小暮写眞館 (書き下ろし100冊) 小暮写眞館 (書き下ろし100冊)
宮部 みゆき講談社 2010-05-14
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宮部みゆき著
「三島屋変調百物語」の「おそろし」より「あんじゅう」に近い方の雰囲気を持った現代ものだ!って感じを受けながら読んだのは私だけでしょうか?
物語の底の方に鉄壁の?素晴らしい心根の人々がガッコンと控えていてくれる安心感が…微妙な人生の不思議な絡まりあった糸をほぐしていく過程での安全弁になっていて…どんな不思議が転がってきても主人公の縁の下は完璧!って安心感があったからかな。
主人公のある意味冒険は成長をもたらし、仲間の結束力を高め、またその存在のありがたさを痛感し、その彼らをも癒していき…という人柄の豊かさかなぁ…なんなんだろうな、この居心地の良さは…と、思ったからかな?
一つ一つの霊だかお化けだかこの世に残った念だか、生きている人の心の残像だとか…まぁ…あり得ないことどもを腑にに落としてしまう手際というか…読んで満足させてしまう力はすごい!と、また私は感心して、物語の高校生の季節を堪能してしまった。キーワードは「思いやり」に尽きるんだな。
こういう子供たち…私のあの時代にもどこかに存在していたのかなぁ…物語・物語と思いながら…なお手さぐりで記憶の世界を彷徨し羨ましがっている私がいるんですね。だから一つ一つの出来事がというより作り上げられた主人公の環境が一番心に残ったのです。 彼の一日一日を取り巻いている現象や人々やなにやかにやが…切ない初めての恋心の17歳あたりをくっきりさせて…こうして力や心を振り絞って育って行けるなんて…悲しいことがいっぱい起きても大丈夫なんだねあの年頃はきっと…?そう思わせてくれる。
生きている商店街なんて、この広い東京でも、もう指で数え切れるほどしかないんですもの。懐かしさをくすぐられちゃって…あの写真屋さんにもこんな飾り窓あったなぁ…って。あのベレー帽をかぶっていたおかしな写真屋のおじさん…もう生きていらっしゃるはずはないんだけど…等とあの当時の店々を心に思い描いてしまった。
なんだか出来の良さと表情がそっくりのお子ちゃまを宮部さんの作品では散見するようで…なんでだろう? なんかふっと手塚さんのヒョウタンツギ?を思い出しちゃった。