銀の島 銀の島
山本兼一朝日新聞出版 2011-06-07
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山本兼一著

感想を一言で言ってしまうなら…スターリンやカダフィの銅像が引き倒されたのを見た時のような…(実際には見ていないんだけど)…偶像がどったーんと倒されたような…?「哀れな!」
実際にザビエルの像というものをプラハのカレル橋の上で見ている。 あの橋の上の沢山の聖人像のうち本物の聖人っていったい何体くらいあるのか…わからないけれど…それが人々に倒されたとして…倒された像の目が悲しそうな…そんな気がしてしまった。
大体私は本当は宣教師というものをあまり尊敬していない。 あれはある種の勇気はあるかもしれないけれど、強い意志もあるかも…でもあれは侵略のための先兵部隊だ!と思っているから。 だってスペインやポルトガルや…勿論英仏も…植民地政策の先頭にいたのは聖職者と呼ばれる人たちだったんだものね。それは事実だよ!と、思っている。 宣教師の(あったとして)信念には気の毒かもしれないけれど、結果的には…という事だ。
日本の奇跡は多くの隠れキリシタンを生みながらも…金も銀もあのころは産出量があったにもかかわらず…植民地にされなかった!ことだ…と、思っていたけれど。 日本人の知性はザビエルが期待した以上のものだったのかもしれない…と、別に悦に入ってはいないけれど…この本を読んで思ったりした。
ザビエルという人その人は本当にキリスト教を理解できる知性を求めてアジアで苦渋していたのかもしれない。そして…最初に出会った日本人の知性に光をみたのかもしれない。
けれど…「国の意志と力に結局は悲しい瞳で屈服したのか…」とアンジローは思ったかもなぁ…そしてそれは悲しかっただろうなぁ…と、妙にセンチになってこの本を読んでしまった。 感情移入完璧にしてしまっていたなぁ…と、振り返ってみれば思っている。
しかしこの作品はそれだけでは終わらない。
倭寇と合わせた物語は非常に気宇壮大で面白い冒険劇にもなっていて日本が落ちたかもしれない罠を背筋をぞくぞくさせて読むこともできた。 読んでいる間中、時代と冒険を巧みにより合わせた「素敵な史実もの」としてわくわくしながらも、なぜか背中に悲しみをしょってもいたなぁ…。それは理想と目標を持って遠く国を離れた男のストイックなロマンが潰える瞬間をこの物語が内包しえていたからかもしれない。 そして夢と期待と敬意を捨てきれなかったアンジロウの生涯をも柱にし得たからかもしれないなぁ。 骨のずしりとした作品だった!