トリップ (光文社文庫)
トリップ (光文社文庫) 角田 光代おすすめ平均
stars普通(?)の人たち
stars現実とファンタジーの境界線を楽しみたい。
starsここではない自分の居場所

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 角田光代著

東京近郊の町で繰り広げられる日常。彼女を彼女が見て、その彼女を彼が目撃し、その彼を・・・と言う風に短編で次々に一人一人の人生の断片が・・・と言うか・・・断章を10、私が読んだわけですが・・・この不思議な日常。
日常に過ぎないのだけれど・・・この浮遊感?・・・いや、なんだろうこの感じ・・・と、捕まえ得ないじれったいような・・・靴下数枚重ねた上から足の裏を掻くような遠さ?いや本当に遠い!
いやいやいや・・・この人たち・・・どこへ行くのさ?行きつくことないんだろうなぁ・・・の「・・・」部分がすべて?みたいな?の「みたいな?」の「?」部分?に形を当てはめようとしてみたらこんな人々になった・・・みたいな。で、これが凄く今っぽいから困っちゃう。
私ってこういう世代から遊離しているの?それともアッチが浮遊しているの?さぁ、そこのところの不安がじりじり背中に這い上がってくる。
こんなごくそこにいるような人たちの内部がこんなで・・・袖摺り合わせて行き合って、しかもお互いに「生きあって」いるなんて変!
彼らが自分の周りを見て描写する自分の世界の断片の無機質さがもう「私たち」では無い事をじりじり場所取りして迫ってくる主張になっている。
しかしそれでも彼らは彼らを見ている。見ていて何か思うことによってその人の生を何とか形作っている。非常に消極的な否定によって?いや、やっぱり理解は出来ないかも・・・心の底をさらいつくして見れば何処かに洗いざらしたカスになってこびりついているかもしれない?イヤだな!
「ここにいる理由を見つけられないらしい。」「許可を得ていないと感じる」そうか?理由が無ければいられないのか、許可が無ければいられないのか・・・それってそもそも得ている人っているんだろうか?
「秋のひまわり」のテンちゃん、「あなたは、あなただけは居場所を確保してね。」と祈ってしまった。
こんな風に見えちゃってそれをこんな風に豊かな文章で書きこめるって・・・どんな神経なんだろうなんて・・・変にワクワクしてしまう。
前に1作読んでいるのだけれど、この作家好きか嫌いか決められなかったので、短編を選んでみたのだけれど・・・どこか目を離せない、でもどちらかというと目を離していたい・・・
目を宙に浮かして、カラッと軽い声で、裏声の手前の高さで、抑揚を捨てて・・・読んでみる?
心の襞って襞だからいいんだよね。伸ばしてアイロン当てちゃったら目も当てられない。