ソロモンの犬

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ソロモンの犬 ソロモンの犬
道尾 秀介文藝春秋 2007-08
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道尾秀介著

「シャドウ」「片眼の猿」に次いで三作目。で、この作品が今のところ一番好きかも・・・なんて思いながら読み始めた。この作者の文章は前にも書いたけれど、妙に?読みやすい。素直なテイストって言っていいかなぁ。
それにこの作品の底に流れる「不審」感が魅力的。
何だろう、なんだろうって、それは、その感じは何だろう?って思いながら引きずられていく。
会話で作る空気に不審が匂う。
主人公のあいまいな性格がこの作品のあいまいさを増幅して、はやく隠されているものを分かりたい一心で先へ先へ読み進む。
「犯人はこの4人の中にいる?」「本当に?」
「じゃぁ、犯人が割れる?どこで?」
そうしてこの作品に緊張感が生まれる。意外と?この作者は技巧派じゃない?ごく日常的な学生生活が続いて・・・分かりやすいはずの会話がそうは見せない。
でも果たしてこの会話は分かりやすい会話なんだろうか?字面だけ見ればね、でもあいまいな不審が掻きたてられるでしょ。
で、流れ込むのが最後のあれ。
テーマとか主張とかはなくても雰囲気に迷わせて読ませる、これも面白い・・・って思っていたのに、なんてことの無い結末に一寸肩透かし、って、あれ最初のフェイント許していいのかな?ごく穏当な結末・・・これなら確かに確かだけど・・・これで良いのか?たわいなさ過ぎな感も。
マン・マミーヤ!が出色だから許してもいい、かも。
あの動物学・生態学ホントでしょうね?それなら許してもいい、かも。
だけど私にはまだ「シャドウ」かな。
オービーの動きを読んでいて我が家の愛犬を思い出したので一枚挿入

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ジェネラル・ルージュの凱旋

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ジェネラル・ルージュの凱旋 ジェネラル・ルージュの凱旋
海堂 尊宝島社 2007-04-07
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海堂尊著

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「 このミステリーがすごい!」で初めて眼に付いた作家さんです。図書館で手に入る順に読んでいます。

「あれ、間違えて予約したかな?これ読んだ奴だった?」
と、一瞬思いました。
「いや、だけど進行方向が少し違うような?読んでないでしょ?イヤ読んだよ。やっぱり読んでない。」
何しろ順番通りに読んでいない私です。「えー、今までこの作家の本で読んだのは・・・」からおさらいです。「螺鈿迷宮」「ナイチンゲールの沈黙」「チーム・バチスタ」・・・だけだよ、こりゃナイチンゲールだよ、どう考えても・・・と、自問自答しながら読み進めて、なんだ事件?はここ東城大学付属病院で同時進行しているのか・・・にたどり着きました。
小夜さんバージョンと翔子さんバージョン。または小児科バージョンと救急救命室バージョン。
そしてようやくアッチコッチで軽くアッチの状況が臭わされているのに気が付きました。「あ、はー、むふっ!」
「作品を繰り出す速さ!」と、この作家を畏敬の念で見始めていましたが・・・ヒョットするとこのシリーズどこまで引っぱるのか分かりませんが、ずーっともう最終案まで出来上がっているのでしょう。
凄い頭?だ!
前に劇画だ!と感心しましたが、今回も太いテーマはちゃんと理解させられた上で?面白くおかしく楽しく頭を突っ込んで一気読み!
ホント、男だなぁ!速水先生。かっこよすぎ!
こんな手腕と度胸と決意とを胸にたくし込んだお医者様、どこの自治体でも咽喉から手が出るほど欲しいでしょ?ところがどうやらそうじゃないようですね?何処かでこんな速水先生が逼塞している?逼塞していても居てくれればまだ日本医療は見込みがある?死に絶えている気配が怖い。
鬼より怖い赤字!公が付くところの一番怖い赤字!もっともお役人は赤字を埋めるのは税金と思っているから余り赤字に切実ではないんですよね・・・って結果が今の日本?
でも公僕さんだったらお願い、何が最優先事項で何に税金使うか真剣に考えてね?と、思うけれど、これが、専門家がいつも正しいとならないから難しいんだよね。立場立場を離れずに物を言っていたら迷走するだけ。
救急ヘリねぇ・・・こんなに毎日救急車が走っているのを見て、平気で道を空けない車が居るのも見て・・・渋滞で止まっているのも見てて・・・ここを乗り切れるのはヘリだけだけど・・・果たしてここからそのすぐ先の聖ロカ?まで救急ヘリで運ぼうという決断はどこで誰がするのかなぁ?あぁ、そうかあれは病院間移送に使うのか?いや大規模事故の時も使えるだろう?あの場合?この場合?・・・???
するってーと、それを判断できる人を育てなくちゃ、で、運ばれてきた人を有無を言わず受け入れられる救急病院を充実させなくちゃ。
で、そのためには救急医をもっと沢山育てて、配備しなくちゃ・・・と、最優先事項がどんどんわからなくなってきて・・・「専門家さぁん、しっかり考えてぇ!」と投げ出してしまったところです。公にお金が無くなると平均余命がどんどん短くなりますよぉ~高齢者の皆さぁん。でもマァ、これ以上伸ばさなくても良いような?
さてどこから手を付けてどこへ行けば安心救命社会?が出来るのか?
そういう意味でも?こういう面白い作品で一寸ばかし能天気であなた任せで生きている私をも考え込ませてくれるこのお医者さんは、凄い!

おまけのこ

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おまけのこ おまけのこ
畠中 恵

新潮社 2005-08-19
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畠中恵著

「しゃばけ」シリーズの本らしいものを図書館で予約しておきました。そして「しゃばけ」の次に読めたのがこの本です。
それで遅ればせながら「しゃばけ」シリーズが何冊でているのか調べてみました。01年「しゃばけ」03年「ぬしさまへ」04年「ねこのばば」05年「おまけのこ」06年「うそうそ」07年「ちんぷんかん」6冊ですね。それに外伝?「みぃつけた」と「つくもがみ貸します」つごう8冊楽しめるようです。
まだ2冊終っただけですから嬉しいですね。
先日シャンソンを一緒に聞きに行った友人が「告白」という歌を聞いて「あぁ、あんなに『愛している』って言われて見たい・・・」とため息をついていましたが、私は「あいしてる」と「ジュ・テーム」を何度言うか数えておけば良かったと思っていたのです。
「大事大事お前が大事!生きていてくれさえすれば嬉しい・・・」と親に言われ続ける若旦那。しょっちゅう仁吉と佐助の兄やたちにおでこに手を当てられている若旦那。まさに手当て!女にとっての心の手当ては「愛している」といわれ続けることかな?と「大事なら大事と言ってもらえることの幸せ」を思いました。
「言わなくても分かっている」ことは実際の人間関係の中では本当に少ないんですよ。その科白は面倒がりの男のおためごかしです。
実はなくとも口だけは使う男と実は有っても口が伴わない男が居たら女は口に騙される事を選ぶかもしれませんものね。
なんて事をつらつら思っていました。
この物語を読む幸せ感ってそんなところにもあるのかも・・・って。
思いっきり甘やかされることの幸せ!勿論若旦那にとっては「とんでもない!」でしょうが、他人事?で読む方はウラヤマシさで妙にいっぱいになって、病弱で儘ならない若旦那にうんと同情できて、妙な加減にずれて心配性な兄やたちに満足し、鳴家たちの様子にホッコリする!今の世の中への口に甘い薬みたいだ!

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真綿で包まれ、その上を絹で包まれ、さらにその上を黄金で包まれ・・・こらっ!って?一太郎君はちゃんと黄金でもくるまれていますもん!こんな最高のシチュエーション畠中さんはどうして思いついたんでしょう。
「しゃばけ」ではまじめに「ものの大事」「勿体無い」を考え込んだ私が、この作品ではただただ?のんびりさせていただきました。
一つ一つの章には切なさがあるのに、廻船問屋兼薬種問屋・長崎屋さんには大きな心配の周りに柔らかななんともいえない甘い香りの風が吹いている。その風にまた吹かれたくなる。次は何が来るかな。

童謡詩人 金子みすゞ いのちとこころの宇宙

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童謡詩人 金子みすゞ―いのちとこころの宇宙 童謡詩人 金子みすゞ―いのちとこころの宇宙
矢崎 節夫JULA出版局 2005-01
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矢崎節夫 監修

友人が「良い本あるのよ、持ってきてあげたわ。」と言ってこの本を差し出した時、私は一寸引きました。
「わぁ、立派な本ね、でも読む本に追われているから何時読み終えてお返しできるか・・・長くなっちゃ悪いわ。」
「いいのよ、あげてもいいくらいなの、何度も読んだから、お宅に措いて好きなときに読んでくれれば良いから。返すの忘れてもいいわよ。」
そんなんでよければ、と言ってお借りしました。

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金子みすゞさんの詩、好きです!幾つも知っています。めぐり合うたびに好きだなぁ!と、思います。でもそれは今まで出会い頭の衝突!みたいな形で読んでいたからです。ここまで立派な本になって彼女の人生まで書き込まれていると・・・と、思うとちょっと憂鬱になったのは何ででしょう。彼女の短い人生を知っていたからかもしれません。彼女自身もただ作品だけに眼を向けて欲しいと思っているでしょうに?私の知っている彼女の詩はどれも掌に大事にそっと措いて優しくなでてあげたいようなものです。そして心の中でそっと リズムを刻んでつぶやけばいいものです。
この立派な本の中の、私の当然知らない詩たちは、ひょっとしてとっても見事な詩なのかもしれない?っていう気になったからかもしれません。彼女の人生を描いたドラマも舞台も見る気にはなれなかったのですから。
出会ったときにふっと優しい暖かさを感じたり、ハッと不思議なかわいらしい角度に首を傾げたり、見知らぬ心の目を見開かされたり・・・そんな驚きが欲しい詩人です。大上段に読ませていただくのは妙にそぐわない・・・?下手に紐解けば粉々に砕けそう。
2ヶ月もほっておいた後で気が引けて流石にお返ししなくては・・・と、読み始めてみれば、やっぱりそこにあったのは紛れも無くみすゞさんの詩でした。詩の通りの手跡と魂と。
時々何かの弾みで引き出しから飛び出してくるなにがしかのみすゞさんの残した小さな断片が、その時どきの私へのプレゼントみたいな歓び?
みすゞ全集の方でなくて良かったのかな?と全作品に一ぺんに出会わなくて済んでほっとしました。この人の詩は出会いの形が必要です。「あぁ、こんなところに落ちていた!」みたいな。最もそんなこといっていたら、めぐり合わないままになってしまうものも・・・ジレンマね。
96ページまでで、その先は遠慮しました。
「ひかりの粉」は降ってきたときあびるもの!

誰か

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誰か (文春文庫 み 17-6) 誰か (文春文庫 み 17-6)
宮部 みゆき
文藝春秋 2007-12-06
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宮部みゆき著
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またやっちゃった?

読み始めて「あれ?この人知ってる!」

「名もなき毒」の主人公ではありませんか?

慌てて発売年を確認したら「名もなき毒(2006年)」、「誰か(2003年)」でした。

また過去の作品にさかさまに読んでしまいました。

「海堂尊」さん作品なんて過去へ過去へと遡って読んでいますもの。

「誰か」で生み出した主人公とその周辺設定が作者のお気に召したのか、その作品の人気が高かったのか?主人公が再登場したのですね。

「名もなき毒」の最後に30代にしては妙に世慣れて落ち着き払った知性人格優れた主人公がこれからも事件を引き受けてもいいと受け取れる発言があって、私としては今後杉村三郎氏から目が離せないぞ!と思ったのでした。

でも、まさか?過去とは!うかつでした。こんなに好きな作家ならもっと情報に眼を開いておけよ!と厳に自分を戒めたところです。

でも宮部さん多作過ぎますよォ・・・

それはともかく初お目見えのこの作品では主人公さんは人柄の良さと手順の良さで印象的でした。作品の力そのものははるかに「名もなき毒」に及ばないという気がしたのはテーマと他の登場人物の複雑な丁寧な書き込みの差によるものかもしれません。「誰が」の姉妹の対比がちょっとお決まり過ぎていてその点で甘い感じがしてしまったのではないかと一寸残念。

もっとも作者はこの杉村氏の可能性に気が付いて?もっと重いテーマの作品で活躍させて見たいと思った?ということでしょうか。

宮部さんの社会を見て問題を抉り出す眼力はここでも冴えていて、多分ちょっとしたニュースに過ぎなかったと思われる「自転車事故に寄る殺人の増加」を舞台設定に上手に引き込んでいると感心しました。そういえばそのニュース私にも記憶にあって、しかも今現在それはますます増加中のようです。

都会の細い歩道の自転車は間違いなく凶器です。私もヒャッとすることが多いですし、見ていてあっ!ということもとても日常多いのです。それが物語の発端になっていることで素直に本に溶け込んでいけます。内容的にはよくある姉妹の相克ですし、名乗り出られない犯人の問題もごく平凡です。でもサスペンスフルな現代の日常が切り取られちょっとした額縁に入って楽しませてもらえたっていう感じでしょうか。勿論人が亡くなっているのですから・・・なんて付け加えるまでもなくサスペンスタッチのエンターテインメントとして読めてしまったのですけれど杉村氏誕生を祝福したいと思います。

これで社会に自転車のマナーについての再確認と自戒を促すことになればもっと素敵だな!と、思いました。

そういえば昔私が子供の頃、町内の路地を走り抜けていく自転車に

「田舎者が増えて、人の迷惑に気が付かん・・・困ったもんだ!」と縁台で近所のじいちゃんたちが話していましたっけ。今じゃ東京は田舎者しか居ませんよ。

杉村氏の三作目を、「名もなき毒」以上の濃密なサスペンスを、期待したいと思います。

西の魔女が死んだ

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西の魔女が死んだ (新潮文庫) 西の魔女が死んだ (新潮文庫)
梨木 香歩新潮社 2001-07
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梨木香歩著

図書館に申し込んでほぼ40人ほど待っていました。
それなのに映画館でこの映画のチラシを見つけました。
映画化の話は聞いてなかったよー!と、思って、でも読む前に映画が先立ったら厭だなあ・・・と、思っていました。
映画化された物は本とは別物とは思っていますが、それでも影響されることからはまのがれないので、最近は出来たら原作の方を先に読んでしまっておきたい!と、思っています。読むのが先か見るのが先か?って、答えは私の中では出ています。自分の印象は自分だけの物なのでやっぱり確保しておきたいですよ。
でもチラシを見て「え、魔女は外人がするの?」と、驚きました。

西の魔女が死んだ1 西の魔女が死んだ2
本の評判を聞いていましたが、内容の知識は全く無かったので。
で、脚本が衝撃?を加えたのかと思っていましたが・・・おばあちゃんは、西の魔女は、外人さんだったのですね!
そうでした、「西の」で気付くべきでしたよ。それにしてもまいさんの設定って凄く羨ましい!
学校にいけなくなって、お母さんがお父さんに電話で「生きにくいタイプの子」とか「扱いにくい子」とか言う場面があって、最初から少女を扱う本で親が口に出す科白か?と思ったのですが・・・実際は多分お母さんの方がハーフさんでまいさんよりもずっと生きにくい人生の先輩だったんでしょうに・・・と気が付きました。だからこそ分かった上での科白だったんですね?でもこの物語の焦点はそんなところに無かったわけです。
西の魔女はステキでした。でも夫に死なれた後随分孤独だったでしょうね?そう思うとますますステキに思えました。
たった一人の娘はああだし?一番理解して愛情を注いだ孫はあれから二年姿を見せなかったんですから。
だからこの本はまいの成長を描いているのですが、私には西の魔女の生き方が非常に心に迫りました。
なぜなら私もその道を辿るだろうということが見て取れたからです。
人とはそういうものかもしれませんが?
最後は自分ひとりです。でもその自分を選ぶことは出来そうです。
魔女の教えは実に見事に私への教えになりました。
魔女が淡々とこなしていた日常の沢山の手間のかかる家事。
そうか、手を動かしていさえすればどんなさびしいところででも人は自然に生きていけるのかも?
「最速のインディアン」のバート・マンローみたいに素敵な生き方を教えてくれる先輩って道の途中に散らばっているものなんだなぁ・・・こうして本を読んだり、映画を見たり、友(特に年上の)と話したりする日常の中に。
今年私は私が作った2年物の梅酒と母が台所に残していた8年物の梅酒を開けました。琥珀色が濃い母の梅酒のようななんともいえない味のある人が私の周りにもいっぱい居そうで、人が話す事を素直に聞いてみようという気持ちになりました。この本はそんな素直さを引き出してくれました。

赤朽葉家の伝説

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赤朽葉家の伝説 赤朽葉家の伝説
桜庭 一樹東京創元社 2006-12-28
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桜庭一樹著
山陰の製鉄業で財をなした赤朽葉家の女性3代の物語・・・と、まぁ簡単に紹介すればこうなるのだろうか。この作者に初お目見えです。この名で女性作家らしいです。だけどそのまま男性の作品であっても構わない骨太です。
読み進みながら囚われていったのは、不思議な既視感でした。
確かに、たみに見初められて赤朽葉家に嫁入った万葉の少女時代には全く私の人生と重なるところはありません、紙一重も。それなのにこの懐かしい知っている世界は・・・と思って、私の知っている時代の
提出の仕方?時代の切り取り方、その非常に淡々として視線を送る場所の揺らぎの無さが見せるものかもと思いました。私の母の時代から私の子供の時代までが舞台なのですが、太古の出雲の物語だといわれても頷いてしまいそうです。選んだ土地がらのせいかも。そして「もののけ姫」に通じる世界も感じさせて、普遍の時代を作ることに成功したのかも・・・
母の時代、そうそう!私の時代、そうそう!そして子の時代、そうそう今こんな感じかも!
絵巻物を繰り広げる感覚で確かに過ぎてきた時代を振り返ってしまったようです。というか、ああそうだったと、納得の行く直前に万葉の不思議な少女時代やその千里眼の怪しさに私の足元が揺らいで、不思議な既視感に繋がったのかもしれません。その上で遅ればせに通り過ぎてきた時代を思い返したのかもしれません。
千里眼奥様の万葉、族上がりの売れっ子漫画家毛鞠の横を、暗いはかない傍流のように流れる愛人と娘の生涯・・・この2代の4人の女性の静かな語り口で語られる激しさが非常に印象的でした。
そして瞳子の時代。サスペンスを取り入れても何処か冷めて投げ槍ですべきことがまだというか既に無いような不確かさ。そう、そうかもしれない・・・と、
妙にふわふわとそれと自覚しないままで見た夢のような我等が時代!
嘘のような、しかし妙にリアルな、既視感に付き纏われながら、それでもとても面白く読めた3代記でした。やっぱり!時代って女で回っているのかもねぇ・・・なんてね。
この作品にでてくる男たちの存在感の無さは、まるで宙を浮いていた片目の男ほどのものでしたでしょ?

少女七竈と七人の可愛そうな大人 少女七竈と七人の可愛そうな大人
桜庭 一樹

角川書店 2006-07
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探偵ガリレオ・予知夢

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探偵ガリレオ (文春文庫) 探偵ガリレオ (文春文庫)
東野 圭吾

文藝春秋 2002-02-10
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予知夢 (文春文庫) 予知夢 (文春文庫)
東野 圭吾

文藝春秋 2003-08
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東野圭吾著

福山君のファンクラブに入っている友人が「福山君ドラマに出るのよ!」と喜んでいた?から、私は「『容疑者Xの献身』は読んだのよ。面白かったよ!同じ湯川と言う先生が出ている本があると書いてあったので、読んでみたいと思ってね、「探偵ガリレオ」と「予知夢」を図書館に予約したらなんと何十人待ちになってたの。ドラマ化のニュースのせいかな?」
「その二冊なら私買って読み終わったわよ。今度持ってってあげる。」と言うわけで、まだ図書館からは順番は来ないのですが読むことが出来ました。ドラマで見ちゃう前に読み終えることが出来ました。ありがたい!
読み終わってこの二冊はとても楽しく読めたのですが、じっくり楽しめたと言う点ではやっぱり「容疑者」が一番面白かったなと思っています。
でもこれって今までにないような探偵小説ですよね。
科学的という点では現在では正しいかどうかと言う点では疑問が多いのですけれど、読ませてしまうと言う点でもホームズを思い出します。この本の場合はキーになる科学的根拠って全部正しいのでしょうね?最もだからといって実際にこんな殺人が犯せるとはとても思えないのですけれど・・・それでも読まされてしまいます。そこがスゴーイ!って。
そこがこの作家の資質で力量なんだなぁ・・・!と、素直にエンターテインメントの一つとして十分に楽しませてもらえ、好きな作家の一人となりました。かなり遅ればせなのかも。
ドラマより先に「容疑者」読んでおいて良かったなぁ・・・と、思っています。それで既に一応私なりの湯川先生像が出来ていましたから。福山さんはあの只者ではないハンサムさに私も友人ほどとはいえないまでもイカレテいますが、そこはそれ一線を引かせていただきました。
一線といえば作者がイメージしたのは他の俳優さんだったそうじゃないですか?どうせならそのイメージで映画化だと面白いのになぁ・・・
ありがたいことに?草薙刑事の役柄が女性に変わっているので、私なりの「ガリレオ物語」はちゃんと別に取って置きやすかったのです。それなのに聞くところによると薫さんが本の方にも登場するのですって?イヤだなぁ・・・混乱しちゃいそうじゃない?
純粋に本からのイメージの湯川さんを別に確保しておきたいのになぁ・・・だって本の中の湯川先生の変人振りと福山さんが作る変人振りとの間には深ぁーい川があるんだもの。「探偵ガリレオ」と「ガリレオ」と別の楽しみにしておきたかったのになぁ・・・それにしても東野先生、どのくらいこの科学的雑学的知識のストックが続くのかなぁ・・・それも楽しみ!それにこの章題もおもしろいですよね。このこじつけそのうちに底が尽きないかそれも心配だけれども・・・印象的で・・・そのうち流行るかも?沢山沢山、上手い殺人事件とその見事な解決を本の上で納得させてください。間違ってもホームズのように途中で死なせたりしないで下さい。書くの飽きないで下さい。せめて三毛猫ホームズ以上に続けてください!
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しゃばけ

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しゃばけ (新潮文庫) しゃばけ (新潮文庫)
畠中 恵

新潮社 2004-03
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畠中恵著

和製ファンタジーです。一寸ファンタジー漬けの日々ですが。友人のお嬢さんのエンターテインメント大賞受賞で思い出しました。
そういえばファンタジーノベルー大賞とか言うのもありましたよね?と。ファンタジー好きなのに何でこれに眼を向けなかったんだ?です。
それで検索してみましたら、「後宮小説」が第一回受賞作でした。この作品はスキーで肉離れをして閉じこもっていた時に子供から送り届けられた大量の本の中にあったので、この賞の受賞作とは知らずに読んで正直好きになれなかったのです。それに受賞者(+候補者)で名を知っているのは恩田陸さんと山之口洋さんと畠中恵さんだけという心もとなさ?そういえば山之口さんの「天平冥所図会」、あれもファンタジーでした。
なお調べれば?畠中さんは時代小説がかなり!これは挑戦でしょ?
で、「しゃばけ(娑婆気)」を借りてきました。お江戸が夜はまだ夜だった頃のお話です。今これを入れている私の窓の外はレインボーブリッジとお台場の観覧車が光り輝いていて、夜は明るく美しいといっていいでしょう。お江戸は遠くなりました。大体その頃はここはまだ海に中ですよ。余談が長くなりました。
私にとって本を読む楽しみはどうやら時代物歴史物の中にこそ・・・ということを又確認したみたいです。続編があるらしいのでそれを読んでから大ファンよ!と言わなくてはなりませんよね。でもこの作品で大好きになりそうな予感です。お江戸の妖といえば宮部さんの作品群を直ぐ思い出しますが、ここには又なんとも可愛い妖怪たちがいっぱい登場します。お江戸の暗がりから生まれでてくるような妖と付喪神たちが一寸人間とはずれ感覚ながら日常に当たり前のように居るのです。それが楽しいファンタジー世界を構成しているのですが、当然妖怪には妖怪然としたものも居ると言うわけで・・・!この物語で哀れだったのは100年近くも人間に大事に使われて付喪神になる寸前で壊されて神になりそこなった墨壷です。
まだ十分使えるのに飽きたから、邪魔になったからと捨て去ってしまった沢山の物たちの事をいやでも思わずにはいられません。
勿論昔は修繕できたものが今では余りにも複雑になりすぎてどうにも直して使えない沢山の物たちはそれ以前、最も哀れな道具のように思えました。今私たちが使っているのは今こうして使っているPCなどは神になる可能性(希望)の欠片も持たずに生まれてきた道具です。そう思うと今の東京の潤いの無さ、道具たちの希望がなくなったとき人の心も又日本人本来が持っていた柔らかな感謝の念を忘れた無味乾燥したものになったのかもしれないと思わされてしまいました。お道具お道具、一つに一つの神を見ていた心も夜の闇ももう戻ってくることはないんだなぁ・・・とこの妙に懐かしさを感じさせられる物語にため息をついてしまいました。
一つの付喪神になりそこなったお道具の怨念がこんなにも人を殺す事件になったわけですが・・・我が家には百年も使い続けているような品物ははなっからありません。戦災で完全に焼けてしまったからですが・・・あれから六十数年、子供たちに譲り渡して大事に未来に受け継いでもらいたいと思うようなものもないようです。悲しい現実!
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陰日向に咲く

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陰日向に咲く 陰日向に咲く
劇団ひとり

幻冬舎 2006-01
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劇団ひとり著

面白い名ですね。題も著者名も。
そういえばこの作者の方私は映画で知りました。
「10人ものキャラクターを演じる一人芝居で注目される」と著者紹介にありましたが、その本職を残念ながらまだ見たことは有りません。
そうか、そういう仕事をしている人だったのか・・・、それで、まじめに人を観察してキャラクターを練り上げる作業がきっとそのままこの本に結実したのでしょうね。
私から見るとふつうにあるとは思えない登場人物たちですが、さらさらとした書き様と淡々とした描写に、読んでいると実際今なら現実にその辺に居る人なんだろうな・・・なんて思えます。
モーゼが?ミャーコが?まさかぁ・・・なんて思っているうちに輪が一回りしてああそうか!と思った途端彼らは皆当たり前の顔をして私の世間にも住み着いてしまったような感じです。
妙にそれが皆まじめな顔をして居座っているんですね。
こんなの良くあるパターンだよ。「パルプフィクションとかさっ!」なんてつぶやいてもても「・・・えっとほらあの・・・」ともどかしい思いをしても。
一つの駅から一つの線路が伸びていってね、他の駅からも他の路線が伸びていってね、それが終点で合うのよ。そんでね又他の駅から出た路線がね、前の路線とどこかの駅で交差するのね・・・っていうようなのさ・・・」なんて自分に説明したりしてみたり。
私だったり、俺だったり、僕だったりする、各章の語り手たちは何の衒いも無く自分を語る。それが余りにあほな人生なのに・・・と、まじめな私はふと思ってしまったりもするのに・・・妙にじわ~んとした気分の中に居る。彼らを別に応援しようとかお説教しようとか何とかしてあげたいとか言う気分も全くないじゃないけれど・・・でもいいんだ!と、思っている?
そうだね!そうだね!確かにかげひなたなく彼らは彼らでそれぞれに生きているんだね。
なんだ、とってもいい題だったんじゃないの!

図書館に予約してほぼ1年くらい待ったと思います。
読み終わった途端映画化の話を聞きました。
劇団ひとりさんは出演するのかな?するとすればあの役だ!
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