月と蟹 月と蟹
道尾 秀介文藝春秋 2010-09-14
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道尾秀介著
この作品をハラハラしたり不気味さを感じたり、怖くなったり気持ち悪く思わないで読める女性は少ないだろうな…と思いながら…いやだなぁ…という気持ちを抱えながら…止めよう、放棄しようと思いながら…それでも読了してしまった。  この子供たちの明日が私の後を追ってくるようで、暫くの間夜中に目が覚めると彼らのあの先を思いながら寝ていたことに気付かされた。
子供の頃残酷な遊び…カエルを膨らませたり、叩きつけたり、昆虫をむしったり…そんな遊びをした子供は命がどんなにはかないか脆いか知る…なんて聞く。  全くの東京の下町でもそういう小動物はいたことはいたが…そんな遊びをしたこともない私にはこの子供らのヤドカミ様遊びは背筋がぞわぞわ不快で気持ち悪くて…でもしている子どもから目が離せない…その状況のままで本を読んでいた。 若いのに…なんていう作家だろうとまた思ってしまった。 こういう資質は何処から生まれるのだろうか?この作家の作品を読むたびに最後にはこう考えさせられる。
私の10歳は…?なんて問うても、そして記憶の底を這いずり回っても、ここで繰り広げられる子供の世界のリアリティには遠く及ばない。 知らない子供の世界がここにどーんと押しつけられて…心を占領されてしまったようだ。 みじめで卑怯で弱弱しくて強くていじけてていじましくて哀れで逼塞していて痛々しい。 こういう「時」はどんな風に子供を育てるのだろう? こういう大人たちは子供にどんな力を及ぼすのだろう? 人々も風景も状況も何も心にはタッチできないようでいて恐ろしく影響を与えている。 その恐ろしさ。 毎日が毎日で変わらない繰り返しが重さになっていく…囚われきっていた真一の一つの時代に区切りがついたようで…ほっとして彼らがこの町を出て行くのを見送った気分だ。 どうぞ…何がどうぞ!かわからぬままに、私はどうぞ!どうぞ!と祈っている。