幸田文きもの帖

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幸田文 きもの帖 幸田文 きもの帖
青木 玉平凡社 2009-04-07
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幸田文・青木玉著
「父・こんなこと」を読んだときにこの作品がある事を知りました。
つい先日も着物を着てお芝居を見に行ったところです。
生前、母は私に「着物を着ない?」と何度も聞いていました。「着ることはないと思うわ」と私は常に答えていましたが・・・母は残念そうに「二人のお嫁さんも着ないって言うのよね・・・ってことは孫も着ないわね?」と。私には娘はいないのですが、母には息子の所に2人の孫娘がいました。
「着物は十分孫の時代にも保つと思うのだけど・・・仕方ないわね」と処分にかかりました。「大島などの紬類は引き取り手があった」と聞いた時も私はなんとも思いませんでした。
それなのに最近着物を着ることが増えてきました。こうなってはじめて母の処分した着物が本当に惜しいと思われるのです。「母の着物を着たかったなぁ・・・」と。
先だってもう三十年以上も着物をきたことのない姑に、姑は娘が三人もいますから当然娘に残したいでしょうから、姑のではなくて、祖母の着物が箪笥の中にそのままになっている事を知っていましたから「要らなかったら・・・?」と、聞いてみましたがやっぱりいただけませんでした。着物というのは何故か血筋の者に受け継いでもらいたいもののようです。その女の心がそれだけ入っているということでしょうか?
幸田さんのこの作品を読んで、女が着物に掛ける情をつくづく知りました。小物一つに至るまで隅々にまでその人その人の美意識も・・・その人そのものが息づいているものなのだと。それだけに私のこの変化が悔しくて堪りません。母が生きているときに母の着物を着てあげる、受け継ぐと言ってあげていたら・・・と思います。しかし処分にかかったのは亡くなるほんの1・2年前のことでした。あれは着物が着てくれる人を見つけてとせがみでもしたのでしょうか?
この間友人が、あなたこの頃着物を着るからと「母ので、今のあなたにはじみすぎるけれど・・・無駄にするのはあまりに惜しいから」と濃い鼠色の着物とそれに合う帯を一組下さいました。私の紅型の娘の頃の帯を合わせるといい感じに映えるようでした。
この作品ににじむ幸田さんの着物への愛情が心にしみるようでしたから、そして着る人のいない着物を哀れに思う気持ちが良く分かるようになりましたから、ありがたく使わせていただこうと思っています。
 

神去なあなあ日常

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神去なあなあ日常 神去なあなあ日常
三浦 しをん徳間書店 2009-05
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三浦しをん著

あああぁぁぁ・・・と、胸をなでおろしました。・・・って言っても、作家さんは喜ばないとは思いますけれど。
しをんさんの作品「風が強く吹いてる」「まほろ駅前多田便利軒」「むかしのはなし」「仏果を得ず」と、気持ちよく楽しく大好きだわ~と大好き作家に小気味よくこのお名前を登録していたのが「光」の登場でしょう?まっさかさま・・・ヒューって気分でした。ですからこの本の広告が新聞に載った途端、図書館に飛んでいきました。
話は跳びますが、先日新聞に私の知らない作家の方が書いていました。
「作家は読まれるのが嬉しいのだから・・・でも読みたいと思った本を直ぐ読まないで順番を待って読むってことは読書人としていかがなものか?」みたいなこと。全くね!経済的事情と場所的事情を鑑みても・・・お恥ずかしい・・・みたいな気持ちになっちゃいましたよ。
でも、飛んでいったお陰で?20人ほどの待ちで・・・今申し込むと145人待ちですと。
台風が通り過ぎた後の快晴の空のように、澄み渡った心の中に生まれた作品のようでした。もうほんと、楽しくいそいそ林業の知識も頭に取り込みながら・・・今度は林業なのね、文楽もよかったけれど、うんうん林業は大事よね、日本にとって。などと、頷いていたらこの数日の雨で福岡県では大規模な山崩れがあったとか。原因について色々TVでは言っていましたが・・・林業よ、山をちゃんと手入れしていれば・・・なんて思っていました。山が崩壊しつつあるって感じは山に登るたびに思います。それも里山で、です。土が乾ききって下草も生えていない杉林、下枝など刈られたことの無い細々とした杉が情けなく立っている村の裏山をどれだけ見たことか!
三重県大台ケ原の奥の方かしら?もっと奈良よりかしら?松坂から行くとすると・・・美杉?と、地図を広げて彼がいる辺りを探しているのです。三重県から紀州に抜けるとき、心細いような道で天岩戸に出会ったことがあります。神話的な気分を感じさせる幽遠な土地でした。あの辺りを想像しながら読むのは楽しかったです。
熊やんみたいな先生がいて、自分の将来を考え付かないまま社会に放り出される子がいないと良いのに・・・と、思います。学校の先生にここまで求めるのは無理としても、その子の特性を考えてやれる大人、子供に可能性を見出す方向を示してあげられる社会を切に求めます。
私も学校をでる時、自分が何に向いているのか、どんな仕事がしたいのか、それさえも解かっていなかったことを思い出します。
たまたま就職できた会社があったけれど、そのたまたま出合った場所が居心地悪く自分を必要としていないと思えたら、どうしていたでしょう?
平野勇気君みたいな子はごく平均的でしょう?こんなやる気の無い子を受け入れて丁寧に仕事を叩き込んで仕事への愛情を示してお手本と成ってくれる大人が本当に欲しいと思います。
こういう山奥での生活に彼が美しさと愛着を抱いていく様が、村人との交流の中にはぐくまれていく様が、本当に小気味よかった!
ああ、こんな本にいっぱいめぐり会いたいなぁ・・・と、思いますが、それ以上に若者をこうやって育てていってくれる社会が欲しいなぁ・・・と、思います。こんな風に破綻した山々をも生かして人間も生きていくことってできないものでしょうか?

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫) まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)
三浦 しをん文藝春秋 2009-01-09
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風が強く吹いている 風が強く吹いている
三浦 しをん新潮社 2006-09-21
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むかしのはなし (幻冬舎文庫) むかしのはなし (幻冬舎文庫)
三浦 しをん幻冬舎 2008-02
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仏果を得ず 仏果を得ず
三浦 しをん双葉社 2007-11
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カラスの親指

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カラスの親指 by rule of CROW’s thumb カラスの親指 by rule of CROW’s thumb
道尾 秀介講談社 2008-07-23
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「カラスの親指」     道尾秀介著

週の始めに図書館から届いたと連絡があり、貰ってきた。
その夜から早速読み始め、ほんの少し読んだら寝るつもりだった。ところが・・・止められなくなった。もう少しもう少し・・・と、気が付いたら明け方の4時になっていた。当然、翌日寝坊して起きたら、旦那が「昨日遅くまで起きていたみたいだね?」「うん、読み始めたら面白くて、止められなくなった。」「これ?道尾・・・?」「そう、もう何冊目かだけど、面白い作家だと思ったからまた予約したんだけど・・・ここまで化けるとは・・・今までの最高傑作だね。成長してるよ!」偉そうに言った。
言った後で気になった。新聞なんかの広告で見つけた作家で、見つけたのから適当に予約して読んだだけだもの、出版順に読んでいるか・・・?
確かめとかなくちゃ。偉そうにああ言ったけれど、ヒョットすると初作が上出来最高傑作で・・・後はジリ貧とかパワーが落ちてきているってこともありえるじゃないか?
読んだのは「シャドウ」「片目の猿」に次いで「ソロモンの犬」3冊読んで「シャドウ」が今のところベスト。さて、調べてみましょう・・・
「シャドウ」2006年9月。「片目の猿」2007年2月。「ソロモンの犬」2007年8月。それでこの作品「カラスの親指」が2008年7月。ああ、一応ちゃんと出版年順に読んでいるんだ。ジャァ、旦那に言ったことは正解なんだ・・・偉そうに言った点だけ割り引いてね。
そんなわけで2晩で読み終えた。文句無く面白かったし、実に見事に構成されてもいた。書かれた人物が皆私から見たら破天荒な人物なのに・・・愛せた。実に上手く騙されて、私も最後の彼らの詐欺の失敗に固唾を呑んだ。そして、樋口の弟の遊び心?の鷹揚さに驚かされた。えーほんとそれでまさか終るんじゃないでしょうね・・・で、最後。
いい終りだったねぇ。嬉しくなるじゃないの。テツさんの人生。彼らの人生。どんな人のだっていとしくなりそうな・・・全ての人の人生!
どんな今があっても人生どうにかなりそうじゃない?という肯定の足が地に付くことといったら!
冒頭の詐欺の出だしも実に興味をそそられる緻密ないい出だしだし。他にも忘れられない印象を脳裏に浮かべさせる情景も上手いが、一番いいのは、好きなのは、テツさんが縁側で「あちっ!」と言いながらタケさんに指の話をしているところ。縁側で掌を見つめ、指を付けたり離したりしているタケさんの背中。
あの場面は本当に秀逸、最高。私まで指を付けたり離したりしているもの・・・まだ。詐欺が「ヘロン」って、ああいう小さな景色の積み重ねがこの作品を高めているんだと思う。
で、今朝。朝刊を開いたら、この作品の「第62回日本推理作家協会賞」受賞の記事が載っていた。やっぱり!
だけど柳広司さんという知らない作家の「ジョーカー・ゲーム」という作品とダブル受賞になっていた。その柳さんのその作品読んでどっちがいいか比べてみようか?それとも先に道尾さんのほかの作品予約するか?
調べてみたら、道尾さんの新作「鬼の跫音」は80人待ち、柳さんは190人待ち!
どっちにしても・・・図書館は待たすんだよねぇ。
 

シャドウ (ミステリ・フロンティア) シャドウ (ミステリ・フロンティア)
道尾 秀介東京創元社 2006-09-30
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片眼の猿 One‐eyed monkeys 片眼の猿 One‐eyed monkeys
道尾 秀介新潮社 2007-02-24
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ソロモンの犬 ソロモンの犬
道尾 秀介文藝春秋 2007-08
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源平六花撰

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源平六花撰 源平六花撰
奥山 景布子文藝春秋 2009-01-09
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 奥山景布子著

先ごろ朗読のサークルのベテランさんたちが「耳なし芳一」を練習しているのを聞いたから・・・田辺聖子さんの「文車日記」を読んで「知盛」に同感だから・・・ってわけでもないのですけれど、ふと手に取りました。永遠の源平盛衰記です。
この作品はそういう「平家物語」とかの古典や歌舞伎、舞踏など古典芸能などから題材を採った、というよりむしろその中を自在に泳ぎまわった結果・・・と思われるような短編6編。源平に縁がある、または出来てしまった女性たちをなんとも美しい文と言葉で描き出しています。
古典の豊富な知識と古典藝術の造形の深さとにひれ伏してしまいました。知識だけで書いているのではないのです。知識だけだったらここまで心を揺さぶられずに終ったでしょうから。この源平が盛衰した時代の空気とその時代に生きざるを得なかった女人たちに対する憧憬と憐憫が作家の頭の底に根付いているのだろうな・・・と感じます。
伝わった様々の伝承、文学、謡曲、歌舞伎に至るまで、下敷きにしている材料は様々な形で私たちも目にし耳にしてきたものなのですが・・・奥山さんの紡いだ色合いが物語を新たなものにしたようです。
上手いなぁ・・・とも思って読み終わって調べれば・・・なんと処女作!
もっとも「オール讀物新人賞」を取った作品を含むとか。どの作品が賞を取ったんだろう?私的には「常盤樹」だけどな。これが一番まとまりのある小説になっていたように思うのですが。「平家蟹・・」の姉妹とか「啼く声に」の島娘にはオリジナリティが多かったし・・・という気もする・・・なんて思っているのですが。
好きな順に並べると「常盤樹」「啼く声に」。 ついでちょっと題材の用い方が安直な気がしないでもないけれど「二人静」。 「平家蟹異聞」は少し怖いけれどその中に悲しい魅力があって。「後れ子」は生き抜いて自分にたどり着いて大原御幸を迎えるに至る時を美しく描いているけれどももう少し練ってからでも・・・という気も。「冥きより」は熊谷の有名な?妻相模の心に迫るというものだけれどやはり題材はつらい。
そうこう思いながら古典をそのまま書き下し文にしたかのような、麗しい香気に包まれて、この作品を読んでいい時間を過ごせたと思った。
 

警官の血

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警官の血 上巻 警官の血 上巻
佐々木 譲新潮社 2007-09-26
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警官の血 下巻 警官の血 下巻
佐々木 譲新潮社 2007-09-26
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 佐々木譲著

「うたう警官」に次いで二作目。そんなに前に読んだのではないのに「うたう警官」の感想を記していないのに気が付いた。そして自分でもそうだろうなぁ・・・と納得。志水辰夫さんのいわゆる冒険物の感想が記せないのと同じ訳かな。
面白かったのだ!確かに。だけどそれは多分読んでいる間私は何にも考えずにただただ物語の筋を追って楽しんでいたのだろうと思う。丁度子供の頃にお伽噺や冒険小説をワクワクしながら読んでいたときと同じ。
あの時は主人公にそのまま乗り移って私がその冒険をしていたから、後で何を論ずる必要も無かったのだ。
勿論、この小説には(そんなにワクワクする)自分が主人公になって楽しめる要素は殆ど無いのだけれど。この自信を持って堂々延々書かれている大河小説?は流れとして読む人をさぁっと一気に運んでしまう誠実さをちゃんと持っている。
警官の血ね。正義感の血だといわれると反発してしまうけれど。職業は代々受け継がれてノウハウが効率的に譲り渡されていくことのメリットって確かにあるし・・・政治家はそれじゃ困るってことはこの頃国民は骨身に滲みているところだけれど・・・でも3代が限度だろうな・・・こういう商う職業ではない職業は、なんて思って読み終えた。
3代目で謎が解けるなんて・・・これって凄い僥倖だね?なんて、ちょっと思っているけれど、1代目より、2代目、3代目と何か厚い皮が被さっていき、スキルの向上以上に正義と言うものにまで瘡が被さってきたような気配も這い登ってきたような?だから「やっぱり3代が限度だね、世襲は・・・」と言うところに落ち着いて、それが主な感想になった。
丁度清二さんが警官になった年に生まれた私は丁度彼ら3代に付いて自分の時代の一つの側面を見た、という楽しみも別にあったし。
それに図書館で百数十人を待っている間にテレビドラマ化されてしまって、つい見てしまって(だって吉岡君がでたんだもの)、どのくらい丁寧にドラマ化されたのかな?なんて確認に勤しんでしまったという体たらくも・・・不本意だったな。
横山さん、志水さん、佐々木さんってどんどん読んでいきたいと思わせる作家だな!

かぎりなくやさしい花々

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かぎりなくやさしい花々 かぎりなくやさしい花々
星野 富弘偕成社 1986-05
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星野富弘著

年末の最後のサークルの日にこの本を「お持ちの方は持ってきてください。」という回状が回りました。持っていなくて、買わない?私は早速図書館で仕入れました。今後使うかどうか見定めてからというつもりで。それでそういえばこのサークルの幹部?のお一人に相沢みつをさんとこの星野さんのコラボレート展覧会のチケットを頂いた事があったのを思い出しました。私が入会するかなり昔、サークルでこの星野さんの詩の朗読会をしたことがあるとか・・・。多分それで久しぶりに取り上げるのかなぁ・・・と読み始めたのですが・・・素晴らしい方です。
頂いたチケットで絵を見に行った時にも素晴らしい!と思ったのですが、改めて本を読んで怪我をしたところからお母様始めご家族の助け、後に奥様となられた渡辺さんとの馴れ初め、絵への傾斜・・・など・・・読めば心にしみこむ美しさです。それにこの素晴らしい絵が付くのです。

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絵が素晴らしければ素晴らしいほど、添えられた詩が心を打ちますし・・・。本当に凄い方だと脱帽しました。こんな方も世の中には居られるんだということを知ることは世の灯台に出会うようなものですね?
ところがこの本を取り上げて公開の場で朗読をすることはもう出来ないことらしいです。十数年前に使わせていただいた時はまだ名を知る方も絵を知る方も殆ど居なくて、星野さん及び出版社に問い合わせたところ「どうぞどうぞご自由にお使いください」だったそうですが、素晴らしい美術館もでき、出版物も凄い数に登った今、管理がきびしくなったらしいです。著作権保護の世の方向はそうですものね。
小さな公民館の小さなサークルの発表会でも自由に使うことは難しい世の中のようで、先年まで使わせてくださった宮部さんも、事務所のほうから今後公開の場(区民サークル、区民成果発表会も)ではご遠慮くださいと断りが入ったそうですし・・・。今年の区の成果発表会までに作品を選ぶことさえ困難になっているようです。もう既に亡くなられ、時を経て、自由に使える作品で意外に?おばさんに人気があるのは樋口一葉さんなのだそうですけれど、これはこれで、却って聞きに来る子どもたちには言葉がもう難しくて・・・思案投げ首状態のサークルです。で、小泉八雲さんとか新美南吉さんとか
の作品なら・・・ってことになるんですね。・・・って話がそれました。
 

カイシャデイズ

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カイシャデイズ カイシャデイズ
山本 幸久文藝春秋 2008-07
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山本幸久著

「ココスペース」という会社、好きです!実際は内容を読んでいると「今現在、この会社はきっと苦戦しているだろうな・・・こんなひどい不況だもの、しかもこの業界?」と、思います。でも多分この会社はきっとリストラなんて言葉会社の中に立ちいれさせないだろうな・・・という信頼感まで持っています。根拠?根拠なんて無いんです。けれど、社長を知って、彼らを知れば、誰が彼らの一人でも首を切れるというのでしょう。ちゃんと「仕事好きですか?」「絶対彼ら好きですね!」と、私が答えてあげちゃいますものね。もっとも業績や給与を上げていくのまでは・・・保障できませんが。
一昔前の日本の家族的企業を思い出させます。業績主義になったことで年功序列主義より優れた結果が出たことは確かですか?旦那たちが自慢げに「うちは・・・」と言っていたときの会社より今の会社たち?の方が優れていますか?明日は首を切られるかもしれないのに?隣の人より評価が低いわけを納得できますか?付いて行きたい人が居ますか?・・・不安山済み・・・
さて、今息子たちの世代の人たちにとって会社がそうかというと?です。彼らも夜中まで働いて一生懸命ですけれど・・・「うちの・・・」と自慢げに言うでしょうか?言えるといいなと思います。言えますように!
まともな時間に帰っているように見えないタカさん!帰ってこなくともこのタカさんの奥さん旦那を切り捨てたりしませんよ・・・多分。だって仕事をしているタカさんってかわいいんだもの。そのオーラは厭でも家族を巻き込んじゃうでしょ?うちがそうだったもの?無理しちゃったわよ。
もっともね、タカさんが家に帰ったとき、もぬけの殻になっているのが「今」だって気も少ししていますけれど。可哀想に。
作品の3本柱タカ・クマ・シノさんズ+大屋さん+小田さん+巨瀬社長以下「しょうがないなぁエザっち」に至るまで、私結構好きです。会社で働いている人たちが皆人間として一人一人立っていて、ちゃんと人間として遇されていますもの。「この会社好きです!」になるわけです。「仕事楽しいです?」にもなりそうです。社員の個性が生きる会社って大きくなっちゃ駄目なんですかね?作業着着ている彼らって動けて個性がきらきら粒立っています。その個性を殺さない限りこの会社は生きていける、そんな日本であって欲しいなぁ。
原日本の、人間による、人間のための会社ってなんかよくない?仕事場は海外でもいいんだけどさ。あー、でも内需の拡大は難しい日本の行く末ちゃんと考えている人いるかなぁ・・・
今年最初のブログがこの本でよかった。ほっとする世界・・・回収っぱぐれの施工費があっても。

恋いちもんめ

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恋いちもんめ (幻冬舎文庫) 恋いちもんめ (幻冬舎文庫)
宇江佐 真理幻冬舎 2008-06
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宇江佐真理著

「この頃時代物を書く女性作家が増えていないか?」本屋で見つけたからためしに買って読んでみた。」と、父が電車の中で読み終えたからと置いていった。・・・って、この頃?良く見てみると彼女は私と多分同学年。決して新鋭ではないと思われますが。そういえば新聞の広告欄でこの作家の名前を見るようになってからでも大分経つ様な?。でも縁が無くて?多分まだ出会ったことが無かったのだろう。こういうのもひとつの出会い!
そうだなぁ・・・ごく普通にありそうな家庭、ありそうな職場?環境、ありそうな恋愛・友人模様、そうだなぁ・・・「やっつくれ」とか「滅法かいもなく」とか江戸言葉らしいのが多量に使われていなければ?時代ものじゃなく時代に囚われずに読める!っていうか、人間は変わらないものだなぁ・・・でも、舞台をお江戸にした分柔らかくって潤いがあって情緒を楽しめて、得した感じかな?と、読み始めた。
ところが不思議だなぁ、出てくる女性たちは普通に泣いたり怒ったり感情の動きも、行動もごく当たり前の娘たちなのに、今すぐそこで恋をしているかもしれない現代の女性たちと変わらないような事をしているのに、読んでいるうちに‘より’可愛くいじらしく思えてきて、これはやっぱり意地っ張りでも、強情でも、意地悪でも、それでも滅び去った大和撫子たちのお話なのかもなぁ・・・なんて最後には思ってしまった。それだけ現代って恋や愛が難しい社会になっているってことかなぁ。
源蔵とか佐平次とかおじさんたちが意外に生き生きしていて物語が膨らんで現実的に思えたのは、こういう人物の書き方が丁寧だったからかな。その分火事以後の栄蔵の行動が妙に作られすぎで・・・ちょっとしらけたかも。人情話の作りすぎ、せっかく自然な成り行きで来ていたのに惜しいような気持ち。それとかなり後口のいい物語に仕上がったのに、おきんさんを死なさないでもらいたかったなぁ・・・どう考えたってその必要ないのだもの。

こころげそう 男女九人お江戸恋ものがたり

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こころげそう 男女九人 お江戸恋ものがたり こころげそう 男女九人 お江戸恋ものがたり
畠中 恵光文社 2008-01-22
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畠中恵著
 

「心化粧(こころげそう)」
口には言わないが、内心恋こがれること
江戸語辞典(東京堂出版)より

「恋は仕勝(しがち)」―恋愛は自分勝手にするものである。恋愛は周囲の者に遠慮せず、思い通りに進むものだ、の意

「乞目」―出て欲しいと望んだ采の目

「八卦置き」-八卦見。易者。多く大道で商う

「力味」―意地っ張り、強がりのこと

「こわる」―強がる、強情を張る
「幼なじみ」

と、各章は「幼なじみ」を除いて江戸語辞典から説明がされている。
この作者は今まで読んだ作品から感じていたのですが「数多(あまた)」という言葉がお好きなようです。多出します。気になります。引っかかっていました。
江戸の言葉らしい言葉を多用することで雰囲気を一層盛り上げようとする意図は分かりますけれど、やりすぎじゃない?こんなに気になるんだから・・・とまぁ。
そのセンスがこの作品の章題に結実?したようです。
今まで読んだ「しゃばけ」シリーズと底を流れるトーンは同じです。
ユックリとおだやかに、コッチは成り行きに気が付いているのに・・・お願いだからもうちょっとテキパキ、シャキシャキ進めてもらえないでしょうか?って思う部分もあります。
でもその長閑さを、お江戸風をファンは愛して選び取るのでしょう。
本当の江戸っ子ってきっとこうではなかっただろうけれど・・・もっとちゃきちゃきしてたかも?でもお江戸言葉に彩られて今よりスピードの遅い、表現のあいまいなゆったりとした情があって・・・「昔はよかった!」と、こうだったと思いたいファンの一人なんだな・・・私も。
現代に出てくる幽霊は絶対こんなに穏やかじゃないもの。トラウマとストレスと狂気に彩られて。でも200年昔は・・・って思いたいファン!恋や愛に敏感な女の子、鈍感な男の子、訳知りでイナセなお兄ちゃん、甘やかされたかわいい世間知らずなお嬢ちゃん、やり手で世話好きのお姉ちゃん・・・皆生き易かった時代があってもねぇ。幽霊だってまだ風情があった!よ。
そういう人々の心が行き違ったとしてもねぇ・・・殺人だって、まだ柔らかかった時代が・・・って、それは困るよ。

話は変わりますがTVの若旦那、ちょっと可愛いじゃありませんか。

虚無

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虚夢 虚夢
薬丸 岳講談社 2008-05-23
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薬丸岳著

「天使のナイフ」「闇の底」についで三作目です。
犯罪被害者を描いて着実に丁寧に対称に迫る筆を磨いています。
これも読ませる作品でした、が、やっぱりつらい作品でもありました。でもこの作家の追う目は貴重だし尊重したいと思いました。
道尾秀介さんの「シャドウ」?でしたっけ、精神病医について感想を書いたのは・・・?現実に比例してこの手の小説も増えつつある?と、暗澹と心侘しくなりました。
精神疾患の医者の需要が益々増す現在・・・と言うよりあらゆる医者をめぐる環境が問題になっている昨今、声を大にして精神病医ばかりを増やせとはいえないのですが・・・
この作品で取り上げられたような精神科通院記録のある人による犯罪が増えているのも事実のような感じがしています。
そして今も昔も精神科の医者を騙す犯人たちも現実にいるようです。
というのは鑑定する医者次第で鑑定が変わる、覆ることもあると聞くからです。犯罪小説にだって悧巧きわまる狡猾な犯罪者たちは多いのですし、実際法の穴も多いようなのです。まずは優秀な精神科医を!が最低条件ですか。
私も佐和子さんの立場になったら一か八かやってみたい復讐です。
病気だからといって許せない犯罪が多すぎます。
この作品で取り上げられた統合失調症(精神分裂病)、解離性遁走(これは初耳でしたが、解離性同一性障害なら知っています。「24人のビリー・ミリガン」で読みましたっけ)は今こんなにも人間の間にポピュラー?なんでしょうか。
原因も分からなければ治療の方法も無い。だけど、だからといって責任を取らせないって方はあるのか?というのが被害者の思いですよね。刑法39条という不条理に対する怒りも。治療が終ったと犯罪者を退院させた医者に対する怒りも。
単純に私が佐和子だと仮定して、私にそれだけの知性があれば同じ事をしたい!と思いました。男の方が「法がそうだから」という理屈を受け入れ易いのでしょうか?女の方が未練、執念深いのでしょうか?そうではありませんね。これもその人の性格・資質によるものなのでしょうけど。彼女をここまで追い詰めたものの正体をよーく考えたいものです。
この作品では当事者だけの間である結末が付きましたが、受け取った社会がつける結末はこれからです。本質的な結末は付けようも無いという苦しさがこの本の骨頂です。
治療の方法が完結している病気ならともかく、そうでないことが分かっている精神病犯罪者・性犯罪者、完治はありえないのだったら
永遠に監視できる体制を導入してもらいたいと単純に私は思うのです。護身ナイフすら携えないで生活している人間にとっては、安全こそが生活の最低条件ですもの。自分と家族の安全を自分で保障しなければならなくなったら・・・社会は崩壊です。

天使のナイフ (講談社文庫 や 61-1) 天使のナイフ (講談社文庫 や 61-1)
薬丸 岳講談社 2008-08-12
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闇の底 闇の底
薬丸 岳講談社 2006-09-08
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