廃墟建築士

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廃墟建築士 廃墟建築士
三崎 亜記集英社 2009-01-26
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 三崎亜記著

4作収録いずれも建物に題を取っていますが・・・不思議な小説です。
7階闘争、廃墟建築士、図書館、蔵守
いずれもありえない意識の軸を持っている作品ですが、共感とか理解とか好悪とか言うものとはまた一線を画す何かを読む心のどこかのすき間に乱反射させる魅力を持っています。これが不思議なんですが、理解したとか、想像がつくとか言うのと次元が違うボールが心乃至頭のどこか隙間でスカッシュのボールのようにぶつかり弾んでいるような印象があります。色々なものを想像させることはさせるのですが手当たり次第にぶつかってもぴったりしたものに納まって据わりがよくなることはないようです。どの作品にも共通してぶれない、ぶれなくなった人が出てきます。
「7階闘争」の私はぶれない7階の守り手に育ったように。
「廃墟建築士」の関川さんが「廃墟屋」の癒しの時を最後まで進んでいくように。
「図書館」では日野原さんが目標として見続ける社長のぶれない後姿として。
「蔵守」では蔵守りとして最後の時を向え「愛」を次世代に繋げた老いた蔵守りの姿として。
その姿の描き方が一つの魅力ですが。また、非常に乾燥した世界に非常にウェットな心が諦観を帯びて語られるこのスタイルが不思議な魅力でもありました。
「7階・・」では「となり町戦争」を思い出しました。不条理な世界が力がやってくる・・・それがどんなものでもあれそれに対する人の反応はそれぞれで・・・と普遍的なことがある意味何段階か落っこちたパラレルワールドで繰り広げられ照るような。
でも、好きだったのは連鎖廃墟のイメージと図書館の野生でしょうか。こんな本(失礼)を読むのは大抵活字中毒者。だから図書館が自室並といった人?だから絶対ここで喜ぶと思うんですよね。
「かって『彼ら』は・・・『本を統べる者』と呼ばれていた。ここにいたってワクワクと寝静まっておいた私の本好きの性が浮き上がってきちゃったんです。本が回遊をはじめ図書館の中を跳びまわる姿・・・想像しないわけにはいかないでしょう?そのイメージのためだけでもこの作品は好きですね。特に野生を感じさせた沢山の本の事を回想するときには。
「蔵守」の絶対姿勢にはなんだか心を打たれました。人間と細菌の終ることの無い戦いの様相にも似て・・・パンドラの箱を入子のようにした世界を思い描いたりして。蔵守りさんと後を継ぐ見習いの女性の姿が感傷的に想像されました。
だから「廃墟建築士」が廃墟のイメージの面白さが立ち上がってくるのに面白さが比例しなかったのが不思議です。ちょっと私の力が及ばなかった感じがします。廃墟を作っていく美意識が戦後に生まれて復興していった時代の意識に囚われたままの私の限界かも?なんて思ったりもしますが・・・?なにしろ廃墟から立ち上がってきた人間のほうだから。
 

春にして君を離れ

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春にして君を離れ (クリスティー文庫) 春にして君を離れ (クリスティー文庫)
中村 妙子早川書房 2004-04-16
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アガサ・クリスティ著

先日NHKでアガサ・クリスティの番組をしていて、この本が話題になっていた。ポワロとミス・マープルとトミーとタッペンスなどのシリーズは多分全部読んでいるが、気にはなりながらウェストマコット作の作品は無意識に避けていた節がある。作家の自叙伝という物は読書の助けになるという人が居るが私はなるべく避けたい。伝記というものが子供のときから何故か好きではなかったからかな?舞台裏を見たくない心境と通じるのか?ところがその本が友人からすばやく!廻ってきた。正直言うとその番組のせいで読みたくなってはいたのだ。
解決の無い、死体の無い、人間性への難問?そんな印象を語っていた人から受けたからだ。そして実際は怖いミステリー小説だった。自伝的という人もいて、実際そんな印象も受けないではないが私は小説として読みたい。こんな砂漠での数日が無かったら、きっと一生自分と向き合わなかったジョーン・スカダモアの自分を見つけ出すミステリーでありサスペンス。昔の友人ブランチに出会ったことから生じた謎。過去の何かを思い出すたび、記憶に隠れていたものを広い出すたび、打ち震えるジョーンの心の世界のミステリー。
届けてくれた友人は「本当に主人公最低に厭な女よ。あんなときを経ても変わらないのよ」と言いおいて帰ったが、私はそうは思えなかった。
あれだけ自分と向き合った挙句にジョーンが変わらなかったのは、変われなかったのは・・・?
ジョーンが家に帰ったとき「許して」というつもりでいたとしても利口なジョーンは本能的にそれでも夫が必要としているのは夫が「プアー・リトル・ジョーン」といえる彼女だと言う事を察したから?
「風と共に去りぬ」のアシュレイを私は思い出していた。ロドニーはその手の恋をする男じゃないか?
彼はレスリーの事を恋していたとズーッと思い「その恋を踏みとどまる知性を家族のために雄雄しく発揮した」男のつもりで、それを心に秘めていればそれなりにロマンチックな世界に夢見て住んでいられる男なのだ。仕事もそういうこと。
実際ジョーンが留守にすれば幸せ感・開放感で浮き立つかもしれないが・・・若いときの本当の夢を本気で妻に説得できなかった男が・・・実際夢に突入していたら・・・?本当に一人になったら?
子供たちも同じこと。理屈をつけたり感情的に反発したり母に対して取る態度は大抵の子供が一度は通る道筋。それを幾つになってもそこで止まっている幼児性もあり、また自分の生活を作ることで自然に親から独立していけもするエイヴラルもトニーもバーバラも、母を有能な雑用係とすることで何不自由なく生きてきた。ほかに何を望める?
後十年たったらジョーンの自己探求のミステリーは違ったものに成るだろう。その時その時点ということがその作品の力にもなる。まさしくその年にその数日があったということが・・・よしんばそれがアガサにあった時間だったとしても・・・この小説が多分全ての女性の一つの指針にもなり恐怖にもなるということは変わらない。
自分をじっくり覗き込む時間は無い方が幸せかも・・・でも必ずこういう時間は誰にでも来る。ロドニーのその時間は多分ジョーンのより甘いそれになるのではないか?・・・と、思ったのだけど。別に男の方が女よりロマンチストだとは思っていないけれど。

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光
三浦 しをん集英社 2008-11-26
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三浦しをん著

「嘘ッ!」と読み始めて直ぐ思った。毒される前に読むのを止めようか?と迷った。
三浦さんの本を読んでこう思うことがあるとは・・・思わなかった。といっても、まだ?5作目です。
私の知らない・・・と言うより私の知っているしをんさんと対極にある別のしをんさんでした。驚くねぇ。
先日の道尾さんのこともあるから?新しい本を読むのを止められません。死ぬまでに読みたい本全部読めるでしょうか?考えるだけ野暮ってモンですか。そして時にこういう本にも出会ってしまいます。リスクです。
人にも時にも何の期待も抱けない話でした。作家にはよくこういう思いをさせられることがあります。安心していたのに・・・。こういうときに読む作家だったのに・・・。みたいな?
そして実際のところ作家の方にもあるようですね。自分の書くものに倦む時。自分の連作登場人物に縛られすぎて息が詰まる時。片側に偏った分銅はもう片側にも同じ錘をね?だからきっといつかこの作家の暗い話にあうだろうと思っていても良かったのですが・・・不意を突かれました。それも手ひどく。
主人公といって良いのかな?信之、輔、南海子、それに核になるのが美花。その親その子その人生どこにも光は射さない。信之の美花への忠誠心にさえそれは求められない。子供の執着以上の成熟はないのだから。島で育っていた時までの、あのつなみが来るまでに出来た精神形成がすべてで、人間関係も時に触発されて発展、成長することは無い。全ての人が何らかの暴力を振るいすべてが何らかの暴力の支配下にある。助けは来ないし、自助努力もない。彼らは本気で成長も成熟も脱出も望んでいない。で、暴力を含めた古い関係に依存している。こんな話イヤダ!という反応しか出てこなかった。
会社に勤め、アルバイトをし、幼稚園児の母という社会もありながら、ここに出てくる誰一人社会の一人になろうとか、心を開こうとか、他人という人間が居る事をうけいれない。自分のことしか考えずそこで終結している。人の世で生きていくことは彼らにはありえない・・・どうしてあげようも無く、受け入れようも無い。ここにはなにも無い。厭なものを覗いてしまった!

さよなら、愛しい人

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さよなら、愛しい人 さよなら、愛しい人
村上春樹早川書房 2009-04-15
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レイモンド・チャンドラー著  村上春樹訳

先日NHKハイビジョンでチャンドラーをしていましたね。それにこの間村上春樹訳で「ロング・グッドバイ」を読んだところでしたし・・・面白かったし。その後また新しい訳があればチャンドラー読むのもいいかな・・・と、思っていましたし。で、調べたてみたら、村上さんの訳でこの本が出ていたことが分かったので読み直しました。
こういう時ってやっぱりちゃんと考えているんですかね?NHK。古い映画の「さらば愛しき女よ」も放映していましたし。ロバート・ミッチャムがマーロウに適しているかは?ですが・・・いや、良かったかも!シャーロット・ランプリングはいい感じでしたね・・・と、思って見ました。実際のところ今は誰がやっても、この人がマーロウ?ヘッって感じになるのでしょうが。しかし厄介な人だなぁ・・・と嘆息です。幾つか道があったら絶対細い方、険しい方、曲がりくねった方、人が来ない方を選ぶ男です。でも救われることには、ちゃんと同じ道に迷い込む男なり、まぁ女なりがちゃんとそれでも居ることです。ムース・マロイとヴェルマの恋はある意味「美女と野獣」美女の方は大分腐っていたことが分かりましたけれど・・・あの時代あの世界で生き抜いていくとしたら・・・と思えばまぁねぇ・・・って感じでしょうか?この物語りの魅力の一つはマロイの8年越しの愛なんですが・・・野獣の愛は切ないです。ベルがベルでいてくれる可能性って低いですもの・・・って女性の私が言っていいものか?ベルになってあげたいものですよ、本当は!野獣もこの場合王子様になることはないし・・・人間の執着は悲しい。といって執着できなくては人間といえない。マーロウだったらそういいますよね?
そういうわけで?外国のこういう乾いていそうな風土での捩れたウェットの世界・・・楽しまなくちゃ!そして私も一風変わったロマンスに浸るのです。
それにしても、映画以上に映画を感じさせる本です。気が付いてみたらミッチャムさんを蹴飛ばしてちゃんと私のマーロウがデーン!と出来ている気がするんです。存在感が抜群なんですね。
 

笑う招き猫

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笑う招き猫 (集英社文庫) 笑う招き猫 (集英社文庫)
山本 幸久集英社 2006-01-20
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山本幸久著

「カイシャデイズ」「ある日、アヒルバス」「凸凹デイズ」に次ぐ4作目。これを返したら、またこの人の作品を探してこようと思っています。
やめられません、ここまで読んで1作もはずれが無いのですから。
いい本とか、役にたつ本とか、強烈な何かを得た本とか、まぁ色々な本がありますけれど、こんな心のありようの「ほどの良い」本って・・・最近では希有!
好きな作家はどんどん増えつつありますし・・・ホントを言えば昔から好きな本をまた読み返したい・・・っていうのもあるんですけれど。父じゃないけれど、「一日一日日が短くなって、できることがどんどん減っている。読みたい本が山済みなのにTVなんか見ていられるか?新聞も隅から隅まで目を通さなくともこの年になれば、ニュースを知らないでも生きていける」全くごもっとも!88歳と61歳が同じこと思ってどうするの?と、思うけれど、本当です。
最近の趣味が「日本語の本」と限定されているので・・・辛いところです。翻訳物を読みたい時は二倍の速さで本を読み飛ばさなくてはなりません。・・・って、こっちの勝手な事情なんですけれどね。
そんな私が二倍の速さで・・・なんて大上段に振りかぶらなくても、この作家の本は速く読めてしまいます。面白さが止まらない。しかも登場人物皆好きになってしまう。彼らの先が知りたくてもどかしい指でページをめくってめくって・・・読み終えて・・・ああこの後彼らは・・・また彼らに会いたい!と思うのです。「アカコとヒトミ」絶対会えるような気がしています。   すれ違えるように思うの、  バスに乗ると居るの、 広告の隅に凸凹社ってロゴが入っているの・・・そんな近しさが好きです。ガンバッテいるので好きです。しかも末広がりとかしり上がりとか・・・いいイメージがてんこ盛り。
 

見知らぬ海へ

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見知らぬ海へ (講談社文庫) 見知らぬ海へ (講談社文庫)
隆 慶一郎講談社 1994-09
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隆慶一郎著

そんなわけで(「一夢庵風流記」参照)この本も続いて旦那から。
この本の場合は彼の城廻の方の関連がより深いようです。それに静岡の海や城はなじみのある懐かしいものですから。
武田といえば山梨・・・なんか海とは縁があるような気がしませんが、その武田家も恋焦がれた海・湊を持っていた時期があります。武田の海軍、意外と知られていないかもしれませんね。その武田の海軍の本拠地が清水港。そこで育ち武田家滅亡の後、向井水軍を率い北条水軍と駿河湾での決戦を経て大きく成長していく水軍の将を見事に描いた作品です。
慶次郎に惚れたように、やっぱり読む人を惚れさせずにはいない見事な男を描いています。多分男が惚れる男がテーマなのでしょうけれど、それはやっぱり男も女も人が惚れる人ということでしょう。
こんな男今の時代にいやしないわ・・・とため息も出ようものですが、でも時代が要求する人物というのはいるようで、時代にはその時代を見事に生きる人が必ずいるものです。あの時代だからこそ坂本龍馬は輝き高杉晋作は光る。そしてこの向井正綱もこの時代だからこそ輝いた・・・ということはあるのでしょうね。それでも、隆さんが拾い上げなければ本の好事家の間だけでひっそり知られただけの存在で終ったでしょうに。
歴史小説を書く人の真の喜びは自分が歴史の闇から引っ張り出した人がちゃんと明るみの中をひとり立ちして歩き出すことなのかもしれないな・・・なんて思いながら読んでいました。
この先駿河の海を見ると、ここで自らを磨き上げ素晴らしく強い水軍となって戦い抜いて死んでいった男たちの亡霊を見られるのではないか?という気がしてきます。
しかもこの向井正綱という魚釣りの大好きなのどかな気質の人があの時代にではなく生まれていたらニコニコと素直に釣り糸を垂れて一生を送ったに違いないと思われるだけに、ある意味時代を得て生まれた人って幸せなのかも・・・とも思われるのですが。反対に名を残すことの裏にある人生の凄みは決して幸せなものではないのかもとも思わされるのです。無名で死んでいく幸せというものをもまた合わせて感じられた作品でした。
それにしても戦国時代にはどれだけの漢が排出したのでしょうね?今後もどんな人物に光が当たることか・・・と、思うと、もう隆さんの新しい作品にお会いできないのが本当に残念です。全部の作品を読もうと思いますけれど・・・少ないのです。
 

一夢庵風流記

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一夢庵風流記 (新潮文庫) 一夢庵風流記 (新潮文庫)
隆 慶一郎新潮社 1991-09
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隆慶一郎著

大昔、子供が少年ジャンプだか少年マガジンだか読んでいた頃は結構一緒になって漫画見ていました。その中に「影武者徳川家康」だか「花の慶次」だか?見た覚えがあります。そのとき隆慶一郎の名も覚えたのでしたっけ。隆さんのことは父が、なかなか面白い作品を書く人で「吉原御免状」など読むといいと言っていましたが・・・いまだに読んでおりません。が、いつだったか旦那が「捨て童子・松平忠輝」を買ったときにそれは読んでいます。
あの本は面白く読んだのに何故続けて隆さんの本を読まなかったのか不思議です。今回この本も旦那から回ってきて、読んで本当にそう思いました。実に面白い!と。
ただ、読んでいる間にどうしても慶次郎が漫画の・・・つまりケンシロウの顔になってしまうことが厄介でしたね。「お前は既に毒されている」と呻きながら読了。
歴史の襞の中にある意味落ちてしまった、けれども魅力的な人物を探すアンテナに長けていたのでしょうか?加賀の前田家には多分殆ど資料の残っていない人物なのかもしれませんが・・・そういえば・・・と、記憶を辿って、先年NHK大河ドラマでした「利家とまつ」の中で三浦友和さんが演じた利久の養子が慶次郎でした。確か及川光博さんが演じた?
漫画の慶次郎と大分開きがありますが・・・そんなわけで、もなにも?大抵の人にはイメージの及ばない人物です。有名な武将は人それぞれにイメージがありますね。家康だったら誰が演じるとぴったり!みたいな?
でも慶次郎は誰が演じてもヘーこういう感じの人なんだ・・・みたいに受け入れやすいでしょ?それだけ埋もれていた人物が実に大きく大らかに血肉をぎっしり詰め込んで華々しく登場してきた感があります。
多分二度と薄れることは無いだろうと思われるくらい見事に印象的に!
古文書の海を探索するのはきっと物凄く面白いことなのでしょう?どんな宝が眠っているか・・・全然違うかもしれませんが塩野七生さんのローマ物も殆ど現地の古文書が種だと聞いたことがあります。
忠輝もそういえばそうでしたっけ・・・と思って、これがこの作家の素晴らしい魅力なんだと思います。全く史実に無い人物を勝手に造形したのではなく、ちゃんと資料の海を踏査して背骨を磨きあげてから時代の色の人物を肉付けして、想像力をありったけ動員しているからなお更読むと血沸き肉躍るのでしょうか。
こんな人物いたら私も惚れるんだろうな・・・だけどそれはきつい人生を選び取ることになるのだろうな・・・だけど本人は全く・・・そう、人の心を攫た上にさらりと自分の生き方だけを見つめて生きちゃうんだろうな・・・なんてね。骨にも捨て丸にも金悟洞にもなれるわけ無いんだから!本でお目にかかっただけで本当に良かった!と、胸をなでおろしています。で、ここに至っても、ケンシロウ風イメージが消えないので今のNHKの直江兼継続の線の細さが心配なんですよ。
「生きるまでいきたらば、死ぬるでもあらうかとおもふ」・・・かっこいいなぁ!

いっちばん

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いっちばん いっちばん
畠中 恵新潮社 2008-07
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 畠中恵著

「しゃばけ」シリーズ7。
久しぶりで「しゃばけ」を楽しめた。読んだ!という気がします。
兄やたちの心配度もパワーアップしていますし・・・でも、若旦那の病気も治りっぷりが良くなってきているような・・・?って、こっちも慣れすぎるくらい慣れちゃったのかも?若旦那のお母さん気分で?兄やたちに任せておけば大丈夫大安心。
さて、5話掲載。
「いっちばん」は若旦那に誰が一番喜ぶものを贈れるかという妖たちの競走に若旦那の推理も冴えるという賑やかさ。ただね妖が姿を現して・・・真似しても良いのかな?妖怪のできることと出来ないことの境目が私にもあやふやになってきちゃった。親分さんも首は安泰若旦那もニコニコと、結構な事で。
「いっぷく」は「妖を探しているものがいる」という噂が発端。長崎屋が近江商人に挑まれた品比べを通じてお店の売り上げが伸びたことと冥界での友に再会し彼ら兄弟と友だちになれたこと。若旦那も冬吉も妖たちも笹雪で美味しくお食事・・・これも結構!鶯谷の笹の雪じゃないのね?通町から程近い店らしいから。
「天狗の使い魔」は一番奇想天外?大天狗の六鬼坊の天狗柄がよろしくて、王子の狐を巻き込んで賑やかなお話に。管狐の黄唐と大天狗の間に友情という観念が生まれて・・・なんと好いお話。好きだな、結構。
「餡子は甘いか」若旦那の大事な親友三春屋の栄吉の冒険成長譚とでも?彼がもう一段お菓子屋への覚悟が固まりました。才より根気。能より努力。教訓がほんのり甘い餡子にくるまれて素直なお話に落ち着きました。結構!
「ひなのちよがみ」はお雛さんの千代紙絡みの商売力のお話。若旦那を置いてきぼりにお雛さんと正三郎の気持ちがしっかりと固まったようで。若旦那の商売勉強もそこそこ・・・兄やの「しくじりは何回してもいいんです。次に繋げていけばいい」確かにそういっていただくとほっとしますよ。それがこの物語に安定して吹いている暖かい風なんです。勿論実際の世の中では・・・なんていう必要は全然無いんです。お江戸の長崎屋さんに吹く風で私も安らげたんですから。というわけで今回は全部結構毛だらけ・・・この調子で・・・次作も期待。

三月の招待状

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三月の招待状 三月の招待状
角田光代集英社 2008-09-04
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 角田光代著

「角田光代さんってどんな小説を書くの?面白い?」と、先日知り合いに聞かれました。
「どんなってねぇ~私もまだ2冊くらいしか読んでいないから言えた立場じゃないけれど・・・そうねぇ、人の心の襞を丁寧に穿り出して、熨斗を掛けてみましたけど・・・どうでしょう?って聞かれている感じ?」
「面白いか?って聞かれると・・・う~ん、面白くはないかもって思う。」
でもね、何処かひきつける何かは確実にあるのです。好きじゃないけれど、覗いてみたくなる人の心?特に女性の心なら?私にはもう遠くなりかけているあの年頃の・・・苦闘という言葉が少し思われるあの頃の・・・そのときと同じ年頃を今生きている女の人たちの心の襞、しっかりとお平らに?繰り広げて延べてくれている感じ。実際心の窓から覗いている感じ?これが癖の元かな。でも、なんかいやらしい。だから好きじゃない。そんなところかな?
それで・・・だから・・・どうなの?傷?あったら嘗める?それとも同じに傷があるんだ・・・そうか同類か?なんだ、君もそうなのか・・・だから君が嫌いなんだ・・・乃至は君が好きなんだ?                                                 三月の同級生の離婚式から始まって、翌年の5月の結婚式までの一年余り、そろそろ学生時代の腐れ縁も伸びきって薄れかけても良さそうな?お仲間の有様、現況。
大学の時の友人仲間・・・十数年も立っていても、会えばあの頃に戻れる・・・そう得難い最後の仲間・・・それでも実際は足を引っぱれるし、相手の弱みは知り尽くしているし、そして時には助け合えもする、そして懐かしい殻の中の居心地はやっぱり悪くない。お互いがお互いにとって羨ましい存在であり、疎ましい存在であって、傷つけあう存在でもあるのに・・・でも許しあえる最後の仲間。それを丁寧に拾い上げて・・・ほら、やっぱりアイロンでしっかり伸ばして影を明るみに広げちゃって・・・で、だから何を考えろって言うの?ああそうですか?そうですよ!そういう時確かにあったかもなぁ・・・目を細める私であります。

医学のたまご

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医学のたまご (ミステリーYA!) 医学のたまご (ミステリーYA!)
ヨシタケシンスケ理論社 2008-01-17
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 海堂尊著

すっかり御馴染みになって、桜宮市の住人になって、しょっちゅう東城大の病院へ通っていて、先生たちの出入りにも、看護士さんにもすっかり顔馴染みになったおばちゃんのような気分がしています。
うちの市にはこんな子供たちが住んでいたの?え、天才君たちじゃないの!って、主人公の曽根崎薫君じゃぁありませんよ。高校生の佐々木君も含めて彼の友人の三田村君と美智子さんですよ。彼らが育ってくれれば桜宮の医療もそこそこ期待できるってものです。薫ちゃんも成長途上で期待値大ですけどね、勿論!なんて。
おかしなシチュエーションのおかしな子供たちですが・・・でも、子供は育っていくんだな、いいサジェスチョンがあれば、より立派に!って。
とにかくこのおかしな荒唐無稽系のお話の何が素晴らしいって、章題でしょうか。 彼は実践し続けているようですけれど・・・長続きしなかったことが今日の私を決定づけたのではないかとさえ思えるのですけれど・・・確かに昔本を読むと心を打たれた言葉とか、素晴らしい!と感歎した言葉を書き抜いてノート作っていましたっけ。あのノート結局どこへ消えたのだろう?「○○・・・とパパは言った」という彼の覚え書き。それが全部不思議な言葉だけど真理?「いえてる!」と頷ける箴言・・・でもって実にいい物語の進行役。そしてそれらが繋がって最後の「○○と僕は言った」と彼の成長に乾杯!
だけど手放しで面白かった!と、言えないのは私の方が子供だからかもしれない。「大人に成るのなんて厭だい!」と、言ってしまいたいほど桃蔵さんが惜しいから。必要な事を認められる大人にディア・カオル君は成ったんだね。いくらお父さんがフォローしようとも、彼(桃蔵さん)の将来を心配してしまうよ。彼は故郷に返してはいけないんだ、桜宮に大事な人材だよ・・・って思っているんだよ、患者の一人として。
しっかし、この作家、やっぱり恐るべし!なんだね。ステキ
まったくもう桜宮市図書館に登録しないと海堂先生の本は直ぐには読めないようですね。江東区の図書館さんも随分買い込んでくださっているとは思うのですけれど・・・

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