ナニワ・モンスター

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ナニワ・モンスター ナニワ・モンスター
海堂 尊新潮社 2011-04-21
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海堂尊著
海堂先生の作品が止まりません。 読み終わると(図書館からやっと届いたと思うと)次の作品が出ていて、また予約して数か月後、やっと読める。ということを繰り返していますが、「アリアドネの弾丸」の方が先なのに…TVドラマになったせいですか?待ち人が多くて、まだ来ないんです。 だから発売順に読みたいと思ってはいるのですが、前後したようです。 登場人物が縦横無尽に横溢しているので?この作家さんの作品は事件通りに読まないとまずいのに…とは思っています。
読み始めた時は舞台が浪速と離れたことからこれなら大丈夫と思ったのですが…。
やっぱり海堂さんで何だ結局はAi 問題に行きつくのか…と、呆れて、いえ、感心してしまいました。
先生の執着と熱意は本当にひしひし伝わってきます。 医者としての最終目的なんでしょうね。 そう彦根先生とダブっている?
でも、面白く読んでいても私には今一つAiセンターによる死因究明制度を土台にした予防医学の実現というビジョンまでは、ひいては医療立国という到達点まではなんとなくわかる気がするのだけれど、「医療による司法制御」あたりで「ウン?」とあいまいになって、Aiが司法に取り込まれることの恐れが分からない。 私の政治音痴によるものなのかもなぁ…と?
しかしそれをほっぽっておいてもこの作品は面白く読ませる。
特に1部のキャメルは少々型にはまっっている気配はあるけれども菊間家の在り様に好感が持てて(だってお隣にこんな先生が居たんだもの、子供の頃)、厚生省の封じ込め作戦の裏のミステリーが分り易く面白い。
喜国さんと毛利君のコンビも、第2部の検察三銃士も劇画的に過ぎるきらいはあっても作品の進行速度と足並みが小気味よく読める。
そして最後。 どう転んだってそりゃあの元知事、の市長さんでしょ? 危ないなぁ…わくわくしちゃう。 別に応援していないし、眉唾でいても、「ちょっと興味をそそられるよね、行く末」と、思っているんだから。
そんなわけでいつもながらの二つ名の登場人物に引きずり回されて、楽しみました。
お役人たちってやっぱそう見えるよね、みんなそう思っているんだ、で、その通りなんだって思いながら?

県庁おもてなし課

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県庁おもてなし課 県庁おもてなし課
有川 浩角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-03-29
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有川浩著

この作家さん、4作目。…にして、何でこんなにお年寄り、否、先達者親世代に優しいか…かつ特におじさんに優しいのか?分りました。 お父様を尊敬いや敬愛していらっしゃるということが根底にあったんですね。 人柄がいい作家さんなんだ!
そんなことが素直に伝わってくるんですね、そして同じくらいしっかり持っていらっしゃるユーモア感覚! 実に良い組み合わせです。 この作家さんでも毒を吐くことがあるのだろうか?なんだかそっちに興味がわきました。まだ4作でそんなこと言っちゃいけません!
これは得難くも心休まる作品です。 そして無駄にではなく前向きになれます。 具体的に進化の順序が提示されて…あらゆる進歩の余白のある人々への楽しい指針にもなり得ます。 うん、まさにそれですね。
キャラクターの立ち方が劇画世代を思わせますがついている色彩は明るく切れがよく鮮やかで温かい。だからほとんどすべての人の心に抵抗なく受け入れられすべての心に何かの光乃至熱を呼び起こすだろうな…そこまでいかなくてもぬくもりを?
すぐやる課とかこのおもてなし課とか…行政のちょっと前からよくやる手ですよね。初めてのすぐやる課の時のニュース覚えています。 すぐに興味が覚めたところを見るとそうすぐやったものでもなかったのかな? 実際の功罪を私は知りません。
今、観光課ってこうなの? なんて興味で読みましたが…そういえば浅草の雷門の箱もののニュースを昨年見ましたね。 今頃箱もの作っているようじゃ…と思ったものですが…そういえばあのニュースの行方見張っておくべきでした。 こういう区民がいるから行政は生ぬるくいられるっていうのが、これまた一つの事実なんでしょうけど。 反省点は多大に都民・県民・市民・区民の皆さんにあります。民間意識を高く掲げられると片腹の痛いこと痛いこと!
それも全部棚に上げちゃって、とても楽しい読み物でありました!
熱くなっていく人ってかわいい! カッコよくなりたい男ってイケてるかも!
阪急電車さんもだけれど、それにしても高知県さんはおいしかったろうな、この本。

銀の島

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銀の島 銀の島
山本兼一朝日新聞出版 2011-06-07
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山本兼一著

感想を一言で言ってしまうなら…スターリンやカダフィの銅像が引き倒されたのを見た時のような…(実際には見ていないんだけど)…偶像がどったーんと倒されたような…?「哀れな!」
実際にザビエルの像というものをプラハのカレル橋の上で見ている。 あの橋の上の沢山の聖人像のうち本物の聖人っていったい何体くらいあるのか…わからないけれど…それが人々に倒されたとして…倒された像の目が悲しそうな…そんな気がしてしまった。
大体私は本当は宣教師というものをあまり尊敬していない。 あれはある種の勇気はあるかもしれないけれど、強い意志もあるかも…でもあれは侵略のための先兵部隊だ!と思っているから。 だってスペインやポルトガルや…勿論英仏も…植民地政策の先頭にいたのは聖職者と呼ばれる人たちだったんだものね。それは事実だよ!と、思っている。 宣教師の(あったとして)信念には気の毒かもしれないけれど、結果的には…という事だ。
日本の奇跡は多くの隠れキリシタンを生みながらも…金も銀もあのころは産出量があったにもかかわらず…植民地にされなかった!ことだ…と、思っていたけれど。 日本人の知性はザビエルが期待した以上のものだったのかもしれない…と、別に悦に入ってはいないけれど…この本を読んで思ったりした。
ザビエルという人その人は本当にキリスト教を理解できる知性を求めてアジアで苦渋していたのかもしれない。そして…最初に出会った日本人の知性に光をみたのかもしれない。
けれど…「国の意志と力に結局は悲しい瞳で屈服したのか…」とアンジローは思ったかもなぁ…そしてそれは悲しかっただろうなぁ…と、妙にセンチになってこの本を読んでしまった。 感情移入完璧にしてしまっていたなぁ…と、振り返ってみれば思っている。
しかしこの作品はそれだけでは終わらない。
倭寇と合わせた物語は非常に気宇壮大で面白い冒険劇にもなっていて日本が落ちたかもしれない罠を背筋をぞくぞくさせて読むこともできた。 読んでいる間中、時代と冒険を巧みにより合わせた「素敵な史実もの」としてわくわくしながらも、なぜか背中に悲しみをしょってもいたなぁ…。それは理想と目標を持って遠く国を離れた男のストイックなロマンが潰える瞬間をこの物語が内包しえていたからかもしれない。 そして夢と期待と敬意を捨てきれなかったアンジロウの生涯をも柱にし得たからかもしれないなぁ。 骨のずしりとした作品だった!

刑事のまなざし

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薬丸 岳講談社 2011-07-01
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薬丸岳著
久しぶりの?薬丸さんでした。が、何か新鮮さに欠けると思ったら…東野さんの加賀さんを思い起こさせるタッチだったからかもしれません。そしてなおいうなら…加賀さんの方が作品により出来不出来はあるかもしれませんが…すぐれていると思います。
いい連作短編でした! それはそう思うのですが…読んでいて稚拙な感じも受けました。置かれている状況、夏目さんの人生の選択、人格…すべてがちょっと簡単にきれいすぎたかもしれません。 勿論、そういう人格の男を描きたかったのでしょうが…それがもう一つ納得を生む表現が足りない…なんかそういう食い足りなさでしょうか。
「オムライス」は嫌な話でした。 でもこの母親は自分のしたことに本当に気が付いたでしょうね…。
「黒い履歴」は悲しい兄弟の物語でした。この弟はきっとちゃんとおじさんをして生きていくでしょうね。でも…大変だろうなぁ…。
「ハートレス」は主人公が輪郭を見せてくれました…同じような境遇の男が踏ん張ってくれるかもしれない…希望もありました…。
「傷跡」は取り戻せない時間と向き合わされました。こんな沼に落とされた男をどうしてあげられるんでしょうね。傷跡の多い女の子より殺人をしてしまった男を救う手だてが…。
「プライド」は何とも…。
「休日」は男たちがかっこよくありませんか?なんだかドラマでちょくちょく見ているようなお手軽な設定で、いいけど…どうかなぁ…。
「刑事のまなざし」表題ですが…。いい話にしたくてこれは反対にひねくり回されてしまったという哀れさが行間から漂ってくるような…テーマを設定してそれを文字だけで考えたというか…そんな…小理屈をねじ込まれたような…素直に共感して罪と罰を考えるのを反対に遠ざけられたような…なんか挟まったような…。
そんなこんなで…もう少し熟成を必要としたんじゃないかなぁ…?夏目さんも、彼の周辺も。

つばさものがたり

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つばさものがたり つばさものがたり
雫井 脩介小学館 2010-07-29
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雫井脩介著
「犯人に告ぐ」「ビター・ブラッド」に次ぐこの作家の3冊目です。 「ビター・ブラッド」読んだ時に刑事ものがあったら読んでみようかな?と思ったのですが…その後刑事ものは出ているのかな? 「ビター・ブラッド」は題名に似ず少々甘い刑事ものでしたから…この作家は警察刑事ものに深入りしていかないのかもね_?と少々がっかりしていたのですが…あまり若い人の恋愛純愛夭折絶唱系には私余り興味惹かれないので…。  ところが先入観なしにこの作品を選んできました…ら…思いもかけず?いい小説でした。 って夢に向かってまっしぐら中の夭折って…最近ありがち過ぎるのがちょっと嫌なんですが…でも配した叶夢君の存在が新鮮でした。
これを受け入れる素地は最近できつつありますからね。
昔と違って様々な子供の個性?的な性向、障害に理解が進んでいます。
この親、家族の受け入れ方は一つの指針になるかもしれませんね。
この作品は小麦さんの壮絶な生きる意欲と優しさが主人公のようですが…私には道恵さんの成長譚としての部分が大きくクローズアップされて受け取れました。
夢を若い時に抱けた人はそれだけで幸せで、自分の人生の先端に立って突き進んでいけますよね。でも若い時から自分が何に向いているのかどんな能力があるのかわからないままただ何となく生きてきた人にとっては…自分の無為な人生にお手上げして…意欲を失って何とか生きていく…専業主婦なら家族のためにとか言いつくろって?…それが人生です。
義妹の壮絶な生き方に否応なく向き合わされて押し付けられたようでも…道恵さんは「人生を変えられた」ことを感謝して受け入れます。
だってこんなことがなかったらどうしても手のかかってしまう息子につきっきりで…悩み右往左往する人生だったかもしれないんですから…たぶんそうだったでしょうし、それは叶夢君にもいいことはなかったでしょうからね。   でもこの作品は出来過ぎです。 登場人物があまりにも皆善意の世界です。 だけどひょっとすると自分が一生懸命誠実に生き抜くなら根っこに優しさのある周りの人も感化されて良い所だけ出せるのかもしれませんね。
だから幸せすぎるよ…こんな途上の死でも…と思いながらつい涙ぐんだ結末でした。やっぱり、甘い、甘すぎる!

小暮荘物語

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木暮荘物語 木暮荘物語
三浦 しをん祥伝社 2010-10-29
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三浦しをん著

小暮荘が舞台だけど…みんながみんなここに住んでいるわけでもないし…この7つ主人公は7人の(と言っても人は重なり合っているわけで)お話の何が…柱かな?…と思って、柱はどうやらセックスだと思っているのだけれど…これって他の言葉でうまく言い換えられないかな?
物語そのもので作家はあっけらかんとというか当たり前にセックスのお話をセックスだと言っているわけで…なんで感想を書きつける私がバタバタしているんだか?…と、あほらしくなるような…自然さなのだけど。
「心身」の大家さんは泣かせるし…繭さんのシチュエーションも本人は大まじめだろうけれどコミカルだし。…「黒い飲み物」の佐伯さんもそれからつながる虹子さんも悲しくて、神崎君にも光子さんにも…こりゃー何とも言いようがない。
人間って死ぬまでセックスには右往左往させられるんだ…と、深い悲しみとも苦笑とも哄笑とも…やれやれ。 しかし実にハーモニーに満ち溢れている。人間ってこんなもんだよ?訳知り顔になりたがる私がいる。
それぞれの主人公がそれぞれに自分の人生にそこそこ苦闘していて…そこからユーモアもにじみ出てしまう。 このにじんでしまうというところにまたペーソスが生まれ…みたいに?連鎖が快い読み物になっているところがみそだ!
みたいに…どんどん書き連ねて行けそうな感想が…自分でも笑える。 つまり程よい読み物で三浦さんの軽やかな精神が柔らかくもちろんほどほどにシニカルで、でも許しているんだ気分もほどほどだ…。 デ、私も読みながらみんなそこそこ頑張って生きて行ってくださいとそこそこの応援エールを送れて…ちょびっと自分を振り返って…皮肉られているんじゃないか?と思ってみたり…。とまぁそこそこ忙しく読ませていただいた。
活字中毒の私だから新しい本をどんどん読んでいくうちに、どんどん読んだ本を忘れていく。どのくらい頭の中に持っていられるんだろうかなぁ。この小さな毒の部分…。

引かれ者でござい ・ 待ち伏せ街道 ー蓬莱屋帳外控ー

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引かれ者でござい―蓬莱屋帳外控 引かれ者でござい―蓬莱屋帳外控
志水 辰夫新潮社 2010-08
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待ち伏せ街道―蓬莱屋帳外控 待ち伏せ街道―蓬莱屋帳外控
志水 辰夫新潮社 2011-09
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志水辰夫著

「つばくろ越え」を読んでから…当然これはシリーズ化されると踏んで…待っていましたから「蓬莱屋帳外控」と銘打って出版された「引かれ者でござい」はすぐ読みましたし…「待ち伏せ街道」も広告を見てすぐ図書館に予約しました。
ロードムービーはどんな時でも興味深く楽しめますが、この長飛脚という設定は志水さんの文章を読むのに最高のめっけものの題材、シチュエーションだとこの2作を読んで思っています。
「引かれ者でござい」は「引かれ者でござい」「旅は道連れ」「観音街道」3編。
「待ち伏せ街道」は「なまくら道中」「峠ななたび」「山抜け女道」3編。
ただ、これらの作品群は終わりに行けばいくほどぐいぐいひきつけられてくるのですが…忍耐力を要求するという点でハードルがどんどん高くなっているような気がします。
かなり微細な地図が必要ですし、行程を一緒に歩く根気も要求されます。 しかも実に先が見えない。 本当に一行ずつ、一枚ずつ、章ごとにようやく一枚一枚道の、登場人物の姿の、霧が晴れていく…という感じでしょうか。 正直かなりもどかしさを感じつつ、それでも読みふけっていき…最後にやっぱりそうだったんだなぁ…と腑に落ちてほっとさせられ、この主人公たちを改めて好きだなぁ…と思わされるのです。
全くどうしてこんな横道に入っていくのかなぁ…それが分からないうちはじりじりじりじり頭を焼きますね。だからこそ最後が嬉しいのですか? そこでやっと私は笑っちゃいます。
男って!と。 この!が何とも好きですね。
男を見込んで仕事の裁量を任せる勝五郎も忠三郎も見事なら難しい仕事を見事なし終える飛脚陣も見事!一仕事の後引っかかった脇道をとことん追っていく飛脚たちも凄い。そしてまた彼らもその仕事を引き受ける自分自身の背景を背負っているところも読みどころ。かかわったものに人にきっちり結末をつけてみせる器量に脱帽して読了する。もう強靭でしぶとくてかっこいい!この完璧感!街道や山越えの詳細が又限りなく興味を惹き起こす!関わってくる村人通行人が面白い。
3冊読んだところでようやく重い腰を上げて蓬莱屋の手ごまの飛脚さんたちのプロフィール帳を作ろうかな?なんて思い始めました。 仙造さんが好きで彼の登場を待っているのですが…他にもどんどん地味(そう)でしたたかで頭のいい目覚ましい男が排出されてきそうで…こっちも頭も心も整理して迎え撃たなくては…という境地?ですよ。
暇になったら三冊また読み通そうって思っているのだけれど…今が暇じゃなければいつ暇が来るんだ?というのが私の痛い処。

鉄の骨

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鉄の骨 (講談社文庫) 鉄の骨 (講談社文庫)
池井戸 潤講談社 2011-11-15
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池井戸潤著

池井戸さん4作目。 友人に「ハヤブサ」を見た後に「下町ロケット」の話をしたら、彼女が「その人TVでやっていた鉄の骨を書いた人?」「え、TVドラマになったの?」「誰だっけな、旦那が面白いって見ていたみたいよ」「えー!」で…予約しました。 面白いんならね。
以前、山崎豊子さんの作品にはまっている友人に「何で読まないの?」と聞かれたときに「あまりに作品が膨大で泥沼に落ちるかもって思うし、企業小説あまり興味無いし…」なんて答えたことがありますが。 池井戸さんの作品は(読んだものだけだけど)企業もの?かもしれないけれど限りなくエンターテインメントに近いっていうか…読みやすいのです。 手放しで楽しいという作品でもないのだけれど…夢中で読ませる力はあるし、知らない世界を目の前にありありと描出してみせるリアリティもある…と私は思う。 知らない世界にリアルを感じる私が社会的に幼いと言ってしまえばそれまでだけど、その私に共感まで抱かせてしまうのだから。
でも、経済小説とか企業小説とかに手を出さなかった人の心にまで興味を掻き立てる筆力には脱帽する。勢いがあるのね。
「空飛ぶ…」なんかはとても面白い!と手放しにはならないまでも良かった!と結末に安堵し、溜飲も下がったし、共感満載でしたものね。 読者に描いた世界の主人公に共感を抱かせる分り易さと一種の正義感を抱かせる何かがありますよね…。 そうか義憤とか正義感とか弱者に対する応援とか…恥ずかしくって思い上がりのようで普段使わない感情が刺激されるのかもしれないな。 そう、たいてい誰かを応援して読んでいるような…。 平太と宮崎顧問の妙な縁はちょっと手軽過ぎじゃないかとは…引っかかってはいるけれど…まぁいっか!だし。読んだ本がだぶらないようにと書いていた読書録だけれど、このごろ感想がどんどん簡単になっていく傾向だ。大体読み終わって数日もするとなんて題だったっけ?からどんな本だったっけ…になる。 だからこそ読書録はつけなければならないのだけれど…それを書き付けることすら忘れてしまう。 先週何読んでいたっけ?こう思う自分に愕然とする。 だからだから忘れずに書こうよと自分に言い聞かせている。

かばん屋の相続

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かばん屋の相続 (文春文庫) かばん屋の相続 (文春文庫)
池井戸 潤文藝春秋 2011-04-08
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池井戸潤著

池井戸さん、2作読んで…ハマったかも。 すぐに借りられる本を探してきました。すっきり読めるという小説ではなかったけれど面白かった!
銀行と零細?企業との間の融資。 私には全く関係の無い分野であるにも関わらず、やっぱり企業と銀行の丁々発止は分らないことがほとんどではあっても…ここに描かれていたのはちゃんと時代と人!
だから面白く興味深く読めたのだと思う。知らない世界なのにリアリティを感じたのです。 融資…経済事情で力関係ががらりと変わるこの綱引き。 無理やり貸され、貸し渋られ、貸しはがされる。世の中の?景気の?波をもろにこうむる経済最前線?それとも縁の下? この作品が気持ちよく読めたのはその金の問題を介しても(又は金の問題を挟んでいるからこそ?)なおかつそこには人の心や頭脳や関係が浮き彫りになって来るところにあるのかなぁ。銀行や企業の倫理、理屈に捻じ曲げられることはあっても、屈することがあっても、だからこそそこで生きる人の命がきらめく?…ってところまで描かれていたようで…小さな細い平均台の綱渡りを命を削って渡っていく時の人のきらめき…。日本はどんどん生きにくく、人情はどんどん枯渇していくような気分も、ともに味わってもいたのだけれど…生き抜いていく人も確実にいるんだ!みたいな。 情と頭を両輪に生き抜いていけるといいね。短編の中に緊迫感があふれていて…ぐいぐい読み進んでしまいました。特にかばん屋は京都の帆布鞄の店を思い浮かべながら読みました。(帆布って意外に高くて、買う気になかなかならないんだけど…柄や色やデザインがどんどん良くなっていくような…)「芥のごとく」は切なくてきつかったな。

カッコウの卵は誰のもの

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カッコウの卵は誰のもの カッコウの卵は誰のもの
東野 圭吾光文社 2010-01-20
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東野圭吾著

膨大な?作品群の中のまだほんのわずかしか読んでいない…と言ってもいいのでしょうが、私の読んだ東野作品の中では「夜明けの街で」と「パラドック13」とに続いて…えー思ったよりつまらなかったなぁ…でした。
遺伝ねぇ…これもパラドックスと同じようにアイデアはあるんだね!って感じはしましたから…作品としてやっつけの感じがどうしてもしてしまう残念さがあります。
じっくり練り上げる時間が不足しているんでしょうか?
中途半端な詰め込み過ぎが原因かとも思いますが…たぶん登場人物の誰一人魅力的ではありませんでした…というところに尽きるかも。 これは本を読むとき痛いです。
読む私の目線が定まらないし、共感も生まれませんし、結果満足もできません。
父親の気持ちだけ暴走しますが…娘は、存在が希薄です。
遺伝を追いかける姿勢に肝心な人を見る目線に根本的な優しさがありません。作品はパッパッパと進みますが、何もかもが中途で描き切れていないもどかしさがあります。
続いて父から回ってきた「白銀ジャック」に期待しましょう。 と言っても題名がなんだか今一何で。

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