一夢庵風流記 (新潮文庫) 一夢庵風流記 (新潮文庫)
隆 慶一郎新潮社 1991-09
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隆慶一郎著

大昔、子供が少年ジャンプだか少年マガジンだか読んでいた頃は結構一緒になって漫画見ていました。その中に「影武者徳川家康」だか「花の慶次」だか?見た覚えがあります。そのとき隆慶一郎の名も覚えたのでしたっけ。隆さんのことは父が、なかなか面白い作品を書く人で「吉原御免状」など読むといいと言っていましたが・・・いまだに読んでおりません。が、いつだったか旦那が「捨て童子・松平忠輝」を買ったときにそれは読んでいます。
あの本は面白く読んだのに何故続けて隆さんの本を読まなかったのか不思議です。今回この本も旦那から回ってきて、読んで本当にそう思いました。実に面白い!と。
ただ、読んでいる間にどうしても慶次郎が漫画の・・・つまりケンシロウの顔になってしまうことが厄介でしたね。「お前は既に毒されている」と呻きながら読了。
歴史の襞の中にある意味落ちてしまった、けれども魅力的な人物を探すアンテナに長けていたのでしょうか?加賀の前田家には多分殆ど資料の残っていない人物なのかもしれませんが・・・そういえば・・・と、記憶を辿って、先年NHK大河ドラマでした「利家とまつ」の中で三浦友和さんが演じた利久の養子が慶次郎でした。確か及川光博さんが演じた?
漫画の慶次郎と大分開きがありますが・・・そんなわけで、もなにも?大抵の人にはイメージの及ばない人物です。有名な武将は人それぞれにイメージがありますね。家康だったら誰が演じるとぴったり!みたいな?
でも慶次郎は誰が演じてもヘーこういう感じの人なんだ・・・みたいに受け入れやすいでしょ?それだけ埋もれていた人物が実に大きく大らかに血肉をぎっしり詰め込んで華々しく登場してきた感があります。
多分二度と薄れることは無いだろうと思われるくらい見事に印象的に!
古文書の海を探索するのはきっと物凄く面白いことなのでしょう?どんな宝が眠っているか・・・全然違うかもしれませんが塩野七生さんのローマ物も殆ど現地の古文書が種だと聞いたことがあります。
忠輝もそういえばそうでしたっけ・・・と思って、これがこの作家の素晴らしい魅力なんだと思います。全く史実に無い人物を勝手に造形したのではなく、ちゃんと資料の海を踏査して背骨を磨きあげてから時代の色の人物を肉付けして、想像力をありったけ動員しているからなお更読むと血沸き肉躍るのでしょうか。
こんな人物いたら私も惚れるんだろうな・・・だけどそれはきつい人生を選び取ることになるのだろうな・・・だけど本人は全く・・・そう、人の心を攫た上にさらりと自分の生き方だけを見つめて生きちゃうんだろうな・・・なんてね。骨にも捨て丸にも金悟洞にもなれるわけ無いんだから!本でお目にかかっただけで本当に良かった!と、胸をなでおろしています。で、ここに至っても、ケンシロウ風イメージが消えないので今のNHKの直江兼継続の線の細さが心配なんですよ。
「生きるまでいきたらば、死ぬるでもあらうかとおもふ」・・・かっこいいなぁ!