江戸市井図絵  時代小説の楽しみ(5)

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時代小説の楽しみ〈5〉江戸市井図絵 (新潮文庫) 時代小説の楽しみ〈5〉江戸市井図絵 (新潮文庫)
縄田 一男新潮社 1994-12
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18作18作家

「時代小説の楽しみ」全7巻の家の5。縄田一男編・新潮社。

「全7巻の中から、とりあえず市井もの主体の作品群を選んでみた。
縄田さんという人が何者かよく知らないが、時代物の本を探していると結構この人の編というアンソロジーに突き当たる。多分?時代小説専門の評論家か出版社の編集者か何かだろう?
読み終わって彼の解説を読んでみたが、ま、頷けるものもあり・・・そうでないものもあり。好きな本をいっぱい読んで編者になって解説を書いている仕事って妙に羨ましい?解説者とか批評家とかいうお仕事って嫉ましさ募って?反発も受ける仕事だろうけれど・・・これだけうまく品評できる人が作品を作り上げられないって不思議だ・・・と、常々思ってもいる。
スポーツの世界なんてもっとそれが著しいけどね。
「父と呼べ」「ちっちゃなかみさん」「こんち午の日」は既読。しかも好きな本ゆえに別格。殆ど掲載の作家の作品は何かしら読んでいるが、馴染みの無いのが伊藤桂一さんと小松重男さん。小松さんは何かのアンソロジーで「蚤とり侍」1篇を読んだ記憶があるくらい。
それぞれに面白く読んだけれど別格以外では、やはり柴田錬三郎さん、池波正太郎さん、北原亜以子さん、山手樹一郎さんの作品が巧いし面白い!私が好きだと思う作品は結局終りの口当りのいいものなんだ・・・単純なんだと思うけれど、こういう短い作品を読んでいちいち苦い思いを噛み締めたくは無い。特に時代物には娯楽を求める傾向がある。
さもなければしっとりとした時代感、人間関係がもたらす哀感の中の温かみを感じさせてもらえるもの・・・に傾く。
そういう意味ではこの作品群は皆かなりいい線で纏まっていると思ったけれど、「浅草小町・・・」には厭な後味が残った。全ての人が自分に正直に生きたらどうなるんだろう?一途とか必死とか夢中、盲目、若い時って生きるのが難しいのね。あおりを食う多くの人のことがないがしろにされているような気配を感じ取ったから・・・厭なのかな。
「母子かづら」もやはり心の通じ合いが無い小説で、読んでいて心がじっとり重くなった。こんな母も娘も、こんな生き方も読みたくは無かったよ・・・とぼやいてしまった。
同じく「江戸前にて」も哀しすぎて。
「代金百枚」は面白い味わいがあった。主人公も長屋の人々も医者もそれぞれの持ち味が面白く綯い交ぜになっていて、「蚤とり侍」より良かった。
江戸っ子の始まりから明治の初めまでに渡る江戸の庶民の生きようを描いた作品をまぁ・・・巧みに集めてあるなあ・・・と思いました。
いつか「江戸っ子由来」朗読してみるかなぁ・・・。

イノセント・ゲリラの祝祭

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イノセント・ゲリラの祝祭 イノセント・ゲリラの祝祭宝島社 2008-11-07
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海堂尊著
やっと、やってきました。・・・というわけで完全にこの人脈に絡め捕られてしまった私です。仕方ないやね? お馴染みの知人たちが右往左往しているのだもの。この作品は時系列のどこに填まるんだ?なんて思いながら・・・どうしたって気にならないわけにはいかない。
こんなに簡単に?世界を作り上げてしまっていいのだろうか?と、思いながらすっかりその世界の住人になってしまっている?気がつけばもう10冊も読んでいるってこと?そしていっぱしに医療と厚生労働省のあり方に疑問と不安を掻き立てられて、意見まで持ち始めているのですよ。いるのですよ。
今回は先回の「ジーン・ワルツ」のように小説を読んでいるぞ!って感じではなかったのですけれど、作家さんが言いたいことは箇条書きで並べられた以上に実によく理解できたと思いますよ。そう、このコミカルに造形されたおなじみの人々がどんな現実を見せてくれるのかと興味津々です。
形態的には「ジーン・ワルツ」のようなの好きですけれど・・・
とにかくしょっぱなの目次と登場人物の羅列には驚きました。
「えらいこっちゃ!最近脳軟化症!この膨大な登場人物たち、ちゃんと私の脳が捌ききれるかしら?交通整理が大変そう?」って、懸念・・・読み始めたら直ぐ吹っ飛びました。例によってこの作家の恐るべきところは登場人物の設定というか表現の実に巧みな?個性付け!
おかしな渾名、それぞれの表情の見事なレリーフ。一人一人が直ぐに頭の中に定着します。それに定着しなくてはならない人物は主に数人。それもあらかたは存じ上げていますし。麗々しく登場人物と書き連ねられていても、ほんのちょい役さんも。でもこれだけきっちり紹介されるということは・・・この厚生労働省がらみのAi導入問題の真の解決までにまだ数作上梓される可能性があるということでしょうか?
厚労省の会議は踊り続けるのでしょうか?(踊ってくれればこちいのもの?)
とりあえずエイアイ導入は既定の事実になったのですよね?
なにしろ白鳥さんが絡むとコッチの頭も混乱するので・・・。しかもあの鵺のような知識人の会議!世の諮問会議というのは本当にあんなものなのかも・・・背筋が凍ります?
それにしても解剖というものに絡む警察司法医学の混乱は全く私には異次元の問題のようですが・・・病理と絡んでくるとやっぱり妙な不安が生じてきます。なんにせよ問題が大きくて、単に医者不足を嘆いていれば済むっていう状況じゃないことは分かりますし。
なんだかこの作家の本を読むと妙に追いつめられて何かできることは無いかしら?と、頭の中が右往左往してついでに体の方までなんかガタガタしてしまいます。楽しくおかしく読んだのにね。
 

海軍主計大尉小泉信吉

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海軍主計大尉小泉信吉 (文春文庫) 海軍主計大尉小泉信吉 (文春文庫)文芸春秋 1975-01
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 小泉信三著

8月ですね。(ブログに乗せるのが遅くなりましたが)この時期、結構、戦争・原爆の本を朗読なさる人がいます。
先日も林家三平さんのお母様の戦争疎開の頃を書いた本を朗読した方がいまして、聴いていたらこの本を思い出しました。
初めて読んだのは何時だったのか?父の本棚にあったのを読んだのだから中学生?高校生の頃だったか?
あの頃もの凄く感動した記憶が、細部も朧になった今でもしっかり記憶に残っています。「火垂るの墓」とか絶対二度とお目にかかりたくない・・・辛すぎるのだもの・・・というのもありますが。もう一度読んでみようと思って図書館で探したら、意外なことにありませんでした。
小泉さんの全集の何処かに入っているのかもしれませんが、カウンターで相談したら他の区の図書館から借りてくださるそうで・・・新宿区の図書館から回ってきました。ありがたいことですね。
昔読んだ時は父と息子の心の交感とでも言いますか、思いの節度ある表現に物凄く感心したんだと思います。なんて、素晴らしい父親と息子なんだろう。そしてどうしたらこんなに素直にその思いを表せるんだろう・・・それは不思議なくらい素直な心に思えました。
親子の間に流れる交情愛情がなんとも奥ゆかしく美しく、生まれたからにはこんな親でありたい、こんな子でありたい・・・そう涙しながら読んだものだったと思います。
今読み返すと、その思いには変わりありませんが、あの世界、彼らの住んでいる世界と現実の多くの赤紙に取られた兵士たちとの境遇との差を思わずにはいられませんでした。
なんという優れた世界に育まれたなんという選良だったのか?という思いが心のすき間に萌していました。
満ち足りてこそ礼節は知られるのだと。当時より格段と豊かになった国にあってさえ礼節は失われていく一方だというのに。あの頃の小泉家の人々には普遍にあった知性と感性はどこに失われたのでしょう。ひょっとすると戦争で失った物はかの家において日常化していた日本の美わしき家庭生活、精神的豊かさだったのかもしれない・・・とも思えました。
戦争初期で亡くなった方はある意味恵まれてもいたんだなぁ・・・。 戦死にさえも幸不幸があるようなやりきれなさも感じられたようでした。

深川恋物語

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深川恋物語 (集英社文庫) 深川恋物語 (集英社文庫)集英社 2002-07
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宇江佐真理著
サークルでこの作品集の中から「下駄屋のおけい」を課題に取り上げようか・・・という提案があったので、この夏休みの間に一応目を通しておこうと思って借りてきた。以前、宇江佐さんの作品は長編1冊と何かの短編集の中で一編を読んでいる。そして長編は少し散漫な印象で今ひとつ面白く読めなかったが、短編は上手い!と思った記憶がある。
そして宇江佐さんの初の短編集を読むことになったのだが・・・面白かった!と、言っていいだろう。
どの作品もきりっとしてピリッとしてうまく纏まっていて情緒満点でお江戸を堪能させてもらった。科白がいい!男もイナセなら女もおきゃんだねぇ?そう、見事に深川が全体にみっしり流れていた。
短編六編、「下駄屋のおけい」「がたくり橋は渡らない」「凧、凧、揚がれ」「さびしい水音」「仙台堀」「狐拳」
それぞれに心に響く物語がある。恋は一人一人違って同じ物は無いのに、それでいて恋は皆似通っている。二人でお互いに同じに思い合っていても相手と自分ではその心の様はやはり同じではない。男からみて、女からみて・・・様相は微妙に違っている。
そういう恋を6編深川の情緒の中で展開させているのだが「凧、凧・・・」は様相が違っていてこの淡さは見事に淡く切なくいい世界を醸している。
ここに描かれている人々の息づかいは香しく優しく、下町というものに息づく大らかさを感じさせてくれる。
確かにおけいのおきゃんな一途さは気持ちのいいものだが・・・私はこの「凧・・・」が一番好きだな。「がたくり橋・・・」「さびしい水音」も。
この作家はこうだったろうな・・・と思える深川とそこに住んでいたろうな・・・と、思える人を描くのに長けている。そこが魅力だと思ったので、暫く短編集を中心にこの作家の物を読んでみようかなと思った。

眼中の悪魔

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眼中の悪魔 本格篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈1〉 (光文社文庫) 眼中の悪魔 本格篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈1〉 (光文社文庫)光文社 2001-03
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山田風太郎著

ただただ「黄色い下宿人」を読みたさに、その短編が入っている作品を探してきた。そしてその作品をまず最初に読んだ!
「あ、あ・・・これなら許せる!」不遜この上ないのですが・・・それでもそれが正直なところです。出会い方、合せ方、事件に入っていくホームズとワトソンと依頼人と。かなり丁寧に正典を踏襲しています。新たな翻訳が出たか?と言ってもいいくらいか?・・・マサカ!こうい小技?風太郎さんは手馴れています。
しかも終りがいい!漱石さんも胃痛を忘れられるひと時だったでしょう。実際?こんな出会いがあったなら、漱石さんの倫敦滞在はもっと幸せなものになっていたでしょうに・・・と、漱石さんのために惜しみます?
ところがです。この本の他の作品が問題でした。
正直読むのが辛かったと申せましょう。風太郎さんは作家初期にこの一連のミステリーを書いたそうです。寡聞にして風太郎さんにミステリーがある事を知りませんでした。私は時代物は読んでいません。明治物から読み始めたファンです。それでもその明治物での風太郎さんの女性の扱い方というかその描写その運命どうにも釈然としないというか、無残なものがあるのが気に入りません。
どんな美人が描かれていてもその不幸の影には妙に厭なものがあって、はっきり不快に思います。そしてそれと全く同じ物をこの初期の作品群から受けました。ってことは?風太郎さんの描く女性は彼の人生を通して結局変わらなかった?のでしょうか。
そんなわけでこの黄色い下宿人以外は二度と読むことは無いな・・・むしろ他の作品は読むべきじゃなかったな・・・と思いながら・・・それでも終りまで読むか?迷いながら・・・「司祭館の殺人」?なんかミス・マープルものみたいな題じゃない?と思いながら読み出したら・・・これが外人物。
舞台がヨーロッパ?「果樹園のセレナーデ」の無気味妖怪版?みたい・・・と、読んでいって最後に笑っちゃった。ルパン!ルパンなの!ルパンのパスティーシュ?風太郎さんの哄笑が・・・否、ニヤッが見えたようでしたが・・・。悪戯な人だったのね?なんてちょっと思いました。
でも総じて、他の作品は題から受けるイメージそのまま、気持ちのいいものではありませんで、ちょっと、否、かなり、無気味!それでも風太郎さんのミステリー10巻もあるんですよ。読むべきか、読まざるべきか?それが問題です。             
でも念のため「黄色い下宿人」は別格です。

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漱石と倫敦ミイラ殺人事件

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漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫) 漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫)光文社 2009-03-12
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漱石と倫敦(ロンドン)ミイラ殺人事件 (集英社文庫) 漱石と倫敦(ロンドン)ミイラ殺人事件 (集英社文庫)集英社 1987-10
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島田荘司著

世に言うホームズもののパスティーシュ。
私はその手の作品は読まないことにしていたから、この作品の知識も当然無かった。図書館でこの作品を見つけたときも読むべきか迷ったのだが、以前倫敦へ行った時、ホームズの足跡を辿ると漱石さんとかなり被さるのに気がついた。ベーカー街に並んで走る道を歩いていた時、漱石の通ったクレイグ先生の家も見つけたし、もう少し先へ行くとワトソンの開業したクイーン・アン街も大英博物館も意外に近い。漱石の最初の下宿もこの辺り。
しかも漱石が下宿を代えて行く先はホームズの事件の舞台とも重なっている。時も重なる。何より漱石の「倫敦塔」は好きだったしなぁ・・・。
おかしなことにその頃、風太郎さんの明治物を読んでいたので、風太郎さんならこの事を知ったら絶対漱石とホームズを作品の何処かで接近遭遇させるだろうな・・・と思ったのだ。
違う作家だったが、この作品を見つけたとき、「あ、やっぱり!このことに気が付く人って結構いるんだろうな?」と思った。って言うよりホームズが好きな人は大抵知っている?
なら、例外としてこの作品を読んでみようと思って借りてきた。
この作品のホームズを許せるか許せないか人によるだろうけれど、ホームズが奇人になるとき、まともに近く?なるとき、マイクロフトの扱い方・・・さて、これは問題だぞ!私は余り好きじゃないな・・・ぼやきながら読み進んだ。ワトソンの性格はかなり把握の仕方が私とあっているぞ!っていう気もするが。その優しさ、穏やかな知性、ホームズに対する忠誠。ま、遺憾なく描かれているのだけど。何せこのホームズじゃ・・・女装は止めてもらいたい、このふざけ方・・・ため息も出ようというもの。
それでも、事件そのものというよりその前哨となる漱石の悩まされた幽霊の事件の解決がとにかくいい!そう繋がるのか!この部分というかこの連結?が見事だから・・・お遊びだし・・・と、思うことにした。
この微妙な違和感がやっぱりパスティーシュはなぁ・・・もう一つ楽しみきれないよ。ホームズに対する愛着も人により様々だからこのジャンルは多分どんな言い作品を書いたとしても評価が高くなることは無いのじゃないかと思う。たとえどんな新しいトリックや見事な解決を編み出したとしても。
やっぱりこれだったらホームズを読み返すわ!っていう気分?
ところがとんでもないおまけがついていた!
巻尾の解説に「島田荘司は山田風太郎のホームズと漱石を描いた作品を知らなかっただろう・・・云々」というようなことが書かれていたのだ。
やっぱり!風太郎さん二人を出会わせていたんだ!
そんなわけで「これ」は「これ」より読まなくちゃいけないでしょう!と、早速図書館へ出向いた。それは山田風太郎作「黄色い下宿人」で、次回に!

空飛ぶタイヤ

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空飛ぶタイヤ 空飛ぶタイヤ実業之日本社 2006-09-15
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池井戸潤著

「貸して」と頼みもしないのに、友人が「絶対面白いから読んでみて」と押し付けました。
例によって自分で自分の首を絞める図書館借り本に追われている私は、この本の知識が全く無かったので正直「迷惑な!」と思って放ってありました。
でも彼女に会う日が近づいてきたので、止むを得ず・・・手に。
そしたら寝られなくなりました。久しぶりに夜明かし、徹夜で読み続けてしまった本です。
どうして途中で本を置くことが出来るでしょう?
赤松社長のぎりぎりの崖っぷちを思えば?ホープ自動車の人々のありようを読み進めば?財閥系会社の性格、財閥要の銀行がらみの融資、資金の引き上げ・・・その余りの汚さを目の前にして?加害会社とされた社長の家族、被害者の家族の苦衷を読みながら?
早く読み終われば、それだけ彼らが早く救われるような気がして・・・
冒頭直ぐ「あ、あの三菱のトレーラタイヤの脱輪事件!」と気がつきましたし。
私の人生でたった一度の対企業への苦情電話はまさにその三菱自動車に対してのものでしたから。あの時は見事に一閃!石の壁の前ではじき返されちゃいましたけど。苦情処理係のおじさんむちゃくちゃ手ごわかった・・・記憶です!アレだけのことにでも見事に潜り抜けられてしまった私には、かの会社の手強さが下世話的に?理解できましたもの。
コンプライアンスって号令のように一時物凄くよく聞きましたけれど、実際生活の中で余り必要が無くて深く意識していませんでした。この意識の無さが一番の問題でしたね。
最近TVや新聞などで「この型の商品のリコールのお知らせ」を良く見るようになって、会社が責任を認めるところまで持っていくためには、私たちの知らないところでどれだけの人のどれだけの苦闘が有ったことか?と考えるようになりました。
使い方が悪い、整備が不良という言葉に隠れた多くの真実の多分ほんの一部が現れてくれただけなんでしょうね?
使う方が立証しなければ、取ってもらえないような責任って、ねぇ?
赤松自動車があれだけきちんと整備記録をつけていなかったら・・・どれだけ疑いが濃くても、そもそもの始めのところでどうにもならなかったんでしょうから。しかしあの自動車会社本当に腐っていたのね?怖ろしい!
大きくなりすぎると滞って濁って腐るのね。
それでもあの裁判きちんと見届けていなかったことに今更気がつきました。この意識の無さも大問題!
それで・・・殺人・・・?有罪じゃなかったのね?ウソッ!

吉原御免状

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吉原御免状 (新潮文庫) 吉原御免状 (新潮文庫)新潮社 1989-09
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隆慶一郎著

「捨て童子・松平忠輝」「一夢庵風流記」「見知らぬ海へ」に次いで4作目になります。前三作で三人の男、漫画だったら?さしずめ「漢」の字をつかうのかしら?とにかく主人公の三人の男にすっかり魅せられてしまいました。
男の人を、具体的に性格の魅力を、見せ付けるのが上手い作家だと思います。この作品が小説の第一作目だそうですから、これから読むべきだったかも。
司馬遼太郎さんも初期の小説群は本当に男を魅力的に描くのに秀でた人でしたが、それと通じるものがあります。「梟の城」とか「尻啖え孫市」などの主人公に・・・
隆さんの作品の主人公は歴史上の人にしてもあまり今まで脚光を浴びていない人を取り上げているので自由に思う様伸び伸びと描けているのだろう・・・と、思っていました。その意味ではこの作品の主人公は到底歴史上の人物ではない、全くの創作の人だと思われるので、本当はもっと伸び伸びしても良さそうなのに、意外にそうなってはいないのです。
むしろ妙に有り得なさが際立ったような気がします。
といってその嘘臭さがこの松永誠一郎という人物をつまらないものにしていると言うわけではありません。やはり見事な男です。でもこの作品の場合、主人公の魅力は二の次になったようです。吉原の開町に関する家康との密約?その経緯と柳生との複雑な関係の方がより一層面白くて松永さんは割りを喰っている感も。この第一作でもう家康影武者説が柱になっているのですね。次は「影武者徳川家康」を読まねばなりませんね。
この作家の作品の中では女性に魅力があるのは私が読んだ中ではこの作品だけです。二人の花魁の哀しさが、哀しさに花があるというと変だけど、そんな感じで心に迫ってドラマチックが盛り上がります。
それでも圧倒的に男を描くのが上手い作家だなという気は残りますが。
女性をもっと描いてもらいたかったなぁ・・・。
見事な男が増えていきますが、一番心引かれる男はまだ向井正綱です!
 

喋々喃々

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喋々喃々 喋々喃々ポプラ社 2009-02-03
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 小川糸著

「食堂かたつむり」というのを予約しようと思って図書館検索をして見つけました。肝心の「食堂・・・」の方はまだ当分届かないようですが・・・
意外なめっけもの!でした。なんてったって舞台が谷中のアンティーク着物屋さん。この頃街を歩いている時にアンティーク着物とかリサイクル着物とかの店を見かけると、なかなか素通りできない私です。
しかも子供の頃の私の行動範囲と少し被る谷中から鶯谷・日暮里・湯島と、なじみの有る通りや店屋が・・・「ああ、あそこだな?土手の伊勢屋?」
「ああ、美味しいけど並ぶんだ、あそこ。そういえば暫く行っていないなぁ、けとばしや」
「お、三社祭の日に丁度父といったところよ、アンヂュラス」
みたいにちょこちょこ出てくるのですから・・・嬉しい!
それにしても息子と同い年ぐらいの作家さんの作品に郷愁を感じさせられるってのも・・・なんとなく照れますなぁ。
昔の記憶の中の下町よりもう少しテンポのユルーイ感じの人々が行きかい、柔らかな時間が流れているような気がしますが、イッセイさんが纏う雰囲気には昔の町内のおじさんの匂いが嗅げたような。
しかし、こういうステキな町に生きていても、人生は儘ならないものですなぁ?ため息!それでも栞さんの生き方には他のどこより谷中辺りは似合うなぁ・・・こういう若い人の店増えているしなぁ・・・
栞さんのお店は別として、中途半端におしゃれな?軽い!店が浅草には随分増えたなぁ・・・頭をかなり絞っても、「この店の前身はあ~~~なんだったかな?どんな店だったっけ?」と思い出せないくらい微妙に少しずついつの間にか変化しているんですね。変わらないと思っていた故郷も。
だからこんな本はステキな息抜き・・・とはいっても栞さん・・・不安です。「今」はいつだって大事です!けれどねぇ・・・

ジーン・ワルツ

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ジーン・ワルツ ジーン・ワルツ新潮社 2008-03
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  海堂尊著

こうなったら一蓮托生とでも言いますか?読まないわけには行きません。あの、あの人の、あの人が・・・みたいに芋ずる式です。
この主人公?・・・「あ、医学の卵の薫君のお母さん?だって、ゲーム理論の第一人者の伸一郎が夫なら・・・?」
清川先生?「『ひかりの剣』のあの清川君?へぇ~アレから20年後に飛んだんだ?偉くなっちゃって!
で、最終的にはこれは薫ちゃん誕生秘話だったのね?って処に落ち着くわけですが・・・これだもの海堂さんの本どうしたって続けて読まざるを得ません。嵌められた!って感じも無きにしも非ず?
でも、やっぱり面白いんです。そして、今までの作品の中では一番「あ、小説になっている!」という感じがしました。
読んでいて手ごたえがあったのです。
勿論今までも医学の、病院の、大学医学部の、様々な問題点を考えさせられてきましたけれど、今回の作品は私が女性であるためにより一層理解しやすいフィールドであったためも有りますが、実際危惧していろいろ考えていたことでも有ります。大抵友人と集まると、孫の話、娘が息子が結婚しない話(驚くほど多いのですが・・・)が親の介護の話に次いで話題に上がる率が多いのです。ごく当たり前の事を理恵先生はごく当たり前に言っているような気がするのに、そのどれもがなんだか言い難い世の中になっているような気がします。
若いうちに子供を産んだ方が・・・なんて簡単な科白も、働く女性に女性が言うわけに行かないでしょう・・・?だって、女性の足を女性が引っぱってどうするの?みたいな雰囲気感じますもの。医学がそれだけ進んでリスク回避もそれだけ可能になっている(と、思われる社会になって?)のに。とにかく10年後、税金納められる人ってどのくらいになっているのかな?社会基盤や道路や箱を維持するお金はあるのかな?だけど全ての事を棚に上げて、必死で考えるべき問題だよね。日本の人口問題。だけどもう埋めない私が言えることは「産んでもらった子は社会全体でなんとしても育てましょうよ!」
 

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