します つくもがみ貸します
畠中 恵角川書店 2007-09
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畠中恵著

「しゃばけ」シリーズではありませんが、これも妖怪時代ファンタジー?の1冊です。
そしてやはり楽しい読み物ですと言っていいでしょうね。
「付喪神=器物の怪で、生まれし後、百年の時を経て精霊を得るものがいる。もはやただの“もの”ではなく、物の怪の名が付く妖だ。」
と本に書かれています。その付喪神が沢山住み込んで?いる損料屋出雲屋が舞台です。このなかなか一筋縄ではいかないが人の良い?付喪神が結構な働きをしてくれて、ま、一件落着となるまでがお楽しみです。
最初の序で付喪神の立場が明かされ、第1章で彼らが活躍して一つの事件が解決され、その章でまたこの物語を通しての中心となる一つの謎が提出されます。残りの章は順番に活躍する幽霊や道具の名が当てられているのですが、それが全部色の名だというのが妙ですね。謎の「蘇芳」は色の名であり、香炉の銘であり、探すお人の俳号でもあるのですが畠中さんは蘇芳色がお好きなのでしょうか?と、ふと思ったのは私の母が花蘇芳が好きだった事を思い出したからです。余談。
私はこの本を読み出した時、この1章目でてっきり付喪神が活躍する一種の探偵小説の短編集だと思いかけました。でも蘇芳で物語が繋がっていくのがわかって、じっくり腰を据えました。でも読み終わって何故かかえって少しがっかりしました。
短編で、彼ら付喪神の働きを小刻みに色々なバージョンに工夫して見せてもらえた方が面白かったんじゃないかな?という気がしました。一つ一つのお道具がそれぞれに活躍する探偵物?
蘇芳を追っていく道筋が妙にまだるっこく思えたからでしょうか。1章の勝三郎の事件を解決したスピードの方が捨てがたい。それは確かに手軽すぎるかとも思わないでもないけれど、付喪神の出し入れ(貸し出し回収の工夫も読みたい!)が、またその報告の面白さが、その方が生きたのではないかという気がするからです。この後の章で清次とお紅の気持ちが中途半端に分からない(読むほうは先刻承知!)のをずーっと引きずっていくのが妙にまだるっこしく思えてね。その分清次の動きが鈍くなりました。
「江戸っ子でしょ?しゃきっとしなさい!シャキット!」みたいな気分でいらだっちゃったのです。ちゃっちゃと動けばチャチャッと解決できるでしょうに?
付喪神がそれぞれ個性を持って描き分けられているのだから、こうもりの根付の野鉄みたいに飛べたりするものまでいるのだから、話もスピードアップできるんじゃないの?なんて。皆これもあれも、主人公の二人がきりりとしない所為ですよ。
何はともあれめでたしめでたしになったこの出雲屋の二人のためにも、すっかりやる気十分になっている付喪神さんたちの為にも、粋な威勢のいい、きりっとしたお話をと、楽しみに待っています。
 

青い鳥

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青い鳥 青い鳥
重松 清新潮社 2007-07
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  重松清著
この作家の2冊目です。
で、簡単に、「ブランケット・キャッツ」より好きでーす!
「物凄くよかったでっす!」と、小学生みたいに言っちゃいます。
このところいい本に「当たり!」通しです。
「まほろ駅前多田便利軒」並によかったです。
「他に切り口は無いの?」って自分に突っ込みたいくらいですが・・・
「カシオペアの丘で」というのを今待っているところなのですが、これは私には初のこの作家の長編です。この本が余りに感動的だったので、ワクワクして首を長くしているところなのです。
さて、この青い鳥は8話で構成されているのですが、柱は村内先生という吃音の、だけど生徒に寄り添うことをのみを考えている先生です。
小学校から高校まで、いや現在ではまだ子供としか思えない大学生までかな?各クラスに是非とも一人配置していただきたい先生です。そうできれば・・・!
問題を抱えている生徒の所にまるで降ってわいたように!誂えたように?この先生が現れます。
そしてその生徒とこの先生の織り成す数日のふれあいが奇跡のような感動をもたらすのです。勿論出来すぎです。でもその生徒のために本当にこうあって欲しいなという祈りが通じたような嬉しさを感じつつ読み進みました。
先生の伝えることは「そばにいるよ」ということ!
上手くしゃべれないから本当に「大切なことしか言わない!」こと!
色々な意味で糸が切れ掛かっている子をそれぞれの人生にしっかり結びつけて先生は去っていきます。
本当に危機に現れて乗り越えられる見込みが付くと「間に合った!」と安堵して先生は去っていきます。
私自身はここまでの危機に陥ったことが無く学校を卒業してしまったので、先生にもめぐり合わなかったのだなぁ・・・と、少々がっかりです。
でもそこまで行かなくても、問題を抱えていなくとも、この先生が8話の間でそれぞれの生徒に伝えたことを読むだけでも何か得るところがあるのではないか?いつか何かの時の一助になるのではないか?とありがたく思えてしまった本です。
先生が真っ赤になってつっかえつっかえ言う言葉はスルスルと流れてくる言葉より耳にしっかり引っかかります。伝えようとする人の必死さが伝わらなければ、自分にかまけきって溺れかけている人には聞こえっこありません。
どんないい言葉を言われても、耳に残らなくてはお終いですものね。
耳に痛かったり、刺さったりした言葉は忘れられないものです。それと同じことかもしれませんね。
でも先生が言うことは大切なことだけなんです。大切なことってそんなに多くはないんですね。
これはありきたりの筋書きかもと思いながらも「カッコウの卵」では先生に後光が射しました。ありがたいと涙で先生が去っていくバスを見送りました。
こういう先生を養成する教育課程って出来ないものですかねぇ・・・絶対必要。

ブランケット・キャッツ

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ブランケット・キャッツ ブランケット・キャッツ
重松 清朝日新聞社 2008-02-07
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重松清著

お名前は本屋さんでよく見ていました。でも最近「極上掌篇小説」でこの方の短編読まなかったら、多分まだ取り付いていなかったかもしれません。
出版関係の会社に勤めている甥が「ほのぼの系が好きならお薦め。」と、言っていましたっけ。全編を通じて感じられる柔らかさがこの方の持ち味かしら?
大体私は猫より犬派です。
赤ん坊の時の猫の可愛さは確かに・・・認めるのにやぶさかではありません。以前ダンボールにもう抱きしめたくなるような猫の子が6匹、「どなたか飼ってください!」と描かれて道端に置いてありました。通る人皆思わず「可愛い!」と、抱き上げるのですが・・・。
「猫も必死だから、産まれたときは本当に最高に可愛くなるのよ。」と通りかかったオバサンが言っていました。
私は猫を飼ったことが無いのですから猫の眼差しについて言える立場ではありません、が、犬のことなら・・・犬の目は最高です!と自信を持って言えます。動物というものを家の中で飼うということに常に「?」を持っていなかったら、またこれほど旅好きで家を空けることがしょっちゅうでなかったら、絶対犬を飼っているところです。

最近は外を全く知らない猫が居るらしいですね。友人の息子さんは一人暮らしで猫を飼っていますが、飼ったときから1度も外に出したことが無いそうです。「家の中しか知らないのだから、問題ないのよ。」と、彼女は言いますが、可哀相でならないと思うのは私の先入観のせいでしょうか?
さて、この物語に出てくる猫は本当に凄い!です。どんな親友よりも、どんな戦友よりも、利口で頼りになります。心を解いてくれもしますし、生きる道を教えてもくれます。猫に出来ないことは無い?
猫好きの人なら、我が意を得たりと文句無く肯定するのでしょうか?
1話では切なく、2話では悲しく、3話では淋しく、4話では切なく、5話では頼もしく、6話では素晴らしく、7話ではいじらしく・・・物語は猫の周りで展開します。
それにしても、そもそもレンタル・キャットって本当にあるのですか?寡聞にして私はこの商売を知らないのですが・・・私も助手席に乗せるどっしりとした年老いたブランケット・キャットがいてもいいな。運転しなくなってもう7年経つけれど・・・北海道の真っ直ぐに続く道を気の合う落ち着き払った猫ちゃんとならまたドライブできるかも・・・なんて。年取った猫というと直ぐに昔の化け猫の映画を思い出すんですけどね・・・ホントは。
1話ずつ、1匹ごとに、ふうっと猫が身近に寄ってくる感じ。
ひょっとして私猫好きだったのかも・・・なんて錯覚が錯覚じゃなく思えたりして。
犬だったらもっと会話しちゃって湿っぽくなってしまうのかもしれない。犬は確実に同情してくれちゃうもの。だから私はこの物語の中では旅に出たブラウンクラシック・タビー、アメリカン・ショートヘアーの猫がなんとも好きだな。男気があるじゃないの!
猫も犬も野生の呼び声に目覚める時がやっぱりあるのだろうか?そして1度目覚めて放浪の味を知ったこのタビーは「旅―」となってもうレンタル猫では居られないんだ。そうさ、そうでじゃなくちゃ
猫とはいえないでしょ?なんて思いつつ、一寸猫に詳しくなったかしら?いえ、これは特別中の特上の夢の猫さんたちで、猫好きの人にも憧れの猫さんのはずだよ・・・。ペットが見させてくれる夢の中でも極上の夢を7匹の猫さんに見させていただきました。

むかしのはなし

題名INDEX : マ行 107 Comments »
むかしのはなし むかしのはなし
三浦 しをん幻冬舎 2005-02-25
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三浦しをん著

「まほろ駅前多田便利軒」「風が強く吹いている」に次いで三作目の三浦しをんさんです。
そして改めて3作が3作とも見事に楽しませてくれたことに感心!しています。凄いや!全く違うテーストなんです。この方の作品順次読んでいっても良いかも!と思っているところです。
この作品はてっきり短編集かと思ったのです。
どれも昔話から想を得た独立した短編だと。
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でも、違いました。親子二世代の時空を超えて輪になって物語が結び合いました。そしてその各物語を橋渡しする軸が一本ありました。
でも1話簡潔だとしてもちゃんと纏まっていてそれぞれに面白いです。
昔話は各章の冒頭にかいつまんで書かれています。その話を知らない人は多分いないでしょう、少なくとも私ぐらいの世代では。
「かぐや姫」には「ラブレス」
「花咲か爺」」には「ロケットの思い出
「天女の羽衣」には「ディスタンス」
「浦島太郎」には「入江は緑」
「鉢かつぎ」には「たどりつくまで」
「猿婿入り」には「花」
「桃太郎」には「懐かしき川べりの町の物語せよ」
という具合にです。
それぞれは物語的には何のつながりもなさそうながら、匂うもの、なんとなく思わせる言葉などはあるようです。「ウン、アイデアだな?」

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1章読んで、2章目読んで、どういう風に響き合わせるのだろう?と私は首を傾げています。「昔話はいわば借景に過ぎないのだろうか?」と。三作目でフット気が付きます。最初の章で主人公は「明日、隕石が地球に・・・」と「俺」の感情を話す場面がありました。で、2章が「ロケット」?で、3章が「ディスタンス」?お伽噺の世代から時空を越えて・・・風?・・・繋がり?なんて薄ぼんやりです。
「入江は緑」でやっと「隕石がぶつかるのか?ここへ来たか?」・・・という風でした。その一章ごとに「この話いやだなぁ・・・でも、この話一寸良いよね」でもよさそうはよさそうなのですが。最後まで読んで「ああそうか!」それで今私はももちゃんがあの短命のホストの子なのか、彼を始末してしまったのに違いない城之崎組の田山の子なのか知りたくてたまらないのです。田山の考え方の捩れ・・・「こいつ生きてるよ不条理の世界で十分」なんて・・・やっぱりももちゃんと響きあってる・・・親かも?だとすると・・・大変だぁ?
入江で今日も緑をみている「ぼく」も、都会で今日もタクシーを転がしている「私」も、地球の運命を軌道を回って待っているだけの人々も、エウロパと木星の基地に降り立てたカメちゃん、サルとドームの中で花の香に包まれている「私」も皆案じられるけれども・・・やっぱりももちゃんだ。
不思議なことにももちゃんのことはあまりわかっているとも思えないのに、一番気になるのはひょっとしたら桃太郎のせいかもしれない。多分一番なじみの深いお伽噺の摺りこみによって?
そしてその昔お伽噺を夢中で聞いていたかもしれない大多数のチケットを預けられたかもしれない卑怯な「僕」たち「私」たちを思ったりして。それが普通なんだろうねぇ。でも今日も入江の緑を見ていたり、タクシーを転がしたりして自分の居場所を知っている人間でいたいなぁ。
星新一さん没後10年だなぁ・・・また読んでみようかな?なんてぼんやり思ったりして。
 

極上掌篇小説

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極上掌篇小説 極上掌篇小説
いしい しんじ 石田 衣良 伊集院 静角川書店 2006-11
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gokujyou.jpg

1冊にこんなに沢山の短編が入っている小説を読むのは本当に久しぶりですよ。たまたま図書館で眼に留まったのです。この頃図書館予約可の30冊が次々にやって来る?ので、それに追われてその場で出会った本を読むということが少なくなりました。
この沢山の短編を読もうと思ったのは、中にぴかぁっと光る掌編にめぐり会えるかという期待が大きかったってこともありますが、この沢山の作家の名前に心辺りが余り無かったからでも有ります。
このところ初めての作家に挑戦している私ですからね。
読んだことがあるのはこの中では筒井康隆さんだけという寂しさ?
「これはいい、この感じがいい」と思った人の作品を読むっていうの・・・いい案でしょう?
それに声に出して本を読むとすると、私の集中力が続くのは大体15分くらいですから、この短編なら大体その範囲に収まりそうです。いい話があったら声に出して読んでみましょうという心算もあったんです。
結果・・・惨敗!ってこともないか?30人3〇掌編の中から2つほど救い出しました。おまけして5つ?好きになれそうな作家。しかしやっぱりこれだけ短いとその判断もつきかねますね、本当のところ。
それに読み終わってこれがどういうコンセプトで編まれた小説集なのか見当もつかないんです。もうね、バラバラ?
だからとりあえず好きになれた、または面白く読めた作品だけ挙げておきましょう。
大崎善生「神様捜索隊」
片岡義男「目覚まし時計の電池」
いしいしんじ「ミケーネ」
重松清「それでいい」
筒井康隆「出世の首」
「神様捜索隊」だけはこの際花丸印です。この作家の代表作?とでも言うものを先ず読んで見ましょうかと思っています。
この作品のテイストがあるといいけどなぁ。
こういう柔らかさ、のどかさ、緩さの中のきらっと輝くもの、ふっと笑顔がこぼれそうになるもの。そんなものを、そういう作家を発掘できたらなぁ・・・。
そう思ってこの本を返しに行こうと思ったら、先日新聞の書評で見た重松清さんの本が届いたと図書館からメールが来ました。
重松さんの本は始めてです。この掌篇集で「それでいい」を読んだ作家です。とりあえずこの作品には好感を持てたので受け取って読むのが楽しみです。

吉原手引草

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吉原手引草 吉原手引草
松井 今朝子幻冬舎 2007-03
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松井今朝子著

久しぶりに?「読んだぁ~ぁ!面白かったぁ~ぁ!!」と、充実感がたっぷり、おつりを上げたいくらい満足感に浸っています。
「吉原」が書名に付く本は図書館にざっと300冊あるそうです。
話の種はゴマンとあるでしょうね?成り立ちから終焉まであの小さな土地で生き死にしていった人々の哀歓を思うと・・・。
江戸モノの物語には欠かせない?土地であり人々です。
新聞の書評で見て図書館に予約した時点で200人ほどの待ちがあってようやく届きました。江東区の図書館で19冊も所蔵していると言うのに・・・。現時点でまだ300人の人が予約を掛けています。その人たちに、「待つ甲斐ありますよ!」
目次を広げた時点からもう物語の世界に引き込まれます。

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「いやいやいや・・・これは藪の中か?わぉ、紐解き甲斐が有りそう・・・」と、ワクワクするではありませんか?
私が住んでいたのが今はもうない千束町、花園通りを隔てて向こう側は吉原、日本堤の方へ歩いていくと吉原大門がありました。
当時既に全くこの物語の雰囲気を忍ぶ縁もありませんでしたが、大門内の入り口近くに同級生が住んでいて、時々友人と遊びにいっては両方の親から足を踏み入れるなと叱られましたっけ。昼間のそこは唯人気の全く無いしらけた大通りが延びているだけでしたが。
あの通りがこんなにも異界だったとは・・・その後吉原を描いた本を読むたびに不思議だったものです。
この物語の中の人々は実に逞しくその世界で生きています。一人が語るたびに吉原が色を帯びてきて彩色されていくかのようです。
花魁「葛城」に何かが起こったんだ・・・それはなんだろ?・・・誰が堂関わってくるのだろう・・・この人の話は本当だろうか・・・あァ、何があったんだろう・・・と一人の話を読むたびに次が次がと急がれて・・・読み通してしまいました。
そう、最後の章にいたるまでに花魁「葛城」が少しずつ立ち上がって姿を見せてきます。彼女を取り巻いていた人々の思惑、打算、情すべてを受けて。それと共に語り手の人となりも浮かび上がって、最後には私は聞きまわっているこのいい男の聞き手を拝みたい気分にも。
そしてあの異界を見事に泳ぎ切って、首尾よく本望を遂げた花魁に喝采を送りたくなります(それにしても払った代価は高すぎる!)。
引手茶屋のお延さんに教えられて吉原には少々詳しくなりましたが(実に上手い導入ですねぇ)惣籬の花魁はいわばこの異界の上流社会でもありますね。その一番華やかな世界を垣間見ると同時にそこに居ざるを得ない男女の訳ありの事情の悲しさが浮かび上がって・・・人間社会の高度に濃縮された縮図が広げられた感じでした。
それにしても吉原に住む人々の語り口、江戸の町人の語り口・・・みんないいですねぇ・・・油を塗ったようにぺらぺらと・・・?話下手とか口下手ってのは江戸じゃありえないのかも?そういう私も早口で知られております?本当に濃密なお江戸の一端でした。
でもとりあえずはどう修業したらこんなに聞き上手に成れるんでしょ?そこが一番知りたいかも。それに葛城さんどこにどうしていやるかと?

ねこのばば

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ねこのばば (新潮文庫) ねこのばば (新潮文庫)
畠中 恵新潮社 2006-11
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baba3.jpg  baba4.jpg

baba5.jpg  畠中恵著

「しゃばけ」シリーズの三作目です。
私にとっては「しゃばけ」「おまけのこ」に続いて三作目が図書館からやってまいりました。わーい!ってくらい、楽しみになったこのシリーズ。
若旦那とお仲間の妖のお話・短編が5つ楽しめました。

「茶巾たまご」「花かんざし」「ねこのばば」「産土」「たまやたまや」
 
私の好きな順に並べ替えると「産土」「たまやたま」「ねこのばば」後の二つはどっちでもいいのだけれど「茶巾たまご」と「花かんざし」です。
正直なところ取り分けて感想を書き記しておかなくてもいいようなものですが、唯楽しませてもらった・・・でいいような。
相変わらずの若旦那は相変わらず病弱ですけれど、相変わらずのお仲間たちと相変わらずほのかな和みの風に吹かれているようです。
勿論それだけじゃありません。若旦那の一太郎の頭と心が活躍しますし、妖たちは行動します。
「産土」が好きなのはあの佐助・犬神の長い長い妖生?の一端が明らかになって妖は妖なりにこの世を渡っていくのは辛いんだなぁ・・・なんてほろとさせられた上に、おかしいな?と首を捻らされたからです。勿論読めば直ぐ分かりますよね・・・でも一瞬、私夢を見させられているのかな?ありえないことが起こっているぞ?ってほっぺを抓りたくなっちゃいました。このシリーズの足元を固める?大事な1篇です。第二作をまだ読んでいないわけですが、ヒョットすると仁吉の過去が書かれているのじゃないかと・・・気になりだしたところです。急いで予約確認しなくちゃ。
「茶巾たまご」が福神出現?妖の巣みたいなところに神も同居か?っていう楽しさがありながら上位にいかなかったのは、お秋殺しが後味の悪い事件だったから。「豆腐百珍」なら知っていますが「海苔百珍」ね?折角の名案もあんなふうに血塗られるとねぇ・・・?
同様なわけで、「花かんざし」も於りんちゃんのお母さん?おたかの病気が気に染まない!厭な気分だなってわけです。お雛さんここが初出なのね。こういうわけで知り合ったのか・・・と「おまけのこ」に繋がりました。(順番に読め!ですね)
「ねこのばば」が桃色雲の雲隠れ探索話や猫又救出作戦なら面白く安心して読めるのに・・・題一作の「しゃばけ」が血塗られた?話でも面白く読んだのに・・・何故か若旦那を知れば知るほど、若旦那には殺しは似合わないなっていう気持ちになってきて・・・。
「たまやたまや」はその点、この年になって?初恋にもならない淡い思いはいかにも若旦那らしいけれど?この年でこれじゃやっぱり思いやられて仁吉・佐助じゃないけれど若旦那心配で私も凝り固まりそう!でもこの薬種問屋の長崎屋の風には似つかわしい、ほのぼのさ!がやっぱりいいなぁ。

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