つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫) つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)
吉田 篤弘筑摩書房 2005-11
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吉田篤弘著

例えば寒くなってきた早朝、というか夜中うんと遅くにふと忘れていたことに気が付いてベランダの花に水をやりに出る。月が凍っている。ため息をつくと小さな魂がふわっと白く憧れ?いずる。その大きさに見合った、というか、その枠にすっぽりと収まったような本だった。丁度私のサイズ!めぐり合ったのは当然のような、奇跡のような。でも見つかった!という感じ。同類だ。
この作家の本はまだ読んだことが無かった。ただ「極上掌篇小説」という30人もの作家の本当に掌篇作品を30も並べた短編集でこの作家の作品を見たことがある。・・・そしてその作品は・・・記憶に残っていない。少なくともその作品を読んでこの作家の小説を図書館で探そうとはしなかったのだ。
なのに、この作品は私のつぼに填まった。ぴたりと!どの部分を取り出してもOK!こんなことはめったに無い。
いちいちこだわって感想を言わずにすむありがたさ。そう、そのまま読んで味わえばいいのだもの。つむじ風食堂の灯を。月舟町の人々を、その店に集ってなんとも嬉しい会話をする人たちを、夜の街に明りを灯す果物を。雨降りの先生の過去も今も、ひょっとしたら未来も。
ところで困ったのはこの作家のほかの作品、読んでみるべきでしょうか?この作品だけをお友達と呼んで大切に心の隣にそっと置きますか?読めば・・・芋蔓式にお友達がふえるでしょうか?