かばん屋の相続 (文春文庫) かばん屋の相続 (文春文庫)
池井戸 潤文藝春秋 2011-04-08
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池井戸潤著

池井戸さん、2作読んで…ハマったかも。 すぐに借りられる本を探してきました。すっきり読めるという小説ではなかったけれど面白かった!
銀行と零細?企業との間の融資。 私には全く関係の無い分野であるにも関わらず、やっぱり企業と銀行の丁々発止は分らないことがほとんどではあっても…ここに描かれていたのはちゃんと時代と人!
だから面白く興味深く読めたのだと思う。知らない世界なのにリアリティを感じたのです。 融資…経済事情で力関係ががらりと変わるこの綱引き。 無理やり貸され、貸し渋られ、貸しはがされる。世の中の?景気の?波をもろにこうむる経済最前線?それとも縁の下? この作品が気持ちよく読めたのはその金の問題を介しても(又は金の問題を挟んでいるからこそ?)なおかつそこには人の心や頭脳や関係が浮き彫りになって来るところにあるのかなぁ。銀行や企業の倫理、理屈に捻じ曲げられることはあっても、屈することがあっても、だからこそそこで生きる人の命がきらめく?…ってところまで描かれていたようで…小さな細い平均台の綱渡りを命を削って渡っていく時の人のきらめき…。日本はどんどん生きにくく、人情はどんどん枯渇していくような気分も、ともに味わってもいたのだけれど…生き抜いていく人も確実にいるんだ!みたいな。 情と頭を両輪に生き抜いていけるといいね。短編の中に緊迫感があふれていて…ぐいぐい読み進んでしまいました。特にかばん屋は京都の帆布鞄の店を思い浮かべながら読みました。(帆布って意外に高くて、買う気になかなかならないんだけど…柄や色やデザインがどんどん良くなっていくような…)「芥のごとく」は切なくてきつかったな。