おそろし 三島屋変調百物語事始

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おそろし 三島屋変調百物語事始 おそろし 三島屋変調百物語事始
宮部 みゆき角川グループパブリッシング 2008-07-30
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宮部みゆき著

「三島屋変調百物語事始」という副題が付いています。
この本図書館に予約したのが何時のことだったかもうすっかり忘れ果てています。それくらい経ってようやく届きました。ようやくと言えば十日間家を留守にしていた間に東野圭吾作「流星の絆」が届いて取りにいけなかった間に流れちゃいました。改めて予約したら1200人待ちですって!時間が経ったのに増えてる!これってTVドラマ化のせいよね?チェッって感じ?
さてようやく来た本はその分?予想に違わず!面白く読めました。
全くもって名手ですよ!名手過ぎてすべりが良すぎると感じる何かもかすかに頭をよぎるのですけれど、面白く読ませていただける安心感も手馴れた感じ!「しっかし、上手いよなぁ・・・!」嘆声。
百物語と言う既成の枠組みを使いつつ、新しい意匠を凝らしている面白さ。百の物語が語られ何が起こるのだろう・・・と期待感を持たせます。
その何かにも新しい宮部さんならではの意匠が見られそう。それともむしろ現代の衣装をまとった百物語が時代の枠の中で語られるのか?
さぁどんななんでしょう?
心に大きな傷、暗い穴を抱えてしまったおちかさんが物語の聞き手となるのだけれど、だからこそ誰しもが語りたくなる、何かを打ち明けたくなると言う設定も無理はない。むしろ余りに何か人や事象に訳知りすぎて敏すぎる叔父さんの動きが少々出来すぎてあたりまえでない印象を受けるけれども、心ある叔父叔母夫婦に見守られつつ前へと僅かずつ進んでいくおちかさんがいじらしくて(だけど本来は恵まれ過ぎて生まれた人よねとやっかみつつも)・・・つい応援しつつ見守って、話に耳を傾ける自分に気が付いて「宮部ワールドの引力だわ・・・」と苦笑してしまう。心に大きな苦しみ、闇を抱えてしまった全ての人にこのような優しい手が差し伸べられるといいのに・・・なんて思って、そういう人がこの本にめぐり会ったらなにか感じるところが多いかもねぇと・・・。そう!怖ろしい物語だけれど、読む人によっては癒しにも助けにもなるのかも知れず・・・
宮部さんの長い物語をいつも長いと感じずに読みふけってしまう私は今回もまたどうせなら百話聞きたいと願い始めているし・・・。 是非、広げた大風呂敷にしっかり詰め込んでください!
実際途中で松太郎に殺されてしまった良助はどうなるの?なんで彼の事が出てこないの?って声が私の心の中にもずうっと聞こえていたから・・・家守の男のように・・・「まだ何かあなたとは縁がある」みたいな気持ちになって・・・。そう、話をしたい人は山のようにこの世にはいるでしょうし・・・自分の事を心ゆくまで語り続けられたら・・・それだけで救われるという状況はいつもあるものだし・・・人の心の、この世の中の「おそろし!」はあらゆる時の間に、襞に、ひっそりと、またはおどろおどろしく存在していることは確かなんだから・・・と期待しきりです。

・・・って、書いていたら友人からメールが入りました。「今、続編が読売朝刊で連載されているよ」   百話期待できるのも・・・そうしたら・・・何が起きるか?

カラスの親指

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カラスの親指 by rule of CROW’s thumb カラスの親指 by rule of CROW’s thumb
道尾 秀介講談社 2008-07-23
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「カラスの親指」     道尾秀介著

週の始めに図書館から届いたと連絡があり、貰ってきた。
その夜から早速読み始め、ほんの少し読んだら寝るつもりだった。ところが・・・止められなくなった。もう少しもう少し・・・と、気が付いたら明け方の4時になっていた。当然、翌日寝坊して起きたら、旦那が「昨日遅くまで起きていたみたいだね?」「うん、読み始めたら面白くて、止められなくなった。」「これ?道尾・・・?」「そう、もう何冊目かだけど、面白い作家だと思ったからまた予約したんだけど・・・ここまで化けるとは・・・今までの最高傑作だね。成長してるよ!」偉そうに言った。
言った後で気になった。新聞なんかの広告で見つけた作家で、見つけたのから適当に予約して読んだだけだもの、出版順に読んでいるか・・・?
確かめとかなくちゃ。偉そうにああ言ったけれど、ヒョットすると初作が上出来最高傑作で・・・後はジリ貧とかパワーが落ちてきているってこともありえるじゃないか?
読んだのは「シャドウ」「片目の猿」に次いで「ソロモンの犬」3冊読んで「シャドウ」が今のところベスト。さて、調べてみましょう・・・
「シャドウ」2006年9月。「片目の猿」2007年2月。「ソロモンの犬」2007年8月。それでこの作品「カラスの親指」が2008年7月。ああ、一応ちゃんと出版年順に読んでいるんだ。ジャァ、旦那に言ったことは正解なんだ・・・偉そうに言った点だけ割り引いてね。
そんなわけで2晩で読み終えた。文句無く面白かったし、実に見事に構成されてもいた。書かれた人物が皆私から見たら破天荒な人物なのに・・・愛せた。実に上手く騙されて、私も最後の彼らの詐欺の失敗に固唾を呑んだ。そして、樋口の弟の遊び心?の鷹揚さに驚かされた。えーほんとそれでまさか終るんじゃないでしょうね・・・で、最後。
いい終りだったねぇ。嬉しくなるじゃないの。テツさんの人生。彼らの人生。どんな人のだっていとしくなりそうな・・・全ての人の人生!
どんな今があっても人生どうにかなりそうじゃない?という肯定の足が地に付くことといったら!
冒頭の詐欺の出だしも実に興味をそそられる緻密ないい出だしだし。他にも忘れられない印象を脳裏に浮かべさせる情景も上手いが、一番いいのは、好きなのは、テツさんが縁側で「あちっ!」と言いながらタケさんに指の話をしているところ。縁側で掌を見つめ、指を付けたり離したりしているタケさんの背中。
あの場面は本当に秀逸、最高。私まで指を付けたり離したりしているもの・・・まだ。詐欺が「ヘロン」って、ああいう小さな景色の積み重ねがこの作品を高めているんだと思う。
で、今朝。朝刊を開いたら、この作品の「第62回日本推理作家協会賞」受賞の記事が載っていた。やっぱり!
だけど柳広司さんという知らない作家の「ジョーカー・ゲーム」という作品とダブル受賞になっていた。その柳さんのその作品読んでどっちがいいか比べてみようか?それとも先に道尾さんのほかの作品予約するか?
調べてみたら、道尾さんの新作「鬼の跫音」は80人待ち、柳さんは190人待ち!
どっちにしても・・・図書館は待たすんだよねぇ。
 

シャドウ (ミステリ・フロンティア) シャドウ (ミステリ・フロンティア)
道尾 秀介東京創元社 2006-09-30
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片眼の猿 One‐eyed monkeys 片眼の猿 One‐eyed monkeys
道尾 秀介新潮社 2007-02-24
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ソロモンの犬 ソロモンの犬
道尾 秀介文藝春秋 2007-08
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源平六花撰

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源平六花撰 源平六花撰
奥山 景布子文藝春秋 2009-01-09
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 奥山景布子著

先ごろ朗読のサークルのベテランさんたちが「耳なし芳一」を練習しているのを聞いたから・・・田辺聖子さんの「文車日記」を読んで「知盛」に同感だから・・・ってわけでもないのですけれど、ふと手に取りました。永遠の源平盛衰記です。
この作品はそういう「平家物語」とかの古典や歌舞伎、舞踏など古典芸能などから題材を採った、というよりむしろその中を自在に泳ぎまわった結果・・・と思われるような短編6編。源平に縁がある、または出来てしまった女性たちをなんとも美しい文と言葉で描き出しています。
古典の豊富な知識と古典藝術の造形の深さとにひれ伏してしまいました。知識だけで書いているのではないのです。知識だけだったらここまで心を揺さぶられずに終ったでしょうから。この源平が盛衰した時代の空気とその時代に生きざるを得なかった女人たちに対する憧憬と憐憫が作家の頭の底に根付いているのだろうな・・・と感じます。
伝わった様々の伝承、文学、謡曲、歌舞伎に至るまで、下敷きにしている材料は様々な形で私たちも目にし耳にしてきたものなのですが・・・奥山さんの紡いだ色合いが物語を新たなものにしたようです。
上手いなぁ・・・とも思って読み終わって調べれば・・・なんと処女作!
もっとも「オール讀物新人賞」を取った作品を含むとか。どの作品が賞を取ったんだろう?私的には「常盤樹」だけどな。これが一番まとまりのある小説になっていたように思うのですが。「平家蟹・・」の姉妹とか「啼く声に」の島娘にはオリジナリティが多かったし・・・という気もする・・・なんて思っているのですが。
好きな順に並べると「常盤樹」「啼く声に」。 ついでちょっと題材の用い方が安直な気がしないでもないけれど「二人静」。 「平家蟹異聞」は少し怖いけれどその中に悲しい魅力があって。「後れ子」は生き抜いて自分にたどり着いて大原御幸を迎えるに至る時を美しく描いているけれどももう少し練ってからでも・・・という気も。「冥きより」は熊谷の有名な?妻相模の心に迫るというものだけれどやはり題材はつらい。
そうこう思いながら古典をそのまま書き下し文にしたかのような、麗しい香気に包まれて、この作品を読んでいい時間を過ごせたと思った。
 

橋をめぐる

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橋をめぐる―いつかのきみへ、いつかのぼくへ 橋をめぐる―いつかのきみへ、いつかのぼくへ
橋本 紡文藝春秋 2008-11
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 橋本紡著

私の今の行動範囲の中にばっちりはまる六つの橋の名を題にした短編集を見つけました。隅田川にかかる橋2つ、小名木川、大横川など深川の堀に架かる橋4つ、そこに住む人々の・・・読み終わってみると温かなお話が6つ、味わえました。登場する人々の年齢も様々なら置かれている状況もばらばら・・・だけど受ける成熟感には透明感もあっていい感じだなぁ・・・と思って、この作家は・・・と裏を見れば・・・41・2?お若いんだ。
この作家の初めての作品です。
かなり書きなれて、手馴れた感じも受けるのに、清潔感があって、快い味わいがあります。どの人もおろそかにされない丁寧さが感じられ、どの人の未来にも明るみが射していて、和やかさがあります。そこが非常に心引かれるところですが、それは必ずしも下町だから、深川だからと言うわけではないのです。多分ここが舞台だとこういう心を書きやすいのだろうな・・・と思いますけれど、どこにだってどの人にだって普遍にある素直な心根が質素に描かれているのです。
最後の橋を渡って行くおじいちゃんは孫や息子の世界がそんなに取り付きがたいものではない事を知るでしょうし・・・息子は逃げ出した場所に帰る歓びを見出すでしょうし・・・孫はその両方を身体で知ることでしょう・・・そういうもんだ!なんて頷いているところです。
橋のリベットが手に残す感触が思い出を呼び返すキーになるように、心の中に思い出をよみがえらすキーは幾つも幾つも生きてきた年月の長さの中に埋もれているんだろうな。何かが琴線に触れて、何かが甦る!それってステキね?
永代橋、清洲橋、まつぼっくり橋、亥之堀橋、大富橋、八幡橋この近辺を歩くと彼らに会えちゃう・・・って思っちゃうね・・・なんか・・・

警官の血

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警官の血 上巻 警官の血 上巻
佐々木 譲新潮社 2007-09-26
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警官の血 下巻 警官の血 下巻
佐々木 譲新潮社 2007-09-26
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 佐々木譲著

「うたう警官」に次いで二作目。そんなに前に読んだのではないのに「うたう警官」の感想を記していないのに気が付いた。そして自分でもそうだろうなぁ・・・と納得。志水辰夫さんのいわゆる冒険物の感想が記せないのと同じ訳かな。
面白かったのだ!確かに。だけどそれは多分読んでいる間私は何にも考えずにただただ物語の筋を追って楽しんでいたのだろうと思う。丁度子供の頃にお伽噺や冒険小説をワクワクしながら読んでいたときと同じ。
あの時は主人公にそのまま乗り移って私がその冒険をしていたから、後で何を論ずる必要も無かったのだ。
勿論、この小説には(そんなにワクワクする)自分が主人公になって楽しめる要素は殆ど無いのだけれど。この自信を持って堂々延々書かれている大河小説?は流れとして読む人をさぁっと一気に運んでしまう誠実さをちゃんと持っている。
警官の血ね。正義感の血だといわれると反発してしまうけれど。職業は代々受け継がれてノウハウが効率的に譲り渡されていくことのメリットって確かにあるし・・・政治家はそれじゃ困るってことはこの頃国民は骨身に滲みているところだけれど・・・でも3代が限度だろうな・・・こういう商う職業ではない職業は、なんて思って読み終えた。
3代目で謎が解けるなんて・・・これって凄い僥倖だね?なんて、ちょっと思っているけれど、1代目より、2代目、3代目と何か厚い皮が被さっていき、スキルの向上以上に正義と言うものにまで瘡が被さってきたような気配も這い登ってきたような?だから「やっぱり3代が限度だね、世襲は・・・」と言うところに落ち着いて、それが主な感想になった。
丁度清二さんが警官になった年に生まれた私は丁度彼ら3代に付いて自分の時代の一つの側面を見た、という楽しみも別にあったし。
それに図書館で百数十人を待っている間にテレビドラマ化されてしまって、つい見てしまって(だって吉岡君がでたんだもの)、どのくらい丁寧にドラマ化されたのかな?なんて確認に勤しんでしまったという体たらくも・・・不本意だったな。
横山さん、志水さん、佐々木さんってどんどん読んでいきたいと思わせる作家だな!

ものがたりのお菓子箱

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ものがたりのお菓子箱―日本の作家15人による ものがたりのお菓子箱―日本の作家15人による
谷崎 潤一郎飛鳥新社 2008-11
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15作家、15作品が確かにきっちり詰まっていました。様々な味わいがあるという点では確かにお菓子箱ですが・・・多分に駄菓子も高級菓子もごった混ぜの気配です。コンセプトがなにかな?誰か考えてください?
小説・童話・詩など、別に甘いものとか辛いものとかを詰め合わせた気配も無いのですが・・・。不思議なごった煮です。
小川未明さんの童話など、本当に久しぶりにお目にかかりました。この方そのものを忘れていたといってもいいでしょう。最近著作権が切れたかなにかで新美南吉さんの童話に接する機会が何度かありました。最近の童話ってどんななんでしょうね?と、思いましたが・・・縁がなくなりました。
笑えたのは谷崎さんの李太白です。最初綺麗な言葉使い、高貴な?お屋敷のお嬢様、流石に時代を感じさせるお上品なお話し言葉・・・なんて細雪の世界を思い浮かべながら読んでいましたら・・・呆れました。佐藤春夫さんとの奥様譲り渡し事件?は私でも聞いたことがあるくらいですが・・・こんな腹いせを?鬱憤晴らし?と思ったら笑えました。偉大な文人もただの子供?みたいな事をするのですね。筆の暴力と言うほどではない筆の腹いせ・・・得意な物でやり込めるのは・・・上手いもんだ!です。
ま、そんなこんなでこれも久しぶりのボッコちゃんにいたっては中学以来?そういえば没後10年とか言っていたのは昨年か?中島敦さんも昨年必要があって山月記を読み返したところです。そういえば李陵とそれ以外の作品を読んだことがありませんでした。それにしても何か取り留めの無い物を読んだ気分です。
 

アメンボ号の冒険

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アメンボ号の冒険 (講談社文庫) アメンボ号の冒険 (講談社文庫)
椎名 誠講談社 2006-07-12
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椎名誠著

先日小学校読み聞かせのボランティアの代理を頼まれて6年の教室にお邪魔しました。「何を読むかも考えてね」ということで、代理もこれが4回目。風邪を引くたびに急に頼まれると作品選びに大慌てで四苦八苦します。今までに4年、5年と読みに行きましたが・・・読書経験の傾向が完全に彼ら(今の小学生)と私では違っているようです。
終って雑談で「うさこちゃん」知ってる?「知らない!」「ピーター・ラビット知ってる?」「知らない!」
ホントかいな?って思いましたが、その日の6年生に「赤毛のアン」知ってる?と質問して数人が「聞いたことがある」でした。そんなものかー?と驚きました。なにしろその日に読んだのはモンゴメリーの短編の一つでしたから。ですから帰りに図書館へ寄りました。今度慌てなくとも済むように?6年生ぐらいに丁度いい物語を物色してみるか?と思ったのです。
で、たまたまこの本に出会いました。5年生の時に作者が実際に体験した冒険の記録です。借りてきて、実際、私が夢中になりました。こんな子供って今の世の中から駆逐されちゃっていますよ。でも、彼ら(アメンボ号の冒険者たち)だったら十五少年漂流記を生き抜くことができるんじゃありません?
でも多分私が行ったあの教室の6年生は絶対一人も保たないと太鼓判を押せます。って、私だってどうかな?もたないだろう!ですが。それでも「ロビンソン・クルーソー」「スイスのロビンソン」読んでますからね・・・心の準備だけはバッチリ!
子供たちにこういう本を読んであげたいなって思いますけれど・・・15分の持ち時間じゃね。だけどこういう本で得た知識ってバカにならないでしょ?スイスのロビンソンのお母さんの教えは今も私の頭の中よ。
このアメンボ号は今の幕張辺りの冒険でしたが、今のあそこにはそんな遊びを受け入れる自然がもうありません。この辺りの子供たちは毎日橋を渡り、運河を望みながら通学していますが、この運河でこんな遊び・・・テンから考え付かないでしょうし・・・そんな怖ろしいこと!って感じですよね、今の川の姿を見たら。
子どもたちの覇気の無さを憂えるより、子供たちに遊びの余地を残してやれなかった我世代の情けなさが身にしみます。想像力をゲームの中でしか培えない世の中です。身体を使わせようと思ったらお金をかけてしっかり指導者のいる自然キャンプに行かせることくらいしかしてやれないのかも・・・?この本の中の4人の男の子に、昔の近所の坊主どもを懐かしく思い出して・・・一緒に基地を作ったけんちゃんやふいた君やりょーぞーくんや久美ちゃんはどこでどうしてござるやら?
 

たそがれ長屋 人情時代小説傑作選

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たそがれ長屋―人情時代小説傑作選 (新潮文庫) たそがれ長屋―人情時代小説傑作選 (新潮文庫)
池波 正太郎新潮社 2008-09-30
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池波さんの「疼痛二百両」山本さんの「いっぽん桜」が未読でした。
5作のうち2作だけ読んでいなかったので、わざわざ図書館で借りるべきか?と思ったのですが、この前2作の長屋アンソロジーはなかなかいいチョイスでアンサンブルを楽しむことが出来ましたから、この選者の撰で続けて久しぶりに読んでみるのもいいだろう・・・と、思ったのです。
が、結果この池波さんのだけははずれでした。
「たそがれ」と頭に付いたように、人生のたそがれに踏み込んだ人々の哀歓を綴った作品群です。
北原さんの「ともだち」は「澪通り」で読んでいますが、この二人の老境を感じさせるおばさんたちは実は今の私よりずーっと若いのです。
でも彼女たちが抱える不安はまさに今の私たち世代のものです。同じ年代の人だけにわかる心細さを抱える生活の様々な機微が見事に描き出されて、身につまされると言うより自分たちの仲間状況をそのまま見るようでした。それだけにこの作品は非常に重い物を抱いています。でも女は明るくて強いんですよ・・・というメッセージも同時に受け止められるのですが・・・ま、なるようにしかならんのですよ?
周五郎さんの「あとのない仮名」は若い時は厭な小説でした。今も厭なことには変わりません。若いときには色々考える余力があったのですが、今はそんな時間も無いわ!で、今現在の世相にピッタリの人物造形じゃないの・・・と、思うことにしました。不条理だの絶望だの人や世を見切ったのなんのを言う前にポコッと鬱のエアーポケットに落ち込んだ、周りの人には見えない何かの穴に足を取られたまじめだった人?みたいな。友人が「お隣の奥さんが町内で六人目のうつ病患者になって入院した」「六人?」素っ頓狂な声を上げた私ですが・・・「今は10人に一人よ」だそうです。で、源次もかも?違う世間に行ってしまった人?
「静かな木」は大好きな三屋清左衛門を思い出させます。世を知り人を知れば百戦危うからず!こんな親になりたかったのよー!
で初めて読んだ山本作品は読んで心にしみるものを抱いていました。頑固になる事も含めてこれは回りにいるオジサマ方です。立派に誇りを持って生きてきたオジサマたちです。とてもよく分かるようで、彼が新しく胸を張るところでなんともいい気分にしていただきました。
池波さんはいかにも慣れて闊達に描いていますが、私の嫌いな面が出てしまっている作品です。艶のある、枯れないでも心の底はしっとりと枯れている、反対語みたいですけれど・・・そういう「男があこがれる男」を書けるのが池波さんですが・・・?若気が厭な感じで出たなという気分ですっきりしませんでした。

ある日、アヒルバス

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ある日、アヒルバス ある日、アヒルバス
山本 幸久実業之日本社 2008-10-17
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山本幸久著

先日は義姉夫婦が上京して「はとバス」を楽しんでいきましたし、父も母も田舎から親戚が上京すると昔はよく「はとバス」に乗せて同行したから、「はとバス」にはよく乗ったものだと言っていましたが、私は東京に生まれちゃったせいで、「はとバス」に乗る機会が無いのです。いつかは乗って見たいものと常々思ってはいるのです・・・が。
実際のところ東京の人間が乗ってどんなモンでしょう?面白いという噂もあるようです?大体本気で調べたことは無いのでどんなコースがあるのか知らないのですが、「アヒルバス」のコース設定は妙に心をそそられます。
冒頭の「ディープな東京でドキドキ!旦那様にはナイショでナイト」
から凄い!です。一覧表を掲げたくなっちゃいます。
「これはお得!東京名所ぐるり旅」「からだもこころもリフレッシュ!東京ぶらり自然散策」はいかにも定番、おとなしいとしてもネーミングがいいんですもの。頭に入り込んじゃう泥臭さ!一時こんなネーミング流行ったなぁ・・・
「少し贅沢ちょっと遠出!日光デリシャス大名旅行」「ブレイクまちがいなし!若手芸人に密着旅行」「絶叫必死!なごみ系もあり?東京ジェットコースターめぐり」ーなごみ系って花やしき?イやあれは恐怖系だし?一体東京にはジェットコースター幾つあるんだろ?って気になっちゃうでしょ?「あなたもヒロインになれる!月9ドラマロケ地巡礼」「大阪に負けるものか!江戸前食い倒れ」「気分は箱根か熱海?東京温泉浸かりまくり」ってふやけるでしょうが!「着物でキメる!着付け教室&江戸下町そぞろ歩き」「これでカノジョは陥落できる!東京デートスポット下見ツァー」「タモさんもここを歩いた!タモリ倶楽部取材地めぐり」亜紀さん発案「オジサマ限定エステツアー」の正式名称知りたい!読んでいるうちにもこんなんあったん?アハハ・・・「遠い宇宙に思いを馳せて。天文学ちょいかじりツァー」「東京だよおっ母さん!三時間ポッキリお手軽観光」
先日書いたこの作家の「カイシャディズ」のココスペース大好きです。
また繰り返します。「アヒルバス」大好きです。月島に「アヒルバス」探しに行っちゃおうかってマジ考えています。先輩も新人も哀歓が程よくて、会社の人の見える大きさが小気味良くて、主人公のデコさんを取り巻く人々がお客も含めて優しい等身大!この「ほど」だよ、この「ほど」!って唸りながら読みました。読み終わって、また明日、彼女たちの健闘を祈りつつ、自分も頑張るぞ!って。ありがとうございますって、頭を下げたくなっちゃういい気分です。
 

親不孝長屋―人情時代小説傑作選―

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親不孝長屋―人情時代小説傑作選 (新潮文庫) 親不孝長屋―人情時代小説傑作選 (新潮文庫)
池波 正太郎新潮社 2007-06
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縄田一男選

コレは実に贅沢な選集でした。作家の顔ぶれを見ただけでも期待濃厚になります。宮部さんの「神無月」周五郎さんの「釣忍」は既読。しかも好きな作品です。他の作も見事に読ませる作品でした。
短編はおうおう時間ふさぎ?余暇の穴埋めで終ってしまうこともありますし、時にはそうか!なるほど!良かった!面白かった!で終わることがあります。物凄くピリッとしたいい作品にぶち当たることも勿論多いのですが。
でも素晴らしい作品の中には読み終わってそこで終らせてくれないものもあります。寝しなに読み終わると、その後の成り行きを自分で紡ぐ事になります。主人公が不安定なまま置かれたら、彼・彼女のために幸せを見出すまで私は眠れません。
「神無月」を初めて読んだ時もそうでした。市蔵が大怪我をする前に岡引に間にあって欲しいのか、無事に数年娘を看護できるお金を取れて証拠が無いのが良いのか、ああでも彼は岡引が来た途端にすべてを白日に晒して罪を認めてしまうだろう・・・じゃぁ娘はどうなるの?・・・どうなればいいのか?えんえん寝られませんよ。でもそれも作品が与えてくれる醍醐味、すごいですねぇ!
そういう意味では他の4作は一応は完結していますが「邪魔っけ」には教えられる人間の真実がありますし、ちょっと上手く話が付きすぎですが、そういうものだろうなと腑に落ちる人情がでんとあります。若い二人が学んだ事を生かして幸せに・・・と祈ります。
「左の腕」も実によく出来た作品で、小腰をかがめてつましく生きている人間にもちゃんとその人の過去という生があり、魂もある。最後のページでそうだ、そういうもんだ、うんうんと頷く自分がいます。そして今後の卯助さんの生き方を見守りたい気持ちになります。周りの人は、娘はどんな反応を示すのでしょうか?
「釣忍」などはもう「ああ周五郎さんだ!」やっぱりいいなぁと咽喉をゴクンと言わせて涙を押し込めるという醍醐味があります。ささやかな幸せを守るのも義理を通すのも人の心あってだと!
一冊の中に「贅沢な時」が読む人への「贈り物」として詰まっています。

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