本からはじまる物語 本からはじまる物語
恩田 陸メディア・パル 2007-12
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18人の作家による本をテーマにした短編18作を集めた楽しい作品集でした。やっぱり作家さんたちなんですね、皆さん本が好きなんだ!っていうか本をテーマに書くのはお手の物なのかな。
それぞれに面白い、毛色が変わったお話がギフトボックスみたいに詰められていました。読んだことの無い作家も多いのですが、好きな作家のも、余り好きではない作家のもありましたが、それぞれの作家の違いを興味深く読みました。実に軽い読み物なのですがヒョットすると力の入っていない分、その作家の資質が素直に現れているかもしれません?どれも短い作品なので軽い読み物として、作者の遊び心とか、乗りとか、思い付き?を楽しむことが出来ます。
第1話の恩田陸さんも映画化されたり話題の作家のお一人ですが、まだ読んだことは無いのです。どんな作家でしょうか?この作品でこの本の傾向も伺えるかもしれません?そしたら、いきなり面白かったんです。着想が意外だったし、それに絵本の事を語る口調が優しかったんですね。「絵本たちは豊かな森の中で私たちが訪れるのをじっと待っていてくれるんだ、うんそうよね?」って頷きながら・・・で、この作品がこの本の中では一番心に残るものになりました。
次に三崎亜記さんの「The Book Day」でしょうか。この作品もお伽噺チックで悲しいテーストもありながら自分の大好きな大事な本が次は誰に読まれ受け継がれていくのだろう・・・という想像力をゆすぶられて・・・うん、好い感じ!どこかの国に本を贈りあうお祭があるって聞いたことがあるような?いいですよね、そんな日!
次は内海隆一郎さんの「生きてきた証に」でしょうか。定年を迎えた人たちの多くが一度は思うのではないでしょうか?自分史。
なかなか他人には読まれないものですが、人は皆一冊の本は書けるといいますよね。特に私たちの親の戦争を潜り抜けてきた人たちには、伝えたいことがしっかりあると思います。丁度敗戦の日に読むことになったからでしょうか、印象に残りました。そして本屋さんの気持ちと孫の優しさにほっとしました。
本多孝好さんの「11月の約束」もいいし、阿刀田さんの作品も「本好きの人」のお話だなぁ・・・山本さんの作品も山本さんらしさに溢れてる・・・って具合です。
市川拓司さんて今時の若い人たちの作家って感じで遠巻きにしていたいような作家だと思っていたのに「感傷的な甘さが魅力的かも?」なんて思いながらこれも好い作品なのです。
最も題を見ながら「えーと、どんなお話だったかしら?」と思う作品もあるにはあったのですが。