浅草の女

題名INDEX : ア行 No Comments »
浅草のおんな 浅草のおんな
伊集院 静文藝春秋 2010-08
売り上げランキング : 126567

Amazonで詳しく見る

by G-Tools

asakusa.jpg

伊集院静著

3月11日の東北震災の後の自粛ムードの中…その後…自粛云々の是非はまだ収まりがつかないが、各地で色々な行事が自粛になったり、決行が決まったり、これというマニュアルがあるわけじゃないから…ドタバタだという気はするものの、自粛になった行事にがっかりしている向きも多いことだろう。
お祭りは土地の人のものだし、土地の人の祈りでもあるのだから…残念な気が強いけれど、まぁ仕方ない部分もあるなぁと、無理やり納得させられた気分でもある。
大体私はもう土地の人ではない。
しかし、もう父も浅草まで神輿を追いかけていく元気もなくなって…私もあと何回の宮神輿を見れるか?と思うと…これがまた妙にさびしい気持ちになる。
そんなわけで来週はほんとだったらお祭りなんだけど…と、思いながら急に浅草散歩を思い立って出かけてきた。
そして、浅草のいつにないというか久々の人通りの少なさに、仕方ないかもと思いつつ、またそれだけに浅草の人はつらいだろうなぁと思ってしまった。 その流れが…この本である。 たまたま図書館で目に付いてしまった。
たぶんこんな時期でなかったら手に取らなかっただろう。
この作家、一度も読んでみたいと思ったことがない。食わず嫌いをそのまま続けていただろう。
それが拾い上げてぱらぱらとめくったら…まさに三社祭のところが開いて、「浅草で祭りと言えば三社祭りしかありません」
それで持ち帰ってしまった。 なんだかよその土地の人はみんな浅草の女ってこんなだと思っているんだな(主人公は浅草の女に育った?んだけど)…と、思いながら本を読み終えた。私は一度も大人にならなかったから、浅草の女にもなり損ねたんだなという気が妙にした。
どっちにしてもどこに住んでも、女になる人は女になるんだけど…だから題が悪いわ…と思っている。 もちろんこの小説の中に封じ込まれた情緒には現実の浅草の女だった私は負けたんだけど。これは余りにも外の男が考えるタイプのステレオタイプだよとも思っている。
三社祭が来年は無事に行われますように!

神様のカルテ

題名INDEX : カ行 No Comments »
神様のカルテ (小学館文庫) 神様のカルテ (小学館文庫)
夏川 草介小学館 2011-06-07
売り上げランキング : 1416Amazonで詳しく見る
by G-Tools

kamisamakarute.jpg

夏川草介著

お医者さんの作家ってたくさんいらっしゃいますが…またお1人、発見いたしました。  現役の二足の草鞋様です。  最近読み続けている海堂先生が、医術的なことで言いたいこと・主張したいことをエンターテイメントの濃厚な味付けで繰り広げてくれて、私は先生の説得力に感化され続けているところですが、この作品はだいぶ趣が違います。
どちらかと言えばお医者さんの在り方について柔らかに提出してくれていて…私はころりとこの世界の…先生のたぶんお人柄?にしびれました。
螺鈿迷宮の桜宮病院の院長先生と比べれば…漱石先生は上品の極みです。 オーソドックスで気恥ずかしげで針先をたわめたウィットで…いやーん可愛い!って看護婦さんたちは本当は思っているのでしょう。
いずれにしても地方医療の気の毒なくらいの医師不足。ここでも、またしても、政府の無策を嘆かずにはいられません。
こんな良心的で人類愛に献身する先生を見捨てていいのでしょうか。 遠からず、先生の奮闘だけでは先生ご自身も破綻しますよね。  お願いだから、先生、5年ほど医局に戻って最先端?(やっぱり必要でしょう?)を学び(先生ご自身もリフレッシュして)、その医療をまた現場に行かすべくお戻りください。 さもないと先生が持たないよー、奥さんは最高の人には違いないけれども…これじゃ二人ともくたびれて伸びきったゴムになっちゃうよー!
自分が不治の病気になったら「一止せんせーい!」って駆け込むくせに…でも先生倒れないでください。と、切に祈って「あーあ、こういう先生が普通のようにすべての病院にいてくれますように!」と祈ったのです。医局3年地方救急医3年、すべからく交代してあたるべし…なんて簡単にはいかないのかなぁ。 この町のこの寮の人々みたいな素晴らしくやさしい個人にだけ負担を負わせすぎていて…頭が上がらない。 うかうかしてたら映画になっちゃって、見に行っちゃって、友人が「何がって音楽が最高だったね!」「信州松本の景色が最高だった!よ」 本と同じで映画も良かった!と付け加えておきます。

神様のカルテ 2 神様のカルテ 2
夏川 草介小学館 2010-09-28
売り上げランキング : 715Amazonで詳しく見る
by G-Tools
神様のカルテ ~辻井伸行 自作集 神様のカルテ ~辻井伸行 自作集
辻井伸行avex CLASSICS 2011-07-27
売り上げランキング : 10Amazonで詳しく見る

by G-Tools

神様のカルテ オリジナル・サウンド・トラック 神様のカルテ オリジナル・サウンド・トラック
サントラ 松谷卓ERJ 2011-08-24
売り上げランキング : 2188

Amazonで詳しく見る

by G-Tools

廃墟に乞う

題名INDEX : ハ行 No Comments »
廃墟に乞う 廃墟に乞う
佐々木 譲文藝春秋 2009-07-15
売り上げランキング : 16084

Amazonで詳しく見る

by G-Tools

haikyonikou.jpg

佐々木譲著
主人公は休職中の刑事仙道孝司。 これがまた見事な繊細な感性と思考力と技量を持った見事な!刑事。  休職中の彼を頼って持ち込まれる事件が6件続きます。
私がこの作品で一番心に残ったのは北海道そのものでした。 現在の北海道の地方が寒々と荒涼と現れてくるその描写でした。 地図を眺めながら読むことができます。 よく出かけたニセコあたりの山並みを懐かしんだり、栗山町・栗沢町・岩見沢…エー、どの街が吸収合併?なんて考えたり、浜頓別~江差へかけての海岸線を思い浮かべたり、十勝平野の広がりを思い起こしたり、静内~日高へかけての牧場地帯の美しさを心に描いたり…。
外国人ときしみを生じている街、消え去った廃墟の残る炭鉱町、寂れかけた漁業の村…ですからトーンは大体の作品に通じて暗く陰鬱です。
そして、この刑事ゆえに問題を抱えこんで傷ついてしまった刑事を通して、様々な殺人事件というか殺人そのものが人間にどんな傷を負わせるか、なぜか具体的に身につまされるように感じさせられました。 描かれたのはこの大地とそこでの人々の狭い世界とそれ故に否応なく起こる軋轢とその結果による殺人。そしてそれに向き合わなければならない警察の人間たちです。
殺人などという凄惨で悲劇的で悪辣でおぞましいものと否応なく向き合わされる職業って…絶対必要でありながらも人間的ではいられないものなのではないかなぁ…少なくともどこかで精神を病まなければやっていられないものなのじゃないかと思って痛ましく読んでいました。 その意味ではとても読みごたえがありました。 非常な世界に生きながらそれでも人間と向き合って再生していく主人公の人間性でしょうか。
佐々木さんの警察小説は好きだ!と、思って読んできました。
「笑う警官」の佐伯さんも良かったですし…3代にわたる警察一家も魅力的でしたし川久保巡査も好きです。でもこの作品で描かれた仙道さんの繊細な知性と痛みを知る人柄が最高に魅力的でした。 明日?復職したら…その時はどんな刑事として現れるのでしょうね。 この休職中の在り様が素敵だっただけに気になります。

シティ・マラソンズ

題名INDEX : サ行 No Comments »
シティ・マラソンズ シティ・マラソンズ
三浦 しをん 近藤 史恵 あさの あつこ文藝春秋 2010-10
売り上げランキング : 32535Amazonで詳しく見る

by G-Tools

cityranner.jpg

三浦しをん、あさのあつこ、近藤史恵著

3人3作
三浦しをんさんは一応私ファンです。 かなり読んでいると思うし、短編集アンソロジーなんかで見かければ当然読むし!  だからこの作品も取り上げたのですが…あさのあつこさんも何冊か読んでいるな。 でも近藤さんは初お目見えだと思います。 手当たり次第に読むところもあるのでひょっとしたら何か短編読んでいるのかもしれないけれど。
で、この3編は納得!です。 それぞれに好きな部分や言葉がありましたが…意外なことに?近藤さんの「金色の風」が一番いいなぁ…と思って読みました。素直に等身大で今が生きにくい若さが描かれていましたし…自分を見出していく過程も素直で自然でしたね。
3作とも読後感の良さが身上です。 お3人の一番気持ちのいいところが見事に集積されました…と、思ったらなんだかスポーツ用品メーカーの広告?キャンペーン作品ですって?
だから不愉快なところがなかったのか?でもいいです。 スポーツを特別神聖視して描いているわけでもないけれど、スポーツから新鮮な風がというかそれぞれ思いやりや友情や再生がそれぞれのテーマから気持ちよく流れてきます。なんだか走っていると過去から未来にちゃんと行けるんだ…みたいな信仰が生まれちゃいそう!
ニューヨークマラソンて面白そうだな…いつか見に行って沿道で応援楽しみたいなとか、パリでこんな風な街に溶け込んでいくような生活してみたいなとか…主人公たちがちゃんと再生していく安心感から他のことに気が移ってしまった感はあるけれど、読後感の良さがなんともグッド!

謎解きはディナーのあとで

題名INDEX : ナ行 No Comments »
謎解きはディナーのあとで 謎解きはディナーのあとで
東川 篤哉小学館 2010-09-02
売り上げランキング : 161Amazonで詳しく見る
by G-Tools

image0-11.jpg

東川篤哉

この本を借りてきてテーブルに置いておいたら、やってきた息子が「またなんとらしくない本があるじゃないの、面白かった?」と聞いた。 らしくないってことはないのよ、私の好きな謎解きものだからね。でもなんとなく照れてしまったのは…あまりにも子供っぽいような気がしていたからだね。 お手軽に過ぎるっていうか、大人が子供の漫画を盗み読みしていたのが見つかったような?
車いす(又は安楽椅子)のディテクティブものって…昔アメリカのTVドラマにもあったよなぁ…って思うんだけど…アイアンサイドだ?
短編6冊。殺されたのが6人、犯人が6人。
軽く読めて、くすっと笑えて、なるほどウマイヤ!って思ったんだからそれで十分。他に何を望む? でもところどころこれはこうでもあり得るぞ、なんて茶々入れられるようなところもあった…って思うのよ。 でもさーっと読んでしまったので、あとでそう思ったのどこだったっけ?と思ってももう忘れてる。 一応執事さんに語りだす前に犯人考えてみたりはしたんだけど…主人公じゃないけれど…考えるのも面倒って事件も多かったな。 殆どの登場人物には当然のことながら?…生きてる人間って気が一切しなかったな。あまり血が通っている気がしなかったんだけど、却ってそれがさらっと読めた鍵かな? 模擬人形の世界みたいだった。 読んじゃった!だけど、読まされちゃった!ではないんだね…って、やっぱり変な照れてる言い訳かな?

使命と魂のリミット

題名INDEX : サ行 No Comments »
使命と魂のリミット (角川文庫) 使命と魂のリミット (角川文庫)
東野 圭吾角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-02-25
売り上げランキング : 5723Amazonで詳しく見る
by G-Tools

rimitto.jpg

東野圭吾著

なんかちょっと大上段に?ロマンチックな題だなぁ…と思いながら、ようやく図書館から回ってきたので取り掛かりました。 そして内容も確かに大上段に真っ向から…なんて言うのか…ロマンチシフル?サスペンシフル?…んな言葉あったっけ?でした。
大筋が2本。氷室先生と西園先生の軸と直井譲治と島原総一郎の線…と言っていいだろうか? その2つの因縁物語の上に事件解明?へのプロセス、刑事七尾さんのご活躍。と、まぁ書いてもいいだろうか。 氷室先生の長年のジュクジュクとした粘着性の疑惑と復讐、譲治の失われた恋人へのくっきりとした復讐の意志とが対極に描かれて…別にこれは女と男の資質の違いではないだろうけれども…考えさせられる。
頭のいい人の復讐は…なんだか怖いなぁ・・・と氷室先生の思考と周りの人へ投げかける濃い蔭に少々辟易するものの疑惑は疑惑として読むものをとらえて離さない。 そして傍らで恋人の無念にやりきれない繊細な気持ちの一途な青年がいて…目的は確定しているのに周りの人を思いやる心が痛くて…これまた読む者の心をとらえる。 一気に読みふける魅力に満ちていて…この作家のストーリー展開はやはりうまいなぁ…と満足して読んだ。
西園先生が典型的にできすぎなことを除けば…いや島原も典型的によくない方でできすぎか…?でも尊敬する先輩の後を脇目も振らず歩いてきたらしい七尾刑事がいい出来だなぁ。
主人公の周りの人々のなんと思いやりに満ちていることか。こういう幸運はほんと、まれなんだよ。と心を戒めておこう。

マドンナ・ヴェルデ

題名INDEX : マ行 No Comments »
マドンナ・ヴェルデ マドンナ・ヴェルデ
海堂 尊新潮社 2010-03
売り上げランキング : 55729

Amazonで詳しく見る

by G-Tools

madonnna1.jpg

海堂尊著

「医学のたまご」「ジーン・ワルツ」の姉妹編
曽根崎シリーズとでも名前が付くのですか?
そうなんだ! 薫ちゃんと曽根崎慎一郎の関係が実に魅力的だったから、完璧親子と思っていたけれど…ひょっとして薫ちゃんの遺伝子は…?
清川先生も大変だね…って…あれ?ジーン・ワルツの話もう忘れてる? あれ?って、先日映画「ジーン・ワルツ」見てきちゃったのね。 これが…失敗か?どうも話がややこしくなって…清川先生、自分の息子が(または娘が)できたって知っているんだっけ? 少なくとも映画では感ずいていたよ。
アーわかんなくなった。
でも考えてみればそれはどうでもいいことなんで…要は代理母が問題。 外国で代理母に生んでもらった子が日本で戸籍難民になっているってニュースを見たような…あれはだいぶ前の話だよ。 それでその後その話はどうなったんでしょ? 不覚にも…知らない。
私はもう代理母にもなれないし…孫ができる気配もない。 だからあまり深刻にこういう問題考える必要もなかった。
でも、日本の将来を考えて青写真を提示しなければならない政治家の方々にはちゃんと考えてもらいたい!もんだ。
そう、日本で子供がまた増えだして、人口のピラミッドが健康な形?になるためには…産婦人科と小児科の立て直しは大前提だからね。 理恵先生の大向こうへの問題提起は子供の将来を真剣に考える祖母兼母のみどりさんによって阻止されたまんま、行き詰ってしまったのですから。 ここでは事態は前進しなかったのですね。ただ理恵さんが母となって、母となれて?どのような進歩を遂げたのか? そこが知りたいところですね。 それにしても、こんな女性いるんだ? なんだか二人とも変な女性!それはさておき、産婦人科の女医さん増えているはずなんだけど…と、思うんだけど?…その方々で将来ビジョンを描いてもらえないものですか…ね?  ただこの国に今子供が生まれてきても、幸せは保証できないって感じがどうしてもするんです。 厳しい世界を生き抜かなくちゃならないんだよ…って、いたいけな赤ちゃんに警告しなくちゃならないような。 希望を提示できないような。 とりあえず大人が胸を張って…生まれてきてよかったね、ありがとう!素晴らしい未来が君を待っているよ…って胸を張って言える社会を作るのが…まず大人の覚悟!ってものでしょう。

あんじゅうー三島屋変調百物語事続ー

題名INDEX : ア行 No Comments »
あんじゅう―三島屋変調百物語事続 あんじゅう―三島屋変調百物語事続
宮部 みゆき中央公論新社 2010-07
売り上げランキング : 9706

Amazonで詳しく見る

by G-Tools

anjyuu.jpg

宮部みゆき著

「三島屋変調百物語事続」と題が付きます。2冊目になります。
新聞に連載されていると聞いていましたから…本になるのを期待して待っていました。で、出た!と、図書館に申し込んで…いったいどのくらい待ったのか?ようやく回ってきました。「事始」の続きで「事続」…この次は「続事続」なのかなぁ…なんてつまらないことを心配していますが…読み終えてもう続きを期待していますが…連載は終わってしまったんでしょうか?続いていますか?
さて、おちかさんがとても明るくなったのに…私も明るくなっています。掲載の4話も少しづつ明るさを感じるようです。
「逃げ水」のお旱さんは心置きなくたっぷりの水に取り巻かれて…穏やかにお鎮まりになるだろうし、平太も行く道が見えたし、三島屋の連中は大笑いできたし、おちかさんも。いうことなしの明るいお話。
2話目の「藪から千本」は針屋の怪談、幽霊怨霊話。だけどもそこはそれ人の心の闇が見せるお化けのお話。それでも終わりよければ…ちゃんと収まるところに収まって、おちかさんにはお勝さんという強い味方ができて、これから話の聞き方が少し変化してくるのだろうなぁ…と予感させられた。
そして3話、「あんじゅう(闇獣)」くろすけのお話。 どうしたって「まっくろくろすけ」を思い出しちゃうけど…日本の古い家の真っ暗な片隅。闇が当たり前のように家の中に蹲っていたころには確かに各家に生息していたかもしれない懐かしいお化け。 このくろすけと新左衛門とお初夫婦との交情の様には泣かされる。哀切でやさしくていじらしい。まっすぐに心にしみてくるいいお話が挟まった。
4話「吠える仏」はそのまま3話から引きずって…登場人物に青野若先生が増えそうな予感も。 それでもこういう登場人物が登場するのに…まだ100分の数話目!っていうのは早すぎる…なんて思ってみたり。
それにしても、物語性の豊かな素晴らしい才能だわ!と宮部さんに改めて…って、読むたびに、感嘆!

悪意

題名INDEX : ア行 No Comments »
悪意 (講談社文庫) 悪意 (講談社文庫)
東野 圭吾講談社 2001-01-17
売り上げランキング : 1242Amazonで詳しく見る
by G-Tools

akui1.jpg

akui2.jpg

東野圭吾著

「赤い指」「嘘をもうひとつだけ」「新参者」に次いで加賀恭一郎シリーズ4作目。
本当にますます順序めちゃくちゃ。 相変わらず新刊の「待ち人多し」っていう本から予約しているからです。 こんなに読みたい本が山積じゃぁ…いったいどうするんだ?です。
さて、この作品アガサ・クリスティ―の「アクロイド殺し」を思い出させた。 犯人の手記があるという点でこの作品を思い出したのだけれど。私が知らないだけでこういう形の推理小説って結構あるのだろうか?
この作品の犯人の手記は初めっから?警察をミスリードするために書かれたものだったから、本質的には違ったのだけれど。
意外なくらい杜撰な手記で?犯人が早くに割れてしまった後が長かったー。
だからこの作品は大半が犯人(主人公と言っていいだろう)の人格を読み解くことで動機が分かってきて…解決に持ち込むまでのプロセスが見せ場だった。犯人と被害者の人となりを読み解く作品だったということだ。
よくいう通りに?犯罪者の性格が犯罪を形成するのだ!
犯人の手記と加賀さんの記録の行ったり来たりを、つまり双方向から事件の様相を読むのを面白いと感じるかどうかがカギだと思うけれど、今回も加賀さんの人間洞察の見事さに脱帽させられるのだけれど…私はちょっと煩わしさにとらえられて、一気の面白さに欠けるうらみがあるなぁ…と思ってしまった。
私の頭には煩雑すぎたってことか?
それでも…だからか?加賀さんは読むたびに好きになる。
形成途上なのかもしれないのに? だって私はまだ若いころの?加賀さんをあまり読んでいないのだものね。
まだまだ面白い作品ができるかもねぇ…趣のうんと変わった沢山の作品を読みたいな。
事件そのものにものすごく意外性があるというより、加賀さんと犯人のかかわり方が目新しい…っていうような作品が。
新刊が出たようなので予約しよう。 加賀さん今何歳なのかなぁ? 定年まで刑事やってくれるかなぁ?

十日えびす

題名INDEX : 数字他, 題名INDEX : タ行 No Comments »
十日えびす (祥伝社文庫) 十日えびす (祥伝社文庫)
宇江佐 真理祥伝社 2010-04-14
売り上げランキング : 19551Amazonで詳しく見る
by G-Tools

tooka.jpg

tooka2.jpg

宇江佐真理著
描かれた世界も、そこに息づく人も…全く問題なく! …完璧に個々の描かれた人々とその生きざまは紛れもなく江戸の庶民だけれども…ちゃんと現在ここに生きている人々そのものでもあって…なかなかなかなかと頷いて読み終わったんだけれど…でもこの苛立ちはなんなんだろう。
あまりに人の好い人に対する…嫉妬?
なんでこんなにお馬鹿でやさしいの?…でも結局幸せに生きていく人にはこういう資質が不可欠なんだろうなぁ…という納得感もちゃんとあるんだけれど。
誠実なんだね。 この主人公は。 自分の思いにも、託された子供たちにも。 対照的にお熊を配して…その手際が?あまりによすぎるために、私はいらいらが募るばかり。
じりじりじりじり…いらいらに炙られているような按配で、どうにも肝が煮えた。
でもちゃんとわかってはいたのですよ。 だから私はお八重さんのように近所中のだれからも好かれ邪魔にされない…そしていつの間にか…本人は何かにあたるたびに自分の方が引っ越そうかなんて考える弱腰に見えるのに…ちゃんと自分の場所を確立していって、愛情もちゃんと勝ち得てという風になれないのだってことは。
そう、踏みとどまる線をできるだけ遠くにおいてぎりぎり踏みとどまっている人の繊細な勇気ですかね?ため息をついて認めざるを得ないのは?
強くなくてもいい、弱くではあっても、日常から逃げないで日常の何事にも向き合わなくちゃってことですか? 私がお八重さんから学ぶことは。それでもやっぱり…いらいらするんですよね。

Design by j david macor.com.Original WP Theme & Icons by N.Design Studio
Entries RSS Comments RSS ログイン