吉原御免状

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吉原御免状 (新潮文庫) 吉原御免状 (新潮文庫)新潮社 1989-09
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隆慶一郎著

「捨て童子・松平忠輝」「一夢庵風流記」「見知らぬ海へ」に次いで4作目になります。前三作で三人の男、漫画だったら?さしずめ「漢」の字をつかうのかしら?とにかく主人公の三人の男にすっかり魅せられてしまいました。
男の人を、具体的に性格の魅力を、見せ付けるのが上手い作家だと思います。この作品が小説の第一作目だそうですから、これから読むべきだったかも。
司馬遼太郎さんも初期の小説群は本当に男を魅力的に描くのに秀でた人でしたが、それと通じるものがあります。「梟の城」とか「尻啖え孫市」などの主人公に・・・
隆さんの作品の主人公は歴史上の人にしてもあまり今まで脚光を浴びていない人を取り上げているので自由に思う様伸び伸びと描けているのだろう・・・と、思っていました。その意味ではこの作品の主人公は到底歴史上の人物ではない、全くの創作の人だと思われるので、本当はもっと伸び伸びしても良さそうなのに、意外にそうなってはいないのです。
むしろ妙に有り得なさが際立ったような気がします。
といってその嘘臭さがこの松永誠一郎という人物をつまらないものにしていると言うわけではありません。やはり見事な男です。でもこの作品の場合、主人公の魅力は二の次になったようです。吉原の開町に関する家康との密約?その経緯と柳生との複雑な関係の方がより一層面白くて松永さんは割りを喰っている感も。この第一作でもう家康影武者説が柱になっているのですね。次は「影武者徳川家康」を読まねばなりませんね。
この作家の作品の中では女性に魅力があるのは私が読んだ中ではこの作品だけです。二人の花魁の哀しさが、哀しさに花があるというと変だけど、そんな感じで心に迫ってドラマチックが盛り上がります。
それでも圧倒的に男を描くのが上手い作家だなという気は残りますが。
女性をもっと描いてもらいたかったなぁ・・・。
見事な男が増えていきますが、一番心引かれる男はまだ向井正綱です!
 

神去なあなあ日常

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神去なあなあ日常 神去なあなあ日常
三浦 しをん徳間書店 2009-05
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三浦しをん著

あああぁぁぁ・・・と、胸をなでおろしました。・・・って言っても、作家さんは喜ばないとは思いますけれど。
しをんさんの作品「風が強く吹いてる」「まほろ駅前多田便利軒」「むかしのはなし」「仏果を得ず」と、気持ちよく楽しく大好きだわ~と大好き作家に小気味よくこのお名前を登録していたのが「光」の登場でしょう?まっさかさま・・・ヒューって気分でした。ですからこの本の広告が新聞に載った途端、図書館に飛んでいきました。
話は跳びますが、先日新聞に私の知らない作家の方が書いていました。
「作家は読まれるのが嬉しいのだから・・・でも読みたいと思った本を直ぐ読まないで順番を待って読むってことは読書人としていかがなものか?」みたいなこと。全くね!経済的事情と場所的事情を鑑みても・・・お恥ずかしい・・・みたいな気持ちになっちゃいましたよ。
でも、飛んでいったお陰で?20人ほどの待ちで・・・今申し込むと145人待ちですと。
台風が通り過ぎた後の快晴の空のように、澄み渡った心の中に生まれた作品のようでした。もうほんと、楽しくいそいそ林業の知識も頭に取り込みながら・・・今度は林業なのね、文楽もよかったけれど、うんうん林業は大事よね、日本にとって。などと、頷いていたらこの数日の雨で福岡県では大規模な山崩れがあったとか。原因について色々TVでは言っていましたが・・・林業よ、山をちゃんと手入れしていれば・・・なんて思っていました。山が崩壊しつつあるって感じは山に登るたびに思います。それも里山で、です。土が乾ききって下草も生えていない杉林、下枝など刈られたことの無い細々とした杉が情けなく立っている村の裏山をどれだけ見たことか!
三重県大台ケ原の奥の方かしら?もっと奈良よりかしら?松坂から行くとすると・・・美杉?と、地図を広げて彼がいる辺りを探しているのです。三重県から紀州に抜けるとき、心細いような道で天岩戸に出会ったことがあります。神話的な気分を感じさせる幽遠な土地でした。あの辺りを想像しながら読むのは楽しかったです。
熊やんみたいな先生がいて、自分の将来を考え付かないまま社会に放り出される子がいないと良いのに・・・と、思います。学校の先生にここまで求めるのは無理としても、その子の特性を考えてやれる大人、子供に可能性を見出す方向を示してあげられる社会を切に求めます。
私も学校をでる時、自分が何に向いているのか、どんな仕事がしたいのか、それさえも解かっていなかったことを思い出します。
たまたま就職できた会社があったけれど、そのたまたま出合った場所が居心地悪く自分を必要としていないと思えたら、どうしていたでしょう?
平野勇気君みたいな子はごく平均的でしょう?こんなやる気の無い子を受け入れて丁寧に仕事を叩き込んで仕事への愛情を示してお手本と成ってくれる大人が本当に欲しいと思います。
こういう山奥での生活に彼が美しさと愛着を抱いていく様が、村人との交流の中にはぐくまれていく様が、本当に小気味よかった!
ああ、こんな本にいっぱいめぐり会いたいなぁ・・・と、思いますが、それ以上に若者をこうやって育てていってくれる社会が欲しいなぁ・・・と、思います。こんな風に破綻した山々をも生かして人間も生きていくことってできないものでしょうか?

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫) まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)
三浦 しをん文藝春秋 2009-01-09
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風が強く吹いている 風が強く吹いている
三浦 しをん新潮社 2006-09-21
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むかしのはなし (幻冬舎文庫) むかしのはなし (幻冬舎文庫)
三浦 しをん幻冬舎 2008-02
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仏果を得ず 仏果を得ず
三浦 しをん双葉社 2007-11
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ものがたりのお菓子箱

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ものがたりのお菓子箱―日本の作家15人による ものがたりのお菓子箱―日本の作家15人による
谷崎 潤一郎飛鳥新社 2008-11
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15作家、15作品が確かにきっちり詰まっていました。様々な味わいがあるという点では確かにお菓子箱ですが・・・多分に駄菓子も高級菓子もごった混ぜの気配です。コンセプトがなにかな?誰か考えてください?
小説・童話・詩など、別に甘いものとか辛いものとかを詰め合わせた気配も無いのですが・・・。不思議なごった煮です。
小川未明さんの童話など、本当に久しぶりにお目にかかりました。この方そのものを忘れていたといってもいいでしょう。最近著作権が切れたかなにかで新美南吉さんの童話に接する機会が何度かありました。最近の童話ってどんななんでしょうね?と、思いましたが・・・縁がなくなりました。
笑えたのは谷崎さんの李太白です。最初綺麗な言葉使い、高貴な?お屋敷のお嬢様、流石に時代を感じさせるお上品なお話し言葉・・・なんて細雪の世界を思い浮かべながら読んでいましたら・・・呆れました。佐藤春夫さんとの奥様譲り渡し事件?は私でも聞いたことがあるくらいですが・・・こんな腹いせを?鬱憤晴らし?と思ったら笑えました。偉大な文人もただの子供?みたいな事をするのですね。筆の暴力と言うほどではない筆の腹いせ・・・得意な物でやり込めるのは・・・上手いもんだ!です。
ま、そんなこんなでこれも久しぶりのボッコちゃんにいたっては中学以来?そういえば没後10年とか言っていたのは昨年か?中島敦さんも昨年必要があって山月記を読み返したところです。そういえば李陵とそれ以外の作品を読んだことがありませんでした。それにしても何か取り留めの無い物を読んだ気分です。
 

ある日、アヒルバス

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ある日、アヒルバス ある日、アヒルバス
山本 幸久実業之日本社 2008-10-17
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山本幸久著

先日は義姉夫婦が上京して「はとバス」を楽しんでいきましたし、父も母も田舎から親戚が上京すると昔はよく「はとバス」に乗せて同行したから、「はとバス」にはよく乗ったものだと言っていましたが、私は東京に生まれちゃったせいで、「はとバス」に乗る機会が無いのです。いつかは乗って見たいものと常々思ってはいるのです・・・が。
実際のところ東京の人間が乗ってどんなモンでしょう?面白いという噂もあるようです?大体本気で調べたことは無いのでどんなコースがあるのか知らないのですが、「アヒルバス」のコース設定は妙に心をそそられます。
冒頭の「ディープな東京でドキドキ!旦那様にはナイショでナイト」
から凄い!です。一覧表を掲げたくなっちゃいます。
「これはお得!東京名所ぐるり旅」「からだもこころもリフレッシュ!東京ぶらり自然散策」はいかにも定番、おとなしいとしてもネーミングがいいんですもの。頭に入り込んじゃう泥臭さ!一時こんなネーミング流行ったなぁ・・・
「少し贅沢ちょっと遠出!日光デリシャス大名旅行」「ブレイクまちがいなし!若手芸人に密着旅行」「絶叫必死!なごみ系もあり?東京ジェットコースターめぐり」ーなごみ系って花やしき?イやあれは恐怖系だし?一体東京にはジェットコースター幾つあるんだろ?って気になっちゃうでしょ?「あなたもヒロインになれる!月9ドラマロケ地巡礼」「大阪に負けるものか!江戸前食い倒れ」「気分は箱根か熱海?東京温泉浸かりまくり」ってふやけるでしょうが!「着物でキメる!着付け教室&江戸下町そぞろ歩き」「これでカノジョは陥落できる!東京デートスポット下見ツァー」「タモさんもここを歩いた!タモリ倶楽部取材地めぐり」亜紀さん発案「オジサマ限定エステツアー」の正式名称知りたい!読んでいるうちにもこんなんあったん?アハハ・・・「遠い宇宙に思いを馳せて。天文学ちょいかじりツァー」「東京だよおっ母さん!三時間ポッキリお手軽観光」
先日書いたこの作家の「カイシャディズ」のココスペース大好きです。
また繰り返します。「アヒルバス」大好きです。月島に「アヒルバス」探しに行っちゃおうかってマジ考えています。先輩も新人も哀歓が程よくて、会社の人の見える大きさが小気味良くて、主人公のデコさんを取り巻く人々がお客も含めて優しい等身大!この「ほど」だよ、この「ほど」!って唸りながら読みました。読み終わって、また明日、彼女たちの健闘を祈りつつ、自分も頑張るぞ!って。ありがとうございますって、頭を下げたくなっちゃういい気分です。
 

江戸の老人力 時代小説傑作選   

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江戸の老人力 (集英社文庫) 江戸の老人力 (集英社文庫)
細谷 正充集英社 2002-12
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細谷正充編
「アンソロジーなら私こんなの買ったから」とサークルの方にこれもお借りしました。本当に皆さんよく探していらっしゃいますね。
短編12作品を収集掲載。今のところこの編者で「江戸の○○力」という題で5作、本が出ているそうです。「老人力」ってベストセラーになった本があったな・・・と、思いましたら編者が解説で「拝借」したと断っていました。文字通り老人を主題とした短編ばかりです。海野弘さんと穂積驚さん以外はよく存じ上げてる作家ばかりですが全編初読。
作家の顔ぶれを見れば皆どの作品も楽しませてくれること必定!みたいな顔ぶれです。安心して読み出せるところがこの手の本のメリット?しかもそれぞれに違う風に面白い!
時代小説というより読みやすく作文されたような感があったのですけれど、海野さんの「石臼の目切」が素直にいいなぁ・・・と読めました。
白石さんの「月と老人」が一番老人力が生きていましたか。そうだ「十時半睡」を島田正吾さんのTVドラマで見てから「読もう読もう」と思いつつ忘れていた事を思い出しました。読まなきゃ。
同じ老人を描いても女性を主題に据えたものには何故か枯淡の味わいが薄くて、男性を描いたものに味わいが出ているような気がしたのは・・・なんだか納得がいかない・・・などと思っていますが。
平岩さんの「泥棒が笑った」などは最後の老人の行動がかっこよくて「いよっ!」大向こうの声が聞こえそうですよ。同じく切れがいい活躍をするのに村上さんの紅蓮さまはちょっと生々しい。
「いさましい話」は「ああ、周五郎さんだ!やっぱり好きだなぁ・・・」と直ぐ分かる作品なのに読んだ記憶が無い。こんなわけで暫く私のアンソロジー傾倒傾向は続く?

夢十夜

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夢十夜 他二篇 (岩波文庫) 夢十夜 他二篇 (岩波文庫)
夏目 漱石岩波書店 1986-03
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夏目漱石著

私の読書体験は少年少女世界文学全集から始まりました。確か少学校の3年生の時この全集が世に出て、私は毎月のお小遣いをこの本の購読に当てていました。今考えるとこの本を買うためにジャストこの本の値段のお小遣いを貰っていたような・・・?
それで好きになった本のあらかたは翻訳物でしたから、私の読書傾向はそれで決まったようなものです。学校の教科書で読んだものの他は明治以降の文豪作品でさえ読んでいない有様です。
例外は芥川龍之介さんと森鴎外さんくらい?それが朗読をはじめたら、基本的に「翻訳物は止めて下さい」なんです。翻訳は訳者の技量次第ってところがあって「文が日本語文として不自然である」という宿命を持っている場合が多いということらしいです。ま、分からないでもないです。
小泉八雲さんを時々読みますが、訳者によって様々なバージョンがあって、なかには確かにひどいんじゃない?というものも有ります。
ところがサークルに入ってみたら皆さん実によくこの明治の文豪作品を読むのですねぇ・・・で、私の偏った読書傾向を今になって修正せねば?という次第です。樋口一葉、林芙美子、志賀直哉、川端康成・・・等。圧倒的人気なのは森鴎外・芥川龍之介!短い作品が多いからでしょうか?(そういえば今のところ谷崎潤一郎・幸田露伴・田山花袋とかは聞きませんね)
中でも人気抜群なのはこの作品。教室生の大抵の方が一度は自分の課題として持ってくるらしいです。それで気が付いたのですが・・・それこそ「坊ちゃん」くらいしか覚えていないのです、私。で、今頃読んだというわけで・・・言い訳が長い!
正直、練習なさるお教室生の方の朗読を聞いても、何でこんな面白くない作品を?と、思わないでもなかったのです・・・ところが聞くと読むとはやっぱり違った!読むほうによほどの技量がないと・・・この世界は心に落ちてきません。人の夢の話・・・聞かされるほうって案外うんざり。その割には私も時々話したくなりますが。
「こんな夢を見た」で始まる(のは、厳密には4話)10の短編(この場合小品と書くべきか)。そのどれもが厭な夢!語られる夢の中で主人公は前世の恋の香につながれ、手に入れられない境地に絡め取られ、前世の過去の罪業を暴かれ・・・夢という時空でがんじがらめになっている・・・動けない、先に行けない、助からない!逃げ出せば、逃げ出したで、逃げ出さない方が、行方も分からないほうがよかったと思っている。私までどん底に落ちそう。
読みながら、一体私はどうすればいいんだ・・・と、途方にくれた。
これは、私には朗読はできない!ということだけが分かった。
 

仏果を得ず

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仏果を得ず 仏果を得ず
三浦 しをん双葉社 2007-11
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 三浦しをん著

しをんさん、4作目です。
思いっきり国宝邦楽芸術国文系青春根性ものと書いちゃってもいい「ジャンルだ!」的でした。しかも思いっきりさわやかな、好感度抜群の!カバーの絵の通りのハンサム系の漫画系のお嬢ちゃんからおじいちゃんまでオール世代カバー型全天候型文部省特薦しかも関西語圏なのにめっちゃカワユーイ!系?
読み終わってニコニコですもの。って、読んでるときから完全ニコニコ応援モードですもん。
こんなに楽しく一直線に読めて読後感にはライムの香り!って、出来すぎでしょう?
でもこんなん、だいすきでっせ!
人生のテーマにガッツンとぶちかまされるほどの「幸せ」って考えられませんもの。殆どの人間がここで頓挫していますもの。なのに思い込んだら一直線!こんな羨ましい修行人生あっていいのでしょうか?あっていいのですとも!無ければいけないのです。全ての青少年に何とかしてこういう修行生活送らせてあげたいものです。
もし間に合うなら私にも今からなにかがツンと目を覚まさせてください!
そして知らない文楽の世界がこんなん、ありえねーと言ってしまいそうになる位清く正しいのです。めっちゃ情に絡まれてじとっと暗い先輩のいじめとか伝統の縛りとかしきたりがんじがらめとか・・・相撲の世界みたいな!どす暗さにまみれてそうに見える世界をキャーかわいいってくらいの理不尽な師匠と変わりもののカッコイイ兄弟子たちに可愛がられて一途に進める・・・笹本健太夫!頑張ってね。とうるうる応援しちゃいますもの。
歌舞伎か?と思った目次も・・・彼のステップアップの段階に即した演目と情報満載で・・・現代青年にとって文楽はこの上も無い最先端今なのですよと・・・いやまさしく今と同じですよ、人情は・・・いつもいつも何時の時代も。
入門書としてもバッチリでした。「仏果」って何のことだか…終りまで読めば分かりますよ。頑張って物にしてね。

戯作者銘々伝

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戯作者銘々伝 (ちくま文庫) 戯作者銘々伝 (ちくま文庫)
井上 ひさし筑摩書房 1999-05
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井上ひさし著

この夏、民藝の朗読で井上さんの「父と暮せば」を聞きましたが、先日また井上さんの「新釈・遠野物語」と「おゆき」を聞きました。
全部傾向の全く違う、それでいて心を打ったり笑わせたり人を翻弄する凄い作品です。
一度講演会でご本人のお話を聞きましたが(お約束?遅刻なさいました)言いたい事をとても見事に尽くした公演で感歎しました。
凄い方だなぁ・・・と、「モッキンポット師」を読んだ時には既に思っていましたが、本当に才能にオーラがかかりまくっています!
ここのところ芸人さん関係(安鶴さん)を読んでこの方面にはまりかけていますから・・・「そろそろ旅へ」もそんな系でしょ?(ってちょっと違う)だから図書館でこの作品を見つけた時は今読むには絶好!と思ったんです。
で、予想通り!面白かった!興味深かった!
「そろそろ旅へ」で読んだばかりの山東京伝さんや式亭三馬さんの違う方面からのアプローチがそれこそツボにはまったみたいにバッチリ面白く興味深く読ませていただきました。
戯作者の皆さんならず、一芸で名を残された人々の凄さって、人生って(安鶴さんの作品を思い出して)、本当に!この平凡極まりない野次馬根性だけの私の目には興味の底なし沼のようでした。
才能はそれを授かった人に、普通の暮らしをきっと許さないんだって思いましたね。当人が望むと望まないに関わらず。才能は運命なんですね。あの逆の逆を行った変人中の変人「唐来参和」!     彼の生き様の哀れに趣のあること「おもしろきもの」の世界です。最も彼の妻になってしまったお信さんには笑い事ではない人生だったのでしょうが。このお信さんには妙な魅力がありましたね。振り回されていても心の底に彼を受け入れている、翻弄される自分の人生を受け入れている不思議なからっとした何かが。諦念というか、それも一つの情だったのでしょうか。
橋から飛び込むときの彼はきっとなす術のなかった自分の人生にあきれ果てていたでしょうか?それでも世に残った作品に満足はあったでしょうか?関係なかったんでしょうね。作品は私みたいな普通の人の、才能を授けられなかった人のためのものでしょうから。
彼らは才能と言う運命に翻弄されて働かされたのでしょうね。
井上さん自身の人生もきっと後で、(ヒョットするともう?)誰かに書かれるのでしょう。非常な才にこき使われた人として。だって、本当に多芸で多能で多作で・・・忙しさ極まりないお方のようですもの。そしてこの作中の人物の系譜に繋がる人なんでしょうね?と、勝手に思わせていただいています。
 

寄席紳士録

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寄席紳士録 (1960年) 寄席紳士録 (1960年)
安藤 鶴夫文芸春秋新社 1960
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 安藤鶴夫著

「本牧亭の人々」を読んだらこの本が読みたくなりました。
「本牧亭」で出てきた芸人さんたちがとてもユニークだったので・・・「どれどれ、どんな方たちだったのかな?伝説の芸人さんは?」って気持ちでした。でも想像をはるかに凌駕、というよりも、その埒外っていうか、想像なんて追いつくはずも無いという驚きでした。
いやいや芸人さんって奇人とか変人とかの枠を越えている!人間の埒さえも超越した異星人みたいなものだ!
それなのに何処か畏敬の念も起こさせる。普通の人の欲とは違った、根本から別物の欲を持っていて、全くもって自分だけの自分なんだ?
そして何か物凄く普通の人(私から見てだろうけれども)から欠落したものがある。その上にこそある異能!
少なくとも安鶴さんがここに上梓した10人の芸人さんと湯浅さんとおでこさんの特異性といったら・・・凄いや!だけど安鶴さんはこの凄い人たちを何故か大事に愉快にそのままを見ている。事実ばかりかどうかは分からなくとも、ここに敬意を持って?活写された人々はリアルに生きていたという感じで読んでいる私を圧倒する。
「こんな人たちがちょっと前まで居たんだ!」と圧倒される。
「本牧亭の人々」でお近づきになったおひでさんのご亭主、春本助治郎さんならなんとかお付き合いさせていただけるか・・・?というところでしょうかねぇ。せいぜいでそこまでですよ。なめくじ長屋の志ん生さんの逸話はまだ私に一番近いでしょうか?それにしてもあの方の奥さんが務まった方がいらしたから、私はあの志ん朝さんの落語に惚れさせていただけたんだ!と感謝したいような気持ちでした。彼らの周りで彼らを支えて、または付き合って、仕事をさせた人々もまた凄いや!です。
TVがかなりの仕事場になった今の芸人さんにここで肩を並べられるような人はもう出てこないんだろうなぁ・・・と、この本を読んだ後では淋しいような心持がしましたけれど・・・多分むしろあの人たちそのものが今の社会じゃ「赤貧して」すら生きていけないかもしれません。
昔の芸好きな人たちの鷹揚なカラー、彼ら芸人さんの存在を心から楽しんだ隠居さんたち?という客そのもの、寄席そのものが「もうどっこもなくなっちまった!」というところでしょうか。そういう意味では世間は本当に狭くなったんでしょう。異常な事件を引き起こす人が増えたのも・・・居所が狭まったからでしょうか?と、そこまで思われました。どんな人にも居所があってこそ、世間ですよねって。

本からはじまる物語

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本からはじまる物語 本からはじまる物語
恩田 陸メディア・パル 2007-12
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18人の作家による本をテーマにした短編18作を集めた楽しい作品集でした。やっぱり作家さんたちなんですね、皆さん本が好きなんだ!っていうか本をテーマに書くのはお手の物なのかな。
それぞれに面白い、毛色が変わったお話がギフトボックスみたいに詰められていました。読んだことの無い作家も多いのですが、好きな作家のも、余り好きではない作家のもありましたが、それぞれの作家の違いを興味深く読みました。実に軽い読み物なのですがヒョットすると力の入っていない分、その作家の資質が素直に現れているかもしれません?どれも短い作品なので軽い読み物として、作者の遊び心とか、乗りとか、思い付き?を楽しむことが出来ます。
第1話の恩田陸さんも映画化されたり話題の作家のお一人ですが、まだ読んだことは無いのです。どんな作家でしょうか?この作品でこの本の傾向も伺えるかもしれません?そしたら、いきなり面白かったんです。着想が意外だったし、それに絵本の事を語る口調が優しかったんですね。「絵本たちは豊かな森の中で私たちが訪れるのをじっと待っていてくれるんだ、うんそうよね?」って頷きながら・・・で、この作品がこの本の中では一番心に残るものになりました。
次に三崎亜記さんの「The Book Day」でしょうか。この作品もお伽噺チックで悲しいテーストもありながら自分の大好きな大事な本が次は誰に読まれ受け継がれていくのだろう・・・という想像力をゆすぶられて・・・うん、好い感じ!どこかの国に本を贈りあうお祭があるって聞いたことがあるような?いいですよね、そんな日!
次は内海隆一郎さんの「生きてきた証に」でしょうか。定年を迎えた人たちの多くが一度は思うのではないでしょうか?自分史。
なかなか他人には読まれないものですが、人は皆一冊の本は書けるといいますよね。特に私たちの親の戦争を潜り抜けてきた人たちには、伝えたいことがしっかりあると思います。丁度敗戦の日に読むことになったからでしょうか、印象に残りました。そして本屋さんの気持ちと孫の優しさにほっとしました。
本多孝好さんの「11月の約束」もいいし、阿刀田さんの作品も「本好きの人」のお話だなぁ・・・山本さんの作品も山本さんらしさに溢れてる・・・って具合です。
市川拓司さんて今時の若い人たちの作家って感じで遠巻きにしていたいような作家だと思っていたのに「感傷的な甘さが魅力的かも?」なんて思いながらこれも好い作品なのです。
最も題を見ながら「えーと、どんなお話だったかしら?」と思う作品もあるにはあったのですが。
 

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