赤めだか 赤めだか
立川 談春扶桑社 2008-04-11
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立川談春著

談志さんの飼っている金魚がいくら餌をあげても大きく育っていかない。だからあれは「赤めだか」なんだ・・・という赤めだかが題になっているようです。談志さんの弟子も師匠を越えてでかくならない?そんなご謙遜を。
私が始めて談志さんを聞いたのは病気で舞台を休む手前だったので、聞こえたり聞こえなかったり・・・体が揺らぐとマイクから離れる・・・そうするともう声が通らない・・・っていう残念な状況でした。
勿論その昔TVなどでは随分個性的な発言を聞いていて、変わった人だと・・・どちらかというと好きでは無かったですね。話し方、言葉の使い方、声質そのもの・・・色々ね。
ところがそういう人にこんなにほれ込む人たちが居たんですねぇ。
この談春さんの舞台は残念ながら見たことも聞いたことも無いのに何でこの本を読む気になったか?ということの方が不思議ですが。「劇団ひとり」さんの小説も非常にある意味まじめなまともな!小説だったのですね。だからひょっとしたらこの人の本もまじめないい話が書いてあるのではないか?談志さん一門には鬼才・奇才の方がいるんじゃないか?といったところでした。
安鶴さんの本を読んだ後、個性的な芸人さんに対する好奇心、尊敬心?うずうずしております!
志の輔さんなんてとってもまともそうですけれど本当に多才の人ですしね。この一門どんなのかなぁ・・・?そして当たり!でした。まじめな修行時代の一門の人々もですが談志さんが息づいていました。
本当にちょっと見、ちょっと聞、で人をとやかく思うことの恐ろしさを感じましたね。こんな師匠がいて、こんな世界があって、こんな慕う弟子たちがいて・・・怖い人がいる、憧れる人がいる、目標になる人がいる、乗り越えたい人がいる・・・大好きな人がいる、そういう人のいる人のうらやましさ!見つけた人のうらやましさ!
そしておかしさも悲しさもとっぴさも情けなさもあらゆる気持ちを動員して、まじめなこの修行時代を一気読みしてしまいました。
それでも、安鶴さんの時代よりやっぱり少し?当たり前?になっている落語の世界に物足りなさを感じる勝手を許してください。
このおかしげな弟子さんたちももう多分師匠の色々な意味での凄さを越えるとりわけの何かをもう持っていないでしょうし・・・。
大体そういう理不尽さえもまかり通る世界を生きて行く逞しさを持てない時代なのかもしれませんし。談春さん自身の去って行った弟子たちのように?だからこそこの本が、この本で書かれた談春さんの修行時代が愛しく魅力的に読めたのでしょうか?少しづつ後ずさりしながら日本から消えていく師と弟子の世界への郷愁。