つばさものがたり つばさものがたり
雫井 脩介小学館 2010-07-29
売り上げランキング : 217858

Amazonで詳しく見る

by G-Tools

雫井脩介著
「犯人に告ぐ」「ビター・ブラッド」に次ぐこの作家の3冊目です。 「ビター・ブラッド」読んだ時に刑事ものがあったら読んでみようかな?と思ったのですが…その後刑事ものは出ているのかな? 「ビター・ブラッド」は題名に似ず少々甘い刑事ものでしたから…この作家は警察刑事ものに深入りしていかないのかもね_?と少々がっかりしていたのですが…あまり若い人の恋愛純愛夭折絶唱系には私余り興味惹かれないので…。  ところが先入観なしにこの作品を選んできました…ら…思いもかけず?いい小説でした。 って夢に向かってまっしぐら中の夭折って…最近ありがち過ぎるのがちょっと嫌なんですが…でも配した叶夢君の存在が新鮮でした。
これを受け入れる素地は最近できつつありますからね。
昔と違って様々な子供の個性?的な性向、障害に理解が進んでいます。
この親、家族の受け入れ方は一つの指針になるかもしれませんね。
この作品は小麦さんの壮絶な生きる意欲と優しさが主人公のようですが…私には道恵さんの成長譚としての部分が大きくクローズアップされて受け取れました。
夢を若い時に抱けた人はそれだけで幸せで、自分の人生の先端に立って突き進んでいけますよね。でも若い時から自分が何に向いているのかどんな能力があるのかわからないままただ何となく生きてきた人にとっては…自分の無為な人生にお手上げして…意欲を失って何とか生きていく…専業主婦なら家族のためにとか言いつくろって?…それが人生です。
義妹の壮絶な生き方に否応なく向き合わされて押し付けられたようでも…道恵さんは「人生を変えられた」ことを感謝して受け入れます。
だってこんなことがなかったらどうしても手のかかってしまう息子につきっきりで…悩み右往左往する人生だったかもしれないんですから…たぶんそうだったでしょうし、それは叶夢君にもいいことはなかったでしょうからね。   でもこの作品は出来過ぎです。 登場人物があまりにも皆善意の世界です。 だけどひょっとすると自分が一生懸命誠実に生き抜くなら根っこに優しさのある周りの人も感化されて良い所だけ出せるのかもしれませんね。
だから幸せすぎるよ…こんな途上の死でも…と思いながらつい涙ぐんだ結末でした。やっぱり、甘い、甘すぎる!