虚夢 虚夢
薬丸 岳講談社 2008-05-23
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薬丸岳著

「天使のナイフ」「闇の底」についで三作目です。
犯罪被害者を描いて着実に丁寧に対称に迫る筆を磨いています。
これも読ませる作品でした、が、やっぱりつらい作品でもありました。でもこの作家の追う目は貴重だし尊重したいと思いました。
道尾秀介さんの「シャドウ」?でしたっけ、精神病医について感想を書いたのは・・・?現実に比例してこの手の小説も増えつつある?と、暗澹と心侘しくなりました。
精神疾患の医者の需要が益々増す現在・・・と言うよりあらゆる医者をめぐる環境が問題になっている昨今、声を大にして精神病医ばかりを増やせとはいえないのですが・・・
この作品で取り上げられたような精神科通院記録のある人による犯罪が増えているのも事実のような感じがしています。
そして今も昔も精神科の医者を騙す犯人たちも現実にいるようです。
というのは鑑定する医者次第で鑑定が変わる、覆ることもあると聞くからです。犯罪小説にだって悧巧きわまる狡猾な犯罪者たちは多いのですし、実際法の穴も多いようなのです。まずは優秀な精神科医を!が最低条件ですか。
私も佐和子さんの立場になったら一か八かやってみたい復讐です。
病気だからといって許せない犯罪が多すぎます。
この作品で取り上げられた統合失調症(精神分裂病)、解離性遁走(これは初耳でしたが、解離性同一性障害なら知っています。「24人のビリー・ミリガン」で読みましたっけ)は今こんなにも人間の間にポピュラー?なんでしょうか。
原因も分からなければ治療の方法も無い。だけど、だからといって責任を取らせないって方はあるのか?というのが被害者の思いですよね。刑法39条という不条理に対する怒りも。治療が終ったと犯罪者を退院させた医者に対する怒りも。
単純に私が佐和子だと仮定して、私にそれだけの知性があれば同じ事をしたい!と思いました。男の方が「法がそうだから」という理屈を受け入れ易いのでしょうか?女の方が未練、執念深いのでしょうか?そうではありませんね。これもその人の性格・資質によるものなのでしょうけど。彼女をここまで追い詰めたものの正体をよーく考えたいものです。
この作品では当事者だけの間である結末が付きましたが、受け取った社会がつける結末はこれからです。本質的な結末は付けようも無いという苦しさがこの本の骨頂です。
治療の方法が完結している病気ならともかく、そうでないことが分かっている精神病犯罪者・性犯罪者、完治はありえないのだったら
永遠に監視できる体制を導入してもらいたいと単純に私は思うのです。護身ナイフすら携えないで生活している人間にとっては、安全こそが生活の最低条件ですもの。自分と家族の安全を自分で保障しなければならなくなったら・・・社会は崩壊です。

天使のナイフ (講談社文庫 や 61-1) 天使のナイフ (講談社文庫 や 61-1)
薬丸 岳講談社 2008-08-12
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闇の底 闇の底
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