臨場

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臨場 (光文社文庫 よ 14-1) 臨場 (光文社文庫 よ 14-1)
横山 秀夫光文社 2007-09-06
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横山秀夫著

記念すべき?横山さんの十冊目になる。全部来るたびに父が「読み終わった。いいぞ!」と言って置いていったものである。
おかげさまですっかり横山さんのファンになってしまいました。
今では好きな作家の五本の指に入ると思っています。
そしていつも読んで裏切られることはありませんでした。
一寸異色の「出口のない海」にしても。
横山さんの魅力の「警察もの」の中でも「臨場」は娯楽性が強い方だと思います。なぜならいつもどおり本当に面白さに引きずられて夢中で読んでしまうのですけれども、彼の警察ものの中にはとても厳しいものもあるからです。人間の心の中が余りに細かく解剖されて「きついなぁ・・・」と主人公たちに言ってあげたいくらいの時も多々ありますものね。
その点、この主人公の切れ味鋭い解決はとても小気味がいいのです。しかも彼には一風代わった人間味がその体のどこか奥底に蠢いているのが感じられて、嬉しいのです。勿論この作品の主人公も健康面で危うい感じです。ひょっとするとこの神がかり的な洞察力は研ぎ澄まされた精神・神経のせいで、それは諸刃の剣で彼自身をも切り刻んでいるのではないか?と危惧させられてしまうからです。彼が魅力的であればあるほど、素晴らしい手腕を発揮すればするほど心配でなりません。彼の活躍する次作が期待できなくなってしまうではないですかと。彼の生き方の意固地さはなかなか組織では発揮できないものです。そこを警察の組織というものに多分本物の警察官以上に?熟知している横山さんがごり押しして?書いてくれているのが面白いのです。こんなプロがアッチコッチの警察署で生きていてくれるといいなぁ・・・なんて魅力的な登場人物に会うたびに思ってしまいます。横山さんの作品を読んでいると多分付き合いにくい奴らだろうなぁ・・・と、思っても、何故かいとおしくてその個性を受け入れてしまっている自分を見出すのです。個性って魅力的な資質のことかもしれないなぁ・・・って。特になにかに取り付かれたようにがむしゃらに進んでいく時に人は!なんて。
ところでこの作品はその魅力的で破天荒な組織のハグレ者の調査官倉石さんが八つの事件を解決に導くのですが、または部下を導くのですが(育てると言っていいかな)、その一つ一つの事件もまた様々で一つ一つに関係してくる捜査官たちの葛藤が読み応えあって、被害者たちの失われた人生もそこにはちゃんとあって・・・。「ゆかりは哀れだなぁ、その辺に居そうな子だけどとか、智子は面白いキャラクターだけど」とか、出てくる人物がきちんと性格を造形されているので全くのよそ事にならないのです。「餞」はいい読後感だったし・・・倉石調査官のキャラクターの色彩が暖かくなって・・・といったところなど楽しめる要素が豊かです。こんな?年季の入った個性的な警察の方たちが大量に定年になっていく現在「大丈夫なのかなぁ・・・警察は?」です。
 

ダイイング・アイ

題名INDEX : タ行 2946 Comments »
ダイイング・アイ ダイイング・アイ
東野 圭吾光文社 2007-11-20
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東野圭吾著

東野さんは今絶頂期の作家なんでしょうか。この本「出た!」即「予約登録」やっと手元に。でも今現在の段階でまだ560人も予約しています。「流星の絆」は800人待ちを記録しているようです。私は確かまだ「夜明けの街で」が200人待ち「黒笑小説」が20人ほどの待ちですか。こんなですから本当は「待ち」の無い彼の作品からどんどん読んでいけばいいと思うのですが・・・油の乗っているのは「今」かもしれない?東野さん、私はこれが5作目になります。
読む気になれば本当に作品はいっぱいあります。
「赤い指」も犯罪事件でしたが、家族の事件といった趣でした。
この作品は犯罪者の贖罪がテーマだと思いました。
最後まで引っぱるミステリーは読み応えありましたし、自動車事故と加害者の記憶喪失とが織り成す謎の解明は一寸オカルトなテイストも加味して一気に読ませる力がありました。
読後感もだから「赤い指」より気分は楽?で(親だからね)、一つずつ真実に近づいていく主人公の雨村慎介という男の執拗さと悪さ小利口さが魅力でもありました。全く悪い男がいい人より人をひきつけるのってなんででしょう?これも永遠の謎ですか。
それにしてもよっぽどいい男だったのでしょうか?どうしても解からないのは瑠璃子の復讐のあり方です。瑠璃子は江島に「あなただったのね、私を殺したのは・・・」と言うまで慎介だと思っていたのでしょう?それでは復讐のあり方が慎介の場合の複雑さと、江島とわかってからの直裁さの間にある物はなんでしょう?慎介には何を望んだのでしょう?(状況的に仕方なかったと、思ってみる?)この辺がわからないですねぇ、しかもこの部分がかなり引っぱる・・・作者のサービス精神?まさかね?猟奇性を狙ってみた?
一人の女性を轢き殺してしまった二つの車、その二人の運転者と二人の代理犯人・・・面白い設定でした。実際この手のすり替えは明るみに出た以上のものが実生活の中には隠れているのでしょうね。
とてもありえるリアルな設定です。そこに被さる被害者そっくりの女性の謎、その目の魔力・・・オカルトか?とその部分で一寸退くきましたけれど、変なところが随分あるようでしたけれども、読み終わってみたら・・・テーマに妙な納得感がありました。
多分大抵の読者がそう思うかもしれませんね。
やっぱり罪は直ぐその場で償いを始めなければ駄目なんだ!と言うことでしょうか。(犯人を)隠してやる、護ってやるということは却って傷を深くするという当たり前すぎる納得になって胸にしっかり降りてきました。交通事故死も殺された本人家族にとっては殺人にまぎれもありません。もし無念に死んでいく人がその間際に犯人にあの「ダイイング・アイ」を捩じ込めたら、「死刑論議」(それにしても最近やたらに精神鑑定が多すぎじゃありません?無罪になった人がまた事件を起こしたら鑑定を要求した弁護士はどんな責任を負えるのでしょう?)を省いて犯人を罰することが出来るのに・・・でもそば杖を喰らう危険もあるなぁ・・・実際精神を病まずにいられないような社会に私たちは住んでもいるし・・・交通事故は運が悪かったと言いたいような状況もあるし・・・と、まぁ色々様々な事を思っていました。作家の若い(私より10歳も!)才を感じさせられました。以前の作品を読んでいないのですが作家が多作だと・・・楽しみにしているくせに・・・一寸雑にならなければ・・・いいけどなぁ・・・って思ってしまいます。

流星の絆 流星の絆
東野 圭吾講談社 2008-03-05
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夜明けの街で 夜明けの街で
東野 圭吾角川書店 2007-07
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使命と魂のリミット 使命と魂のリミット
東野 圭吾新潮社 2006-12-06
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花の下にて春死なむ

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花の下にて春死なむ (講談社文庫) 花の下にて春死なむ (講談社文庫)
北森 鴻講談社 2001-12
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北森鴻 著

「香菜里屋」シリーズの工藤さんはなかなかいいと聞いたのですが、
おまけにこのシリーズはもう4作も出版されているらしいです。
それって、この話に魅せられれば凄く楽しみができるということでっすよね。一寸幼くはあっても(失礼)今、結構「しゃばけ」シリーズにはまっているみたいに。楽しみが増えるのって大歓迎ですもの。「ガリレオ」シリーズももっと増えますかね?って感じに。
だから聞いた以上?ソレッとばかり第一作に飛びつきました。
で、今、困ったぞーと思案投げ首、優柔不断状態!
う~ん、微妙。悪くはないのですが・・・いまいちハギレが悪いと言うか、味が薄いというか・・・コクがないのです。
工藤という人の感じ、悪くないのです。作家が狙っている線もよくわかります。それがもっと上手く表現できていたらなぁ・・・惜しいなぁ・・・って感じでしょうか。水準は言っているけれど、文章も会話もちょっと舌足らず、香辛料がなにか欲しい、練って欲しい!繊細に丁寧に情感を湛えて欲しい!
工藤さんを表現する言葉に見えてくるものが、印象を刻み込むものが足りない上に、狂言回し、事件を運んでくる常連にもう一つ愛情がもてないのが一寸辛いです。
それに事件そのものが余り面白くないのよ・・・と思ったのですが。
どんどんよくなっていくのでしょうか?第二作、三作と?
工藤さんのイメージが際立ち、常連さんが作る店の味わいが深くなるのでしょうか?新たな風を運んでくる事件に魅力が増すのでしょうか?それが気になるので・・・これは降りだ!と決められないでいるのです。そうなる要素は多分にあるという気もなくはないのです。その将来性が丁半どっちらか?なんて賭けてみたい何かはあるんです。
でもなぁ・・・時間は惜しいしって、こればかりは好みの範疇、自分で読んでしか決められないのよねぇ・・・優しい人が集まる美味しい場所って魅力的だし・・・おかしな問題の推理話をするのもそそられるし・・・私も行きたいような場所設定ではあるのだけれど・・・

巷談 本牧亭

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巷談本牧亭 (1964年) 巷談本牧亭 (1964年)
安藤 鶴夫桃源社 1964
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安藤鶴夫著

なんで今頃?と、思う本だ。子供の頃?既に父の本棚に何冊かの安鶴さんの本は並んでいた。あの頃父は落語が好きで鈴本に通っていたのを横目に?一寸羨ましく見送っていたっけ。だからか安鶴さんの本も愛読していたのだろう。でも結構父に隠れて父の本棚の本を背伸びして読んでいた私も安鶴さんの本に手を出そうとは思わなかった・・・のだ。それが今頃読んだのは、父がこっそり我が家に運んできたからである。父と弟の二世帯住宅の2階には贅沢なことに弟の書斎の隣に図書室なるものがある。同居した時父の沢山の蔵書もそこに収まった。ところがあの家は皆読書家。本がどんどん増えていき床が落ちかねない?というわけで弟夫婦は黄色くなった古い本の大処分に踏み切った。・・・となると当然まずは父の本だろう?大事だったはずの藤村全集・谷崎源氏始め明治大正期の文豪の作品集は一括りに玄関先に。その中から美術全集と安鶴さんをかろうじて父は救い出したらしい。周五郎さんの黄色くなった文庫は私が駆けつけて拾い上げた。そんなわけで昭和39年から我が家にあった本を今頃読んだのである。で、なんで今まで読まなかったのだろう!と、思いつつ私は次の「寄席紳士録」に取り掛かるところである。
凄い!のだ。素晴らしいのだ。面白いのだ。ここに登場してくる芸人さんとその芸人さんを愛する人々の日常が本当に(むくむく心の中で蠢くほどに)活写されていて生き生きしていて個性的で魅力的で泣きたいほど可愛いのだ。
この登場人物たちはもう既に殆ど全部の方がこの世にはいらっしゃらないのかもしれないが、確かに居たのだ!という実感がものの見事に!確かなのだ。皆好きだ、皆見事だ!そういいたいほど。
特に私は桃川燕雄さんが大好きだ。川崎福松さんとの生活が見事だ!そうとしか言えない。こういうお二人を読んでいると、なんと今の私たちの騒々しく饒舌で中身の無いことか!と、我ながら感嘆してしまうほどである。服部伸さんとこのお二人が故障した信号の前で立っている姿を思うと・・・この本の終わりの佇まいがそのままある一つの美しい時代の終わりの佇まいに思われてくる。
それに本牧亭のおひでさんは私の高校の先輩だったのだ。クラス会の場面のなんと心にしみたことか!だからこの本の中の地名は全部私の縄張りだったのだ・・・なんと遠くなったことか!いや、遠くしたのは私自身。私の怠惰だったと思われて、妙に忸怩としたものも有るのだけれど、それを押し流す勢いで何故か私の覚えているはずの無いあの頃の芸人さんたちが懐かしく迫ってくるのである。
「ああ、桃川燕雄という人が居たんだ!」
田代光さんの挿絵がまたなんとも言えず味わい深いのだ。

シズコさん

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シズコさん シズコさん
佐野 洋子新潮社 2008-04
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 佐野洋子著

きっつい本だったなぁ・・・と、読み終わって思っている。
何が重かったのか・・・って考えなければならないことがまたきつい。
読んでいる最中もきつかったがこの本は納豆みたいに結構しっかりした後を引く。読んだ全ての「誰かの娘だった人」はいやでも自分と母の関係について再考させられるだろう。幸せな関係であったとしても何らかの反省と共に、だから幸せではなかった関係の人にとっては・・・しかし結局は「いわんや悪人をや?」であるかのような結末が待っていて・・・ほっと出来るのではなかろうか?とも思うが?いやいや母娘の関係はその関係の数だけのパターンが有るから・・・読み終わって許し許された二人に訪れた穏やかな日をただただ羨ましいと思う人も多かろう。それにしてもシズコさんの亡くなったのは90歳で洋子さんは既に70歳近く?なんと言う長い旅路であったことか!そして洋子さんは死ぬのは怖くないといえる心境にある。「そちら側に すぐ行くからね」と締めくくる。
開けっぴろげに、隠さずに、弄さずに、投げ出されたようにシズコさんとの来し方が書かれ、お二人がすぐそこに投げ出されているみたい。そのまんまそこに。どちらも凄いなぁ!「情が無い」も「情が有り」も、どっちも凄い。人生の終わりを見切ってしまったらこれだけバシャッとありのままを投げ出せるのかな?
私の母はシズコさんと違ってパタッと倒れて翌日には亡くなってしまったから老後の関係はぶつ切れで終ってしまった。だからだったのだろうか?ありがたいことに私と母は絆を結びなおす期間を必要としないほど上手くいっていた。思い出す限り「いい母だったなぁ・・・」なのである。本当にありがたいことに!
それなのに洋子さんの本を読んでいると洋子さんが母シズコさんを背負っている重さが不思議なことにまるで羨ましいかのようにみっしりと感じられるのだ。傷を付け合った深さの分、流した血の量に比例して、人間の関係は深く、絆は強くなるのかもねぇ・・・とため息をつく。
静かで穏やかで当たり前すぎるほど当たり前の親子であったので、さらさらとした肌合いの母子だったので、捨てたとも捨てられたとも負の感情を一滴も持たずに私は穏やかに母と別れられた。
周りを見て不思議に思うのは愛されなかった子ほど親に優しいということだ。「あなたのお母さんこそお母さんよね?」羨ましい羨ましいといっていた友人はやはり兄夫婦に捨てられた母を看取ったし、兄弟の中で一番出来が悪いといわれ続けていた息子は優秀な兄たちが都会に出て行った後の親を一手に引き受けたし。
今99歳の母を近所に抱えている友は「本当に意地悪で口の悪い厭な人だったのよ・・・だからこんなに長生きしていまだに私にも妹にもヘルパーさんにも意地悪し放題している。」と言いながら通っている。
子に愛情を注ぎ尽くした親は、安心して育ち情緒安定して独立した子供にさらっと忘れられるのかも?彼らは親に執着せねばならぬ何ものをも持たされてはいないから!
人の関係の中で一番最初に結ぶ関係で人の一生の背骨になるのが親子関係。いずれにしても当分母を、母との様々なシーンを根掘り葉掘りしてしまいそうだな。

おひとりさまの老後

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おひとりさまの老後 おひとりさまの老後
上野 千鶴子法研 2007-07
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上野千鶴子著

「おひとりさまの老後」読んだ?と聞かれましたから「ああ、売れているらしいけど・・・読んでいないけど・・・」と、歯切れ悪く答えました。読んでいない本を腐すのはいけません。
「読み終わったから貸してあげる」「面白かったの?」「面白かったよ」「今読む本いっぱいあるからいいわ」お断りしたつもりでしたが・・・次に会ったとき渡されました。読むっきゃない?
なんとなく後ろ向きだったのは作者さんの経歴をなんとはなく知っていたからかなぁ?私より年上の方としては余りにお仕事の分野で一流過ぎやしません?おひとりさまはお一人様でも彼女の言うおひとりさまと私がなるかもしれないお一人様との間には越えられない溝がドッカーンとありそう・・・でしょ?読む前から感じちゃう。
着々と一人の老後を迎えるつもりで準備を進めてこられた方とうすぼんやりとでも家族の傘の下でぼーっと暮してきた私とでははなっから覚悟が違う?この分野では(‘この’だけでは無いかもしれないけれど・・・)すでにして勝ち組と負け組み?なんてね。
そしたらのっけから結婚生活を続けていらっしゃらないご自分を負け犬とおっしゃっているではありませんか。ほう、そう来ましたか?
確かに準備おさおさ怠り無く!過ごしてこられただけに、なかなかのソフトの充実振り!感服しました。しかも何度もおっしゃるとおり、こっちは「子供はいても・・・」の世代で夫がいるから「準備も遅れ・・・」の来し方で、亭主が定年迎えて友人ネットワーク構築にもまさにヒビが入りかねない現状・・・のご指摘どおりの遅れをとった負け犬状態。
後はお金?ご指摘どおりにそう思いますが、それもご指摘どおりの有様!だから読むのいやだったのよ・・・と、ぼやきながら、読了。
しかしまさかこの方に限って・・・多くの未婚で着実にネットワーク作りにも、資金作りにも着実な成果を上げてこられたほかの方々とは違って・・・結婚生活なんか維持しちゃって、同居という罠に落ちそうな立場の人を、見下してはおられませんでしょうね?と、なんだかいじけてしまったところでございます。なんだか「末は皆お一人様」という宣告の陰には高らかに‘未婚勝ち組オーラおら’ファンファーレが漂っている気配。
実際役立つソフトはあるし、なるほどと頷かされるところはあるし、石橋叩いて万全策かと感嘆もしたけれど・・・でもいちいちいちいち・・・ま、いいか。
だって、何を言おうとも、上野先生には理論武装に隙は全くあろうはずが有りません。どんな反論にも!気分にも?絶対確実な答えが待ち受けていることは確かですものね。全方位十重二十重四面楚歌?って感じ。
この本貸してくれたがった方はお子さんが無く10も年長のご主人がおありです。立場によって、一人一人、役立ち方も棘の感じ方も違うかもしれないわねぇ・・・しかし確かに、やな感じ!

ずらり料理上手の台所

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クウネルの本 ずらり 料理上手の台所 (クウネルの本) クウネルの本 ずらり 料理上手の台所 (クウネルの本)
お勝手探検隊マガジンハウス 2007-09-20
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お勝手探検隊編

正直なところこの本が見たいなと思って図書館に予約した時、こんなのが(失礼)百数十人も待つとは夢にも思いませんでした。
人の台所に興味津々な人って結構いるのですね?
「家政婦は見た!」じゃなくとも・・・?
他人様の台所は宝の山です。
時々友人の家になど行くと凄いヒントが降ってくることがあります。
でも、私の平凡極まりない台所は余り他人様のお役にはたたないだろうな・・・と、忸怩たる思いがあります。・・・した!でも、この写真集を見てこれでもいいのだとほっとした思いもあります。
この料理上手と呼ばれている人たちのお料理、食べてみたことはありませんから、その点「はてな?」マークつきですが、お台所は楽しめました。写真も美しくって、センスに溢れていましたから・・・それでカバーされた部分も?
料理上手は台所の整理整頓も上手!と言うのは思い込みだったようです。要はその人が使いやすいか?ということだったのですね。
その点では私の無様な台所も私には使いやすい!と言う1点でそこそこ優秀です?乱雑さも含めて。
何よりどこに何があって何の時はどこから何をサット取り出せるかってことがすべてです?
色々なものが実に様々に見えるところに全部出ている台所もあれば、こんなにコンパクトで本当に料理しているのかな?と思うのまで実に様々なようです。
私も転勤で9軒の家に住みましたから9の台所生活を経験したわけですが、どこも住めば都で?1ヵ月後には使いやすい台所になっていましたね。私の特技は柔軟性?染まりやすい?いい加減?ですか。
でも忘れられない台所が二つあります。
23歳まで過ごした実家の台所と、私が実際設計して作った我が家の台所です。一つは母と並んで過ごした懐かしさの甘いオーラに包まれていますが、後のは売り払った時点で泣きたい位惜しい台所でした!大好きな向日葵色のタイル張りにした出窓が今も惜しくてたまりません。
今の台所はそこそこ憧れの初めての対面式だと言う点で評価していますし、旦那と二人だけの調理をするにはうってつけの狭さが気に入りです。
ただ出窓が・・・ないんですね。これも憧れの譲れないものの一つではあったのですが・・・はずでしたが。もう諦めが付きました。何にでも人は慣れる?
こうして色々な人の台所を見ると、確かに台所はその家の家事担当者を映す鏡なんですね?この本の中にすんごいシステムキッチンなんかがなかった(ひとつ、「みたいの」があったかな)のが嬉しかったな。ぱらぱらめくるたびに楽しくて、図書館に返すのが久々に惜しい本ですよ。

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この黄色、私の作った台所と同じ色なんです!
懐かしい!母の台所とは違うのに、母を思い出させる台所です。

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これも懐かしい感じがするのですが、右の方は東京暮らしではゆめゆめまねてはいけません。地震の時・・・?

カシオペアの丘で

題名INDEX : カ行 404 Comments »
カシオペアの丘で(上) カシオペアの丘で(上)
重松 清講談社 2007-05-31
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カシオペアの丘で(下) カシオペアの丘で(下)
重松 清講談社 2007-05-31
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重松清著

「イヤダナ・・・いやだな・・・厭だな・・・」と頭の中でズーッと思いながら、なんとか読み終えたという感じがしました。
「幼馴染み」というキーワードに背負わされた重さと言ったら・・・
この関係にこれだけの重さを負わせていいのだろうか?いかに濃密な関係だったとしても?
これじゃぁ余りにこの関係がきついじゃないか・・・
幼馴染みのいる全ての人が自分の子供時代を思い出して・・・時間が限られている時に、追い詰められた時に、その思い出から優しさを目いっぱい汲み出そうとしたら・・・んなことはありませんね。
「これは夢物語です。」と念を押して心を宥めてあげたいような気分です。
「時間がいっぱいある」とすら思わないで普段生きています。
気が付かないうちにこの世で私はもう60年をぼんやり過ごしてきてしまいました。
特に誰かに何かを期待しないで(意識しないで)・・・でも普通の通りすがりの、袖摺りあった、友情を感じた、愛情を持った・・・人との間に通う気持ちはそれなりに大事にして。故郷への思いもまた同じです。
でも、期限が切られたら、明日が必ずしも来ないと知ったら、私はとてつもなく周りの人に故郷に期待し、要求し、採り尽くすのかしら?やはりそれにすがって足掻きまくるのかしら?
人は思い出から搾り取るのかしら?そう出来るのかしら?そしてそれは他人まで巻き込めるのかしら?その他人に「幼馴染み」という冠を被せたらなお更に?切れた絆を結びなおしても?そういう時が訪れたら人は自分の過去にしがみつくのかしら?それとも過去のほうから赦さなければいけないこととか、強くならなければいけないこととか、「色々あるでしょう?」などと働きかけをしてくるのかしら?過去は過去でおいておきたいでしょ?しまい込んでおきたいでしょ?違うの?
ミッチョとトシとシュンとユウちゃん・・・その記憶だけで本当は終ったはずのものだよね?でも悲しい事件が起こって、死病が宿って・・・過去は優しさと許しを汲み上げられる井戸になってしまったかのような。
過去にそんなに期待しないで、長く遠ざかり忘れたと思っていた人にそんなに期待しないで・・・と、思っていた私はヒョットするととてつもなく心が淋しい人なのだろうか?なんて厭な気持ちにさせられたりして。既に死んだトシの父母や炭鉱で亡くなった人たちも引きずり出して過去は反芻されつくして・・・そうすると優しさが生まれるのだろうか?私は怖いと思ってしまった。
幼馴染みのあの顔この顔・・・4人が紡いだ幼馴染みの時は、たいていの人にもあるにはあるだろうけれど・・・イヤこれはどうかな?やりすぎじゃないか?やらされすぎじゃないか?
思い出してしまった昔の幾つかの顔にとりあえず心の底で「元気でいてくださいね」と、呟いてみてはみたけど・・・
殺された少女と家族の話を上乗せすせることで生み出した苦しみまで被せてまでも・・・「赦し」?
語り手が変わるたびに語る人がどんどん優しくなって、感傷的になって、人の心を際限なく分かってあげていく?そう思われてしまうことに抵抗がある人はいないの?いてもいいでしょ?
私がシュンだったら・・・今いる周りの人と過ごすことで手一杯かもしれないなぁ。赦したいとか赦されたいとか思うことがないからかなぁ?大きな重い過去がないと優しくなれないのかな?それもイヤだな。心ってガラスの優しさ?本を閉じたら「フラジャイル」と大書してあるかも。
この本を読んで癒された許されたと思う人って多いのだろうか?心が洗われて優しくなれたと思う人って多いのだろうか?そう自分に問うて、多分多いのかもね?と、答える。
人が一人亡くなるということは周りの人にそれだけ重いことだということはよく分かるけれど。普通に成り行きで葬れないものかしら?おーやだ。

気になる部分

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気になる部分 (白水uブックス) 気になる部分 (白水uブックス)
岸本 佐知子白水社 2006-05
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「気になる部分」  岸本佐知子著

「時間が出来たら何を置いてもこの作家の作品を読もう!」と前作を読んだ時決意しましたが、実行しました!
図書館所蔵では翻訳作品以外はこの作家の作品はこの2冊しかないのです。
だから次に読む本を予約できないのが残念です。
それにしても、困ったなぁ・・・
素晴らしく魅力的なおかしな自分を見事にしっくり魅惑的に笑えるように書きあげることの出来る人ですよ!
でもお終いまで読んで彼女が「翻訳した作品も読みたい!」という気にはならなかったのが不思議ですが・・・なんかなぁ・・・本当に同類?
彼女の二冊に感じた同類感は確かなものですが・・・このまじめで面白みのない私に言われても・・・って、私も思いますが・・・底の底には人間色々なものを抱えていますからね、分かってください。
翻訳作品も彼女と同類人の作品なのかなぁ・・・読むのきつそうな印象も感じましたが。読まないと大失敗かも?
そういえば、寝ようと思って目をつぶった時、直ぐに眠れそうもない気がする時、私は目のもうひとつ奥のまぶたを開けます。
ところがどうやっても開くのは右目だけなんですね。左目の奥は開かずの扉に護られているのです。
そして開いた方の右目の奥のまぶたを開けると日替わりで色々な映像が展開します。それは・・・極彩色だったり墨絵だったりそのときそのときなのですが・・・絶対知らない物語が展開したり、全く会ったこともない人がにんまりしていたり・・・それをはてな?とじっと見定めようとすると見事に眠れるのですね。あの絵を岸本さんだったら実にうまく表現してしまうんだろうに・・・。
頭の中や心の中や無意識下の意識をナンデこんなに書き尽くせるのか・・・その才能はどうして育まれたのか?羨ましくて妬ましくて悔しいなぁ・・・!

でも絶対違うのは・・・彼女だったらこんないい加減な、不ぞろいのコピーはくっつけないってとこ。
 

犯人に告ぐ

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犯人に告ぐ 上 (1) (双葉文庫 し 29-1) 犯人に告ぐ 上 (1) (双葉文庫 し 29-1)
雫井 脩介双葉社 2007-09-13
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犯人に告ぐ 下 (2) (双葉文庫 し 29-2) 犯人に告ぐ 下 (2) (双葉文庫 し 29-2)
雫井 脩介双葉社 2007-09-13
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犯人に告ぐ 犯人に告ぐ
豊川悦司ポニーキャニオン 2008-03-21
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 雫井脩介著

もう一気読み!
その勢いで旦那に「凄いよ!」と言ったら、旦那も翌日から一気読み!図書館で何百人も待っていたら、その間に映画化までされちゃったようですね?映画は見ませんでしたが、どうだったんでしょう?
あのスリリングな最近流行りの劇場型?映画劇場に上手くマッチしたのでしょうか?湾岸署みたいに?相棒劇場版みたいに?
読み終わって、これは読んで、畳み込んでナンボ!っていう類の小説。読んで呻ける醍醐味がすべてっていう類の作品って気がしましたが?読む私たちの方が劇場型にはもうなれているのかもしれませんね。警察OBのコメンテーターなんて今更目新しくも無いのですから。そういう意味ではこの捜査方はもうお馴染みかも知れません。
ですからこの物語の場合、何より主人公が感情移入しやすい理解できる冷静な常識人っていうイメージを持っているのが強みでしょうか。何をしても、どんな場所に置いても、納得できる知性も理性も実行力もあって、仕事人間だけどそれを家族に受け入れてもらえるだけのフォローも出来るタイプの人間?それだけで尊敬できちゃいますものね。
つまり主人公の巻島がとても好感が持てる人物だったってことがこの物語の口当たりをとてもよくしているということを最初に書いておきたいです。こういう主人公を生み出したことでこの作品は成功したのだといいたいくらい。実際は彼が失敗を踏まえ、その失敗の中から不死鳥のように逞しく甦ったという設定そのものが読者には嬉しかったのです。
「ワシ」の事件が後味が悪く残っていたからこそ彼の身を捨ててもの覚悟を産み、それがTVでの生々しい目に見えるような事件の進行に緊迫感を与え、読む方にそれで?それで?と先を先をと言う欲求が生まれ・・・という連鎖に繋がり・・・つまり夢中で読んでしまったのです。
横山さんの心理的緻密な警察ものとは一線を画していますが、ある種の息もつかせぬ緊張を生み出した面白さという点では決して劣らないでしょうね。
この劇場型犯罪というセンセーショナルな場面を構築し、エンターテインメントとしてより面白く出来たのは、巻島に対する大悪党曽根と小悪党植草というキャラクターを重層で配したからでしょうか。
パージされた植草、全く怪我をしなかった曽根、いずれにしてもキャリアの世界を相変わらず生き抜いていくだろう二人がいてこそ、「警察ってこういうところか・・・納得」みたいなリアルさが通って、訳知りな満足感まで読む私に生まれる。
巻島が描かれそこなったら絶対にこの小説にはリアリティが生まれなかっただろう・・・という気がします。
「私が被害者の親だったとしたら・・・」という視点を巻島を丁寧に描くことで上手く封じ込められた感がありますが、それもちゃんと巻島の遭難という出来事でもう一歩罪障希釈されて、後味も悪くならなかったのでしょう。
「ワシ事件」があいまいなまま、またその被害者の苦しみが描きこまれたことによってなお更現実の社会が表現されて実に上手い面白い小説を読んだ!と言う満足感があります。
 

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