光
三浦 しをん集英社 2008-11-26
売り上げランキング : 115541
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る by G-Tools

三浦しをん著

「嘘ッ!」と読み始めて直ぐ思った。毒される前に読むのを止めようか?と迷った。
三浦さんの本を読んでこう思うことがあるとは・・・思わなかった。といっても、まだ?5作目です。
私の知らない・・・と言うより私の知っているしをんさんと対極にある別のしをんさんでした。驚くねぇ。
先日の道尾さんのこともあるから?新しい本を読むのを止められません。死ぬまでに読みたい本全部読めるでしょうか?考えるだけ野暮ってモンですか。そして時にこういう本にも出会ってしまいます。リスクです。
人にも時にも何の期待も抱けない話でした。作家にはよくこういう思いをさせられることがあります。安心していたのに・・・。こういうときに読む作家だったのに・・・。みたいな?
そして実際のところ作家の方にもあるようですね。自分の書くものに倦む時。自分の連作登場人物に縛られすぎて息が詰まる時。片側に偏った分銅はもう片側にも同じ錘をね?だからきっといつかこの作家の暗い話にあうだろうと思っていても良かったのですが・・・不意を突かれました。それも手ひどく。
主人公といって良いのかな?信之、輔、南海子、それに核になるのが美花。その親その子その人生どこにも光は射さない。信之の美花への忠誠心にさえそれは求められない。子供の執着以上の成熟はないのだから。島で育っていた時までの、あのつなみが来るまでに出来た精神形成がすべてで、人間関係も時に触発されて発展、成長することは無い。全ての人が何らかの暴力を振るいすべてが何らかの暴力の支配下にある。助けは来ないし、自助努力もない。彼らは本気で成長も成熟も脱出も望んでいない。で、暴力を含めた古い関係に依存している。こんな話イヤダ!という反応しか出てこなかった。
会社に勤め、アルバイトをし、幼稚園児の母という社会もありながら、ここに出てくる誰一人社会の一人になろうとか、心を開こうとか、他人という人間が居る事をうけいれない。自分のことしか考えずそこで終結している。人の世で生きていくことは彼らにはありえない・・・どうしてあげようも無く、受け入れようも無い。ここにはなにも無い。厭なものを覗いてしまった!