いっちばん

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いっちばん いっちばん
畠中 恵新潮社 2008-07
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 畠中恵著

「しゃばけ」シリーズ7。
久しぶりで「しゃばけ」を楽しめた。読んだ!という気がします。
兄やたちの心配度もパワーアップしていますし・・・でも、若旦那の病気も治りっぷりが良くなってきているような・・・?って、こっちも慣れすぎるくらい慣れちゃったのかも?若旦那のお母さん気分で?兄やたちに任せておけば大丈夫大安心。
さて、5話掲載。
「いっちばん」は若旦那に誰が一番喜ぶものを贈れるかという妖たちの競走に若旦那の推理も冴えるという賑やかさ。ただね妖が姿を現して・・・真似しても良いのかな?妖怪のできることと出来ないことの境目が私にもあやふやになってきちゃった。親分さんも首は安泰若旦那もニコニコと、結構な事で。
「いっぷく」は「妖を探しているものがいる」という噂が発端。長崎屋が近江商人に挑まれた品比べを通じてお店の売り上げが伸びたことと冥界での友に再会し彼ら兄弟と友だちになれたこと。若旦那も冬吉も妖たちも笹雪で美味しくお食事・・・これも結構!鶯谷の笹の雪じゃないのね?通町から程近い店らしいから。
「天狗の使い魔」は一番奇想天外?大天狗の六鬼坊の天狗柄がよろしくて、王子の狐を巻き込んで賑やかなお話に。管狐の黄唐と大天狗の間に友情という観念が生まれて・・・なんと好いお話。好きだな、結構。
「餡子は甘いか」若旦那の大事な親友三春屋の栄吉の冒険成長譚とでも?彼がもう一段お菓子屋への覚悟が固まりました。才より根気。能より努力。教訓がほんのり甘い餡子にくるまれて素直なお話に落ち着きました。結構!
「ひなのちよがみ」はお雛さんの千代紙絡みの商売力のお話。若旦那を置いてきぼりにお雛さんと正三郎の気持ちがしっかりと固まったようで。若旦那の商売勉強もそこそこ・・・兄やの「しくじりは何回してもいいんです。次に繋げていけばいい」確かにそういっていただくとほっとしますよ。それがこの物語に安定して吹いている暖かい風なんです。勿論実際の世の中では・・・なんていう必要は全然無いんです。お江戸の長崎屋さんに吹く風で私も安らげたんですから。というわけで今回は全部結構毛だらけ・・・この調子で・・・次作も期待。

医学のたまご

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医学のたまご (ミステリーYA!) 医学のたまご (ミステリーYA!)
ヨシタケシンスケ理論社 2008-01-17
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 海堂尊著

すっかり御馴染みになって、桜宮市の住人になって、しょっちゅう東城大の病院へ通っていて、先生たちの出入りにも、看護士さんにもすっかり顔馴染みになったおばちゃんのような気分がしています。
うちの市にはこんな子供たちが住んでいたの?え、天才君たちじゃないの!って、主人公の曽根崎薫君じゃぁありませんよ。高校生の佐々木君も含めて彼の友人の三田村君と美智子さんですよ。彼らが育ってくれれば桜宮の医療もそこそこ期待できるってものです。薫ちゃんも成長途上で期待値大ですけどね、勿論!なんて。
おかしなシチュエーションのおかしな子供たちですが・・・でも、子供は育っていくんだな、いいサジェスチョンがあれば、より立派に!って。
とにかくこのおかしな荒唐無稽系のお話の何が素晴らしいって、章題でしょうか。 彼は実践し続けているようですけれど・・・長続きしなかったことが今日の私を決定づけたのではないかとさえ思えるのですけれど・・・確かに昔本を読むと心を打たれた言葉とか、素晴らしい!と感歎した言葉を書き抜いてノート作っていましたっけ。あのノート結局どこへ消えたのだろう?「○○・・・とパパは言った」という彼の覚え書き。それが全部不思議な言葉だけど真理?「いえてる!」と頷ける箴言・・・でもって実にいい物語の進行役。そしてそれらが繋がって最後の「○○と僕は言った」と彼の成長に乾杯!
だけど手放しで面白かった!と、言えないのは私の方が子供だからかもしれない。「大人に成るのなんて厭だい!」と、言ってしまいたいほど桃蔵さんが惜しいから。必要な事を認められる大人にディア・カオル君は成ったんだね。いくらお父さんがフォローしようとも、彼(桃蔵さん)の将来を心配してしまうよ。彼は故郷に返してはいけないんだ、桜宮に大事な人材だよ・・・って思っているんだよ、患者の一人として。
しっかし、この作家、やっぱり恐るべし!なんだね。ステキ
まったくもう桜宮市図書館に登録しないと海堂先生の本は直ぐには読めないようですね。江東区の図書館さんも随分買い込んでくださっているとは思うのですけれど・・・

御伽草紙

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先日何かで「俵の藤太」を知っているかという話になりました。意外に私と同じ年配の人でも知らないのですね。家に帰ってきて「俵の藤太のムカデ退治知らないのよ。驚いた!」と言うと旦那が「家のご先祖様だって教えてやった?」「藤太を知らない人にそんな事を言ってもねぇ~」 藤原秀郷は旦那の家のご先祖様ということになっているのです。
それでふっと思いました。「この年でも知らないのだから今の子供たちはもっと知らないだろうなぁ~」それで今度いつかボランティアで小学校の朗読をするなら・・・どうせなら・・・「この話をしてみようかな?」
藤太をご先祖と仰ぐ家は物凄く多いはずですしね。特に関東地方には?ヒョットすると私は家の子供たちにもこの話はしていないかもしれません。これはしなくっちゃ!というわけで早速図書館に探しに行きました。そしてこの「御伽草紙」のなかに入っているのを見つけた!というわけです。
一種の英雄冒険譚です。単純なわりに?面白いですからね。
それで久しぶりにこのお伽草紙に目を通しましたが・・・懐かしい話も、知らない話も収録されていました。南北朝時代から江戸時代の始めごろまでに流布し書き残されたあまたの物語から16話載せられていました。中では「鉢かつぎ」「酒呑童子」「浦島太郎」「ものぐさ太郎」「俵藤太物語」はよく知った話でしたけれど、他は初めてでした。それにしても荒唐無稽な不思議な話が随分と聞き継ぎ読み継ぎして伝わってきたのだなぁ・・・と感心します。今の子供たちにはこういう摩訶不思議なお話を咀嚼する力があるのでしょうか?意外にこういう筋が面白くてちょとばかげてありえなくて・・・それぞれに悲しかったり笑えたり信じられなかったり、という短いお話は頭にしみこみやすいかもしれません。
私がかすかに覚えている昔の物語は何時覚えたのか定かではないのですけれど・・・こうしてまた本当に久しぶりに出会ってみると・・・子供だった時が妙に身近に感じられるのです。あらかたは父が寝る前に読み聞かせてくれたものだったのですけれど。

おそろし 三島屋変調百物語事始

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おそろし 三島屋変調百物語事始 おそろし 三島屋変調百物語事始
宮部 みゆき角川グループパブリッシング 2008-07-30
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宮部みゆき著

「三島屋変調百物語事始」という副題が付いています。
この本図書館に予約したのが何時のことだったかもうすっかり忘れ果てています。それくらい経ってようやく届きました。ようやくと言えば十日間家を留守にしていた間に東野圭吾作「流星の絆」が届いて取りにいけなかった間に流れちゃいました。改めて予約したら1200人待ちですって!時間が経ったのに増えてる!これってTVドラマ化のせいよね?チェッって感じ?
さてようやく来た本はその分?予想に違わず!面白く読めました。
全くもって名手ですよ!名手過ぎてすべりが良すぎると感じる何かもかすかに頭をよぎるのですけれど、面白く読ませていただける安心感も手馴れた感じ!「しっかし、上手いよなぁ・・・!」嘆声。
百物語と言う既成の枠組みを使いつつ、新しい意匠を凝らしている面白さ。百の物語が語られ何が起こるのだろう・・・と期待感を持たせます。
その何かにも新しい宮部さんならではの意匠が見られそう。それともむしろ現代の衣装をまとった百物語が時代の枠の中で語られるのか?
さぁどんななんでしょう?
心に大きな傷、暗い穴を抱えてしまったおちかさんが物語の聞き手となるのだけれど、だからこそ誰しもが語りたくなる、何かを打ち明けたくなると言う設定も無理はない。むしろ余りに何か人や事象に訳知りすぎて敏すぎる叔父さんの動きが少々出来すぎてあたりまえでない印象を受けるけれども、心ある叔父叔母夫婦に見守られつつ前へと僅かずつ進んでいくおちかさんがいじらしくて(だけど本来は恵まれ過ぎて生まれた人よねとやっかみつつも)・・・つい応援しつつ見守って、話に耳を傾ける自分に気が付いて「宮部ワールドの引力だわ・・・」と苦笑してしまう。心に大きな苦しみ、闇を抱えてしまった全ての人にこのような優しい手が差し伸べられるといいのに・・・なんて思って、そういう人がこの本にめぐり会ったらなにか感じるところが多いかもねぇと・・・。そう!怖ろしい物語だけれど、読む人によっては癒しにも助けにもなるのかも知れず・・・
宮部さんの長い物語をいつも長いと感じずに読みふけってしまう私は今回もまたどうせなら百話聞きたいと願い始めているし・・・。 是非、広げた大風呂敷にしっかり詰め込んでください!
実際途中で松太郎に殺されてしまった良助はどうなるの?なんで彼の事が出てこないの?って声が私の心の中にもずうっと聞こえていたから・・・家守の男のように・・・「まだ何かあなたとは縁がある」みたいな気持ちになって・・・。そう、話をしたい人は山のようにこの世にはいるでしょうし・・・自分の事を心ゆくまで語り続けられたら・・・それだけで救われるという状況はいつもあるものだし・・・人の心の、この世の中の「おそろし!」はあらゆる時の間に、襞に、ひっそりと、またはおどろおどろしく存在していることは確かなんだから・・・と期待しきりです。

・・・って、書いていたら友人からメールが入りました。「今、続編が読売朝刊で連載されているよ」   百話期待できるのも・・・そうしたら・・・何が起きるか?

アメンボ号の冒険

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アメンボ号の冒険 (講談社文庫) アメンボ号の冒険 (講談社文庫)
椎名 誠講談社 2006-07-12
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椎名誠著

先日小学校読み聞かせのボランティアの代理を頼まれて6年の教室にお邪魔しました。「何を読むかも考えてね」ということで、代理もこれが4回目。風邪を引くたびに急に頼まれると作品選びに大慌てで四苦八苦します。今までに4年、5年と読みに行きましたが・・・読書経験の傾向が完全に彼ら(今の小学生)と私では違っているようです。
終って雑談で「うさこちゃん」知ってる?「知らない!」「ピーター・ラビット知ってる?」「知らない!」
ホントかいな?って思いましたが、その日の6年生に「赤毛のアン」知ってる?と質問して数人が「聞いたことがある」でした。そんなものかー?と驚きました。なにしろその日に読んだのはモンゴメリーの短編の一つでしたから。ですから帰りに図書館へ寄りました。今度慌てなくとも済むように?6年生ぐらいに丁度いい物語を物色してみるか?と思ったのです。
で、たまたまこの本に出会いました。5年生の時に作者が実際に体験した冒険の記録です。借りてきて、実際、私が夢中になりました。こんな子供って今の世の中から駆逐されちゃっていますよ。でも、彼ら(アメンボ号の冒険者たち)だったら十五少年漂流記を生き抜くことができるんじゃありません?
でも多分私が行ったあの教室の6年生は絶対一人も保たないと太鼓判を押せます。って、私だってどうかな?もたないだろう!ですが。それでも「ロビンソン・クルーソー」「スイスのロビンソン」読んでますからね・・・心の準備だけはバッチリ!
子供たちにこういう本を読んであげたいなって思いますけれど・・・15分の持ち時間じゃね。だけどこういう本で得た知識ってバカにならないでしょ?スイスのロビンソンのお母さんの教えは今も私の頭の中よ。
このアメンボ号は今の幕張辺りの冒険でしたが、今のあそこにはそんな遊びを受け入れる自然がもうありません。この辺りの子供たちは毎日橋を渡り、運河を望みながら通学していますが、この運河でこんな遊び・・・テンから考え付かないでしょうし・・・そんな怖ろしいこと!って感じですよね、今の川の姿を見たら。
子どもたちの覇気の無さを憂えるより、子供たちに遊びの余地を残してやれなかった我世代の情けなさが身にしみます。想像力をゲームの中でしか培えない世の中です。身体を使わせようと思ったらお金をかけてしっかり指導者のいる自然キャンプに行かせることくらいしかしてやれないのかも・・・?この本の中の4人の男の子に、昔の近所の坊主どもを懐かしく思い出して・・・一緒に基地を作ったけんちゃんやふいた君やりょーぞーくんや久美ちゃんはどこでどうしてござるやら?
 

ある日、アヒルバス

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ある日、アヒルバス ある日、アヒルバス
山本 幸久実業之日本社 2008-10-17
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山本幸久著

先日は義姉夫婦が上京して「はとバス」を楽しんでいきましたし、父も母も田舎から親戚が上京すると昔はよく「はとバス」に乗せて同行したから、「はとバス」にはよく乗ったものだと言っていましたが、私は東京に生まれちゃったせいで、「はとバス」に乗る機会が無いのです。いつかは乗って見たいものと常々思ってはいるのです・・・が。
実際のところ東京の人間が乗ってどんなモンでしょう?面白いという噂もあるようです?大体本気で調べたことは無いのでどんなコースがあるのか知らないのですが、「アヒルバス」のコース設定は妙に心をそそられます。
冒頭の「ディープな東京でドキドキ!旦那様にはナイショでナイト」
から凄い!です。一覧表を掲げたくなっちゃいます。
「これはお得!東京名所ぐるり旅」「からだもこころもリフレッシュ!東京ぶらり自然散策」はいかにも定番、おとなしいとしてもネーミングがいいんですもの。頭に入り込んじゃう泥臭さ!一時こんなネーミング流行ったなぁ・・・
「少し贅沢ちょっと遠出!日光デリシャス大名旅行」「ブレイクまちがいなし!若手芸人に密着旅行」「絶叫必死!なごみ系もあり?東京ジェットコースターめぐり」ーなごみ系って花やしき?イやあれは恐怖系だし?一体東京にはジェットコースター幾つあるんだろ?って気になっちゃうでしょ?「あなたもヒロインになれる!月9ドラマロケ地巡礼」「大阪に負けるものか!江戸前食い倒れ」「気分は箱根か熱海?東京温泉浸かりまくり」ってふやけるでしょうが!「着物でキメる!着付け教室&江戸下町そぞろ歩き」「これでカノジョは陥落できる!東京デートスポット下見ツァー」「タモさんもここを歩いた!タモリ倶楽部取材地めぐり」亜紀さん発案「オジサマ限定エステツアー」の正式名称知りたい!読んでいるうちにもこんなんあったん?アハハ・・・「遠い宇宙に思いを馳せて。天文学ちょいかじりツァー」「東京だよおっ母さん!三時間ポッキリお手軽観光」
先日書いたこの作家の「カイシャディズ」のココスペース大好きです。
また繰り返します。「アヒルバス」大好きです。月島に「アヒルバス」探しに行っちゃおうかってマジ考えています。先輩も新人も哀歓が程よくて、会社の人の見える大きさが小気味良くて、主人公のデコさんを取り巻く人々がお客も含めて優しい等身大!この「ほど」だよ、この「ほど」!って唸りながら読みました。読み終わって、また明日、彼女たちの健闘を祈りつつ、自分も頑張るぞ!って。ありがとうございますって、頭を下げたくなっちゃういい気分です。
 

親不孝長屋―人情時代小説傑作選―

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親不孝長屋―人情時代小説傑作選 (新潮文庫) 親不孝長屋―人情時代小説傑作選 (新潮文庫)
池波 正太郎新潮社 2007-06
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縄田一男選

コレは実に贅沢な選集でした。作家の顔ぶれを見ただけでも期待濃厚になります。宮部さんの「神無月」周五郎さんの「釣忍」は既読。しかも好きな作品です。他の作も見事に読ませる作品でした。
短編はおうおう時間ふさぎ?余暇の穴埋めで終ってしまうこともありますし、時にはそうか!なるほど!良かった!面白かった!で終わることがあります。物凄くピリッとしたいい作品にぶち当たることも勿論多いのですが。
でも素晴らしい作品の中には読み終わってそこで終らせてくれないものもあります。寝しなに読み終わると、その後の成り行きを自分で紡ぐ事になります。主人公が不安定なまま置かれたら、彼・彼女のために幸せを見出すまで私は眠れません。
「神無月」を初めて読んだ時もそうでした。市蔵が大怪我をする前に岡引に間にあって欲しいのか、無事に数年娘を看護できるお金を取れて証拠が無いのが良いのか、ああでも彼は岡引が来た途端にすべてを白日に晒して罪を認めてしまうだろう・・・じゃぁ娘はどうなるの?・・・どうなればいいのか?えんえん寝られませんよ。でもそれも作品が与えてくれる醍醐味、すごいですねぇ!
そういう意味では他の4作は一応は完結していますが「邪魔っけ」には教えられる人間の真実がありますし、ちょっと上手く話が付きすぎですが、そういうものだろうなと腑に落ちる人情がでんとあります。若い二人が学んだ事を生かして幸せに・・・と祈ります。
「左の腕」も実によく出来た作品で、小腰をかがめてつましく生きている人間にもちゃんとその人の過去という生があり、魂もある。最後のページでそうだ、そういうもんだ、うんうんと頷く自分がいます。そして今後の卯助さんの生き方を見守りたい気持ちになります。周りの人は、娘はどんな反応を示すのでしょうか?
「釣忍」などはもう「ああ周五郎さんだ!」やっぱりいいなぁと咽喉をゴクンと言わせて涙を押し込めるという醍醐味があります。ささやかな幸せを守るのも義理を通すのも人の心あってだと!
一冊の中に「贅沢な時」が読む人への「贈り物」として詰まっています。

江戸の爆笑力 時代小説傑作選

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江戸の爆笑力―時代小説傑作選 (集英社文庫) 江戸の爆笑力―時代小説傑作選 (集英社文庫)
細谷 正充集英社 2004-12
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 細谷正充編

 
同じく企画の短編集が続きます。これも同じ伝で、爆笑だけではありません。苦笑、失笑、微笑、哄笑・・・色々な笑があります。だから表題は措いておいて・・・。「わたくしです物語」だけ既読。この類の周五郎作品は大好きですから。共通するきりきり舞いをさせられる人が特に大好きです!
泡坂妻夫さん、先日亡くなられました。多分初めて読んでいるときに新聞のニュースを見たのです。民話寓話的な小品で困り抜いた神様の顔が見えるようでした。したたかな庶民のしたり顔も。・・・と、思ったら新作落語とか?へぇ・・・落語かぁ・・・なるほど!でした。
「蚤とり侍」くすっ、「大江戸花見侍」馬鹿笑い、「反古庵と女たち」も笑えなくは無いんだけど笑うまでがなんだかめんどくさい。
「妻を怖れる剣士」女性からみればはなんともお気の毒だけど・・・笑ってもいられない。男ってこんな単純じゃないもんね・・・ってところ?「黒船懐胎」は笑えた。
問題は風太郎さんの「伊賀の聴恋器」で、この作品「笑」に括れるかな?この服部大陣って食わせ者、その人に愛嬌が無い。作り上げた物はおかしいが、呼び起こした事件には笑えない。この変な作品はこの括りには絶対無理だ・・・と思う。大体風太郎さんのおかしさは余り素直ではないという気がかねがねしている。明治物は結構好きだけど、それでも捩くれたいがいがな何かは舌に残る。この作品も当の本人がぺしゃんこになって片は付いたが、ここで笑えるのは最後の一行の結末だけで・・・それもかなりひねくれた皮肉な捩れ笑い。最後に据えた「わたしです物語」で全ての厭味を「取っ払ってください」という編集?
 

江戸の鈍感力 時代小説傑作選

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江戸の鈍感力―時代小説傑作選 (集英社文庫 ほ 16-7) (集英社文庫) 江戸の鈍感力―時代小説傑作選 (集英社文庫 ほ 16-7) (集英社文庫)
細谷 正充集英社 2007-12-14
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 細谷正充編

鈍感力ねぇ・・・コレも最近目に付くようになった言葉です。渡辺淳一さんの本は大昔1、2冊読んで「こりゃぁ、私向きじゃない」と、きっぱりけりを付けましたから「鈍感力」も読んでいません。が、なんとなく言われる方向は分かっているつもりです。
「老人力」に次いでこの本を読みましたが「老人力」よりこの「鈍感力」は主題としての括りには無理がありそうです。読み流せば「鈍感」で足りるのかもしれないけれど・・・渡辺さんのエッセイの内容にひょっとしたら即しているのかもしれないけれど(解説で編者が渡辺氏の「鈍感力」をテーマにしたと書いてあるから)、でも一般的な鈍感の意味ではこじつけに過ぎる選もあるようです。
池波さんの「江戸群盗記」と周五郎さんの「愚鈍物語」は既読。文句無く楽しく読める作品です、が、この二つが同じ括りで良いのかはなはだ疑問です。こういうアンソロジーの表題は難しいなと、思います。が、この手の本は作家に遭遇するいいきっかけになることは確かです。
村上元三さんの「上総風土記」はこのアンソロジーで読みたくなかった素晴らしい作品でした。つまり「鈍感」と言った文字をどんな意味でも冠して欲しくない作品です。周五郎さんの「日本婦道記」を思い出しました。真っ直ぐな一途な心根の物語ですから。たとえその信念が儒教や道徳や上から洗脳されたものであっても、己の信じているもの、ことに、全霊を捧げることの強さ、不屈さは人の心を打って余りあります。
残りの作品については、特に「春日」は鈍感力でも、まぁいいかです。「山女魚剣法」「婿入りの夜」は面白く読みましたが、主人公が好きになると「鈍感」と言う言葉に拒絶反応が起きます。叡智でしょう?これはと。「世は春じゃ」などは厭な物語ですが、これなどはバカなだけじゃないなんて思えて。アンソロジー編むのは楽しいだろうけれど、表題はやっぱり難しい!

江戸の老人力 時代小説傑作選   

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江戸の老人力 (集英社文庫) 江戸の老人力 (集英社文庫)
細谷 正充集英社 2002-12
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細谷正充編
「アンソロジーなら私こんなの買ったから」とサークルの方にこれもお借りしました。本当に皆さんよく探していらっしゃいますね。
短編12作品を収集掲載。今のところこの編者で「江戸の○○力」という題で5作、本が出ているそうです。「老人力」ってベストセラーになった本があったな・・・と、思いましたら編者が解説で「拝借」したと断っていました。文字通り老人を主題とした短編ばかりです。海野弘さんと穂積驚さん以外はよく存じ上げてる作家ばかりですが全編初読。
作家の顔ぶれを見れば皆どの作品も楽しませてくれること必定!みたいな顔ぶれです。安心して読み出せるところがこの手の本のメリット?しかもそれぞれに違う風に面白い!
時代小説というより読みやすく作文されたような感があったのですけれど、海野さんの「石臼の目切」が素直にいいなぁ・・・と読めました。
白石さんの「月と老人」が一番老人力が生きていましたか。そうだ「十時半睡」を島田正吾さんのTVドラマで見てから「読もう読もう」と思いつつ忘れていた事を思い出しました。読まなきゃ。
同じ老人を描いても女性を主題に据えたものには何故か枯淡の味わいが薄くて、男性を描いたものに味わいが出ているような気がしたのは・・・なんだか納得がいかない・・・などと思っていますが。
平岩さんの「泥棒が笑った」などは最後の老人の行動がかっこよくて「いよっ!」大向こうの声が聞こえそうですよ。同じく切れがいい活躍をするのに村上さんの紅蓮さまはちょっと生々しい。
「いさましい話」は「ああ、周五郎さんだ!やっぱり好きだなぁ・・・」と直ぐ分かる作品なのに読んだ記憶が無い。こんなわけで暫く私のアンソロジー傾倒傾向は続く?

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