ダイイング・アイ

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ダイイング・アイ ダイイング・アイ
東野 圭吾光文社 2007-11-20
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東野圭吾著

東野さんは今絶頂期の作家なんでしょうか。この本「出た!」即「予約登録」やっと手元に。でも今現在の段階でまだ560人も予約しています。「流星の絆」は800人待ちを記録しているようです。私は確かまだ「夜明けの街で」が200人待ち「黒笑小説」が20人ほどの待ちですか。こんなですから本当は「待ち」の無い彼の作品からどんどん読んでいけばいいと思うのですが・・・油の乗っているのは「今」かもしれない?東野さん、私はこれが5作目になります。
読む気になれば本当に作品はいっぱいあります。
「赤い指」も犯罪事件でしたが、家族の事件といった趣でした。
この作品は犯罪者の贖罪がテーマだと思いました。
最後まで引っぱるミステリーは読み応えありましたし、自動車事故と加害者の記憶喪失とが織り成す謎の解明は一寸オカルトなテイストも加味して一気に読ませる力がありました。
読後感もだから「赤い指」より気分は楽?で(親だからね)、一つずつ真実に近づいていく主人公の雨村慎介という男の執拗さと悪さ小利口さが魅力でもありました。全く悪い男がいい人より人をひきつけるのってなんででしょう?これも永遠の謎ですか。
それにしてもよっぽどいい男だったのでしょうか?どうしても解からないのは瑠璃子の復讐のあり方です。瑠璃子は江島に「あなただったのね、私を殺したのは・・・」と言うまで慎介だと思っていたのでしょう?それでは復讐のあり方が慎介の場合の複雑さと、江島とわかってからの直裁さの間にある物はなんでしょう?慎介には何を望んだのでしょう?(状況的に仕方なかったと、思ってみる?)この辺がわからないですねぇ、しかもこの部分がかなり引っぱる・・・作者のサービス精神?まさかね?猟奇性を狙ってみた?
一人の女性を轢き殺してしまった二つの車、その二人の運転者と二人の代理犯人・・・面白い設定でした。実際この手のすり替えは明るみに出た以上のものが実生活の中には隠れているのでしょうね。
とてもありえるリアルな設定です。そこに被さる被害者そっくりの女性の謎、その目の魔力・・・オカルトか?とその部分で一寸退くきましたけれど、変なところが随分あるようでしたけれども、読み終わってみたら・・・テーマに妙な納得感がありました。
多分大抵の読者がそう思うかもしれませんね。
やっぱり罪は直ぐその場で償いを始めなければ駄目なんだ!と言うことでしょうか。(犯人を)隠してやる、護ってやるということは却って傷を深くするという当たり前すぎる納得になって胸にしっかり降りてきました。交通事故死も殺された本人家族にとっては殺人にまぎれもありません。もし無念に死んでいく人がその間際に犯人にあの「ダイイング・アイ」を捩じ込めたら、「死刑論議」(それにしても最近やたらに精神鑑定が多すぎじゃありません?無罪になった人がまた事件を起こしたら鑑定を要求した弁護士はどんな責任を負えるのでしょう?)を省いて犯人を罰することが出来るのに・・・でもそば杖を喰らう危険もあるなぁ・・・実際精神を病まずにいられないような社会に私たちは住んでもいるし・・・交通事故は運が悪かったと言いたいような状況もあるし・・・と、まぁ色々様々な事を思っていました。作家の若い(私より10歳も!)才を感じさせられました。以前の作品を読んでいないのですが作家が多作だと・・・楽しみにしているくせに・・・一寸雑にならなければ・・・いいけどなぁ・・・って思ってしまいます。

流星の絆 流星の絆
東野 圭吾講談社 2008-03-05
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夜明けの街で 夜明けの街で
東野 圭吾角川書店 2007-07
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使命と魂のリミット 使命と魂のリミット
東野 圭吾新潮社 2006-12-06
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辰巳八景

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辰巳八景 辰巳八景
山本 一力新潮社 2005-04-21
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山本一力著

八景、八話、江戸情緒満点の深川を舞台のお話です。
深川近くの堀端に住んでいるから「読みたいでしょう!」とわざわざ知人が持ってきてくださった本です。作家さんも私と同じ区の堀端にすんでいらっしゃるらしいですね。
なるほど、私の地元の2・3百年以上前の情景満載!・・・って?うちはその頃海の中だわ。
風情・情緒は確かに江戸の気分満載で舞台も人々も時代をしっかり感じさせてくれます。でも、何かもう一つ物語りに乗れなかったのです。どの1話をとっても。気分良く情緒にポトンと浸れないんですね。言葉も情景描写も実にたくみにしっかり選ばれている感じ、時代考証もきっと確かなんだろうなぁ・・・という感じは濃厚に漂っているのに?
考えるに、むしろ時代考証をし過ぎて、それに囚われて話が年号でぶつ切りになるからかしら?何代目が何年に・・・とか言う記述で?でもその記述がなければ何十年、いや百年にもわたる一家の歩みは語れないだろうし・・・1話づつが本当は長編に仕立てるべき物を端折ってしまったからではないか?短編にするために?急ぐ余り何代目がどうして何代目がどう繋いで・・・という走り方をしたのが飲み込みにくい部分になってしまった?だから余りそういう部分に力を入れていない物語の方がまだおもしろく読めたのかもしれない。
一つの物語に書き込まれる商店の代々の変遷がこの物語一つ一つの眼目なのではあろうけれども、作家は江戸に何代も代を重ねた商家を縦線にそれに絡む江戸の庶民の哀歓をこそ描きたかったのだろう。
その縦線がある意味で物語の連綿性?を損なっているような気がして・・・だってその辺りが読みづらかったのだもの・・・と私はぼやいている。一つ一つのその屋の家業は面白かったのだけれども、共感しやすい庶民・町やの人々の物語を切ることになってしまったよう。
例えば一番読みやすくて好感を抱いた「石場の暮雪」はそういう商家の長話が無かったし、「やぐら下の夕照」もその点があっさりしていたせいか読みやすいと思い共感を感じられた。
さくらさんに好意を持った「木場の落雁」はさくらの成長話と商家の生き抜く智恵の両立が割合上手くいっているとは思うものの、やはり水に油が流れ込んでいる軽い違和感が読みにくさを読後に残した。ここまで描くならじっくりと長編乃至は中篇にまで育てても良いのではなかろうかと。
つまりこちらは短編として、読みやすい江戸情緒を単に求めていたのに対して作家には読者に江戸時代という時をきっちり意識させる時代物を書くぞという矜持がはっきりあったということかもしれない。私みたいに読みやすい作品、乗りやすい作品、溺れやすい作品を期待する読者は全くこの作家には迷惑な読者かもしれないなぁ?特にこの作品では。
周五郎さんや正太郎さん、周平さんとはまた違う丁寧さ・こだわり方がこの作家の持ち味なのかもしれない?この辺りが好き好きというところだろうか。
 

つくもがみ貸します

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つくもがみ貸します つくもがみ貸します
畠中 恵角川書店 2007-09
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畠中恵著

「しゃばけ」シリーズではありませんが、これも妖怪時代ファンタジー?の1冊です。
そしてやはり楽しい読み物ですと言っていいでしょうね。
「付喪神=器物の怪で、生まれし後、百年の時を経て精霊を得るものがいる。もはやただの“もの”ではなく、物の怪の名が付く妖だ。」
と本に書かれています。その付喪神が沢山住み込んで?いる損料屋出雲屋が舞台です。このなかなか一筋縄ではいかないが人の良い?付喪神が結構な働きをしてくれて、ま、一件落着となるまでがお楽しみです。
最初の序で付喪神の立場が明かされ、第1章で彼らが活躍して一つの事件が解決され、その章でまたこの物語を通しての中心となる一つの謎が提出されます。残りの章は順番に活躍する幽霊や道具の名が当てられているのですが、それが全部色の名だというのが妙ですね。謎の「蘇芳」は色の名であり、香炉の銘であり、探すお人の俳号でもあるのですが畠中さんは蘇芳色がお好きなのでしょうか?と、ふと思ったのは私の母が花蘇芳が好きだった事を思い出したからです。余談。
私はこの本を読み出した時、この1章目でてっきり付喪神が活躍する一種の探偵小説の短編集だと思いかけました。でも蘇芳で物語が繋がっていくのがわかって、じっくり腰を据えました。でも読み終わって何故かかえって少しがっかりしました。
短編で、彼ら付喪神の働きを小刻みに色々なバージョンに工夫して見せてもらえた方が面白かったんじゃないかな?という気がしました。一つ一つのお道具がそれぞれに活躍する探偵物?
蘇芳を追っていく道筋が妙にまだるっこく思えたからでしょうか。1章の勝三郎の事件を解決したスピードの方が捨てがたい。それは確かに手軽すぎるかとも思わないでもないけれど、付喪神の出し入れ(貸し出し回収の工夫も読みたい!)が、またその報告の面白さが、その方が生きたのではないかという気がするからです。この後の章で清次とお紅の気持ちが中途半端に分からない(読むほうは先刻承知!)のをずーっと引きずっていくのが妙にまだるっこしく思えてね。その分清次の動きが鈍くなりました。
「江戸っ子でしょ?しゃきっとしなさい!シャキット!」みたいな気分でいらだっちゃったのです。ちゃっちゃと動けばチャチャッと解決できるでしょうに?
付喪神がそれぞれ個性を持って描き分けられているのだから、こうもりの根付の野鉄みたいに飛べたりするものまでいるのだから、話もスピードアップできるんじゃないの?なんて。皆これもあれも、主人公の二人がきりりとしない所為ですよ。
何はともあれめでたしめでたしになったこの出雲屋の二人のためにも、すっかりやる気十分になっている付喪神さんたちの為にも、粋な威勢のいい、きりっとしたお話をと、楽しみに待っています。
 

月のころはさらなり

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月のころはさらなり 月のころはさらなり
井口 ひろみ新潮社 2008-01
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井口ひろみ著

こんな大事な本の感想を書けるなんてもうそれはそれは嬉しさでいっぱいです。私の親友のお嬢さんが書かれた本なんですよ。
「新潮エンターテインメント大賞受賞作」です。
友人から受賞の知らせが届いてから私まで舞い上がっていました。
こんな身近で?こんな快挙!ってありえませんもの、普通。
しかも授賞式の翌日にサイン入りの本を直接いただけましたし。
発売日の本屋さんの山積みの写真まで撮って!
帰ってきてから着物を着て(心ばかりの作家デヴュー作への敬意!)背筋を正して読ませていただきました。
題を聞いた時から古典に造形の深い友人のさすがにお嬢さんだなと思いました。
田舎の月の夜道の描写がとてもいいです。
私は東京生まれで真っ暗な夜空の夜(って言い方はおかしいんでしょうね?)なんて縁がありませんでした。結婚して夫の生家で、まさしくこの本にあるように、庭を突っ切ってお風呂屋や、やはり庭の隅にある便所(あれはトイレなんていうものではありません)で、悟の様に庵の始めての夜と同じ体験をしています。
その家ももう建て変わり、あの真っ暗な庭、萱の茂みのざわざわ騒ぐ横手を通り過ぎる恐怖、人気のない風呂屋の孤独な胸のざわめき等ももうすっかり忘れていました。
冬の月のない夜など、便所に行くのがいやでいやでぎりぎりまで我慢しすっかり重症の便秘になって帰ったことなど(笑)・・・今の子供たちには分からないことかもしれないなぁ・・・と、妙に郷愁に囚われていました。
が、夜が夜であったということはとても大事なことだったのかもしれません。夜には闇があり、月の白さがあり、夜と友達になるということ、つきと親しくなること、闇の息使いを聞くこと、などの中には人を人足らしめる情緒を発育させる何ものかがあるということを感じていました。
民話的なテイストを持ったミステリアスなファンタジーで物語の世界が完全に構築されているので、この世界の住人が不思議なのに違和感がなく素直にいいのです。この主人公3人のかもし出す空気感が柔らかさに満ちていること・・・。そしてその後ろに隠れている母の辛い世界への心遣いに伺われる主人公の心の成熟・・・。この庵での数日間がこの後に帰らなければならない世界への励ましになると信じられる明るさ・強さ・・・。
都会の子供たちがこの情緒を汲んでこの本を楽しんでくれるといいな・・・と思いながら読んでいました。都会の子供たちにこそと。
 

童謡詩人 金子みすゞ いのちとこころの宇宙

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童謡詩人 金子みすゞ―いのちとこころの宇宙 童謡詩人 金子みすゞ―いのちとこころの宇宙
矢崎 節夫JULA出版局 2005-01
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矢崎節夫 監修

友人が「良い本あるのよ、持ってきてあげたわ。」と言ってこの本を差し出した時、私は一寸引きました。
「わぁ、立派な本ね、でも読む本に追われているから何時読み終えてお返しできるか・・・長くなっちゃ悪いわ。」
「いいのよ、あげてもいいくらいなの、何度も読んだから、お宅に措いて好きなときに読んでくれれば良いから。返すの忘れてもいいわよ。」
そんなんでよければ、と言ってお借りしました。

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金子みすゞさんの詩、好きです!幾つも知っています。めぐり合うたびに好きだなぁ!と、思います。でもそれは今まで出会い頭の衝突!みたいな形で読んでいたからです。ここまで立派な本になって彼女の人生まで書き込まれていると・・・と、思うとちょっと憂鬱になったのは何ででしょう。彼女の短い人生を知っていたからかもしれません。彼女自身もただ作品だけに眼を向けて欲しいと思っているでしょうに?私の知っている彼女の詩はどれも掌に大事にそっと措いて優しくなでてあげたいようなものです。そして心の中でそっと リズムを刻んでつぶやけばいいものです。
この立派な本の中の、私の当然知らない詩たちは、ひょっとしてとっても見事な詩なのかもしれない?っていう気になったからかもしれません。彼女の人生を描いたドラマも舞台も見る気にはなれなかったのですから。
出会ったときにふっと優しい暖かさを感じたり、ハッと不思議なかわいらしい角度に首を傾げたり、見知らぬ心の目を見開かされたり・・・そんな驚きが欲しい詩人です。大上段に読ませていただくのは妙にそぐわない・・・?下手に紐解けば粉々に砕けそう。
2ヶ月もほっておいた後で気が引けて流石にお返ししなくては・・・と、読み始めてみれば、やっぱりそこにあったのは紛れも無くみすゞさんの詩でした。詩の通りの手跡と魂と。
時々何かの弾みで引き出しから飛び出してくるなにがしかのみすゞさんの残した小さな断片が、その時どきの私へのプレゼントみたいな歓び?
みすゞ全集の方でなくて良かったのかな?と全作品に一ぺんに出会わなくて済んでほっとしました。この人の詩は出会いの形が必要です。「あぁ、こんなところに落ちていた!」みたいな。最もそんなこといっていたら、めぐり合わないままになってしまうものも・・・ジレンマね。
96ページまでで、その先は遠慮しました。
「ひかりの粉」は降ってきたときあびるもの!

誰か

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誰か (文春文庫 み 17-6) 誰か (文春文庫 み 17-6)
宮部 みゆき
文藝春秋 2007-12-06
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宮部みゆき著
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またやっちゃった?

読み始めて「あれ?この人知ってる!」

「名もなき毒」の主人公ではありませんか?

慌てて発売年を確認したら「名もなき毒(2006年)」、「誰か(2003年)」でした。

また過去の作品にさかさまに読んでしまいました。

「海堂尊」さん作品なんて過去へ過去へと遡って読んでいますもの。

「誰か」で生み出した主人公とその周辺設定が作者のお気に召したのか、その作品の人気が高かったのか?主人公が再登場したのですね。

「名もなき毒」の最後に30代にしては妙に世慣れて落ち着き払った知性人格優れた主人公がこれからも事件を引き受けてもいいと受け取れる発言があって、私としては今後杉村三郎氏から目が離せないぞ!と思ったのでした。

でも、まさか?過去とは!うかつでした。こんなに好きな作家ならもっと情報に眼を開いておけよ!と厳に自分を戒めたところです。

でも宮部さん多作過ぎますよォ・・・

それはともかく初お目見えのこの作品では主人公さんは人柄の良さと手順の良さで印象的でした。作品の力そのものははるかに「名もなき毒」に及ばないという気がしたのはテーマと他の登場人物の複雑な丁寧な書き込みの差によるものかもしれません。「誰が」の姉妹の対比がちょっとお決まり過ぎていてその点で甘い感じがしてしまったのではないかと一寸残念。

もっとも作者はこの杉村氏の可能性に気が付いて?もっと重いテーマの作品で活躍させて見たいと思った?ということでしょうか。

宮部さんの社会を見て問題を抉り出す眼力はここでも冴えていて、多分ちょっとしたニュースに過ぎなかったと思われる「自転車事故に寄る殺人の増加」を舞台設定に上手に引き込んでいると感心しました。そういえばそのニュース私にも記憶にあって、しかも今現在それはますます増加中のようです。

都会の細い歩道の自転車は間違いなく凶器です。私もヒャッとすることが多いですし、見ていてあっ!ということもとても日常多いのです。それが物語の発端になっていることで素直に本に溶け込んでいけます。内容的にはよくある姉妹の相克ですし、名乗り出られない犯人の問題もごく平凡です。でもサスペンスフルな現代の日常が切り取られちょっとした額縁に入って楽しませてもらえたっていう感じでしょうか。勿論人が亡くなっているのですから・・・なんて付け加えるまでもなくサスペンスタッチのエンターテインメントとして読めてしまったのですけれど杉村氏誕生を祝福したいと思います。

これで社会に自転車のマナーについての再確認と自戒を促すことになればもっと素敵だな!と、思いました。

そういえば昔私が子供の頃、町内の路地を走り抜けていく自転車に

「田舎者が増えて、人の迷惑に気が付かん・・・困ったもんだ!」と縁台で近所のじいちゃんたちが話していましたっけ。今じゃ東京は田舎者しか居ませんよ。

杉村氏の三作目を、「名もなき毒」以上の濃密なサスペンスを、期待したいと思います。

探偵ガリレオ・予知夢

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探偵ガリレオ (文春文庫) 探偵ガリレオ (文春文庫)
東野 圭吾

文藝春秋 2002-02-10
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予知夢 (文春文庫) 予知夢 (文春文庫)
東野 圭吾

文藝春秋 2003-08
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東野圭吾著

福山君のファンクラブに入っている友人が「福山君ドラマに出るのよ!」と喜んでいた?から、私は「『容疑者Xの献身』は読んだのよ。面白かったよ!同じ湯川と言う先生が出ている本があると書いてあったので、読んでみたいと思ってね、「探偵ガリレオ」と「予知夢」を図書館に予約したらなんと何十人待ちになってたの。ドラマ化のニュースのせいかな?」
「その二冊なら私買って読み終わったわよ。今度持ってってあげる。」と言うわけで、まだ図書館からは順番は来ないのですが読むことが出来ました。ドラマで見ちゃう前に読み終えることが出来ました。ありがたい!
読み終わってこの二冊はとても楽しく読めたのですが、じっくり楽しめたと言う点ではやっぱり「容疑者」が一番面白かったなと思っています。
でもこれって今までにないような探偵小説ですよね。
科学的という点では現在では正しいかどうかと言う点では疑問が多いのですけれど、読ませてしまうと言う点でもホームズを思い出します。この本の場合はキーになる科学的根拠って全部正しいのでしょうね?最もだからといって実際にこんな殺人が犯せるとはとても思えないのですけれど・・・それでも読まされてしまいます。そこがスゴーイ!って。
そこがこの作家の資質で力量なんだなぁ・・・!と、素直にエンターテインメントの一つとして十分に楽しませてもらえ、好きな作家の一人となりました。かなり遅ればせなのかも。
ドラマより先に「容疑者」読んでおいて良かったなぁ・・・と、思っています。それで既に一応私なりの湯川先生像が出来ていましたから。福山さんはあの只者ではないハンサムさに私も友人ほどとはいえないまでもイカレテいますが、そこはそれ一線を引かせていただきました。
一線といえば作者がイメージしたのは他の俳優さんだったそうじゃないですか?どうせならそのイメージで映画化だと面白いのになぁ・・・
ありがたいことに?草薙刑事の役柄が女性に変わっているので、私なりの「ガリレオ物語」はちゃんと別に取って置きやすかったのです。それなのに聞くところによると薫さんが本の方にも登場するのですって?イヤだなぁ・・・混乱しちゃいそうじゃない?
純粋に本からのイメージの湯川さんを別に確保しておきたいのになぁ・・・だって本の中の湯川先生の変人振りと福山さんが作る変人振りとの間には深ぁーい川があるんだもの。「探偵ガリレオ」と「ガリレオ」と別の楽しみにしておきたかったのになぁ・・・それにしても東野先生、どのくらいこの科学的雑学的知識のストックが続くのかなぁ・・・それも楽しみ!それにこの章題もおもしろいですよね。このこじつけそのうちに底が尽きないかそれも心配だけれども・・・印象的で・・・そのうち流行るかも?沢山沢山、上手い殺人事件とその見事な解決を本の上で納得させてください。間違ってもホームズのように途中で死なせたりしないで下さい。書くの飽きないで下さい。せめて三毛猫ホームズ以上に続けてください!
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天平冥所図会

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天平冥所図会 天平冥所図会
山之口 洋

文芸春秋 2007-07
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山之口洋著

まほろ駅前を読んで大和は・・・なんて書いたせいか、続いて図書館から到着したのがこの本。まさにまほろば「奈良」の物語でした。
吉備真備、聖武天皇・光明子・その娘孝謙天皇、道鏡の時代を舞台にお役人さんと皇后に使える女儒を主人公にしたとてもおおらかな?味わいの小説でした。
神も怨霊も人も混在して住んでいた!この時代は!って感じ?
史実の中の実在の人物を想像の空間で自由自在に操った?物語。
主人公も一応知っている名前です。ほんのお役人の葛城の連さんも和気の広虫さんも、当然和気清麻呂さんも。
あの道鏡事件で宇佐に出向き、平安京造営で活躍し・・・と私が知っている清麻呂さんは強くごついイメージで(そうそう京都の蛤御門近くに住んでいた時は彼を祭ったお向かいの護王神社で年越しの甘酒を頂きましたっけ)したが、ここではおねえちゃんにこき使われる可愛い弟で・・・なんか楽しくなるような読み物でした。
山田風太郎さんの明治物で一葉さんら明治の文豪とニアミスするような楽しさに通じる感じですか。
歴史上の人物が妙に身近にリアリティさえも感じさせて、吉備真備さんが孝謙女帝を「あの娘」なんて言って案じるところなどなんとも・・・アットホーム?でいいなぁ。
神も神だから怨霊も怨霊で紙一重、死者も生者も紙一重。だから日本は和の国だったんだなんて妙にナットクしたりして。
上の方でどんなに権力争いをしていても、下で実地に事務を進める人たちがしっかり自分の分と倫理を踏みしめて仕事をきっちりしていれば世の中はちゃんと回っていくのに・・・と、今の社会保険庁ならびに政治家の皆さんの醜態を聞くに付けこの本の世界を思い出しそうです。
一体日本は何時からこんなに有能なはずのお役人が堕落したんだ?
「世界一有能な官僚社会だ。」って学校の先生は言っていたじゃないか!ホント「国は政治家が方針を決めるが居なくっても優秀な官僚が居るから大丈夫!」っておっしゃった社会の先生が居ましたっけ。
と、憤慨しておりますが。
きっとこの時代が終り、祭られることの無い怨霊が畏れられなくなった頃から官僚・役人はきっと堕落するだけだったのかもねぇ・・・?つまり葛城連戸主さんみたいなプロのお役人が居なくなって身過ぎ世過ぎだけのお役人さんになったってだけのことさ。その点今の学校の先生も聖職者なんて自負の無い只の三文役人になっただけのことさ!と、物語のおおらかさと反比例するように私の怒りのボルテージは上がったままなのでございます。
死んでも仕事の進捗が心配で幽霊になってでてきて手伝うこの坊やを煎んじて飲ます方法は無いもんでしょうか?
天神様!どうぞ天満宮になぞ納まりかえっていないで今の政治家にもバチを与えてくださりませ!
子供たちよ!お父様・お母様をちゃんと祭らないと怨霊になって祟るよ!
?紙一重で私神様の方に転げたりして?そんな可能性も万に一つ?
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月島慕情

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浅田次郎著

これも短編集でした。7編収録。
う~ん、これは、私の伝家の宝刀「好き嫌い」物差しを振りかざしても測るのが難しい作品群です。目盛りをふりきっちゃいます。
「月下の恋人」がこの作家の大作群からこぼれ落ちた澱のしずくだとすると、これは野放しにされた、手綱を離れたやる気じゃないかっていう気がしたのですけれど。手と情感が我が物顔で走ったのねという感じを受けました。浅田さんはこの方が手馴れています。
「インセクト」というのは私と同時代の学生さんの見覚えのある姿ですが、それでもやはり生理的に気持ち悪かったです。北海道にはゴキブリはいないから・・・って言ったって・・・。彼だって見たことなくても知識はあったでしょうから、それだけ孤独が浮かび上がって来て切ないのですけれど、それでもごめんなさいです。
あと「雪鰻」は既視感があります・・・え、どこで?えぇー「蒲生邸事件」宮部みゆきさんでしょうか?
表題の「月島慕情」は田舎から売られてきた少女が美貌と利口さとを武器に吉原で見事に生き抜いてきたその点に心打たれましたが、身請けする時次郎と言う男がどんなにいなせないい男と書かれたって月島の家庭を見せちゃった時点でこの話はぽちゃるでしょ?本当に男の中の男だったら女房子にあんな憂き目は見せないでしょうからね。トチ狂った粋がり男じゃないの。それでもねぇ、あんな苦界でこんなにいい女が出来るのかしらねぇ!ミノさんはいい女、女を上げたね!女の意地のが素敵じゃないか!と思うけれど、この作品は乗れません。最後のページやるでしょ?やりすぎでしょ?お願いそんなにやらないで・・・。
それ以外の作品は「やられているぞー!」と少々忌々しいながら涙と共に読み下しました。特に「めぐりあい」と「シューシャインボーイ」には負けました。別に珍しい個性的な作品ではないのです。こんな話よくありそうだよーと、思うのですがね、上手いです。
とまぁ涙を流して、心も潤ったようだぞと思いながらも一寸忌々しいんですね。素直に感動をありがとうといえる感性がもうしみしわに覆われちゃって固くなっているんでしょうね。いやむしろ、抑制を外した作者の力技が言わせないんだと思えるのですが?
「シューシャインボーイ」子供の頃父と銀座有楽町辺りに出かけると父もよく靴を磨いてもらっていました。私も塚田さんの奥さんのように「あ、水を使うんだ。」と驚き、それから父の靴を磨く時にはまねして2・3滴の水を使っていたものです。「あら、素人はしちゃいけなかったのか・・・」と、今頃知りました。ガード下の靴磨きのイメージをすぐに心に浮かべられる世代なのです。(そういえば今もちゃんと有楽町のガード下にはいらっしゃいますよ)
そしてこれも最後のページです。「菊治さんにこんな遺言書かさないでよ・・・」と滂沱の涙の私です。
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「天切り松闇がたり」 

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浅田次郎著

1巻「闇の花道」
2巻「残侠」

先日から泥棒と刑事と言う組み合わせほど面白いものは無いなぁ・・・なんて思いながら本を読んでいたせいか、ふぃっと頭に浮かんだのがこの本です。
「泥棒と言えば天切り松がいたじゃないの!」です。まだ読んでいませんよ。そうよ!小耳に挟んだ情報からも面白そうですよ・・・!
でもね、まだそんなに沢山読んでいるわけではないのに「又、浅田サンの本を読むのか?」って一寸思っちゃうのはなんででしょう?余りに上手すぎてツボを心得すぎた彼のワールドに思うようにはめられちゃう気がして一寸抵抗感があるのですよ。溺れさせられちゃいそうな危うさ・・・その手に乗るか?って無駄な抵抗!同じ溺れるのでも藤沢さんの世界だと抵抗を感じたことが無いのはなぜかなぁ?ここは一寸思案の要あり?でも、まぁちょっとそれは置いておいて、泥棒さん読んじゃいましょう、絶対面白いに決まっているもの!
で、読み始めて1巻第1夜目で、「こりゃ音読向きだわ!」
2巻、声を出して読みきりました。めちゃめちゃ面白かった!どうにもこうにも面白かった!
図書館ではそろそろ3巻目が私を待っているはずです。え~まだ届かないのか?
友人からのメールに思わず「かっちけねぇ!」と題して、「何のことよ?」と返されて・・・現代に立ち戻る“やばさ”です。
またしてもやられちゃっている私ですが、この作品に関しては構いません。むしろ「もっともっとドツボにハマってみたい!」感じです。
この松の世界。私の記憶の底にある世界。震災前の大戦前の見たことも無い町だけど聞き知り実際私の歩いていた道筋に蠢く過去の人々の様はもうそれだけで私の心の琴線にジャーン!町内の頭とか鳶の兄さんたちの佇まいを思い出しましたね。今でも祭の時に見かけるようですが、姿は同じでも果たして中身は?
私の認識では山形有朋なんて化け物の悪人、怪物です。でも第2夜で踏鞴を踏んじゃいました。山田風太郎さんの明治物でもあいつは褒められたモンじゃないですものね。彼は維新の悪印象を全部背負って立ってる感じでしょ?それが・・・ねぇ・・・この男を描く章で「にいさん方もたかだか銭金のためにヤマを踏むてえ根性なら、これを限りにきっぱりと足をお洗いなせえよ。曲げちゃならねえてめえの道てえのは、盗ッ人にせえ大臣にせえ、たとえ千金積まれたって売り買いのできるものじゃあねえ。もっともこれが悔いのねえてめえの道だなんて言い切れるやつァ・・・盗ッ人千人、大臣千人並べたって、そうそういるもんじゃあござんせんがねー」って〆に持っていくんですよ。
そしてこの安吉親分の一家のそんな道を行った兄さん姉さんの物語ですから・・・「侠」の字が生きて立ってきます。「小政」さんの章なんてどうです?声を出して読んでいる私は涙も笑いも声に乗せてです。
山田風太郎さんの明治物にも確か小政の話が・・・彼はやっぱり長生きしたんですねぇ?
天切り松の生い立ち、これに負けない情なんてありゃあしません。
「カチューシャ」唄えるのですもの・・・べそかきカチューシャになるじゃありませんか。参ったなぁ・・・と、思いながら急いでこれを書いて3巻取りに行きたい行きたい、というところなんですが。
3巻では彼の泥棒修行が読めるのかな?楽しみ楽しみ!!!
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