さまよう刃

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さまよう刃 (角川文庫) さまよう刃 (角川文庫)
東野 圭吾角川グループパブリッシング 2008-05-24
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東野圭吾著

本屋に行っても、図書館資料検索しても、この作家の作品の目だった多さ、(正月用?に)積み上げ方の半端じゃなさ、本当に売れて、読まれて・・・凄いなぁ・・・感歎するばかりです。本当のところ私の気分はガリレオの新作待ち(まだ700人ばかり)なんですけれど・・・
薬丸さんの数冊だって、苦しいのに・・・なんでガリレオ書ける作家のこの手の作品を読まなくっちゃならないのだ?と自問自答しながら・・・
それでも惹かれてしまう何かをこの作家は確かに持っています。
こんなテーマの作品を書いても(「赤い指」「ダイイング・アイ」だけですけれどね、私の読んだのは)エンターテインメント性って言うのは持ち味なんでしょうね。スピード感、ドキドキ感、もあれば主人公への共感の呼び込みも完璧。一気読みさせる迫力十分でした。
多分子供を持った親なら・・・子が被害者になっても、加害者になっても作品の中の親たちのような行動を取るだろう自分が見えるようでした。
実際の経験が無いから建前を言う自分と本音を言う自分を両方見ながらこの本を読んでいるわけですが、だからといってそのあいまいな部分が和佳子さんと被れば読みやすかったのでしょうけれど、そうじゃなかったので?彼女の部分がいらだちになりました。
長峰の心の底にこびりついている建前の部分を彼女は象徴していたのでしょうか・・・とも思いますが。
丁度ちょっと前に読んだ薬丸岳著「虚無」を思い出しました。
犯罪被害者が犯罪者を裁いていたら・・・と言う建前での少年犯罪、精神疾病障害者犯罪の裁きは現在余りにも実情にそぐわないというか被害者心理を逆なでするだけのもののような気がしています。
再犯者、更生不能者、多発する犯罪を阻止できない世の仕組み。それにもかかわらず、絶対何処かに何か対策があると思いたい、何か対策を講じてと祈る私たち親。
警察は何とかできないのか?出来ないのよ。でも警察官も人間で何とかしたいと心の中では思っている(人も居る)のよ。でもそういう組織じゃないのよ。世の識者って対策を立てる人ではなくて、対策を批評する人のことなのよ。弁護士って、少年犯を被害者から隠す人なのよ。ああああ、それじゃやはり犯罪被害者の関係者が何とかするしかなんとも出来ないのじゃないの・・・やっぱり?という渦の中に溺れている私です。
「虚無」で佐和子さんになると思った私は、ここでは長峰になるしかないと思いましたね。密告電話のからくりが分かった時、警察にも心の分かる人も居るんだなと素直に思った私は警察への期待を頭のどこかに摺りこまれているお馬鹿なのかもなぁ・・・。
マンションに昨日越してきた夫婦がマスコミから密かに逃げている犯罪者の親かも知れず、またその反対かも知れず・・・と、なにも隣の住人を知らずに安閑と生活している身には、警察はまだ信仰の対象なんですよ。本を読んで厭な世の中だと、救いの無い世の中だと、真剣に思い不安に苛まれている私も、その直ぐ何分か後には其の事実をすっかり忘れてニコニコ外出する私も、ある意味イカレテイル?現代人なんです。・・・って、じゃないと生きていけないって・・・
 

カイシャデイズ

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カイシャデイズ カイシャデイズ
山本 幸久文藝春秋 2008-07
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山本幸久著

「ココスペース」という会社、好きです!実際は内容を読んでいると「今現在、この会社はきっと苦戦しているだろうな・・・こんなひどい不況だもの、しかもこの業界?」と、思います。でも多分この会社はきっとリストラなんて言葉会社の中に立ちいれさせないだろうな・・・という信頼感まで持っています。根拠?根拠なんて無いんです。けれど、社長を知って、彼らを知れば、誰が彼らの一人でも首を切れるというのでしょう。ちゃんと「仕事好きですか?」「絶対彼ら好きですね!」と、私が答えてあげちゃいますものね。もっとも業績や給与を上げていくのまでは・・・保障できませんが。
一昔前の日本の家族的企業を思い出させます。業績主義になったことで年功序列主義より優れた結果が出たことは確かですか?旦那たちが自慢げに「うちは・・・」と言っていたときの会社より今の会社たち?の方が優れていますか?明日は首を切られるかもしれないのに?隣の人より評価が低いわけを納得できますか?付いて行きたい人が居ますか?・・・不安山済み・・・
さて、今息子たちの世代の人たちにとって会社がそうかというと?です。彼らも夜中まで働いて一生懸命ですけれど・・・「うちの・・・」と自慢げに言うでしょうか?言えるといいなと思います。言えますように!
まともな時間に帰っているように見えないタカさん!帰ってこなくともこのタカさんの奥さん旦那を切り捨てたりしませんよ・・・多分。だって仕事をしているタカさんってかわいいんだもの。そのオーラは厭でも家族を巻き込んじゃうでしょ?うちがそうだったもの?無理しちゃったわよ。
もっともね、タカさんが家に帰ったとき、もぬけの殻になっているのが「今」だって気も少ししていますけれど。可哀想に。
作品の3本柱タカ・クマ・シノさんズ+大屋さん+小田さん+巨瀬社長以下「しょうがないなぁエザっち」に至るまで、私結構好きです。会社で働いている人たちが皆人間として一人一人立っていて、ちゃんと人間として遇されていますもの。「この会社好きです!」になるわけです。「仕事楽しいです?」にもなりそうです。社員の個性が生きる会社って大きくなっちゃ駄目なんですかね?作業着着ている彼らって動けて個性がきらきら粒立っています。その個性を殺さない限りこの会社は生きていける、そんな日本であって欲しいなぁ。
原日本の、人間による、人間のための会社ってなんかよくない?仕事場は海外でもいいんだけどさ。あー、でも内需の拡大は難しい日本の行く末ちゃんと考えている人いるかなぁ・・・
今年最初のブログがこの本でよかった。ほっとする世界・・・回収っぱぐれの施工費があっても。

ひかりの剣

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ひかりの剣 ひかりの剣
海堂 尊文藝春秋 2008-08-07
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 海堂尊著

いつもながら・・・面白かった!この一言で片付けてしまいたいと思うほど間違いなく面白いのです。この作家の作品は。一気に読んでしまいますが・・・特にこの本の場合、東城大学医学部シリーズとしては異色です。医学の、医者の問題を提起していないわけじゃないのですけど・・・だって今、私は「ヘー、そうなの?この頃厚生省はそんな事を考えていたの?ヒョットすると優秀な産科医が減っているのも、小児科医が足りないのも、家の近所には皮膚科医院と歯科医院ばかりが開業しているのも、遠因はそんなところに?」なんて考えたりしているのですから。「国を導く、国策ってやつ?失敗したのは誰が責任取るんだ?」「当然!自分たちよ。」なんですけれど・・・見るべきところを見ていなかった自分たちですね、反省しなくちゃ。子供たちよ、将来を考えて政治家を責任持って選びなさい!
まぁ、それはそれ、措いておいて、この作家、時代ものも書けそうな豪腕!剣豪小説?ぴったりかも。白鳥さんの袴姿?見てみたい。一刀両断なんて、彼のためにある言葉?
青春スポ根小説も書けそうじゃない?もっとも変にしらける恐れはあれども。高階先生みたいな鵺のなめくじみたいな偉人が抜け駆けるオソレもあれど。でもそれも楽しめそうじゃないの。
「ひかりの剣」の「ひかり」って朝比奈さんが出てきた時にはここか?と身構えたのですけれど・・・なんか違ったのです?
この物語の場合、朝比奈さんを出す意味って・・・にぎわかしの彩り?
おじいちゃんを出したいための布石に過ぎないのよねぇ・・・それに出てきたときの期待感がポシャル感じ・・・これって白鳥さんの助手のパターンみたいなもの。そうかこの作家の弱点は女性を描くことなんだ?そうか、課題を見つけてあげたぞ!みたいな乗りのいい気分、この元気感がこの作家の与えてくれる最良のものかも。どんな課題が医療現場に山積みされていようとも、絶対何とかなっていくさ、厚生省に白鳥さん居りせば?この本を読む大勢の読者が居りせば?
素直に頭にしみこむ感じ「厚労省」について考えよう。「医療制度」について考えよう。「病院と医者」について考えよう。ついでに「後期高齢者世界の医療」についても考えよう。

恋いちもんめ

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恋いちもんめ (幻冬舎文庫) 恋いちもんめ (幻冬舎文庫)
宇江佐 真理幻冬舎 2008-06
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宇江佐真理著

「この頃時代物を書く女性作家が増えていないか?」本屋で見つけたからためしに買って読んでみた。」と、父が電車の中で読み終えたからと置いていった。・・・って、この頃?良く見てみると彼女は私と多分同学年。決して新鋭ではないと思われますが。そういえば新聞の広告欄でこの作家の名前を見るようになってからでも大分経つ様な?。でも縁が無くて?多分まだ出会ったことが無かったのだろう。こういうのもひとつの出会い!
そうだなぁ・・・ごく普通にありそうな家庭、ありそうな職場?環境、ありそうな恋愛・友人模様、そうだなぁ・・・「やっつくれ」とか「滅法かいもなく」とか江戸言葉らしいのが多量に使われていなければ?時代ものじゃなく時代に囚われずに読める!っていうか、人間は変わらないものだなぁ・・・でも、舞台をお江戸にした分柔らかくって潤いがあって情緒を楽しめて、得した感じかな?と、読み始めた。
ところが不思議だなぁ、出てくる女性たちは普通に泣いたり怒ったり感情の動きも、行動もごく当たり前の娘たちなのに、今すぐそこで恋をしているかもしれない現代の女性たちと変わらないような事をしているのに、読んでいるうちに‘より’可愛くいじらしく思えてきて、これはやっぱり意地っ張りでも、強情でも、意地悪でも、それでも滅び去った大和撫子たちのお話なのかもなぁ・・・なんて最後には思ってしまった。それだけ現代って恋や愛が難しい社会になっているってことかなぁ。
源蔵とか佐平次とかおじさんたちが意外に生き生きしていて物語が膨らんで現実的に思えたのは、こういう人物の書き方が丁寧だったからかな。その分火事以後の栄蔵の行動が妙に作られすぎで・・・ちょっとしらけたかも。人情話の作りすぎ、せっかく自然な成り行きで来ていたのに惜しいような気持ち。それとかなり後口のいい物語に仕上がったのに、おきんさんを死なさないでもらいたかったなぁ・・・どう考えたってその必要ないのだもの。

つむじ風食堂の夜

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つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫) つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)
吉田 篤弘筑摩書房 2005-11
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吉田篤弘著

例えば寒くなってきた早朝、というか夜中うんと遅くにふと忘れていたことに気が付いてベランダの花に水をやりに出る。月が凍っている。ため息をつくと小さな魂がふわっと白く憧れ?いずる。その大きさに見合った、というか、その枠にすっぽりと収まったような本だった。丁度私のサイズ!めぐり合ったのは当然のような、奇跡のような。でも見つかった!という感じ。同類だ。
この作家の本はまだ読んだことが無かった。ただ「極上掌篇小説」という30人もの作家の本当に掌篇作品を30も並べた短編集でこの作家の作品を見たことがある。・・・そしてその作品は・・・記憶に残っていない。少なくともその作品を読んでこの作家の小説を図書館で探そうとはしなかったのだ。
なのに、この作品は私のつぼに填まった。ぴたりと!どの部分を取り出してもOK!こんなことはめったに無い。
いちいちこだわって感想を言わずにすむありがたさ。そう、そのまま読んで味わえばいいのだもの。つむじ風食堂の灯を。月舟町の人々を、その店に集ってなんとも嬉しい会話をする人たちを、夜の街に明りを灯す果物を。雨降りの先生の過去も今も、ひょっとしたら未来も。
ところで困ったのはこの作家のほかの作品、読んでみるべきでしょうか?この作品だけをお友達と呼んで大切に心の隣にそっと置きますか?読めば・・・芋蔓式にお友達がふえるでしょうか?

トリップ

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トリップ (光文社文庫)
トリップ (光文社文庫) 角田 光代おすすめ平均
stars普通(?)の人たち
stars現実とファンタジーの境界線を楽しみたい。
starsここではない自分の居場所

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 角田光代著

東京近郊の町で繰り広げられる日常。彼女を彼女が見て、その彼女を彼が目撃し、その彼を・・・と言う風に短編で次々に一人一人の人生の断片が・・・と言うか・・・断章を10、私が読んだわけですが・・・この不思議な日常。
日常に過ぎないのだけれど・・・この浮遊感?・・・いや、なんだろうこの感じ・・・と、捕まえ得ないじれったいような・・・靴下数枚重ねた上から足の裏を掻くような遠さ?いや本当に遠い!
いやいやいや・・・この人たち・・・どこへ行くのさ?行きつくことないんだろうなぁ・・・の「・・・」部分がすべて?みたいな?の「みたいな?」の「?」部分?に形を当てはめようとしてみたらこんな人々になった・・・みたいな。で、これが凄く今っぽいから困っちゃう。
私ってこういう世代から遊離しているの?それともアッチが浮遊しているの?さぁ、そこのところの不安がじりじり背中に這い上がってくる。
こんなごくそこにいるような人たちの内部がこんなで・・・袖摺り合わせて行き合って、しかもお互いに「生きあって」いるなんて変!
彼らが自分の周りを見て描写する自分の世界の断片の無機質さがもう「私たち」では無い事をじりじり場所取りして迫ってくる主張になっている。
しかしそれでも彼らは彼らを見ている。見ていて何か思うことによってその人の生を何とか形作っている。非常に消極的な否定によって?いや、やっぱり理解は出来ないかも・・・心の底をさらいつくして見れば何処かに洗いざらしたカスになってこびりついているかもしれない?イヤだな!
「ここにいる理由を見つけられないらしい。」「許可を得ていないと感じる」そうか?理由が無ければいられないのか、許可が無ければいられないのか・・・それってそもそも得ている人っているんだろうか?
「秋のひまわり」のテンちゃん、「あなたは、あなただけは居場所を確保してね。」と祈ってしまった。
こんな風に見えちゃってそれをこんな風に豊かな文章で書きこめるって・・・どんな神経なんだろうなんて・・・変にワクワクしてしまう。
前に1作読んでいるのだけれど、この作家好きか嫌いか決められなかったので、短編を選んでみたのだけれど・・・どこか目を離せない、でもどちらかというと目を離していたい・・・
目を宙に浮かして、カラッと軽い声で、裏声の手前の高さで、抑揚を捨てて・・・読んでみる?
心の襞って襞だからいいんだよね。伸ばしてアイロン当てちゃったら目も当てられない。

こころげそう 男女九人お江戸恋ものがたり

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こころげそう 男女九人 お江戸恋ものがたり こころげそう 男女九人 お江戸恋ものがたり
畠中 恵光文社 2008-01-22
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畠中恵著
 

「心化粧(こころげそう)」
口には言わないが、内心恋こがれること
江戸語辞典(東京堂出版)より

「恋は仕勝(しがち)」―恋愛は自分勝手にするものである。恋愛は周囲の者に遠慮せず、思い通りに進むものだ、の意

「乞目」―出て欲しいと望んだ采の目

「八卦置き」-八卦見。易者。多く大道で商う

「力味」―意地っ張り、強がりのこと

「こわる」―強がる、強情を張る
「幼なじみ」

と、各章は「幼なじみ」を除いて江戸語辞典から説明がされている。
この作者は今まで読んだ作品から感じていたのですが「数多(あまた)」という言葉がお好きなようです。多出します。気になります。引っかかっていました。
江戸の言葉らしい言葉を多用することで雰囲気を一層盛り上げようとする意図は分かりますけれど、やりすぎじゃない?こんなに気になるんだから・・・とまぁ。
そのセンスがこの作品の章題に結実?したようです。
今まで読んだ「しゃばけ」シリーズと底を流れるトーンは同じです。
ユックリとおだやかに、コッチは成り行きに気が付いているのに・・・お願いだからもうちょっとテキパキ、シャキシャキ進めてもらえないでしょうか?って思う部分もあります。
でもその長閑さを、お江戸風をファンは愛して選び取るのでしょう。
本当の江戸っ子ってきっとこうではなかっただろうけれど・・・もっとちゃきちゃきしてたかも?でもお江戸言葉に彩られて今よりスピードの遅い、表現のあいまいなゆったりとした情があって・・・「昔はよかった!」と、こうだったと思いたいファンの一人なんだな・・・私も。
現代に出てくる幽霊は絶対こんなに穏やかじゃないもの。トラウマとストレスと狂気に彩られて。でも200年昔は・・・って思いたいファン!恋や愛に敏感な女の子、鈍感な男の子、訳知りでイナセなお兄ちゃん、甘やかされたかわいい世間知らずなお嬢ちゃん、やり手で世話好きのお姉ちゃん・・・皆生き易かった時代があってもねぇ。幽霊だってまだ風情があった!よ。
そういう人々の心が行き違ったとしてもねぇ・・・殺人だって、まだ柔らかかった時代が・・・って、それは困るよ。

話は変わりますがTVの若旦那、ちょっと可愛いじゃありませんか。

ブルーベリー

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ブルーベリー ブルーベリー
重松清光文社 2008-04-22
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重松清著

なんていえばいいのか、軽く読めてしまって、気分が分かるような?
分かったような気がするような・・・なんてことは無いながらも、悪い気分ではないような・・・だからといって凄く共感できるって感じでもないのだけれど・・・う~ん、悪くないねぇ・・・
ブルーベリーね?分かるようだわ?確かに思い出って甘酸っぱい?
それもかなりいいところ?甘過ぎもせず、酸っぱすぎもせず?
フッと心に浮かんできた思い出はそれと覚えていたものでなくとも、フッと過去を身近に引き寄せて、「あの頃」を懐かしいもののように色付けてみせる。
それもきっといい人なのね?って思わせる程度には優しく、柔らかく、そう甘酸っぱい。
過ぎた時代にはもっと酸っぱすぎるものや、苦すぎるものや、とっさに顔をそむけたいものもあるだろうけれどなぁ・・・この程の良さがこの作家の持ち味なのかもなぁ・・・
「カシオペアの丘で」はしつこすぎて苦くて・・・「青い鳥」は上手すぎだけど実にほどがよく優しくてなんとも言えずによかったけれど、
これはある意味薄いところが何気なく「思い出は思い出に過ぎない」と安心できて・・・このほどもいい。「ブランケット・キャッツ」も綺麗な心洗われる、心休まるお話でよかったし・・・。
この作家に意地悪されることは無いのかもなぁ・・・安心してお取りおきしておける由緒正しい品行方正な作家かも?なんて書かれると作家はいやだろうなぁ。でも今のところ、読んだものは、そうなんです。誰にでもお薦めできるけれど・・・本気でお薦めできるのは「青い鳥」かな。
で、暇があったらお読みなさいな、なんとなく安らぐわよ。みたいな?一話一話、同じ経験は無くとも相通じる何かは、何らかの記憶の欠片はあなたの人生にもきっと思い当たるわよ。みたいな?
ただ、最後の2編、特に「人生で大事なものは(けっこう)ホイチョイに教わった」のナカムラ君!いいなぁ。私より15年?若い世代の青春は分からないけれど、たどり着いたところはとてもいいなぁ。どんな青春を送っても成熟はそれなりに?やってくる!し、いいんだねぇ。

虚無

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虚夢 虚夢
薬丸 岳講談社 2008-05-23
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薬丸岳著

「天使のナイフ」「闇の底」についで三作目です。
犯罪被害者を描いて着実に丁寧に対称に迫る筆を磨いています。
これも読ませる作品でした、が、やっぱりつらい作品でもありました。でもこの作家の追う目は貴重だし尊重したいと思いました。
道尾秀介さんの「シャドウ」?でしたっけ、精神病医について感想を書いたのは・・・?現実に比例してこの手の小説も増えつつある?と、暗澹と心侘しくなりました。
精神疾患の医者の需要が益々増す現在・・・と言うよりあらゆる医者をめぐる環境が問題になっている昨今、声を大にして精神病医ばかりを増やせとはいえないのですが・・・
この作品で取り上げられたような精神科通院記録のある人による犯罪が増えているのも事実のような感じがしています。
そして今も昔も精神科の医者を騙す犯人たちも現実にいるようです。
というのは鑑定する医者次第で鑑定が変わる、覆ることもあると聞くからです。犯罪小説にだって悧巧きわまる狡猾な犯罪者たちは多いのですし、実際法の穴も多いようなのです。まずは優秀な精神科医を!が最低条件ですか。
私も佐和子さんの立場になったら一か八かやってみたい復讐です。
病気だからといって許せない犯罪が多すぎます。
この作品で取り上げられた統合失調症(精神分裂病)、解離性遁走(これは初耳でしたが、解離性同一性障害なら知っています。「24人のビリー・ミリガン」で読みましたっけ)は今こんなにも人間の間にポピュラー?なんでしょうか。
原因も分からなければ治療の方法も無い。だけど、だからといって責任を取らせないって方はあるのか?というのが被害者の思いですよね。刑法39条という不条理に対する怒りも。治療が終ったと犯罪者を退院させた医者に対する怒りも。
単純に私が佐和子だと仮定して、私にそれだけの知性があれば同じ事をしたい!と思いました。男の方が「法がそうだから」という理屈を受け入れ易いのでしょうか?女の方が未練、執念深いのでしょうか?そうではありませんね。これもその人の性格・資質によるものなのでしょうけど。彼女をここまで追い詰めたものの正体をよーく考えたいものです。
この作品では当事者だけの間である結末が付きましたが、受け取った社会がつける結末はこれからです。本質的な結末は付けようも無いという苦しさがこの本の骨頂です。
治療の方法が完結している病気ならともかく、そうでないことが分かっている精神病犯罪者・性犯罪者、完治はありえないのだったら
永遠に監視できる体制を導入してもらいたいと単純に私は思うのです。護身ナイフすら携えないで生活している人間にとっては、安全こそが生活の最低条件ですもの。自分と家族の安全を自分で保障しなければならなくなったら・・・社会は崩壊です。

天使のナイフ (講談社文庫 や 61-1) 天使のナイフ (講談社文庫 や 61-1)
薬丸 岳講談社 2008-08-12
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闇の底 闇の底
薬丸 岳講談社 2006-09-08
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仏果を得ず

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仏果を得ず 仏果を得ず
三浦 しをん双葉社 2007-11
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 三浦しをん著

しをんさん、4作目です。
思いっきり国宝邦楽芸術国文系青春根性ものと書いちゃってもいい「ジャンルだ!」的でした。しかも思いっきりさわやかな、好感度抜群の!カバーの絵の通りのハンサム系の漫画系のお嬢ちゃんからおじいちゃんまでオール世代カバー型全天候型文部省特薦しかも関西語圏なのにめっちゃカワユーイ!系?
読み終わってニコニコですもの。って、読んでるときから完全ニコニコ応援モードですもん。
こんなに楽しく一直線に読めて読後感にはライムの香り!って、出来すぎでしょう?
でもこんなん、だいすきでっせ!
人生のテーマにガッツンとぶちかまされるほどの「幸せ」って考えられませんもの。殆どの人間がここで頓挫していますもの。なのに思い込んだら一直線!こんな羨ましい修行人生あっていいのでしょうか?あっていいのですとも!無ければいけないのです。全ての青少年に何とかしてこういう修行生活送らせてあげたいものです。
もし間に合うなら私にも今からなにかがツンと目を覚まさせてください!
そして知らない文楽の世界がこんなん、ありえねーと言ってしまいそうになる位清く正しいのです。めっちゃ情に絡まれてじとっと暗い先輩のいじめとか伝統の縛りとかしきたりがんじがらめとか・・・相撲の世界みたいな!どす暗さにまみれてそうに見える世界をキャーかわいいってくらいの理不尽な師匠と変わりもののカッコイイ兄弟子たちに可愛がられて一途に進める・・・笹本健太夫!頑張ってね。とうるうる応援しちゃいますもの。
歌舞伎か?と思った目次も・・・彼のステップアップの段階に即した演目と情報満載で・・・現代青年にとって文楽はこの上も無い最先端今なのですよと・・・いやまさしく今と同じですよ、人情は・・・いつもいつも何時の時代も。
入門書としてもバッチリでした。「仏果」って何のことだか…終りまで読めば分かりますよ。頑張って物にしてね。

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