戯作者銘々伝 (ちくま文庫) 戯作者銘々伝 (ちくま文庫)
井上 ひさし筑摩書房 1999-05
売り上げランキング : 715841Amazonで詳しく見る
by G-Tools

meimeidenn.jpg

meimeidenn2.jpg meimeidenn1.jpg

井上ひさし著

この夏、民藝の朗読で井上さんの「父と暮せば」を聞きましたが、先日また井上さんの「新釈・遠野物語」と「おゆき」を聞きました。
全部傾向の全く違う、それでいて心を打ったり笑わせたり人を翻弄する凄い作品です。
一度講演会でご本人のお話を聞きましたが(お約束?遅刻なさいました)言いたい事をとても見事に尽くした公演で感歎しました。
凄い方だなぁ・・・と、「モッキンポット師」を読んだ時には既に思っていましたが、本当に才能にオーラがかかりまくっています!
ここのところ芸人さん関係(安鶴さん)を読んでこの方面にはまりかけていますから・・・「そろそろ旅へ」もそんな系でしょ?(ってちょっと違う)だから図書館でこの作品を見つけた時は今読むには絶好!と思ったんです。
で、予想通り!面白かった!興味深かった!
「そろそろ旅へ」で読んだばかりの山東京伝さんや式亭三馬さんの違う方面からのアプローチがそれこそツボにはまったみたいにバッチリ面白く興味深く読ませていただきました。
戯作者の皆さんならず、一芸で名を残された人々の凄さって、人生って(安鶴さんの作品を思い出して)、本当に!この平凡極まりない野次馬根性だけの私の目には興味の底なし沼のようでした。
才能はそれを授かった人に、普通の暮らしをきっと許さないんだって思いましたね。当人が望むと望まないに関わらず。才能は運命なんですね。あの逆の逆を行った変人中の変人「唐来参和」!     彼の生き様の哀れに趣のあること「おもしろきもの」の世界です。最も彼の妻になってしまったお信さんには笑い事ではない人生だったのでしょうが。このお信さんには妙な魅力がありましたね。振り回されていても心の底に彼を受け入れている、翻弄される自分の人生を受け入れている不思議なからっとした何かが。諦念というか、それも一つの情だったのでしょうか。
橋から飛び込むときの彼はきっとなす術のなかった自分の人生にあきれ果てていたでしょうか?それでも世に残った作品に満足はあったでしょうか?関係なかったんでしょうね。作品は私みたいな普通の人の、才能を授けられなかった人のためのものでしょうから。
彼らは才能と言う運命に翻弄されて働かされたのでしょうね。
井上さん自身の人生もきっと後で、(ヒョットするともう?)誰かに書かれるのでしょう。非常な才にこき使われた人として。だって、本当に多芸で多能で多作で・・・忙しさ極まりないお方のようですもの。そしてこの作中の人物の系譜に繋がる人なんでしょうね?と、勝手に思わせていただいています。