橋をめぐる―いつかのきみへ、いつかのぼくへ 橋をめぐる―いつかのきみへ、いつかのぼくへ
橋本 紡文藝春秋 2008-11
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 橋本紡著

私の今の行動範囲の中にばっちりはまる六つの橋の名を題にした短編集を見つけました。隅田川にかかる橋2つ、小名木川、大横川など深川の堀に架かる橋4つ、そこに住む人々の・・・読み終わってみると温かなお話が6つ、味わえました。登場する人々の年齢も様々なら置かれている状況もばらばら・・・だけど受ける成熟感には透明感もあっていい感じだなぁ・・・と思って、この作家は・・・と裏を見れば・・・41・2?お若いんだ。
この作家の初めての作品です。
かなり書きなれて、手馴れた感じも受けるのに、清潔感があって、快い味わいがあります。どの人もおろそかにされない丁寧さが感じられ、どの人の未来にも明るみが射していて、和やかさがあります。そこが非常に心引かれるところですが、それは必ずしも下町だから、深川だからと言うわけではないのです。多分ここが舞台だとこういう心を書きやすいのだろうな・・・と思いますけれど、どこにだってどの人にだって普遍にある素直な心根が質素に描かれているのです。
最後の橋を渡って行くおじいちゃんは孫や息子の世界がそんなに取り付きがたいものではない事を知るでしょうし・・・息子は逃げ出した場所に帰る歓びを見出すでしょうし・・・孫はその両方を身体で知ることでしょう・・・そういうもんだ!なんて頷いているところです。
橋のリベットが手に残す感触が思い出を呼び返すキーになるように、心の中に思い出をよみがえらすキーは幾つも幾つも生きてきた年月の長さの中に埋もれているんだろうな。何かが琴線に触れて、何かが甦る!それってステキね?
永代橋、清洲橋、まつぼっくり橋、亥之堀橋、大富橋、八幡橋この近辺を歩くと彼らに会えちゃう・・・って思っちゃうね・・・なんか・・・