カササギたちの四季

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カササギたちの四季 カササギたちの四季
道尾秀介光文社 2011-02-19
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道尾秀介著

ずいぶん待って「月と蟹」が来て読み終わったと思ったらこの作品が思ったより早く届いた。「月と蟹」はまだ図書館では二百数十名が待っているがこの作品は百人待ちだ。 賞の威力はやはり大きいのか。 それにしても前作から数か月で出た作品なのだ…と、驚いている。
読後感はこの作品の方がはるかにいい!というか資質が全然違う…という感じ。同じ作家か?というくらい。油が乗ったんだろう!そういう時期なんだ!なんてますます楽しみにしている。ただねやはり流した感じは否めない。薄味と言ってもいいかな。惜しい!
この作品は三浦しをんさんの多田便利軒を思い出させた。 男2人組の小説は掃いて捨てるほどあるから…こういう事はありがちだけれど…テイストは似ている。
読みやすくて読後感のいい小説(短編4作)でした。 が、もう一つ何かスパイスが足らないような、終了感もないような…なんだかまだ終わったという感じがしません。 次作があるのだと思えば…ここまででもいいのですが…これで終わりだと…面白い思いつきの作品ね…で、終わってしまうような気がします。
人物は少々戯画的で分り易そうに読めるのですが、実はあまりよくわかりません。もう一つ深く人も関係も背景も描きこんでね…と思います。せっかくの人物!に設定!なのですから。

月と蟹

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月と蟹 月と蟹
道尾 秀介文藝春秋 2010-09-14
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道尾秀介著
この作品をハラハラしたり不気味さを感じたり、怖くなったり気持ち悪く思わないで読める女性は少ないだろうな…と思いながら…いやだなぁ…という気持ちを抱えながら…止めよう、放棄しようと思いながら…それでも読了してしまった。  この子供たちの明日が私の後を追ってくるようで、暫くの間夜中に目が覚めると彼らのあの先を思いながら寝ていたことに気付かされた。
子供の頃残酷な遊び…カエルを膨らませたり、叩きつけたり、昆虫をむしったり…そんな遊びをした子供は命がどんなにはかないか脆いか知る…なんて聞く。  全くの東京の下町でもそういう小動物はいたことはいたが…そんな遊びをしたこともない私にはこの子供らのヤドカミ様遊びは背筋がぞわぞわ不快で気持ち悪くて…でもしている子どもから目が離せない…その状況のままで本を読んでいた。 若いのに…なんていう作家だろうとまた思ってしまった。 こういう資質は何処から生まれるのだろうか?この作家の作品を読むたびに最後にはこう考えさせられる。
私の10歳は…?なんて問うても、そして記憶の底を這いずり回っても、ここで繰り広げられる子供の世界のリアリティには遠く及ばない。 知らない子供の世界がここにどーんと押しつけられて…心を占領されてしまったようだ。 みじめで卑怯で弱弱しくて強くていじけてていじましくて哀れで逼塞していて痛々しい。 こういう「時」はどんな風に子供を育てるのだろう? こういう大人たちは子供にどんな力を及ぼすのだろう? 人々も風景も状況も何も心にはタッチできないようでいて恐ろしく影響を与えている。 その恐ろしさ。 毎日が毎日で変わらない繰り返しが重さになっていく…囚われきっていた真一の一つの時代に区切りがついたようで…ほっとして彼らがこの町を出て行くのを見送った気分だ。 どうぞ…何がどうぞ!かわからぬままに、私はどうぞ!どうぞ!と祈っている。

小暮写真館

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小暮写眞館 (書き下ろし100冊) 小暮写眞館 (書き下ろし100冊)
宮部 みゆき講談社 2010-05-14
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宮部みゆき著
「三島屋変調百物語」の「おそろし」より「あんじゅう」に近い方の雰囲気を持った現代ものだ!って感じを受けながら読んだのは私だけでしょうか?
物語の底の方に鉄壁の?素晴らしい心根の人々がガッコンと控えていてくれる安心感が…微妙な人生の不思議な絡まりあった糸をほぐしていく過程での安全弁になっていて…どんな不思議が転がってきても主人公の縁の下は完璧!って安心感があったからかな。
主人公のある意味冒険は成長をもたらし、仲間の結束力を高め、またその存在のありがたさを痛感し、その彼らをも癒していき…という人柄の豊かさかなぁ…なんなんだろうな、この居心地の良さは…と、思ったからかな?
一つ一つの霊だかお化けだかこの世に残った念だか、生きている人の心の残像だとか…まぁ…あり得ないことどもを腑にに落としてしまう手際というか…読んで満足させてしまう力はすごい!と、また私は感心して、物語の高校生の季節を堪能してしまった。キーワードは「思いやり」に尽きるんだな。
こういう子供たち…私のあの時代にもどこかに存在していたのかなぁ…物語・物語と思いながら…なお手さぐりで記憶の世界を彷徨し羨ましがっている私がいるんですね。だから一つ一つの出来事がというより作り上げられた主人公の環境が一番心に残ったのです。 彼の一日一日を取り巻いている現象や人々やなにやかにやが…切ない初めての恋心の17歳あたりをくっきりさせて…こうして力や心を振り絞って育って行けるなんて…悲しいことがいっぱい起きても大丈夫なんだねあの年頃はきっと…?そう思わせてくれる。
生きている商店街なんて、この広い東京でも、もう指で数え切れるほどしかないんですもの。懐かしさをくすぐられちゃって…あの写真屋さんにもこんな飾り窓あったなぁ…って。あのベレー帽をかぶっていたおかしな写真屋のおじさん…もう生きていらっしゃるはずはないんだけど…等とあの当時の店々を心に思い描いてしまった。
なんだか出来の良さと表情がそっくりのお子ちゃまを宮部さんの作品では散見するようで…なんでだろう? なんかふっと手塚さんのヒョウタンツギ?を思い出しちゃった。

漂砂のうたう

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漂砂のうたう 漂砂のうたう
木内 昇集英社 2010-09-24
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木内昇著

遊郭といえば吉原、その様々な時代を描いた小説はいくつも読んでいるけれど…またはその末にあるというか対極にあるというか場末の、または土手で何とか生き抜いていく女たちを描いた小説も多々あるけれど…根津遊郭の話は記憶にないなぁ…。 しかもそれが明治になって、明治も10年という妙に半端な?不思議な時を舞台にして、主人公が男、店の立ち番をする男というのだから…。維新の命を懸けた先駆者たちはあらかた亡くなり、生き残ったのは権力を手にしたものと何とか時代に乗り遅れまいとあがくもの、あがく気力も奪われてただただ流れていくもの。 その時間の流れの中でただただ転がっていく小石もわずかずつ岸辺を洗いかすかな痕跡を…残すのだろうか…残せるのだろうか?
何しろ主人公が、御家人崩れのこの青年という字の持つ若々しさも青臭さももうすでに失って年だけは若くても若さのかけらもとどめていないような…根もなければ意地も消え果たような男なのだから…読んでいて…いらいらが募る。
しかしこの男を翻弄するこの町をうろつく人間たちの綾なす怪しさが奇妙な夢心地に読む私を魅了する。
気が付けば主人公にいらだつあまり…私は龍造に惚れ、円朝に惹かれ、時代の荒波を漕ぎ渡ろうとする群像にめまいしていた。 そしてこの小さな悪党たちの中で…やっぱり女だね…地に足をつけて生きるものは…女ですよ。…と、頷いている。 主人公を甘やかす遣り手も、そして何より小野菊のなんかすっきりとした立ち方のいなせな涼やかさ。 何と魅力的なことか。  自由という旗印で男たちは舞い上がるけれど女は得るべく得る!
なんとなく松井今朝子さんの「吉原手引き草」のあの葛城を思い出してしまった。 やるねぇ…花魁って流石!な人たちだったのか!   「茗荷谷の猫」に次いで楽しませていただいた。

モルフェウスの領域

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モルフェウスの領域 モルフェウスの領域
海堂 尊角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-12-16
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海堂尊著
さて、今回のキーワード?は「コールド・スリープ」
未来の医療水準をあてにして、治療方法が確立するまで冬眠して待つ。…という医療?
SFにある命題ですが…現実にこんな日は遠くない…なんて気がしていますが。
実際できたとして、そこまで生にしがみつくだろうか?という単純な疑問が私にはありますけれどね。目が覚めたとき周りは元の私の環境じゃなくなっているなんてリスク怖すぎますもんね。 そう私は何より臆病者なんです。
ですからこの主人公涼子さんには…頭が下がってしまいます。
母より母性豊かで、恋人より忠実。 こんな愛!そしてこのような知性、地上にあるのだろうか?ってくらいに。
今回もお役人のあまりの保身、狡さ、事を消す才能?…さまざまな無能を医療の進歩の裏側で滞っている問題をカリカチュアにして見せていただいたような。 今の内閣のというか政治家の有様のひどさの上の官僚の情けなさ…にぴったり重なって来るから…いやになりますよ。
リーダーには先を走ってもらいたいものです。 あらゆる意味で…時代を追っかけてもらいたくありませんよね。 今回は白鳥さんではなく先端技術者の西野さんが狂言回しで…いつもながらそのパワーに引っ掻き回されつつ…なんだかまた今の医療レベルと厚生省のレベルの知識をしっかり得てしまったような…気分!
でも、ちゃんとドラマとしても、眠るアツシ君を見守る涼子さん、涼子さんと西野の丁々発止、さらに曽根崎さんの人間味…などなど楽しめました。

阪急電車

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阪急電車 (幻冬舎文庫) 阪急電車 (幻冬舎文庫)
有川 浩幻冬舎 2010-08-05
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有川浩著

グッドタイミングで図書館から届いたので、映画を見に行くことになったとき、ちょうど半分まで読み終えたところだった。 で、私だったらこんな脚本にするかなぁ…という方に頭が行ってしまった。 なんか程をよくしすぎて…だってこの本が実に程がいいのだから…もう少し押し込んでもいいんじゃないか?って気がしてしまったのよ、あ、映画の方ね。
で、この映画、保護司をしていらっしゃる人と見に行ったのだけれど、彼女の日常とほとんどシンクロしてしまったのが…ちょっとできすぎだった。 宮本さんの演じた醒めた常識的な口出しのきちんと!できるお祖母さんは、そのまま一緒に行った人だったから。
案の定、見終わったら「あれ、普段の私がしていることじゃないのね。何が珍しいんだか」と彼女は言った。
つくづくこのごろ人は絆を、縁を求めているんだなぁ…。震災の後だったからなおさらヒットしたのかもね、この本も映画も。本当は都会に出てきて、都会で住んでいる人の多くは濃密すぎる近所付き合いはごめんです!っていう人だったはずなのに。
田舎はうるさくて…この都会の無関心さがありがたいと思っていたはずなのに。 誰かが誰かに声をかけて、それが心に響いたから、今度はその人が他人に声をかけて…連鎖反応をしていく。それって一昔前の東京では当たり前のことだったのに。っていうか近所付き合いってそういうものだったはずなのに…なんか新しい優しい世界を見ちゃったような気がしている。 近所のおじさん、おばさんって、私が子供の頃はあんなもんだったよ。お隣のおじいちゃんは縁台に座っていて通っていく子に声をかけたり怒ったり。おとなしい私でさえ弟の面倒をちゃんと見ているかっていつもチェック入れられていたっけ。
近所のおばさんに手をひかれたり、叱られたり…あああ、あのおばさんたち、おじさんたち、私の母のように、もうみんなお亡くなりになったんだろうなぁ。
そして今、彼女が普通にしていることが…奇跡…って言われるんだ!震災後の当分だけの現象だろうか?それとも取り戻したい何かに気が付いたのだろうか?
それだけ声をかけるというただそれだけのことが普通じゃなくなっているんだ…そのことに奇妙なほど実感があった。
奇跡じゃないよ、これは郷愁!!!

本と映画を一緒に読み見て…しまったので変な風に感想が一緒になっちゃった。

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有川浩ポニーキャニオン 2011-10-28
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無花果の実のなるころに

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無花果の実のなるころに 無花果の実のなるころに
西條 奈加東京創元社 2011-02-24
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西條奈加著

神楽坂が舞台だった。 なんだか知っている土地が舞台だと構えてしまうのかね? なんだかこんなテイストのTVドラマを数年前に見たような気がする。 あのドラマと妙に気配が似ている…と、思って、ああ神楽坂のイメージがこういう風に定着しているのかもと思った。 土地が醸し出す雰囲気は確かにあって、その感覚を共有できることも確かに多い。
先日の「浅草の女」でも、あれはどこの街の女でもいいのだけれど三社祭を背景にしたので、浅草の全国共通イメージの土地の女が立ち上がってしまっていた。 それはそれですごいんだけど、現実の浅草の人だった私からしても気恥ずかしいくらい、彼女は浅草の女だった。  で、小気味がすごくいいこのおばあちゃんお蔦さん、そのまま八千草さんにするわけにはいかないけれど…神楽坂芸者って、そうかこのイメージなんだ!と感服しちゃった。 私も人のことは言えない。 妙にこんな人々が神楽坂に本当にいる気になっている。 大体みんな気風がいいし、おせっかいで、気配りが効いて、程よいご近所関係ができているんだね。 浅草の店の客人たちもそんな気配りのいいなじみ感が良かったんだけど。
地名がしっかり実在だと良くも悪くもその土地の人ってイメージが共感できればのめりこめるんだなって思った。
それはともかく、この近隣の事件にかかわるお蔦さんと孫の関係が今実に求められている共存関係で、これは親子じゃなくて、ワンクッションある「程」が心地よいんだねぇとタメ息が出た。 親子関係は難しいんだけど…私も孫がいたらこんな風にうまく…ふふふ…あしらえるのか? いいなぁ!とこっちは大きなため息が出たのでした。

浅草の女

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浅草のおんな 浅草のおんな
伊集院 静文藝春秋 2010-08
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伊集院静著

3月11日の東北震災の後の自粛ムードの中…その後…自粛云々の是非はまだ収まりがつかないが、各地で色々な行事が自粛になったり、決行が決まったり、これというマニュアルがあるわけじゃないから…ドタバタだという気はするものの、自粛になった行事にがっかりしている向きも多いことだろう。
お祭りは土地の人のものだし、土地の人の祈りでもあるのだから…残念な気が強いけれど、まぁ仕方ない部分もあるなぁと、無理やり納得させられた気分でもある。
大体私はもう土地の人ではない。
しかし、もう父も浅草まで神輿を追いかけていく元気もなくなって…私もあと何回の宮神輿を見れるか?と思うと…これがまた妙にさびしい気持ちになる。
そんなわけで来週はほんとだったらお祭りなんだけど…と、思いながら急に浅草散歩を思い立って出かけてきた。
そして、浅草のいつにないというか久々の人通りの少なさに、仕方ないかもと思いつつ、またそれだけに浅草の人はつらいだろうなぁと思ってしまった。 その流れが…この本である。 たまたま図書館で目に付いてしまった。
たぶんこんな時期でなかったら手に取らなかっただろう。
この作家、一度も読んでみたいと思ったことがない。食わず嫌いをそのまま続けていただろう。
それが拾い上げてぱらぱらとめくったら…まさに三社祭のところが開いて、「浅草で祭りと言えば三社祭りしかありません」
それで持ち帰ってしまった。 なんだかよその土地の人はみんな浅草の女ってこんなだと思っているんだな(主人公は浅草の女に育った?んだけど)…と、思いながら本を読み終えた。私は一度も大人にならなかったから、浅草の女にもなり損ねたんだなという気が妙にした。
どっちにしてもどこに住んでも、女になる人は女になるんだけど…だから題が悪いわ…と思っている。 もちろんこの小説の中に封じ込まれた情緒には現実の浅草の女だった私は負けたんだけど。これは余りにも外の男が考えるタイプのステレオタイプだよとも思っている。
三社祭が来年は無事に行われますように!

神様のカルテ

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神様のカルテ (小学館文庫) 神様のカルテ (小学館文庫)
夏川 草介小学館 2011-06-07
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夏川草介著

お医者さんの作家ってたくさんいらっしゃいますが…またお1人、発見いたしました。  現役の二足の草鞋様です。  最近読み続けている海堂先生が、医術的なことで言いたいこと・主張したいことをエンターテイメントの濃厚な味付けで繰り広げてくれて、私は先生の説得力に感化され続けているところですが、この作品はだいぶ趣が違います。
どちらかと言えばお医者さんの在り方について柔らかに提出してくれていて…私はころりとこの世界の…先生のたぶんお人柄?にしびれました。
螺鈿迷宮の桜宮病院の院長先生と比べれば…漱石先生は上品の極みです。 オーソドックスで気恥ずかしげで針先をたわめたウィットで…いやーん可愛い!って看護婦さんたちは本当は思っているのでしょう。
いずれにしても地方医療の気の毒なくらいの医師不足。ここでも、またしても、政府の無策を嘆かずにはいられません。
こんな良心的で人類愛に献身する先生を見捨てていいのでしょうか。 遠からず、先生の奮闘だけでは先生ご自身も破綻しますよね。  お願いだから、先生、5年ほど医局に戻って最先端?(やっぱり必要でしょう?)を学び(先生ご自身もリフレッシュして)、その医療をまた現場に行かすべくお戻りください。 さもないと先生が持たないよー、奥さんは最高の人には違いないけれども…これじゃ二人ともくたびれて伸びきったゴムになっちゃうよー!
自分が不治の病気になったら「一止せんせーい!」って駆け込むくせに…でも先生倒れないでください。と、切に祈って「あーあ、こういう先生が普通のようにすべての病院にいてくれますように!」と祈ったのです。医局3年地方救急医3年、すべからく交代してあたるべし…なんて簡単にはいかないのかなぁ。 この町のこの寮の人々みたいな素晴らしくやさしい個人にだけ負担を負わせすぎていて…頭が上がらない。 うかうかしてたら映画になっちゃって、見に行っちゃって、友人が「何がって音楽が最高だったね!」「信州松本の景色が最高だった!よ」 本と同じで映画も良かった!と付け加えておきます。

神様のカルテ 2 神様のカルテ 2
夏川 草介小学館 2010-09-28
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神様のカルテ ~辻井伸行 自作集 神様のカルテ ~辻井伸行 自作集
辻井伸行avex CLASSICS 2011-07-27
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神様のカルテ オリジナル・サウンド・トラック 神様のカルテ オリジナル・サウンド・トラック
サントラ 松谷卓ERJ 2011-08-24
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廃墟に乞う

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廃墟に乞う 廃墟に乞う
佐々木 譲文藝春秋 2009-07-15
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佐々木譲著
主人公は休職中の刑事仙道孝司。 これがまた見事な繊細な感性と思考力と技量を持った見事な!刑事。  休職中の彼を頼って持ち込まれる事件が6件続きます。
私がこの作品で一番心に残ったのは北海道そのものでした。 現在の北海道の地方が寒々と荒涼と現れてくるその描写でした。 地図を眺めながら読むことができます。 よく出かけたニセコあたりの山並みを懐かしんだり、栗山町・栗沢町・岩見沢…エー、どの街が吸収合併?なんて考えたり、浜頓別~江差へかけての海岸線を思い浮かべたり、十勝平野の広がりを思い起こしたり、静内~日高へかけての牧場地帯の美しさを心に描いたり…。
外国人ときしみを生じている街、消え去った廃墟の残る炭鉱町、寂れかけた漁業の村…ですからトーンは大体の作品に通じて暗く陰鬱です。
そして、この刑事ゆえに問題を抱えこんで傷ついてしまった刑事を通して、様々な殺人事件というか殺人そのものが人間にどんな傷を負わせるか、なぜか具体的に身につまされるように感じさせられました。 描かれたのはこの大地とそこでの人々の狭い世界とそれ故に否応なく起こる軋轢とその結果による殺人。そしてそれに向き合わなければならない警察の人間たちです。
殺人などという凄惨で悲劇的で悪辣でおぞましいものと否応なく向き合わされる職業って…絶対必要でありながらも人間的ではいられないものなのではないかなぁ…少なくともどこかで精神を病まなければやっていられないものなのじゃないかと思って痛ましく読んでいました。 その意味ではとても読みごたえがありました。 非常な世界に生きながらそれでも人間と向き合って再生していく主人公の人間性でしょうか。
佐々木さんの警察小説は好きだ!と、思って読んできました。
「笑う警官」の佐伯さんも良かったですし…3代にわたる警察一家も魅力的でしたし川久保巡査も好きです。でもこの作品で描かれた仙道さんの繊細な知性と痛みを知る人柄が最高に魅力的でした。 明日?復職したら…その時はどんな刑事として現れるのでしょうね。 この休職中の在り様が素敵だっただけに気になります。

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