赤めだか

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赤めだか 赤めだか
立川 談春扶桑社 2008-04-11
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立川談春著

談志さんの飼っている金魚がいくら餌をあげても大きく育っていかない。だからあれは「赤めだか」なんだ・・・という赤めだかが題になっているようです。談志さんの弟子も師匠を越えてでかくならない?そんなご謙遜を。
私が始めて談志さんを聞いたのは病気で舞台を休む手前だったので、聞こえたり聞こえなかったり・・・体が揺らぐとマイクから離れる・・・そうするともう声が通らない・・・っていう残念な状況でした。
勿論その昔TVなどでは随分個性的な発言を聞いていて、変わった人だと・・・どちらかというと好きでは無かったですね。話し方、言葉の使い方、声質そのもの・・・色々ね。
ところがそういう人にこんなにほれ込む人たちが居たんですねぇ。
この談春さんの舞台は残念ながら見たことも聞いたことも無いのに何でこの本を読む気になったか?ということの方が不思議ですが。「劇団ひとり」さんの小説も非常にある意味まじめなまともな!小説だったのですね。だからひょっとしたらこの人の本もまじめないい話が書いてあるのではないか?談志さん一門には鬼才・奇才の方がいるんじゃないか?といったところでした。
安鶴さんの本を読んだ後、個性的な芸人さんに対する好奇心、尊敬心?うずうずしております!
志の輔さんなんてとってもまともそうですけれど本当に多才の人ですしね。この一門どんなのかなぁ・・・?そして当たり!でした。まじめな修行時代の一門の人々もですが談志さんが息づいていました。
本当にちょっと見、ちょっと聞、で人をとやかく思うことの恐ろしさを感じましたね。こんな師匠がいて、こんな世界があって、こんな慕う弟子たちがいて・・・怖い人がいる、憧れる人がいる、目標になる人がいる、乗り越えたい人がいる・・・大好きな人がいる、そういう人のいる人のうらやましさ!見つけた人のうらやましさ!
そしておかしさも悲しさもとっぴさも情けなさもあらゆる気持ちを動員して、まじめなこの修行時代を一気読みしてしまいました。
それでも、安鶴さんの時代よりやっぱり少し?当たり前?になっている落語の世界に物足りなさを感じる勝手を許してください。
このおかしげな弟子さんたちももう多分師匠の色々な意味での凄さを越えるとりわけの何かをもう持っていないでしょうし・・・。
大体そういう理不尽さえもまかり通る世界を生きて行く逞しさを持てない時代なのかもしれませんし。談春さん自身の去って行った弟子たちのように?だからこそこの本が、この本で書かれた談春さんの修行時代が愛しく魅力的に読めたのでしょうか?少しづつ後ずさりしながら日本から消えていく師と弟子の世界への郷愁。
 

牛込御門余時

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牛込御門余時 (集英社文庫 た 38-2) 牛込御門余時 (集英社文庫 た 38-2)
竹田 真砂子集英社 2008-08
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竹田真砂子著

牛込御門に何かしかのつながりのある家、人、の物語を8作集めた短編集です。面白い趣向だと思いましたね。さりげなくどこかで牛込御門が出てきます。私の住んでいた牛込薬王寺町付近の町名がころころと転がり出てきて・・・つくづく市谷近辺は羨ましい!こまかい町名がちゃんと残っているのですものね。浅草からはとうに懐かしい町名が消えました。最近益々古い名前が無くなっていきます。そこが谷だったのか台地だったのか・・・どんな歴史があったのか・・・地名から過去を知るのはどんどん難しくなっていきます。いいんでしょうかねぇ?どこもかしこも「何とか丘」。 そういえば地名に関して印象的な話を聞いたことがあります。札幌でこの頃地名の本家還り?またその反対?が。読み方が変わっていくのです。「月寒」はツキサップと習いましたが今はツキサムらしいですし、秩父別はチチブベツと習いましたが今はチップベツというらしいです?で、札幌の知り合いのオバサンが言っていました。「やっと先祖が苦労して日本名にしたものを・・・」と。「なるほどそういう立場もあるか!」でしょう?それは寄り道。
「千姫と乳酪」の舞台、千姫御殿・またの名吉田御殿とは歴史物の本が好きな人たちにはよく知られている御殿だと思いますが、その御殿が牛込御門近くだったとは知りませんでした。  この話と最後の8話「本多様の大銀杏」でこの物語は牛込辺りに住んでいたと思しき父親の昔語りを懐かしく娘が思い出していたんだ・・・とこの本の趣が腑に落ちたのです。だからか「本多様の大銀杏」は現代の父をしのぶ話のところが心にしみました。
この作品群の中では「奥方行状記」が面白く読めました。久乃の才も沢之丞の芸も夫婦の機微も、心の行き惑いに華やかな衣装をうち掛けたような趣がありました。他の作品もそれぞれに面白い話題を書いているのですがなにか心に訴えてくるものが寂しい感じがあります。
妻のあり方としてこの「奥方行状記」と「本多様の大銀杏」は丁度対極にあるようです。今のサラリーマンの妻の状況と同じですね。
妻というものが随分変化しているこのご時世にあってもまだ通じる余地はあるようです。自分を表現できないまでも、「一人を生きる術」を持たないと、生きて行くのは大変なのは今も昔もでしょうか。
「9枚の皿」とか「献上牡丹」「繁盛の法則」の読後感はいやですね。「やせ男」は丁度このところおなじみの江戸の狂歌師、「そろそろ旅に」「戯作者銘々伝」の中に出てきた人々の話でもあり江戸の人々の明るさを興味深く読みました。
とにかく地名に楽しませていただいた作品集でした。

あこがれのため息

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あこがれのため息

あこがれのため息
有吉 玉青幻冬舎 1998-09
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有吉玉青著

エッセイ、また随分と正反対のエッセイを読んでしまったなぁ・・・と言う思いがあります。佐野洋子さんの本を読んでしまった後では、いかにこの手のエッセイが「毒にも薬にもならないか」がわかってしまった感じがします。
でも本当はそんなことは無いのです。この多分まじめで丁寧に観察なさるエッセイストはとても現実的に人生に示唆を与えてくれる本を書いていらっしゃるのです。ただ、安全なところで、豊かなところで書いていらっしゃるので、たったちょっと前に読んだ本との余りに対照的な世界にめまいがしそうなほどです。佐野さんに圧倒された後ですから。
私より10歳年上の佐野さん、戦前の困難な生活を記憶に刻みつけ、困窮の中で亡くした家族の記憶にうなされて生きて、一人で生活を立ててきた人と、私より15歳若く恵まれた環境と豊かさの中で伸び伸びと教育を受けて育った人の目線の方角も在り様も比べることなどできよう筈も無くて、ただ佐野さんの世界から帰ってこれた安堵感を読みながら感じてしまいました。
「お嬢さんでよかったわねぇー」なんていったら、いけないでしょうね。でも、戦後の平和の延長が実に「ありがたい!」ってことが思われるのはこんなエッセイを読んだ時でなくて何時でしょう?なんて気になってしまいました。
あこがれることが出来るものに取り巻かれてつくため息のなんと甘美なこと!衣食足りての礼節部分の好き嫌い良し悪しって贅沢の一種ですかしら。多分、ぽっと読んだ以上に今そう感じられるのは「役にたたない日々」を読んだ後だからですね。その意味では私にとって読むタイミングに恵まれない本でした。
ほんとだったら素晴らしいデザートのようなお楽しみの本になるはずじゃなかったかな?と言う気もするのですけれど。


 

一色一生

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一色一生 一色一生
志村 ふくみ求龍堂 2005-01
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志村ふくみ著

友人が「本を探すアンテナに」と言って貸してくれたのですが「読み終わったら「あなたの郵便局に寄贈してくれていいわよ」なんて言うから後回しの後回しになっていたのが、この本ではなくて「読書入門―人間の器を大きくする名著―」齋藤孝著なんですが。大体本でお薦めの本を探すのもなんかなぁ・・・と思うでしょ?そこへ持ってきて「器を大きく」って今から大きくしてどうするの?頭心デブ?なんて茶々入れて。大体私の郵便局って・・・あれは牛込郵便局です。寄贈本の図書コーナーがあって借りたりあげたりしています。
そろそろ牛込まで返しに行く本があるので、急いで読み始めたらこの本に目が留まったのです。志村さんなら伝統工芸展で着物に何度もお目にかかっています。着物のイメージが浮かびました。あの方が本も書いていらっしゃるとは知りませんでした。というわけでここでお薦めの「色を奏でる」を図書館に予約する前に志村さんの本あるかな?と図書館を覗いてみて見つけました。座り込んで読み始めてみたら・・・文章の言葉の美しいこと!折り目正しいこと!ちりばめられた色彩の名前の美しく雅なこと・・・つい気が付くと1時間経っていました。そんなわけで借りてきたのがこの本です。
特に出だしの樺の木の木屑の真紅の話にはゾクリとしました。
色鮮やかな血のような色が生々しくも美しく目の前に見えるようでした。
しっかりと読み応えがあります。美しい文で清潔に書いていらっしゃるのですけれども、中身はじっくりしみこんできます。職人さんの言葉には時々「はっ」とさせられることがありますが、まさしくこれは「はっ!」で出来ているようなのです。
色というのはありがたいものです。この世がモノクロームの世界だったら・・・って思って御覧なさい。日本の湿潤な四季が生み出す様々の植物から生まれ出る色の個性とそれに名前を付けた感性が、過去の人々からの賜物で、今もそれらを大事に愛して仕事をしておられる方々がいるということに無条件に感謝します。伝統工芸展ではいつも「あぁ、これ欲しい!」と切実に思う作品に出会います。勿論手の届かぬ物ばかりですが・・・こんな素晴らしいものがいつも身の回りにあったなら、その中で育ったなら、人の感性はどこまで磨かれるでしょうか?豊かな人になるだろうなぁ・・・と、思います。でも今は本当に立派な仕事をなさる職人さんの生み出す物は一部のお金の有る趣味人の下にしかないのですけれど。でも見る機会があればその機会を大事に心を育てたいと居住まいを正して思いました。
挟み込まれていた作品の写真を一枚コピーしましたが、読み始めた頃はこの他の「個人蔵」となっている作品、着られることはあるのでしょうか?どんな方が着られるのか実際着ていらっしゃるところを見てみたいなぁと思いました。作品は仕事ならなお更、着られてナンボですもの・・・と。ところが読み進んでこのお仕事のどれだけの手数か辛苦か・・・思い知れば知るほど、また職人さんや女性の仕事の探訪の記録、特に弓浜絣の項など読んでしまうと、とてもその作品着れる人は居ないと思えてきました。心を込めて織り上げた人の愛しい人かご本人しか着る資格は無いだろうと。
それにしてもなんと美しく一生懸命生きてこられたことか・・・一生を託す何ものかに出合うということは宝物にぶち当たったみたいなものでそれは天からのさずかりものなのでしょうか。大変で辛くとも羨ましいなと・・・今からでも見つかるかなぁ・・・などと夢見ているところです。93歳まで女性の寿命は延びる可能性があると今朝の新聞で読みました。ならまだ30年もあるのです?  また志村さんはなさってきた事を丁寧にそのままに的確に美しく表現できるなんて素晴らしい方です。手仕事の作品に詩心が溢れているわけもわかったような気がしました。

イニシエーション・ラブ

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イニシエーション・ラブ (文春文庫 い 66-1) イニシエーション・ラブ (文春文庫 い 66-1)
乾 くるみ文藝春秋 2007-04
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乾くるみ著 

「こりゃー、どうなんだろうなぁ?」と、文庫の後ろに書かれた「二回読みたくなる・・・傑作ミステリー」という惹起文に惹かれて読んでしまった私は疑問です。
ミステリーと思っていなければ多分既に最初の方で「なんだぁ・・・こりゃあこの時代のノーマルな学生世代の恋物語に過ぎなかったじゃないか~」と、不満に思ったことでしょう。
実際ばかばかしいほど(失礼)丁寧に一言一言、一状況一状況、一足一足、書かれた恋の進行状況は平均的に普通の経過を辿るもの以上のものには思えなかったからです。眉唾的な調子よさも「?」です。何百の恋を足して、何百かで割って?みたいです。せいぜい確かに実に見事に時代と流行歌の題がシンクロしていて・・・くらいのところでしょう?
あほらしいような、それでも少し懐かしいような・・・?
特にミステリー読みとしては非常に大雑把で注意力散漫な私は「夕樹に たっくん だって?ひどいこじつけの愛称!」とか「『アインシュタインの世界』?フーン、やけに怪しげに出てきたね、ここか?」
「あれ、数学科で富士通じゃなかったっけ?でも、蹴ったのね?学科が間違ってたっけ?」「こういう男が失敗して妊娠させるはず無いけどなぁ・・・」程度でさぁーっと読み進んでしまって、まさしく最後の二行目で「そういうこと?」となったわけです。
「たっくん?」って普通の声で繭ちゃんが電話にでるわけだよねぇ?そうかぁ!ヒョットすると・・・歌曲の年代順番も考えるべきなのかな?
だから確かに二度目?本に目を通しました。それは拾い読みで、まずは「辰也」って言う名前「確かにそれまでに出てきていないよね?」という確認と「他にどこで何を読み落としたのだろう?」という二つの確認作業でした。二回読みたいと思うほど面白い本だ!とは思えなかったのですが、確かに二回読まされたわい!という変な気分です。
こういうのやっぱりミステリー?
 

おひとりさまの老後

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おひとりさまの老後 おひとりさまの老後
上野 千鶴子法研 2007-07
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上野千鶴子著

「おひとりさまの老後」読んだ?と聞かれましたから「ああ、売れているらしいけど・・・読んでいないけど・・・」と、歯切れ悪く答えました。読んでいない本を腐すのはいけません。
「読み終わったから貸してあげる」「面白かったの?」「面白かったよ」「今読む本いっぱいあるからいいわ」お断りしたつもりでしたが・・・次に会ったとき渡されました。読むっきゃない?
なんとなく後ろ向きだったのは作者さんの経歴をなんとはなく知っていたからかなぁ?私より年上の方としては余りにお仕事の分野で一流過ぎやしません?おひとりさまはお一人様でも彼女の言うおひとりさまと私がなるかもしれないお一人様との間には越えられない溝がドッカーンとありそう・・・でしょ?読む前から感じちゃう。
着々と一人の老後を迎えるつもりで準備を進めてこられた方とうすぼんやりとでも家族の傘の下でぼーっと暮してきた私とでははなっから覚悟が違う?この分野では(‘この’だけでは無いかもしれないけれど・・・)すでにして勝ち組と負け組み?なんてね。
そしたらのっけから結婚生活を続けていらっしゃらないご自分を負け犬とおっしゃっているではありませんか。ほう、そう来ましたか?
確かに準備おさおさ怠り無く!過ごしてこられただけに、なかなかのソフトの充実振り!感服しました。しかも何度もおっしゃるとおり、こっちは「子供はいても・・・」の世代で夫がいるから「準備も遅れ・・・」の来し方で、亭主が定年迎えて友人ネットワーク構築にもまさにヒビが入りかねない現状・・・のご指摘どおりの遅れをとった負け犬状態。
後はお金?ご指摘どおりにそう思いますが、それもご指摘どおりの有様!だから読むのいやだったのよ・・・と、ぼやきながら、読了。
しかしまさかこの方に限って・・・多くの未婚で着実にネットワーク作りにも、資金作りにも着実な成果を上げてこられたほかの方々とは違って・・・結婚生活なんか維持しちゃって、同居という罠に落ちそうな立場の人を、見下してはおられませんでしょうね?と、なんだかいじけてしまったところでございます。なんだか「末は皆お一人様」という宣告の陰には高らかに‘未婚勝ち組オーラおら’ファンファーレが漂っている気配。
実際役立つソフトはあるし、なるほどと頷かされるところはあるし、石橋叩いて万全策かと感嘆もしたけれど・・・でもいちいちいちいち・・・ま、いいか。
だって、何を言おうとも、上野先生には理論武装に隙は全くあろうはずが有りません。どんな反論にも!気分にも?絶対確実な答えが待ち受けていることは確かですものね。全方位十重二十重四面楚歌?って感じ。
この本貸してくれたがった方はお子さんが無く10も年長のご主人がおありです。立場によって、一人一人、役立ち方も棘の感じ方も違うかもしれないわねぇ・・・しかし確かに、やな感じ!

オトナの片思い

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オトナの片思い オトナの片思い
石田 衣良角川春樹事務所 2007-08
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「ふむ・・・オトナとカタカナなのが気に掛かるけれど・・・」と、思いながら、随分長いこと実るも実らないも恋なんか袖も摺りあわない私ですから「片思いアンソロジー」?でもいいや、「ロング・グッドバイ」の後に軽い失恋話しでもつまんで見ますか・・・ってな気分でしょうか?
思ったとおり!軽い気分の短編集。
そして思ったとおり「オトナ」はやっぱり大人ではありませんでしたね。一寸がっかり。11作11人の著者はプロフィールに生年月日の入っていない数人も含めて多分一番年長が1955年生まれの佐藤正午さんでしょうか。殆どが70年代生まれという若さです。
それじゃァいかに想像力+創造力の権化?たちでも、まだ大人の片思いは無理でしょう・・・と、納得。
で、期待は外れましたが何作か記憶に残りそうな作品が!・・・って、失礼ですね。でも実際期待は軽い読み物だったのですからそれでもいいはずでしょ?作家先生たちにも?
最近読んだせいですか・・・三崎亜記さん「Enak!」と角田光代さん「若葉の恋」が印象に残りました。一寸いい感じかも!
山田あかねさんの「やさしい背中」と井上荒野さんの「他人の島」も心に残るかもしれません。
それにしても・・・「どこが大人だ?」いや「オトナ」か?とボヤキが出ます。主人公たちはまだほんのひよっ子じゃありませんか。
そんな年で、そんなことしていて、おとなになったつもりになるなよ!と思っています。
生きていれば普通にあるほんの心のさざめき程度の片?思い!ばっかですよ。これ痛いですか?修行が足らんよ、もっともっと痛いことは直ぐ後を追いかけてくるからね。デモネ、それとオンナジくらいオイシイこともあるからね。と、オバサンらしくつぶやいて閉じました。どっちにしてもおしゃれな気分を楽しめる間はまだまだコドモだね。装丁はちょっとじゃなく、おしゃれなおとなでした。

青い鳥

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青い鳥 青い鳥
重松 清新潮社 2007-07
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  重松清著
この作家の2冊目です。
で、簡単に、「ブランケット・キャッツ」より好きでーす!
「物凄くよかったでっす!」と、小学生みたいに言っちゃいます。
このところいい本に「当たり!」通しです。
「まほろ駅前多田便利軒」並によかったです。
「他に切り口は無いの?」って自分に突っ込みたいくらいですが・・・
「カシオペアの丘で」というのを今待っているところなのですが、これは私には初のこの作家の長編です。この本が余りに感動的だったので、ワクワクして首を長くしているところなのです。
さて、この青い鳥は8話で構成されているのですが、柱は村内先生という吃音の、だけど生徒に寄り添うことをのみを考えている先生です。
小学校から高校まで、いや現在ではまだ子供としか思えない大学生までかな?各クラスに是非とも一人配置していただきたい先生です。そうできれば・・・!
問題を抱えている生徒の所にまるで降ってわいたように!誂えたように?この先生が現れます。
そしてその生徒とこの先生の織り成す数日のふれあいが奇跡のような感動をもたらすのです。勿論出来すぎです。でもその生徒のために本当にこうあって欲しいなという祈りが通じたような嬉しさを感じつつ読み進みました。
先生の伝えることは「そばにいるよ」ということ!
上手くしゃべれないから本当に「大切なことしか言わない!」こと!
色々な意味で糸が切れ掛かっている子をそれぞれの人生にしっかり結びつけて先生は去っていきます。
本当に危機に現れて乗り越えられる見込みが付くと「間に合った!」と安堵して先生は去っていきます。
私自身はここまでの危機に陥ったことが無く学校を卒業してしまったので、先生にもめぐり合わなかったのだなぁ・・・と、少々がっかりです。
でもそこまで行かなくても、問題を抱えていなくとも、この先生が8話の間でそれぞれの生徒に伝えたことを読むだけでも何か得るところがあるのではないか?いつか何かの時の一助になるのではないか?とありがたく思えてしまった本です。
先生が真っ赤になってつっかえつっかえ言う言葉はスルスルと流れてくる言葉より耳にしっかり引っかかります。伝えようとする人の必死さが伝わらなければ、自分にかまけきって溺れかけている人には聞こえっこありません。
どんないい言葉を言われても、耳に残らなくてはお終いですものね。
耳に痛かったり、刺さったりした言葉は忘れられないものです。それと同じことかもしれませんね。
でも先生が言うことは大切なことだけなんです。大切なことってそんなに多くはないんですね。
これはありきたりの筋書きかもと思いながらも「カッコウの卵」では先生に後光が射しました。ありがたいと涙で先生が去っていくバスを見送りました。
こういう先生を養成する教育課程って出来ないものですかねぇ・・・絶対必要。

アサッテの人

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アサッテの人 アサッテの人
諏訪 哲史講談社 2007-07-21
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諏訪哲史著

さてなぁ・・・?読み終わったからといって何か書けるか?という、雰囲気を心に残す作品。
例えて言えばこちらの立場に応じて大きさやビブラートが微妙に違って返ってくるこだまのような本とでも?
読み終わってからの数日で牛のように反芻していると、毎日私の評価?が日替わり弁当のように変わる。
読み易かった。文そのものは平易だった。構成も分かり易かった・・・「僕」がどのように構成したら分かりやすいか・・・という構成のありようをちゃんと語っているのを素直に受け入れればのことだが。
これが一度引っかかってしまうと難しくなるのかも知れない・・・チェッ衒いやがって・・・風に?
用語に引っかかってしまうと・・・チェッかっこつけやがって・・・風に?
でも素直に叔父を紐解こうとする、最も身近だった僕の試みとして読めば、そこにアサッテの方向に折れ曲がっていった叔父の軌跡が浮かびあがってきて、一つの小説を読み終えることが出来る。
そうしてそうだったと思った日には、私は面白い試みの小説だったなぁ・・・と、満足して読み終わった本を眺められた。
でも使われた言葉に意識が捕らえられた日には、私はしかめっ面になり、これは小説としてというより「存在した一つの意識」への案内と解析の書として文章を再吟味に掛けねばならないと思い直す。
ヤレヤレこの短めな本はある意味面白すぎたのかもなぁ・・・なんて。
この私の読後感想では引用はあまりしたくないのだけれど、気になって頭から去らないものがどうしても有るのだ。
「律のないところでいくら逸脱しても、それは逸脱ではない。・・・
逸脱の本懐がある。(148P)」から書き起こされる「日常の抑圧を排したところにアサッテもまたありえない・・・」まで。
また、P156の「・・・自分の周囲に絶え間なく生起し続ける日常の凡庸さを、より意識して見つめる習慣をつけることであった。現実を覆う凡庸は、意識されることで鍛えられ・・・その定型の強度に対する生理的反動がアサッテを呼び込み・・・」云々で、否応なく日常の凡庸さにどっぷりハマって居心地良く過ごしている私をどきりともさせる。しかしここでアサッテがより明確になり、アサッテの方角へ引き寄せられる生のありように理解が及ぶ。
だけど、だけど、本音を言えばもうこの人生で爆発的な生の覚醒をもたらされたら・・・事だぞ・・・的意識が鎌首をもたげて・・・慌てて本を遠ざけるのである。参ったなぁ・・・。

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これってどういう働きが有るのでしょう。私は先生によく怒られます。「その駄目押しは何?自信がないから余計な駄目を押さなきゃならなくなる!」って。

赤い指

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赤い指 赤い指
東野 圭吾講談社 2006-07-25
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 東野圭吾著

「容疑者X・・・」でこの作家を初めて読んで、ガリレオさんしか知らなかったので、この本はちょっとした驚きでした。
「ガリレオシリーズ?」が面白かったので彼の作品、他の何かを読んでみようと図書館で検索して一番待ち人が多かったのがこの作品でした。だから結構待ったのです。
昨夜夜中に読み終わってから「選べないもの」の事を考えています。
先日電車に乗っていた時、友人が「家の娘はあんなことしないと思っているけれど・・・」と、不安げに囁いたのです。
私も信号待ちをしていた車のドァが開いて、伸びてきた手が灰皿をひっくり返して道に吸殻の山を作って走り去ったのを見た時「家の息子もまさかあんなことしないと思うけれど・・・」と、思いましたから、彼女の気持ちは良く分かりました。
電車の向かいでは女の子がピラーから化粧全行程進行中で、隣ではドーナツ齧りながら携帯親指猛烈作業中、しかも優先席という状態でしたから。
この物語の直巳という息子がどうしてこう育ってしまったのか、わけの分からない父親とさして変わりなく、大抵の親は子がどう育っているか知らないものなのかもしれません。子は親と別の何かによって?育って行っちゃったに過ぎない?実際学者の息子がアメリカの大学から引っ張りだこで帰ってこないといつも嘆いてみせる友人は「自慢か!」と羨ましさを友人たちに掻き立てますが・・・「実は・・・」がないとも言いきれません?

親の自慢の種になる息子と直巳の間の線はどこにあるのでしょう?親も子を選べないように、子も親を選べません。刑事の加賀が父母を選べなかったように、また松宮が親を選べなかったように?
痴呆になる親とならない親とはどこで線が引けるのでしょう?
親とて自分の死に至る病を選べないように、子も親の死を選べませんものね。先日95歳の母親を抱えている友人が「不思議なものよね、本も読まず、芸術も愛さず、意地悪が悪くて、怠け者で、恥ずかしい親だったのに、ボケる気配全く無いのよ。私たちの反面教師だったのよ。何でだろう?」と、ため息をつきました。でも、全てのそういう人がボケないとは言えませんしね。何ででしょう?どこの何がどう分けるのでしょう?
子の出来を自慢する親と反対に子を恥じる親との間に引ける線ってあるのでしょうか?どこがどう違ったのでしょう?
物語の中の息子を思いやって究極の?選択をして痴呆を装う母親は、似たような父親を浅田次郎さんの「椿山課長・・・」でもお目にかかりましたが・・・こんなことって2作もの小説で読むと「事実は小説より・・・」なんて世間では意外に転がっているのだったりして・・・と、暗澹としたりして。
謎解きの面白さはありませんでしたから、どうやら深沈と親子関係に思考がのめりこんだみたいで、読後感は終末の救いの情景を他所に後味の悪いものでした。
人生って一本の線の向うに落ちるかこちらに落ちるか・・・その理由のわからない不条理なものだと・・・夜中だったので落ち込みました。
朝が明るかったので直ぐ立ち直るのが私の取り柄で・・・助かった!

表紙の指はさほど気にしなかったのに、中表紙の細い赤い指にはギョットさせられました。何処かで誰かがあんな指を伸ばして・・・それはヒョットすると・・・?

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