眼中の悪魔 本格篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈1〉 (光文社文庫) 眼中の悪魔 本格篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈1〉 (光文社文庫)光文社 2001-03
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山田風太郎著

ただただ「黄色い下宿人」を読みたさに、その短編が入っている作品を探してきた。そしてその作品をまず最初に読んだ!
「あ、あ・・・これなら許せる!」不遜この上ないのですが・・・それでもそれが正直なところです。出会い方、合せ方、事件に入っていくホームズとワトソンと依頼人と。かなり丁寧に正典を踏襲しています。新たな翻訳が出たか?と言ってもいいくらいか?・・・マサカ!こうい小技?風太郎さんは手馴れています。
しかも終りがいい!漱石さんも胃痛を忘れられるひと時だったでしょう。実際?こんな出会いがあったなら、漱石さんの倫敦滞在はもっと幸せなものになっていたでしょうに・・・と、漱石さんのために惜しみます?
ところがです。この本の他の作品が問題でした。
正直読むのが辛かったと申せましょう。風太郎さんは作家初期にこの一連のミステリーを書いたそうです。寡聞にして風太郎さんにミステリーがある事を知りませんでした。私は時代物は読んでいません。明治物から読み始めたファンです。それでもその明治物での風太郎さんの女性の扱い方というかその描写その運命どうにも釈然としないというか、無残なものがあるのが気に入りません。
どんな美人が描かれていてもその不幸の影には妙に厭なものがあって、はっきり不快に思います。そしてそれと全く同じ物をこの初期の作品群から受けました。ってことは?風太郎さんの描く女性は彼の人生を通して結局変わらなかった?のでしょうか。
そんなわけでこの黄色い下宿人以外は二度と読むことは無いな・・・むしろ他の作品は読むべきじゃなかったな・・・と思いながら・・・それでも終りまで読むか?迷いながら・・・「司祭館の殺人」?なんかミス・マープルものみたいな題じゃない?と思いながら読み出したら・・・これが外人物。
舞台がヨーロッパ?「果樹園のセレナーデ」の無気味妖怪版?みたい・・・と、読んでいって最後に笑っちゃった。ルパン!ルパンなの!ルパンのパスティーシュ?風太郎さんの哄笑が・・・否、ニヤッが見えたようでしたが・・・。悪戯な人だったのね?なんてちょっと思いました。
でも総じて、他の作品は題から受けるイメージそのまま、気持ちのいいものではありませんで、ちょっと、否、かなり、無気味!それでも風太郎さんのミステリー10巻もあるんですよ。読むべきか、読まざるべきか?それが問題です。             
でも念のため「黄色い下宿人」は別格です。

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