深川恋物語 (集英社文庫) 深川恋物語 (集英社文庫)集英社 2002-07
売り上げランキング : 171323
おすすめ平均 Amazonで詳しく見る
by G-Tools

fukagawakoiuta11.jpg

fukagawakoiuta2.jpg

宇江佐真理著
サークルでこの作品集の中から「下駄屋のおけい」を課題に取り上げようか・・・という提案があったので、この夏休みの間に一応目を通しておこうと思って借りてきた。以前、宇江佐さんの作品は長編1冊と何かの短編集の中で一編を読んでいる。そして長編は少し散漫な印象で今ひとつ面白く読めなかったが、短編は上手い!と思った記憶がある。
そして宇江佐さんの初の短編集を読むことになったのだが・・・面白かった!と、言っていいだろう。
どの作品もきりっとしてピリッとしてうまく纏まっていて情緒満点でお江戸を堪能させてもらった。科白がいい!男もイナセなら女もおきゃんだねぇ?そう、見事に深川が全体にみっしり流れていた。
短編六編、「下駄屋のおけい」「がたくり橋は渡らない」「凧、凧、揚がれ」「さびしい水音」「仙台堀」「狐拳」
それぞれに心に響く物語がある。恋は一人一人違って同じ物は無いのに、それでいて恋は皆似通っている。二人でお互いに同じに思い合っていても相手と自分ではその心の様はやはり同じではない。男からみて、女からみて・・・様相は微妙に違っている。
そういう恋を6編深川の情緒の中で展開させているのだが「凧、凧・・・」は様相が違っていてこの淡さは見事に淡く切なくいい世界を醸している。
ここに描かれている人々の息づかいは香しく優しく、下町というものに息づく大らかさを感じさせてくれる。
確かにおけいのおきゃんな一途さは気持ちのいいものだが・・・私はこの「凧・・・」が一番好きだな。「がたくり橋・・・」「さびしい水音」も。
この作家はこうだったろうな・・・と思える深川とそこに住んでいたろうな・・・と、思える人を描くのに長けている。そこが魅力だと思ったので、暫く短編集を中心にこの作家の物を読んでみようかなと思った。