さよなら、愛しい人

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さよなら、愛しい人 さよなら、愛しい人
村上春樹早川書房 2009-04-15
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レイモンド・チャンドラー著  村上春樹訳

先日NHKハイビジョンでチャンドラーをしていましたね。それにこの間村上春樹訳で「ロング・グッドバイ」を読んだところでしたし・・・面白かったし。その後また新しい訳があればチャンドラー読むのもいいかな・・・と、思っていましたし。で、調べたてみたら、村上さんの訳でこの本が出ていたことが分かったので読み直しました。
こういう時ってやっぱりちゃんと考えているんですかね?NHK。古い映画の「さらば愛しき女よ」も放映していましたし。ロバート・ミッチャムがマーロウに適しているかは?ですが・・・いや、良かったかも!シャーロット・ランプリングはいい感じでしたね・・・と、思って見ました。実際のところ今は誰がやっても、この人がマーロウ?ヘッって感じになるのでしょうが。しかし厄介な人だなぁ・・・と嘆息です。幾つか道があったら絶対細い方、険しい方、曲がりくねった方、人が来ない方を選ぶ男です。でも救われることには、ちゃんと同じ道に迷い込む男なり、まぁ女なりがちゃんとそれでも居ることです。ムース・マロイとヴェルマの恋はある意味「美女と野獣」美女の方は大分腐っていたことが分かりましたけれど・・・あの時代あの世界で生き抜いていくとしたら・・・と思えばまぁねぇ・・・って感じでしょうか?この物語りの魅力の一つはマロイの8年越しの愛なんですが・・・野獣の愛は切ないです。ベルがベルでいてくれる可能性って低いですもの・・・って女性の私が言っていいものか?ベルになってあげたいものですよ、本当は!野獣もこの場合王子様になることはないし・・・人間の執着は悲しい。といって執着できなくては人間といえない。マーロウだったらそういいますよね?
そういうわけで?外国のこういう乾いていそうな風土での捩れたウェットの世界・・・楽しまなくちゃ!そして私も一風変わったロマンスに浸るのです。
それにしても、映画以上に映画を感じさせる本です。気が付いてみたらミッチャムさんを蹴飛ばしてちゃんと私のマーロウがデーン!と出来ている気がするんです。存在感が抜群なんですね。
 

笑う招き猫

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笑う招き猫 (集英社文庫) 笑う招き猫 (集英社文庫)
山本 幸久集英社 2006-01-20
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山本幸久著

「カイシャデイズ」「ある日、アヒルバス」「凸凹デイズ」に次ぐ4作目。これを返したら、またこの人の作品を探してこようと思っています。
やめられません、ここまで読んで1作もはずれが無いのですから。
いい本とか、役にたつ本とか、強烈な何かを得た本とか、まぁ色々な本がありますけれど、こんな心のありようの「ほどの良い」本って・・・最近では希有!
好きな作家はどんどん増えつつありますし・・・ホントを言えば昔から好きな本をまた読み返したい・・・っていうのもあるんですけれど。父じゃないけれど、「一日一日日が短くなって、できることがどんどん減っている。読みたい本が山済みなのにTVなんか見ていられるか?新聞も隅から隅まで目を通さなくともこの年になれば、ニュースを知らないでも生きていける」全くごもっとも!88歳と61歳が同じこと思ってどうするの?と、思うけれど、本当です。
最近の趣味が「日本語の本」と限定されているので・・・辛いところです。翻訳物を読みたい時は二倍の速さで本を読み飛ばさなくてはなりません。・・・って、こっちの勝手な事情なんですけれどね。
そんな私が二倍の速さで・・・なんて大上段に振りかぶらなくても、この作家の本は速く読めてしまいます。面白さが止まらない。しかも登場人物皆好きになってしまう。彼らの先が知りたくてもどかしい指でページをめくってめくって・・・読み終えて・・・ああこの後彼らは・・・また彼らに会いたい!と思うのです。「アカコとヒトミ」絶対会えるような気がしています。   すれ違えるように思うの、  バスに乗ると居るの、 広告の隅に凸凹社ってロゴが入っているの・・・そんな近しさが好きです。ガンバッテいるので好きです。しかも末広がりとかしり上がりとか・・・いいイメージがてんこ盛り。
 

見知らぬ海へ

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見知らぬ海へ (講談社文庫) 見知らぬ海へ (講談社文庫)
隆 慶一郎講談社 1994-09
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隆慶一郎著

そんなわけで(「一夢庵風流記」参照)この本も続いて旦那から。
この本の場合は彼の城廻の方の関連がより深いようです。それに静岡の海や城はなじみのある懐かしいものですから。
武田といえば山梨・・・なんか海とは縁があるような気がしませんが、その武田家も恋焦がれた海・湊を持っていた時期があります。武田の海軍、意外と知られていないかもしれませんね。その武田の海軍の本拠地が清水港。そこで育ち武田家滅亡の後、向井水軍を率い北条水軍と駿河湾での決戦を経て大きく成長していく水軍の将を見事に描いた作品です。
慶次郎に惚れたように、やっぱり読む人を惚れさせずにはいない見事な男を描いています。多分男が惚れる男がテーマなのでしょうけれど、それはやっぱり男も女も人が惚れる人ということでしょう。
こんな男今の時代にいやしないわ・・・とため息も出ようものですが、でも時代が要求する人物というのはいるようで、時代にはその時代を見事に生きる人が必ずいるものです。あの時代だからこそ坂本龍馬は輝き高杉晋作は光る。そしてこの向井正綱もこの時代だからこそ輝いた・・・ということはあるのでしょうね。それでも、隆さんが拾い上げなければ本の好事家の間だけでひっそり知られただけの存在で終ったでしょうに。
歴史小説を書く人の真の喜びは自分が歴史の闇から引っ張り出した人がちゃんと明るみの中をひとり立ちして歩き出すことなのかもしれないな・・・なんて思いながら読んでいました。
この先駿河の海を見ると、ここで自らを磨き上げ素晴らしく強い水軍となって戦い抜いて死んでいった男たちの亡霊を見られるのではないか?という気がしてきます。
しかもこの向井正綱という魚釣りの大好きなのどかな気質の人があの時代にではなく生まれていたらニコニコと素直に釣り糸を垂れて一生を送ったに違いないと思われるだけに、ある意味時代を得て生まれた人って幸せなのかも・・・とも思われるのですが。反対に名を残すことの裏にある人生の凄みは決して幸せなものではないのかもとも思わされるのです。無名で死んでいく幸せというものをもまた合わせて感じられた作品でした。
それにしても戦国時代にはどれだけの漢が排出したのでしょうね?今後もどんな人物に光が当たることか・・・と、思うと、もう隆さんの新しい作品にお会いできないのが本当に残念です。全部の作品を読もうと思いますけれど・・・少ないのです。
 

一夢庵風流記

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一夢庵風流記 (新潮文庫) 一夢庵風流記 (新潮文庫)
隆 慶一郎新潮社 1991-09
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隆慶一郎著

大昔、子供が少年ジャンプだか少年マガジンだか読んでいた頃は結構一緒になって漫画見ていました。その中に「影武者徳川家康」だか「花の慶次」だか?見た覚えがあります。そのとき隆慶一郎の名も覚えたのでしたっけ。隆さんのことは父が、なかなか面白い作品を書く人で「吉原御免状」など読むといいと言っていましたが・・・いまだに読んでおりません。が、いつだったか旦那が「捨て童子・松平忠輝」を買ったときにそれは読んでいます。
あの本は面白く読んだのに何故続けて隆さんの本を読まなかったのか不思議です。今回この本も旦那から回ってきて、読んで本当にそう思いました。実に面白い!と。
ただ、読んでいる間にどうしても慶次郎が漫画の・・・つまりケンシロウの顔になってしまうことが厄介でしたね。「お前は既に毒されている」と呻きながら読了。
歴史の襞の中にある意味落ちてしまった、けれども魅力的な人物を探すアンテナに長けていたのでしょうか?加賀の前田家には多分殆ど資料の残っていない人物なのかもしれませんが・・・そういえば・・・と、記憶を辿って、先年NHK大河ドラマでした「利家とまつ」の中で三浦友和さんが演じた利久の養子が慶次郎でした。確か及川光博さんが演じた?
漫画の慶次郎と大分開きがありますが・・・そんなわけで、もなにも?大抵の人にはイメージの及ばない人物です。有名な武将は人それぞれにイメージがありますね。家康だったら誰が演じるとぴったり!みたいな?
でも慶次郎は誰が演じてもヘーこういう感じの人なんだ・・・みたいに受け入れやすいでしょ?それだけ埋もれていた人物が実に大きく大らかに血肉をぎっしり詰め込んで華々しく登場してきた感があります。
多分二度と薄れることは無いだろうと思われるくらい見事に印象的に!
古文書の海を探索するのはきっと物凄く面白いことなのでしょう?どんな宝が眠っているか・・・全然違うかもしれませんが塩野七生さんのローマ物も殆ど現地の古文書が種だと聞いたことがあります。
忠輝もそういえばそうでしたっけ・・・と思って、これがこの作家の素晴らしい魅力なんだと思います。全く史実に無い人物を勝手に造形したのではなく、ちゃんと資料の海を踏査して背骨を磨きあげてから時代の色の人物を肉付けして、想像力をありったけ動員しているからなお更読むと血沸き肉躍るのでしょうか。
こんな人物いたら私も惚れるんだろうな・・・だけどそれはきつい人生を選び取ることになるのだろうな・・・だけど本人は全く・・・そう、人の心を攫た上にさらりと自分の生き方だけを見つめて生きちゃうんだろうな・・・なんてね。骨にも捨て丸にも金悟洞にもなれるわけ無いんだから!本でお目にかかっただけで本当に良かった!と、胸をなでおろしています。で、ここに至っても、ケンシロウ風イメージが消えないので今のNHKの直江兼継続の線の細さが心配なんですよ。
「生きるまでいきたらば、死ぬるでもあらうかとおもふ」・・・かっこいいなぁ!

いっちばん

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いっちばん いっちばん
畠中 恵新潮社 2008-07
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 畠中恵著

「しゃばけ」シリーズ7。
久しぶりで「しゃばけ」を楽しめた。読んだ!という気がします。
兄やたちの心配度もパワーアップしていますし・・・でも、若旦那の病気も治りっぷりが良くなってきているような・・・?って、こっちも慣れすぎるくらい慣れちゃったのかも?若旦那のお母さん気分で?兄やたちに任せておけば大丈夫大安心。
さて、5話掲載。
「いっちばん」は若旦那に誰が一番喜ぶものを贈れるかという妖たちの競走に若旦那の推理も冴えるという賑やかさ。ただね妖が姿を現して・・・真似しても良いのかな?妖怪のできることと出来ないことの境目が私にもあやふやになってきちゃった。親分さんも首は安泰若旦那もニコニコと、結構な事で。
「いっぷく」は「妖を探しているものがいる」という噂が発端。長崎屋が近江商人に挑まれた品比べを通じてお店の売り上げが伸びたことと冥界での友に再会し彼ら兄弟と友だちになれたこと。若旦那も冬吉も妖たちも笹雪で美味しくお食事・・・これも結構!鶯谷の笹の雪じゃないのね?通町から程近い店らしいから。
「天狗の使い魔」は一番奇想天外?大天狗の六鬼坊の天狗柄がよろしくて、王子の狐を巻き込んで賑やかなお話に。管狐の黄唐と大天狗の間に友情という観念が生まれて・・・なんと好いお話。好きだな、結構。
「餡子は甘いか」若旦那の大事な親友三春屋の栄吉の冒険成長譚とでも?彼がもう一段お菓子屋への覚悟が固まりました。才より根気。能より努力。教訓がほんのり甘い餡子にくるまれて素直なお話に落ち着きました。結構!
「ひなのちよがみ」はお雛さんの千代紙絡みの商売力のお話。若旦那を置いてきぼりにお雛さんと正三郎の気持ちがしっかりと固まったようで。若旦那の商売勉強もそこそこ・・・兄やの「しくじりは何回してもいいんです。次に繋げていけばいい」確かにそういっていただくとほっとしますよ。それがこの物語に安定して吹いている暖かい風なんです。勿論実際の世の中では・・・なんていう必要は全然無いんです。お江戸の長崎屋さんに吹く風で私も安らげたんですから。というわけで今回は全部結構毛だらけ・・・この調子で・・・次作も期待。

三月の招待状

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三月の招待状 三月の招待状
角田光代集英社 2008-09-04
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 角田光代著

「角田光代さんってどんな小説を書くの?面白い?」と、先日知り合いに聞かれました。
「どんなってねぇ~私もまだ2冊くらいしか読んでいないから言えた立場じゃないけれど・・・そうねぇ、人の心の襞を丁寧に穿り出して、熨斗を掛けてみましたけど・・・どうでしょう?って聞かれている感じ?」
「面白いか?って聞かれると・・・う~ん、面白くはないかもって思う。」
でもね、何処かひきつける何かは確実にあるのです。好きじゃないけれど、覗いてみたくなる人の心?特に女性の心なら?私にはもう遠くなりかけているあの年頃の・・・苦闘という言葉が少し思われるあの頃の・・・そのときと同じ年頃を今生きている女の人たちの心の襞、しっかりとお平らに?繰り広げて延べてくれている感じ。実際心の窓から覗いている感じ?これが癖の元かな。でも、なんかいやらしい。だから好きじゃない。そんなところかな?
それで・・・だから・・・どうなの?傷?あったら嘗める?それとも同じに傷があるんだ・・・そうか同類か?なんだ、君もそうなのか・・・だから君が嫌いなんだ・・・乃至は君が好きなんだ?                                                 三月の同級生の離婚式から始まって、翌年の5月の結婚式までの一年余り、そろそろ学生時代の腐れ縁も伸びきって薄れかけても良さそうな?お仲間の有様、現況。
大学の時の友人仲間・・・十数年も立っていても、会えばあの頃に戻れる・・・そう得難い最後の仲間・・・それでも実際は足を引っぱれるし、相手の弱みは知り尽くしているし、そして時には助け合えもする、そして懐かしい殻の中の居心地はやっぱり悪くない。お互いがお互いにとって羨ましい存在であり、疎ましい存在であって、傷つけあう存在でもあるのに・・・でも許しあえる最後の仲間。それを丁寧に拾い上げて・・・ほら、やっぱりアイロンでしっかり伸ばして影を明るみに広げちゃって・・・で、だから何を考えろって言うの?ああそうですか?そうですよ!そういう時確かにあったかもなぁ・・・目を細める私であります。

医学のたまご

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医学のたまご (ミステリーYA!) 医学のたまご (ミステリーYA!)
ヨシタケシンスケ理論社 2008-01-17
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 海堂尊著

すっかり御馴染みになって、桜宮市の住人になって、しょっちゅう東城大の病院へ通っていて、先生たちの出入りにも、看護士さんにもすっかり顔馴染みになったおばちゃんのような気分がしています。
うちの市にはこんな子供たちが住んでいたの?え、天才君たちじゃないの!って、主人公の曽根崎薫君じゃぁありませんよ。高校生の佐々木君も含めて彼の友人の三田村君と美智子さんですよ。彼らが育ってくれれば桜宮の医療もそこそこ期待できるってものです。薫ちゃんも成長途上で期待値大ですけどね、勿論!なんて。
おかしなシチュエーションのおかしな子供たちですが・・・でも、子供は育っていくんだな、いいサジェスチョンがあれば、より立派に!って。
とにかくこのおかしな荒唐無稽系のお話の何が素晴らしいって、章題でしょうか。 彼は実践し続けているようですけれど・・・長続きしなかったことが今日の私を決定づけたのではないかとさえ思えるのですけれど・・・確かに昔本を読むと心を打たれた言葉とか、素晴らしい!と感歎した言葉を書き抜いてノート作っていましたっけ。あのノート結局どこへ消えたのだろう?「○○・・・とパパは言った」という彼の覚え書き。それが全部不思議な言葉だけど真理?「いえてる!」と頷ける箴言・・・でもって実にいい物語の進行役。そしてそれらが繋がって最後の「○○と僕は言った」と彼の成長に乾杯!
だけど手放しで面白かった!と、言えないのは私の方が子供だからかもしれない。「大人に成るのなんて厭だい!」と、言ってしまいたいほど桃蔵さんが惜しいから。必要な事を認められる大人にディア・カオル君は成ったんだね。いくらお父さんがフォローしようとも、彼(桃蔵さん)の将来を心配してしまうよ。彼は故郷に返してはいけないんだ、桜宮に大事な人材だよ・・・って思っているんだよ、患者の一人として。
しっかし、この作家、やっぱり恐るべし!なんだね。ステキ
まったくもう桜宮市図書館に登録しないと海堂先生の本は直ぐには読めないようですね。江東区の図書館さんも随分買い込んでくださっているとは思うのですけれど・・・

御伽草紙

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先日何かで「俵の藤太」を知っているかという話になりました。意外に私と同じ年配の人でも知らないのですね。家に帰ってきて「俵の藤太のムカデ退治知らないのよ。驚いた!」と言うと旦那が「家のご先祖様だって教えてやった?」「藤太を知らない人にそんな事を言ってもねぇ~」 藤原秀郷は旦那の家のご先祖様ということになっているのです。
それでふっと思いました。「この年でも知らないのだから今の子供たちはもっと知らないだろうなぁ~」それで今度いつかボランティアで小学校の朗読をするなら・・・どうせなら・・・「この話をしてみようかな?」
藤太をご先祖と仰ぐ家は物凄く多いはずですしね。特に関東地方には?ヒョットすると私は家の子供たちにもこの話はしていないかもしれません。これはしなくっちゃ!というわけで早速図書館に探しに行きました。そしてこの「御伽草紙」のなかに入っているのを見つけた!というわけです。
一種の英雄冒険譚です。単純なわりに?面白いですからね。
それで久しぶりにこのお伽草紙に目を通しましたが・・・懐かしい話も、知らない話も収録されていました。南北朝時代から江戸時代の始めごろまでに流布し書き残されたあまたの物語から16話載せられていました。中では「鉢かつぎ」「酒呑童子」「浦島太郎」「ものぐさ太郎」「俵藤太物語」はよく知った話でしたけれど、他は初めてでした。それにしても荒唐無稽な不思議な話が随分と聞き継ぎ読み継ぎして伝わってきたのだなぁ・・・と感心します。今の子供たちにはこういう摩訶不思議なお話を咀嚼する力があるのでしょうか?意外にこういう筋が面白くてちょとばかげてありえなくて・・・それぞれに悲しかったり笑えたり信じられなかったり、という短いお話は頭にしみこみやすいかもしれません。
私がかすかに覚えている昔の物語は何時覚えたのか定かではないのですけれど・・・こうしてまた本当に久しぶりに出会ってみると・・・子供だった時が妙に身近に感じられるのです。あらかたは父が寝る前に読み聞かせてくれたものだったのですけれど。

最後の恋 つまり、自分史上最高の恋

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最後の恋―つまり、自分史上最高の恋。 (新潮文庫) 最後の恋―つまり、自分史上最高の恋。 (新潮文庫)
阿川 佐和子新潮社 2008-11-27
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8人の作家によるテーマ確定の短編集。
どこで何がトチ狂ったんだか・・・我ながら、らしくない変な作品借りちゃったよーと、思いながら帰ってきたのだけれど・・・三浦しをんさんと乃南アサさんの名が表紙にドンとあったから。三浦さんはファンだと言っていいと思うし、乃南さんは1冊しか読んでいないけど好印象。角田さんはまだ?付くけれど実力は分かっている。あとは読んだことの無い作家ばかり。
だから作家の経歴を読みながら・・・一作ずつ読んでいったのだけど・・・意外なことに?みんな良かった。好き嫌いはあるけれどもちゃんと力が入った作品をあつめてあるということは分かった感じ。
「最後の恋」だなんて乙女チック?気恥ずかしい?題だけれど、やはり女にとっても男にとっても大事なのは・・・大事な人とその思い出?
こういう作品もありだよね!うん!と、皆肯定しました。それに谷村さん作以外は、どれもちゃんと明日がありました。
「春太の毎日」はこう来ましたね?というとおりに来ましたけれど、茶化してないのがいい。「最後の恋」というテーマに本職さんが照れて・・・なんてことはやっぱり無いのでしょうが・・・そんな感じに一人で受けていました。でも本当の愛情は自分が独り占めするものでなく、徹底的に相手の幸せを考えるところにあるんだなぁ・・・と、素直な私は頷いていました。
「ヒトリシズカ」は徹底的に泣かせる。そのために書いてるんじゃないか?と思いましたね。こういう涙と官能の世界どっぷりもたまにはいいけど・・・こういうときを潜って女は再生するのかなぁ・・・必要な潜伏期間なんだよ・・・と、付け加えてオーケーか?
「海辺食堂の姉妹」はお伽噺。類型的な人物像でありえないとは思えど、このほんわりした素直な感じは悪くない。幸せに暮らしましたとさ!ヨカッタァ・・・
「スケジュール」は文句無く好きだね。こういう人居る、って言うか私そうなりたい・・・ちゃんとその人物が彷彿とするし・・・それなのに・・・ニコニコ笑えちゃうのは・・・この静かなユーモアにある。
「LAST LOVE」は彼女とお友だちも、どちらも近くに居そうなお姉さん。そう、こういう人居るのよね。余計な鎧外して自分だけになったとき見えてくるものとか、身に添ってくるものとかが、見つかったりすることってあるし。なんて、先輩面しちゃったりして。良かったわね。
「わたしは鏡」 メインのインサートされた小説がチョット稚拙な感じ。それが初々しい感じを増幅させて、少女雑誌系?なんか教室で回っていたロマンチックストーリーの小説集を思い出した。でもこれって可愛い!
「キープ」はこういう女居たら、私嫌いだ。大体知り合いにもならないね、お互い様だって?大人を気取っちゃって・・・呪われてって思うけれど・・・こういう人にも素直になる時がそのタイミングがあるんだな・・・なんて、振り返ってみたら入り込んでいたな。「本当に最高の恋がやってきたんならいいね」とまぁ言ってあげたいし。
「おかえりなさい」は上手い小説だなぁ・・・構成も内容も人の心の機微を上手に浚って丁寧にほぐして・・・ミステリアスでもあり・・・男の人の根本的弱点を上手く利用しているなっていう作品。この短編集をぐっとしめた感じがする。恋とか愛とかっていっても日常に根ざしたものにはかなわない。リンド夫人が言ったではないですか。男の操縦法1、美味しい物をたっぷり食べさせる!
 

凸凹デイズ

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凸凹デイズ (文春文庫 や 42-1) 凸凹デイズ (文春文庫 や 42-1)
山本 幸久文藝春秋 2009-02
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山本幸久著

「カイシャデイズ」「ある日、アヒルバス」に告ぐ三作目。で、会社というのか業界と言うのか、それ物の一つです。この作家はこういうシリーズでいくのでしょうか?
働きたくないとか、生きがいの感じられる仕事場が無いとか・・・グニョグニョ言っている人たちがこれを読んだら、いや山本さんの作品群を読んだら・・・どんなに羨ましく感じるでしょうね?
って、言うより仕事や仕事場が好きになるってことの意味考えちゃいますね。
凪海さんを見ていると・・・結局元は全部自分なんだって、自分の姿勢と言うか‘気’なんだ!って思えますよね。
そんな精神論・・・って、普段は思っていても、素直にそこが、今が、素晴らしいものになるかどうかは・・・自分次第なんだって。給料が安かろうが、変人に取り巻かれていようが?そう、そうなんだ!って姿勢がどんどん肯定的に、積極的に、明るい方へ、高い方へ登っていく感じがします。
これがこの作者の作り出した「カイシャ」の素晴らしさです!
タカ・クマ・シノさんが好きになったように、デコさんが好きになったように、凪海さんも、大滝さんも、黒川さんも、磐井田さんも、醐宮さんも、その個性素晴らしいじゃないですか。
この個性的な人々を何気なく読んでしまえるということは・・・この世の中の人、大抵は「その個性ステキじゃないですか」って、言ってあげられるものなのかもしれないなんて思ったりして。失敗しても落ち込んでも、明日も行きたいと思える会社があって、働けることって、なんてステキなんでしょう。仕事を探している人皆に、したい仕事を選べる自由と権利をあげたいな。そしてこの年でも働けたら、働ける場所があったら、ほんとうにいいのにな・・・って思いながら本を閉じました。
「ココスペース」という会社、「アヒルバス」という会社、そしてもう一つ「凹組」大好き!最後の「ほろっ」まで、ホント、上出来!ワンダーランド!
 

ある日、アヒルバス ある日、アヒルバス
山本 幸久実業之日本社 2008-10-17
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カイシャデイズ カイシャデイズ
山本 幸久文藝春秋 2008-07
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