あこがれのため息

あこがれのため息
有吉 玉青幻冬舎 1998-09
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有吉玉青著

エッセイ、また随分と正反対のエッセイを読んでしまったなぁ・・・と言う思いがあります。佐野洋子さんの本を読んでしまった後では、いかにこの手のエッセイが「毒にも薬にもならないか」がわかってしまった感じがします。
でも本当はそんなことは無いのです。この多分まじめで丁寧に観察なさるエッセイストはとても現実的に人生に示唆を与えてくれる本を書いていらっしゃるのです。ただ、安全なところで、豊かなところで書いていらっしゃるので、たったちょっと前に読んだ本との余りに対照的な世界にめまいがしそうなほどです。佐野さんに圧倒された後ですから。
私より10歳年上の佐野さん、戦前の困難な生活を記憶に刻みつけ、困窮の中で亡くした家族の記憶にうなされて生きて、一人で生活を立ててきた人と、私より15歳若く恵まれた環境と豊かさの中で伸び伸びと教育を受けて育った人の目線の方角も在り様も比べることなどできよう筈も無くて、ただ佐野さんの世界から帰ってこれた安堵感を読みながら感じてしまいました。
「お嬢さんでよかったわねぇー」なんていったら、いけないでしょうね。でも、戦後の平和の延長が実に「ありがたい!」ってことが思われるのはこんなエッセイを読んだ時でなくて何時でしょう?なんて気になってしまいました。
あこがれることが出来るものに取り巻かれてつくため息のなんと甘美なこと!衣食足りての礼節部分の好き嫌い良し悪しって贅沢の一種ですかしら。多分、ぽっと読んだ以上に今そう感じられるのは「役にたたない日々」を読んだ後だからですね。その意味では私にとって読むタイミングに恵まれない本でした。
ほんとだったら素晴らしいデザートのようなお楽しみの本になるはずじゃなかったかな?と言う気もするのですけれど。