戯作者銘々伝

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戯作者銘々伝 (ちくま文庫) 戯作者銘々伝 (ちくま文庫)
井上 ひさし筑摩書房 1999-05
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井上ひさし著

この夏、民藝の朗読で井上さんの「父と暮せば」を聞きましたが、先日また井上さんの「新釈・遠野物語」と「おゆき」を聞きました。
全部傾向の全く違う、それでいて心を打ったり笑わせたり人を翻弄する凄い作品です。
一度講演会でご本人のお話を聞きましたが(お約束?遅刻なさいました)言いたい事をとても見事に尽くした公演で感歎しました。
凄い方だなぁ・・・と、「モッキンポット師」を読んだ時には既に思っていましたが、本当に才能にオーラがかかりまくっています!
ここのところ芸人さん関係(安鶴さん)を読んでこの方面にはまりかけていますから・・・「そろそろ旅へ」もそんな系でしょ?(ってちょっと違う)だから図書館でこの作品を見つけた時は今読むには絶好!と思ったんです。
で、予想通り!面白かった!興味深かった!
「そろそろ旅へ」で読んだばかりの山東京伝さんや式亭三馬さんの違う方面からのアプローチがそれこそツボにはまったみたいにバッチリ面白く興味深く読ませていただきました。
戯作者の皆さんならず、一芸で名を残された人々の凄さって、人生って(安鶴さんの作品を思い出して)、本当に!この平凡極まりない野次馬根性だけの私の目には興味の底なし沼のようでした。
才能はそれを授かった人に、普通の暮らしをきっと許さないんだって思いましたね。当人が望むと望まないに関わらず。才能は運命なんですね。あの逆の逆を行った変人中の変人「唐来参和」!     彼の生き様の哀れに趣のあること「おもしろきもの」の世界です。最も彼の妻になってしまったお信さんには笑い事ではない人生だったのでしょうが。このお信さんには妙な魅力がありましたね。振り回されていても心の底に彼を受け入れている、翻弄される自分の人生を受け入れている不思議なからっとした何かが。諦念というか、それも一つの情だったのでしょうか。
橋から飛び込むときの彼はきっとなす術のなかった自分の人生にあきれ果てていたでしょうか?それでも世に残った作品に満足はあったでしょうか?関係なかったんでしょうね。作品は私みたいな普通の人の、才能を授けられなかった人のためのものでしょうから。
彼らは才能と言う運命に翻弄されて働かされたのでしょうね。
井上さん自身の人生もきっと後で、(ヒョットするともう?)誰かに書かれるのでしょう。非常な才にこき使われた人として。だって、本当に多芸で多能で多作で・・・忙しさ極まりないお方のようですもの。そしてこの作中の人物の系譜に繋がる人なんでしょうね?と、勝手に思わせていただいています。
 

黒笑小説

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黒笑小説 (集英社文庫 ひ 15-8) 黒笑小説 (集英社文庫 ひ 15-8)
東野 圭吾集英社 2008-04
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東野圭吾著

「まぁまぁお人が悪い!」アハハ・・・とか、「まぁなんとお商売人さんでいらっしゃる!」ウフフ・・・とか、「おやおや先生は今怖い物はなさそうですのね!」ククク・・・とか、「おやまぁ罪作りな・・・」とか思いながら最初の4短編読みました。
全部で13短編納められています。その中の最初の4編は内幕物とか馴れ合い物とか言う言葉が頭の中でちらちらしました。
そういえば昨日友人から夏休みになると新聞や小説雑誌で「お薦めの読書」特集などするけれど、業界は今危機感からか、なりふり構わず・・・みたいね。競合する出版社の出版物をお薦めに入れていたりするのよ。細かく見てみると面白いわよ。」とメールが来ていました。
この4つの業界物を読んだところですので腑に落ちました。
「その売れっ子作家の次作をその会社は狙っているのよ、きっと」なんてね。しかも編集者さんたちは結構きつい揶揄を受けているのに・・・「このモデルは俺かな?」なんて思いながら出版にこぎつけたのでしょうかね?そう思うと売れて銭になる作家の凄さが凝縮されていると読めます。自分を笑えてこその毒です。だからこの短編集ではこの4作でまず笑いましたけれど、余り気持ちのいい笑ではないのです。題どおりですね、まさに!
それに「選考会」ではどきりともしたのです。この頃「なんでこんな本が売れたのか?」と思う本が結構ありますからね。「Movies Memoranda」の「ジャージの二人」で述べたとおりです。あの作品を思い出すと私も「寒川先生」の線を行っているのだろうなって納得です。でもマァ、それぞれの時代ってこともあるしね。友人が言っていましたっけ「定年になったら旦那は時代劇チャンネルにお守りしてもらっているの。現役時代には馬鹿にしていた黄門さんまで見ているのよ、全くもう」って。好みは好み時代遅れでも面白くない物は面白くない!好きな物は好き!
だからこの後の作品はだいたい笑えたけれど、印象と毒でこの4作に負けた。それらは他の作家でも読めそうだけれど、この4作は今絶頂の東野さんでなくては発表できないかも、だもの。大体において男の人の方が楽しめる作品集です・・・かな。「ストーカー入門」なんてホント、笑えましたけれど・・・やっぱり何処か笑えない(笑いたくない)って感じかなぁ。
今まで気にしたことは無かったけれどこれからは「その本はどこの出版社から出たか?」も要チェックだね。
たまたまこの作品をチェックしましたが、同類の作品が後二作あるんですね。「毒笑小説」「怪笑小説」と。
ただこの作品群は自分で読むと皆何処かで笑えるけれど、読んでもらっても面白くないかもね。星新一さんの作品をTVで色々料理しても自分で読んだ時ほど面白くないように。といっても同じ毛色だというつもりはありません。
 

巷談 本牧亭

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巷談本牧亭 (1964年) 巷談本牧亭 (1964年)
安藤 鶴夫桃源社 1964
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安藤鶴夫著

なんで今頃?と、思う本だ。子供の頃?既に父の本棚に何冊かの安鶴さんの本は並んでいた。あの頃父は落語が好きで鈴本に通っていたのを横目に?一寸羨ましく見送っていたっけ。だからか安鶴さんの本も愛読していたのだろう。でも結構父に隠れて父の本棚の本を背伸びして読んでいた私も安鶴さんの本に手を出そうとは思わなかった・・・のだ。それが今頃読んだのは、父がこっそり我が家に運んできたからである。父と弟の二世帯住宅の2階には贅沢なことに弟の書斎の隣に図書室なるものがある。同居した時父の沢山の蔵書もそこに収まった。ところがあの家は皆読書家。本がどんどん増えていき床が落ちかねない?というわけで弟夫婦は黄色くなった古い本の大処分に踏み切った。・・・となると当然まずは父の本だろう?大事だったはずの藤村全集・谷崎源氏始め明治大正期の文豪の作品集は一括りに玄関先に。その中から美術全集と安鶴さんをかろうじて父は救い出したらしい。周五郎さんの黄色くなった文庫は私が駆けつけて拾い上げた。そんなわけで昭和39年から我が家にあった本を今頃読んだのである。で、なんで今まで読まなかったのだろう!と、思いつつ私は次の「寄席紳士録」に取り掛かるところである。
凄い!のだ。素晴らしいのだ。面白いのだ。ここに登場してくる芸人さんとその芸人さんを愛する人々の日常が本当に(むくむく心の中で蠢くほどに)活写されていて生き生きしていて個性的で魅力的で泣きたいほど可愛いのだ。
この登場人物たちはもう既に殆ど全部の方がこの世にはいらっしゃらないのかもしれないが、確かに居たのだ!という実感がものの見事に!確かなのだ。皆好きだ、皆見事だ!そういいたいほど。
特に私は桃川燕雄さんが大好きだ。川崎福松さんとの生活が見事だ!そうとしか言えない。こういうお二人を読んでいると、なんと今の私たちの騒々しく饒舌で中身の無いことか!と、我ながら感嘆してしまうほどである。服部伸さんとこのお二人が故障した信号の前で立っている姿を思うと・・・この本の終わりの佇まいがそのままある一つの美しい時代の終わりの佇まいに思われてくる。
それに本牧亭のおひでさんは私の高校の先輩だったのだ。クラス会の場面のなんと心にしみたことか!だからこの本の中の地名は全部私の縄張りだったのだ・・・なんと遠くなったことか!いや、遠くしたのは私自身。私の怠惰だったと思われて、妙に忸怩としたものも有るのだけれど、それを押し流す勢いで何故か私の覚えているはずの無いあの頃の芸人さんたちが懐かしく迫ってくるのである。
「ああ、桃川燕雄という人が居たんだ!」
田代光さんの挿絵がまたなんとも言えず味わい深いのだ。

カシオペアの丘で

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カシオペアの丘で(上) カシオペアの丘で(上)
重松 清講談社 2007-05-31
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カシオペアの丘で(下) カシオペアの丘で(下)
重松 清講談社 2007-05-31
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重松清著

「イヤダナ・・・いやだな・・・厭だな・・・」と頭の中でズーッと思いながら、なんとか読み終えたという感じがしました。
「幼馴染み」というキーワードに背負わされた重さと言ったら・・・
この関係にこれだけの重さを負わせていいのだろうか?いかに濃密な関係だったとしても?
これじゃぁ余りにこの関係がきついじゃないか・・・
幼馴染みのいる全ての人が自分の子供時代を思い出して・・・時間が限られている時に、追い詰められた時に、その思い出から優しさを目いっぱい汲み出そうとしたら・・・んなことはありませんね。
「これは夢物語です。」と念を押して心を宥めてあげたいような気分です。
「時間がいっぱいある」とすら思わないで普段生きています。
気が付かないうちにこの世で私はもう60年をぼんやり過ごしてきてしまいました。
特に誰かに何かを期待しないで(意識しないで)・・・でも普通の通りすがりの、袖摺りあった、友情を感じた、愛情を持った・・・人との間に通う気持ちはそれなりに大事にして。故郷への思いもまた同じです。
でも、期限が切られたら、明日が必ずしも来ないと知ったら、私はとてつもなく周りの人に故郷に期待し、要求し、採り尽くすのかしら?やはりそれにすがって足掻きまくるのかしら?
人は思い出から搾り取るのかしら?そう出来るのかしら?そしてそれは他人まで巻き込めるのかしら?その他人に「幼馴染み」という冠を被せたらなお更に?切れた絆を結びなおしても?そういう時が訪れたら人は自分の過去にしがみつくのかしら?それとも過去のほうから赦さなければいけないこととか、強くならなければいけないこととか、「色々あるでしょう?」などと働きかけをしてくるのかしら?過去は過去でおいておきたいでしょ?しまい込んでおきたいでしょ?違うの?
ミッチョとトシとシュンとユウちゃん・・・その記憶だけで本当は終ったはずのものだよね?でも悲しい事件が起こって、死病が宿って・・・過去は優しさと許しを汲み上げられる井戸になってしまったかのような。
過去にそんなに期待しないで、長く遠ざかり忘れたと思っていた人にそんなに期待しないで・・・と、思っていた私はヒョットするととてつもなく心が淋しい人なのだろうか?なんて厭な気持ちにさせられたりして。既に死んだトシの父母や炭鉱で亡くなった人たちも引きずり出して過去は反芻されつくして・・・そうすると優しさが生まれるのだろうか?私は怖いと思ってしまった。
幼馴染みのあの顔この顔・・・4人が紡いだ幼馴染みの時は、たいていの人にもあるにはあるだろうけれど・・・イヤこれはどうかな?やりすぎじゃないか?やらされすぎじゃないか?
思い出してしまった昔の幾つかの顔にとりあえず心の底で「元気でいてくださいね」と、呟いてみてはみたけど・・・
殺された少女と家族の話を上乗せすせることで生み出した苦しみまで被せてまでも・・・「赦し」?
語り手が変わるたびに語る人がどんどん優しくなって、感傷的になって、人の心を際限なく分かってあげていく?そう思われてしまうことに抵抗がある人はいないの?いてもいいでしょ?
私がシュンだったら・・・今いる周りの人と過ごすことで手一杯かもしれないなぁ。赦したいとか赦されたいとか思うことがないからかなぁ?大きな重い過去がないと優しくなれないのかな?それもイヤだな。心ってガラスの優しさ?本を閉じたら「フラジャイル」と大書してあるかも。
この本を読んで癒された許されたと思う人って多いのだろうか?心が洗われて優しくなれたと思う人って多いのだろうか?そう自分に問うて、多分多いのかもね?と、答える。
人が一人亡くなるということは周りの人にそれだけ重いことだということはよく分かるけれど。普通に成り行きで葬れないものかしら?おーやだ。

気になる部分

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気になる部分 (白水uブックス) 気になる部分 (白水uブックス)
岸本 佐知子白水社 2006-05
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「気になる部分」  岸本佐知子著

「時間が出来たら何を置いてもこの作家の作品を読もう!」と前作を読んだ時決意しましたが、実行しました!
図書館所蔵では翻訳作品以外はこの作家の作品はこの2冊しかないのです。
だから次に読む本を予約できないのが残念です。
それにしても、困ったなぁ・・・
素晴らしく魅力的なおかしな自分を見事にしっくり魅惑的に笑えるように書きあげることの出来る人ですよ!
でもお終いまで読んで彼女が「翻訳した作品も読みたい!」という気にはならなかったのが不思議ですが・・・なんかなぁ・・・本当に同類?
彼女の二冊に感じた同類感は確かなものですが・・・このまじめで面白みのない私に言われても・・・って、私も思いますが・・・底の底には人間色々なものを抱えていますからね、分かってください。
翻訳作品も彼女と同類人の作品なのかなぁ・・・読むのきつそうな印象も感じましたが。読まないと大失敗かも?
そういえば、寝ようと思って目をつぶった時、直ぐに眠れそうもない気がする時、私は目のもうひとつ奥のまぶたを開けます。
ところがどうやっても開くのは右目だけなんですね。左目の奥は開かずの扉に護られているのです。
そして開いた方の右目の奥のまぶたを開けると日替わりで色々な映像が展開します。それは・・・極彩色だったり墨絵だったりそのときそのときなのですが・・・絶対知らない物語が展開したり、全く会ったこともない人がにんまりしていたり・・・それをはてな?とじっと見定めようとすると見事に眠れるのですね。あの絵を岸本さんだったら実にうまく表現してしまうんだろうに・・・。
頭の中や心の中や無意識下の意識をナンデこんなに書き尽くせるのか・・・その才能はどうして育まれたのか?羨ましくて妬ましくて悔しいなぁ・・・!

でも絶対違うのは・・・彼女だったらこんないい加減な、不ぞろいのコピーはくっつけないってとこ。
 

鼓笛隊の襲来

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鼓笛隊の襲来 鼓笛隊の襲来
三崎亜記光文社 2008-03-20
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 三崎亜記著

いやいやいや・・・これはこれはこれは・・・なんとステキなホラーじゃないの?
聞いてないよ・・・って、誰からもこの本を読んだ話もまだ聞いてない!いやいやいや・・・この作家本当に好きかも!
しかもこの短編集好きな順に並べられる!だって殆ど好きだもの。
一話ずつ読み終わるたびに背筋がゾクリとしてふっと我を見つめてしまう。不思議な捩れやパラレル・スパイラルなんて言葉が浮かぶ世界で表現されている事象が現実の私の既視感を刺激し、私の未来予想に繋がっていくような。不安を掻き立てられるけれどこの静かな世界は安らぎもあるし刺激も程好い!
1話「鼓笛隊の襲来」には思わず「いい!」すごいシチュエーションなのにちゃんと現実と繋がっていて・・・可愛さと楽しさを併せ持つ異な意識。それに素直に「そうだよ、老人の理知常識が役立つ世界であって欲しいよ」なんて思って。現実には今若い人にどんどん教わり続けなければ生き難いんだもの。

9話「同じ空を見上げて」こんな不条理何故かひどく現実に起こりそうな気がして・・・それでも未来には希望もあるし、心は再生することも出来る。悲しいけれどありがたい。

6話『「欠陥」住宅』窓の外を見ると窓窓窓。
前も隣も後ろにも50階建てのビルの数え切れない沢山の窓が我が家を見下ろしているの。あの窓の一つにひょっとしたら昔の私の大事だった人たちが、二度と合うことも無く捩れた空間を介して向かい合っているのかもしれない・・・そしてその窓から外を見ている人はどんな景色を見ているの?リアルにゾクリ!こんだけ窓があるんだ現実に居るかもしれない・・・

2話「彼女の痕跡展」そうなの、何か心に引っかかることがあった後は頭の中で私が私とその出来事を話し合っているの・・・微妙に削除付け足し変更歪曲・・・出来上がった物は微妙に私には真実。そのとき削除した物は何処かで・・・ね、ほら背筋が・・・過去って唯過去ってだけで不安なのに、記憶って唯記憶だってだけで争いの種になるのに?人が記憶と思っているものを付き合わせたときどんな大きさのブラックホールが出来るんだろう?
と言った具合で・・・

7話「遠距離・恋愛」少女の部分をどう読めば?と思いつつもふと慣れた幸せ慣れた不幸は慣れているだけほっとする部分も。8話「校庭」誰のせいでもないこの存在・・・私も見たような・・・いや私がそうだった様な・・・全部記憶に残る物語!

8話・・・あった、あった、こういう存在・・・誰のせいでもなくて・・・3話、4話、5話・・・皆好きだな・・5話が最後に書かれたのだって唯私が男じゃないってだけで、管理社会の恐怖と共に誘惑のゾクリとする魅力とそれに抵抗する切なさ・・・は・・・この作品十年後に読み返してもきっと心が不思議な感じにスイングするのだろうな。

極上掌篇小説

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極上掌篇小説 極上掌篇小説
いしい しんじ 石田 衣良 伊集院 静角川書店 2006-11
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1冊にこんなに沢山の短編が入っている小説を読むのは本当に久しぶりですよ。たまたま図書館で眼に留まったのです。この頃図書館予約可の30冊が次々にやって来る?ので、それに追われてその場で出会った本を読むということが少なくなりました。
この沢山の短編を読もうと思ったのは、中にぴかぁっと光る掌編にめぐり会えるかという期待が大きかったってこともありますが、この沢山の作家の名前に心辺りが余り無かったからでも有ります。
このところ初めての作家に挑戦している私ですからね。
読んだことがあるのはこの中では筒井康隆さんだけという寂しさ?
「これはいい、この感じがいい」と思った人の作品を読むっていうの・・・いい案でしょう?
それに声に出して本を読むとすると、私の集中力が続くのは大体15分くらいですから、この短編なら大体その範囲に収まりそうです。いい話があったら声に出して読んでみましょうという心算もあったんです。
結果・・・惨敗!ってこともないか?30人3〇掌編の中から2つほど救い出しました。おまけして5つ?好きになれそうな作家。しかしやっぱりこれだけ短いとその判断もつきかねますね、本当のところ。
それに読み終わってこれがどういうコンセプトで編まれた小説集なのか見当もつかないんです。もうね、バラバラ?
だからとりあえず好きになれた、または面白く読めた作品だけ挙げておきましょう。
大崎善生「神様捜索隊」
片岡義男「目覚まし時計の電池」
いしいしんじ「ミケーネ」
重松清「それでいい」
筒井康隆「出世の首」
「神様捜索隊」だけはこの際花丸印です。この作家の代表作?とでも言うものを先ず読んで見ましょうかと思っています。
この作品のテイストがあるといいけどなぁ。
こういう柔らかさ、のどかさ、緩さの中のきらっと輝くもの、ふっと笑顔がこぼれそうになるもの。そんなものを、そういう作家を発掘できたらなぁ・・・。
そう思ってこの本を返しに行こうと思ったら、先日新聞の書評で見た重松清さんの本が届いたと図書館からメールが来ました。
重松さんの本は始めてです。この掌篇集で「それでいい」を読んだ作家です。とりあえずこの作品には好感を持てたので受け取って読むのが楽しみです。

陰日向に咲く

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陰日向に咲く 陰日向に咲く
劇団ひとり

幻冬舎 2006-01
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劇団ひとり著

面白い名ですね。題も著者名も。
そういえばこの作者の方私は映画で知りました。
「10人ものキャラクターを演じる一人芝居で注目される」と著者紹介にありましたが、その本職を残念ながらまだ見たことは有りません。
そうか、そういう仕事をしている人だったのか・・・、それで、まじめに人を観察してキャラクターを練り上げる作業がきっとそのままこの本に結実したのでしょうね。
私から見るとふつうにあるとは思えない登場人物たちですが、さらさらとした書き様と淡々とした描写に、読んでいると実際今なら現実にその辺に居る人なんだろうな・・・なんて思えます。
モーゼが?ミャーコが?まさかぁ・・・なんて思っているうちに輪が一回りしてああそうか!と思った途端彼らは皆当たり前の顔をして私の世間にも住み着いてしまったような感じです。
妙にそれが皆まじめな顔をして居座っているんですね。
こんなの良くあるパターンだよ。「パルプフィクションとかさっ!」なんてつぶやいてもても「・・・えっとほらあの・・・」ともどかしい思いをしても。
一つの駅から一つの線路が伸びていってね、他の駅からも他の路線が伸びていってね、それが終点で合うのよ。そんでね又他の駅から出た路線がね、前の路線とどこかの駅で交差するのね・・・っていうようなのさ・・・」なんて自分に説明したりしてみたり。
私だったり、俺だったり、僕だったりする、各章の語り手たちは何の衒いも無く自分を語る。それが余りにあほな人生なのに・・・と、まじめな私はふと思ってしまったりもするのに・・・妙にじわ~んとした気分の中に居る。彼らを別に応援しようとかお説教しようとか何とかしてあげたいとか言う気分も全くないじゃないけれど・・・でもいいんだ!と、思っている?
そうだね!そうだね!確かにかげひなたなく彼らは彼らでそれぞれに生きているんだね。
なんだ、とってもいい題だったんじゃないの!

図書館に予約してほぼ1年くらい待ったと思います。
読み終わった途端映画化の話を聞きました。
劇団ひとりさんは出演するのかな?するとすればあの役だ!
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片眼の猿

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片眼の猿 One‐eyed monkeys 片眼の猿 One‐eyed monkeys
道尾 秀介

新潮社 2007-02-24
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道尾秀介著

「シャドウ」でピンと来て?返却と同時に申し込んでおいたこの本が到着しました。他にもこの作家の作品はあったのですが、待ち人があるほど人気?だったのはこの作品だけだったのです。他の作品はいつでも待たずに読めるので~って思うとこれが読まないんだなぁ・・・何時でもって言うのはやっぱりいけない。
「シャドウ」で今を感じながら「なんかいい感じだぞ!」と感じた「なんか」の部分にジャストフィット?「いい感じ!」はありました。只、ほんの少し文章が単純で読みやすくって味わいが薄いって部分の評価が私流の「なんか」に填まっているのじゃないかなぁ・・・って言う危惧はあるのですが。
「シャドウ」の方が作品としてはずっと読み応えがありました、が、この作品は読みやすく楽しめました。それって暇だけを持っている私にはとても大事なことです。まぁまずテクニシャン!ですよ。
でも果たしてそれは謎解きものとして公平かどうかと考えるとどうかなぁ。私が特に単純だってだけの事かも知れず・・・?
エラリー・クイーンは認めないだろうな。だけどアクロイド殺しのアガサは黙殺するかななんてところでしょうか。
先ず、私はエスパーを想像しました!「超能力ものかぁ・・・」当然のように宮部さんの一連の小説を頭に浮かべて・・・ふむふむそういった方向ですかなんてね。
次いで秋絵さん、当然のように勿論女性ですよね?
何でこの事件をこの時点でこの探偵は追及しなかったかが今一分からないぞなんて思っていたのですよ。
ってわけで、終末になだれ込む直前で笑っちゃいました。
それと「片眼の猿」の意味が判らなくて・・・
で、結局私はこの寓話?知らなかったのですが、有名な話なんですか?終盤近くになってそれがヨーロッパの民話でと、出てきて「ああそうなのか!」と分かったわけなのですが。これってこの本の主要な柱になりうるお話なんでしょうか?この話が無くても秋絵さんは描けると思っちゃったのですが。秋絵さんに関してはむしろ鳩の見分け方の方が心に残りましたね。
このローズ・フラットのお歴々のことも視野に入れるならば、この「鳩の雌雄・・・誰も見分けようなんて思わないの」の方がインパクトがありそうだけどなぁ。
妙に修羅場も淡々として実際起きている以上にさらさらした感じでおぞましくなく、登場人物の多様さ(反面印象が定まらず薄い感じは否めないのですけれど)にちょっと楽しませていただいた感じかな。
この探偵さんも・・・マァ・・・確かに特殊分野で需要はそこそこ有りそうだし?ま、いっかぁ、楽しめた!
そんなわけで、一寸どうかな?とも思いながら「向日葵の咲かない夏」が今図書館も順番待ちになっています。
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月下の恋人

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浅田次郎著

短編集です。11話収録。
「憑神」を予約しようとしてこの作品を見つけました。「憑神」より待ち人が少なかったので題名に惹かれて予約しました。私はまだ乙女ですし、月の下では何かが起こる!涼やかで紫のかかった何かが!
そしてまたしても浅田さんの多才で多彩なことに驚きました。
もっともこの年になると、物事を判断する物差しは「好きか嫌いか」という1本に収斂していくようです。って、まぁ私の場合はです。
脳が面倒くさい分析をおっくうがると言うか避けよう避けようとするんですね。だからこういう短編集になると1篇読み終わるたびにすぐさま思うのは「これはイヤだわ」か「これはいいわ」です。
厳密には「好き」「嫌い」以外に「保留」っていうどうしようもないのがあることもありますが、読み終えた後で好きな順に頭の中で並び替えます。嫌いな物は消します、記憶から。最も最近は好きなものも直ぐに消えていく傾向にあって、思案投げ首状態、危機的状況を痛感しています。本当に嫌いな物は読み終わるや否や身震いするようにして急いで振り捨てるのです。重い物を身の内に滓にしたくはないんですもの。
この作品群は割合穏やかな振り幅の中に収まっていると言えましょうか。似た景色の作品たちです。でもその幅の半分以上は好きにはなれませんでした。
時々思うのですが、作家さんも澱とか毒とか残滓みたいなものを、集中して書いた折にこぼれ落ちた何かを、捨て去れない業みたいなのがあってそれも作品に結実させてしまうんじゃないかなぁ・・・って。そんな感じがこの作品の後ろから覗いているような印象があったのですけれど。
「回転扉」「告白」「同じ棲」「忘れじの宿」「あなたに会いたい」「風蕭蕭」以下省略させてもらいます。もう振り切ってしまったので。あ、表題の月下の恋人もすてるの?はい。
「回転扉」はSさんになって独白してみるとそれなりに面白いです。
私にも別人になってみたい欲求はあって、しかも私は観察眼がからきしないときているから?これはちょっとだけずれた私にもパラレルワールドでありえます。パープルシャドウを帯びた?
挙げた(残した)短編は私の中で長編に変わりうる何かを秘めているようにも思えたのです。物語を継いでいけるような種が見られたという感じでしょうか。余韻も楽しめるような。
「天切り松」を読み終わったところなので、あの本とこの本の間、あの岸とこの岸の間を流れる河の広さにアップアップですが、凄い作家だなぁと思いながら流れ着くならアッチの岸!と、思ったことでした。このクソ暑い時期に読むのには結構?お薦めできるかもしれませんね。でも内容は暑苦しくとも心がサッパリ出来るのは天切り松の方だなとやっぱり思う私でした。
浅田さんには他にも「月島慕情」「月のしずく」という月がらみの本が他にもあるようです。さ、予約しますか。「月島」は月か?ええ、月島の高層ビル群の隙間から見る月は又それなりにいい風情ですぜ。
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