天国までの100マイル

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浅田次郎著

短編集「鉄道員」を読んだので何か長編をと思って本棚を見ていたら、浅田さんの沢山ある中のこの本が目に留まった。
多分TVドラマ化されたのではないだろうか?
名前に記憶がある。が、内容は覚えていない。
取り上げてぱらっとめくったら、懐かしい「ファイヴ・ハンドレッド・マイル」の歌詞が。
「私の時代だ!」と、とっさに思ったのだけれど、何が私の時代なのだろうね?
今、現在だって私の時代には違いなかろうに。
人は青春を過ごした時代こそが自分の時代だと思えるのだろうか?
そうしたら「心のありようで人生いつでもが青春!」などとほざく輩の自分の時代って随分長いことになる・・・けど?なんて屁理屈を心の中で繰り広げながら・・・それでもヤッパリ今青春時代真っ只中にいる人は今が「自分の時代だ!」なんて意識していないだろうからなぁ・・・なんて・・・ただのぐだぐだね。
それでも縁のものだからこれを読むことにする。
読んでいるうちに「あぁ、このお母ちゃん、八千草薫さんだったんじゃないかしら?西田敏行さんが出ていたような・・・このしょうもない三男坊を演じたのか、あの神の手の医者の方を演じたのか?う~ん、思い出せないけれど・・・」
読み終わったら、丁度横山秀夫さんの本の事を書いた後だったから、「いやぁこの二人の作家から受ける印象は正反対だ!」と思ったのだが、浅田さんだって全部が全部こんなに汚い地上からホンワリ足が離れたような優しい小説ばかり書いているわけでもなかろうと思いなおした。
読んだのはまだたった2冊なんだものね。

人生の極限、死を目前にした母と、人生の崖っぷちに立ってしまった息子が織り成すには「なんと優しい結末が用意されたことだろう!」と思うと救われる。
「一生懸命の思いって一生懸命思えばいいんじゃないかなぁ!」なんておかしな科白だが素直にそう思えてしまった。
私も何かに追い詰められた時はこのお話を(そうお話なんです)思い出して「一生懸命になりたい方へ向かって一生懸命になればいいんだね?」と、自分に念を押してみたり。
前向きな気分が押し出されてくるようだ。
それにこのお話ヤッパリ「私の時代」の色を帯びていたから、妙に嬉しい感じもした。
そういえば、バブルの絶頂期には珍しい話でもなかったけれど、ご主人に天国を見させてもらって破産してその後離婚なさった知人がいた事を思い出した。
今頃この主人公の安男さんもきっといい味わいの男になっていそうだから、彼女たちもそうなっているかもしれないなぁ・・・かえって大きな波に洗われる事も無かった私など、味わいはないんだろうなぁ・・・何ていう感慨も。
「母にならなければ一人前の女じゃない。」なんて、男の目線のせりふだと思っているけれど、ここにいる母は戦後を潜り抜けた紛れも無い母で、普遍的な母の造形だとも思う。
男が理想化した母であり、洗脳された母性の匂いもあるけれど、その一方で私の母の世代の典型的な母だと懐かしくも思う。
それにしても戦争を潜り抜けた人とか、女手一つで子どもを育て上げた人は強い!
でも強くならなかった人が結局は幸せなのかも知れないなぁ。
この母もマリも男の子守唄だ、「お伽の子守唄」だわ。

願わくば、すべての病院に神の手を!すべての医者に神の心を!
あ、神の心は怖いかな?
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シラノ・ド・ベルジュラック

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 エドモン・ロスタン著

父が「緒方拳がシラノやるそうだ、まだ先だが忘れずにチケット取ってくれないか。」と電話してきた。
「あら白野弁十郎?やるの?」
父の中での島田正吾との師弟対決らしい。
緒方拳とシラノが私の中ではどうも結びつかない。
醜い鼻でもシラノは人格の気品が大きくて、なんとなく大きなふっくらとした老成した人を思い浮かばせる。
本当はそんな年じゃなかったはずだが、島田さんのせいかな?
「白野弁十郎」は「シラノ・ド・ベルジュラック」の翻案物で、私は島田正吾さんの「白野弁十郎」を見ていない。
ただ覚えている島田さんの容貌が「シラノに填まっている!」という気がするのも確かだ
久しぶりに聞く「シラノ・ド・ベルジュラック」に懐かしさがこみ上げた。

随分昔に読んだ本だ。
父の愛読書で父の本棚にあったものを読んだ。
「乙女チック」という言葉が浮かび上がる。もう死語かな?
作家の名前もロクサーヌの名前も直ぐ思い出したが、あの若者の名が思い出せない。
頭をぽんぽん叩いているうちに転がり出たのが「これはこのガスコンの軽騎兵(騎兵隊だったけ?)・・・」という科白。
ガスコンといえばダルタニャンと頭の中は八つ当たり?する。
う~ん~と考え込むこと暫し「クリスチャンだ!確かそうだ。」
超男前のクリスチャンの為に恋文を書いてあげ、口移しに教え込んだ恋の科白を囁かせ自分の恋をひた隠しに隠し通したシラノ。
そのシラノが愛し続けたロクサーヌの膝の上であの手紙を囁きながら死んでいく場面で、子どもながらも「ロマンチックさに震えた!」んだってことも思い出した?
夕暮れの暗闇迫る中で見えない手紙を読み上げるシラノにロクサーヌが真実に気が付くところ。
え?そうだったっけか?
死んだのだっけ?
「雲の上団五郎一座」のせいで、笑いすぎてどうもあやふやになってしまったらしい・・・罪だ!ん?団十郎だったっけか?
これももうあやふやだ。

シラノに容貌の点で引けを取らない私が慰められもした戯曲だ。
でもやはり恋では負けがこみそうだと察しが付いたのもこの本のせいだ!
きっと図書館にこの本は眠っていることだろうから、これを書いたら図書館にアクセスして予約しようっと。
そして久しぶりに乙女チックなうるおいのある心を取り戻そう!っと。
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ルパンの消息

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横山秀夫著

この本に惹かれたのは勿論!「ルパン」のせいです。
私はルパンの為にパリへ行ったくらい(と言いたいくらい)ルパンが好きです。
「ルパン3世ではなくモーリス・ルブラン様のルパン様!です。」と念を押させていただきます。
でも勿論この作品はルパン様とは関係ありません。
でも、この作家が何でルパンの名を掲げたか読んでみたかったのです。
ま、それに関しては拍子抜けでした。
「ルパン」という名の喫茶店で話し合われた試験用紙かっぱらい作戦(泥棒)っていうことだけでしたもの。
ルパンもどきに盗みを行った高校生たちの消息とでも、喫茶「ルパン」の消息とでも。
でもこの作品、面白く読みました・・・う~ん・・・と言ってもいいのでしょうか。
凄い作家だなぁと読み終わった後私は思いました。
後記を読んでこれがこの作家の処女作だと知ってなお更です。
最も書かれてから15年後の改稿刊行だそうですが。

この作品を今日取り上げて書こうと思ったのは、この作品も「3億円強奪事件」を絡めているからです。
先日「初恋」を見た時「3億円」物かぁ!と思った途端、この作品を思い出したのです。
この作品にめぐり合ってから横山さんの作品を何冊か読んでいますが、そのたびに非常に怖い気がしています。
この人の頭の中、ん?心の中かなぁ・・・ってどうなっているんだろう?
「警察」物が主な短編集を4冊ほど読みましたが「心理合戦」物と括りたい感じです。
「こんなに赤裸になるくらい心の中を読み抜いていたらあなたの心も本当だったら持たないんじゃないかしら?」って聞いてあげたいくらいです。
こんなに「見えたり、推し量れたり、読みきってしまったり」ができるとしたら心の中ががさがさに乾いてしまい、作家自身が「朽木さんのように笑えず、楠見さんのように冷たい血が流れていて、それ以上に村瀬さんのように恐ろしい勘を持っているという」像のようになってしまうんじゃないかと思えるのですけれど・・・・
それでも皆その名に「さん」を付けたように私はこの刑事たちが好きです。物語の最後に来る何かが好きだからだと思います。
この初期の作品もそうです。
高校の「不良」のその時とその後の15年が物語の中で浮かび上がってきて、そのいずれもの人生はとても辛く惨めだったりするのですが、最後の最後のところでこの元高校生たちにも、それを苛烈に追求した刑事たちにも柔らかい感情がさわーっと懸かってくるような読後感があってため息が吐けるのです。
この作品の中で犯罪を犯す人、犯罪に押しやられる人、その罪の前に立ち尽くす人、犯罪から逃げる人、犯罪の余韻に浸る人、様々な15年間の恐ろしいことといったら・・・そして時効の壁の前で奮闘する刑事たちの個々の事情、心理(焦り・葛藤)読んでいる間中、私の心は押しつぶされるような気がするのに、この最後の何かを期待してまた横山さんの作品に手を出しそうです。
終りまで読めばとにかく、何とか息がつけます。
死んだ人、死ななければならなかった人、それを永遠に引きずる人・・・改めてヤッパリ「こんな犯罪は余りにも理不尽です!」と憤りながら、私は私の知らない世界の傍らを、この作品の中を通り過ぎるのです。
「ルパンの消息」に3億円事件がどう関わるかは読んだ人だけのお楽しみということでしょうか。

*朽木さんも楠見さんも村瀬さんも「第三の時効」に出てくる刑事です。
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ラブ・レター

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浅田次郎著

短編集「鉄道員」から

先日「鉄道員(ぽっぽや)」について書いたので、呪縛?が解けて。
浅田次郎さんが多分魅力的な作品を沢山生み出している作家と知っていながら随分遠回りしてしまったようです。
巡り合わせが悪いってことありますよね?
先日父にその話をして
「ヤッパリとっつきは「鉄道員」の短編集からだろうね?」
「あぁ、俺は大分前に読んだな。「鉄道員」より「ラブ・レター」の方が好きだと思った記憶があるな。」
だから今日は「ラブ・レター」の題で書こうと思います。
ぼんやりした記憶ですが昔立ち読みしたのはハードカバーの本で、「鉄道員」は確か中ほどにあったと思うので、今回読んだ集英社の文庫と同じ作品が掲載されていたのか確かではありませんが、この文庫には8つの短編が収録されていました。

「鉄道員」ではまた昔と同じところでじんわりと目に来るものがあり、改めて心を揺さぶる物語だと確認した感じです。
現実から一歩浮遊してメルヘンをかけた感じの程のよさが素直に心に響くのでしょう。
北海道の冬・雪・方言すべてがいい塩梅な感じです。
簡単に言ってしまえば、私は「角筈にて」が一番好きです。
しかしこの中の作品すべてが好きとは言えませんでした。
多分それは「ほど」のせいだろうなぁ・・・と漠然と思っています。
上手く乗ってしまえば確かに「ラブ・レター」は主人公と一緒に号泣できそうなのですが、先にああ泣かれてしまうと、乗れなくなってサトシと一緒に「・・・どうしちゃったんだよお、吾郎さん」って言う方に廻されちゃったぁ!っていう感じになってしまったようなんです。
持って廻った言い方ですねぇ、我ながら。
これだけ泣けそうなのになんか「何でかなぁ?」です。
「角筈にて」は多分夫婦の機微も父子の機微もおじさんの家庭もヴェールのようにかけられた優しさのフィルターに私の時代の香りを感じたからかもしれません。
浅田次郎さんて、多分手品の旗のように物語が頭の中から紡ぎ出てくる人なんじゃないかしら・・・?
自由自在なんですね、あらゆる境界が。
この短編集、今挙げた3篇と「うらぼんえ」は何かしら心に響きましたけれど残りの作品は苦手だなぁと思いました。
でもやっとお会いしたのですから、浅田さんの何か長編を読んでみたいと思います。
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隠し剣秋風抄 「盲目剣谺返し」

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藤沢周平著

この作品は短編集です。
沢山、それこそ山のようにある周平さんの短編集から今夜これを書こうと思ったのは先日、ある出合いがあったからです。
といって出会い・人とではありません。
「場所」とです。
夫の趣味は「城址めぐり」
で、お天気の良い休みには、また纏まった休みが取れると、行く先はどこかの城址ということになります。
もう自分のホームページで行った城の記事を250城以上掲載しているくらいですから・・・
私なんかもう残っている城跡は無いだろうと思うのですが、彼に言わせると「まだまだ山のようにある。」そうなんですね。
うへぇ!です。
その日行った城跡は「笠間城址」茨城県にある城です。
一応山城ということで、また道なき道、草生す空濠、ぐちゃぐちゃの堀切などを歩かされるのだろうと、諦め顔で付いていったのですが、大手門の千人溜まりまでは車で行けたし、ちょっと登った本丸跡は笠間市も一望でき、筑波山も望めるロケーションで、おまけにこの城は「桂城」という別名も持っているのです。
はっきりとした根拠は何も無いくせに私は別名を持った城に甘い!
というわけで、ここですでに非常に好意的になったのですが、本丸から天主に登る道を見つけるにいたって、私はこの城跡が好きになったのを感じました。
なかなか感じのよい苔むした石垣と石段が目の前に立ちはだかっているのです。
「この上の天主跡には「佐志能神社」があるはずだ。」
それで登り始めたのですが、そこでどたばた下りてくる人たちに遭遇しました。
こんなところでおやおや?です
写真を撮るのに邪魔(失礼)なので、よけて皆さんが下りきるのを待ったのですが、途切れないのです。
反対にまたどんどん上がってくる人たちがいて、それがなんと色々な工具や木の枝、それも葉っぱの付いた生木の大枝の束を担ぎ喘ぎながら上がってくるのです。
ここにいたって私たちは諦めて天主への風情のある道を風情の無い?人等を縫って歩く事態に。
そして上がってみたらなんと天主跡の神社の額を「八目神社」と書かれた額に付け替えているところだったのです。
「えぇえ?」
だから思わず「何をしていらっしゃるんですか?」
「アァ、映画のロケの為に一時的に付け替えさせてもらってるんです。」
それで生木の役割も了解!映画のこの場面の季節は夏なんだね?
「何の映画なんですか?」
「キムタクの武士の一分っていうのですけど、キムタクはここへはこないんですよ。」と、彼は機先を制す。「分かっているのね?」
それでもちょっとわくわくするじゃない?
というわけでこの映画の情報収集。
この本へ行き着いたというわけなんです。
この藤沢さんの短編集「隠し剣秋風抄」の最後の短編「盲目剣谺返し」がその映画の原作になるのです。
確か・・・と、本棚の奥を探り・・・この本を引っ張り出したと言うわけです。
面白い短編集でヒーローは皆格好悪くてヒーローともいえない。
けれど皆生きているような実感がある人間像で溢れていて、私の好きな短編集の一つだったのです。
この作品のヒーロー?の中ではこの原作になる盲目の剣士は一番格好いい!
「なるほどな!」である。
皆さん、こういっちゃなんだけれど、ご自分のお父さんか旦那様を彷彿させる人に出会うかもしれませんよ。
もっともその人が意外な剣の名手であるかどうかは別ですけれどね。
でも人生って「あぁ、こういうことってあるんじゃないかなぁ。」と思う身近さと、意外な彼らの奮闘とに溜飲を下げたり悲しんだり惜しんだり・・・様々に楽しめる意外性のある短編集なんです。
映画の原作になる作品は周五郎さんの「日本婦道記」の中の一つをちょっと思い出させるのですけれど、気持ちのいい読後感があります。
私の好きな1篇は「孤立剣残月」なのですが。
読み終わったあとに心地よさがすとんと心に収まって据わりがいい感じなんです。
夫婦の機微がなんとも「わかるなぁぁ・・・!」
・・・そして私も唇を「いっー」の字にしてべそをかきたくなるんです。
でも、来年正月?映画が公開されると、「盲目剣・・・」読む人が続々・・・続々・・・?
どうぞ「孤立剣・・・」の方もお忘れなく!

アーサー王物語

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この本の事を書くに当たっては著者の名を特定する必要は無いと思います。
小学生の頃読んだのは岩波の少年少女文学全集に入っていたもので、今のかすかな記憶ではトマス・マロリーの著作を子供向けに翻案したものではなかったかと思うのですが・・・?
その後ブルフィンチの著作とトマス・マロリーの著作を読んだのでした。
アーサー王の物語は伝承文学の一つでばらばらに伝わったものを拾い集めてまとめた最初のがマロリーの本だったと読んだように記憶しています。
だから、本屋さんで見つけた誰の著作でもいいから手に取られる事をお薦めしたいなぁと思うのです。
いっぱいでています。
取りあえずは!

今何故この本について書こうと思ったかというと、先日新聞の書評欄で「アーサー王宮廷物語」ひかわ玲子著というのを見つけたからです。

「アーサー王宮廷物語」 ひかわ玲子著

見つけたからには・・・というわけで早速図書館へ。
早い話?これはそうですねぇ、NHKが先年放映した「ミス・マープルとポワロ」の漫画バージョン(ちょっとがっかりでしたねぇ、私的?には~作品の香りが水っぽくなっちゃったようで)とか、アレクサンドル・デュマの「王妃の首飾り」やシュテファン・ツヴァイクの「マリー・アントワネット」を下敷きにした池田理代子さんの「ベルサイユのばら」(これはオリジナルの部分が素晴らしいアイデアで素敵な作品になりましたねぇ)を思い出してしまうような感じといったら分かるでしょうか?
ひかわさんが独自に作り上げた魔法を使える双子のキャラクターを生かして、とても分かりやすい読み物になっていました。
多分沢山の方が例えばオペラの「パルシファル」とか「トリスタンとイソルデ」とかで、「赤毛のアン」が友達とした危機一髪の「シャーロットの姫エレーン」ごっこで、映画の「エクスカリバー」や近いところでは「キング・アーサー」「トリスタンとイソルデ」などで部分的に知識があるのではないかと思いますが、それがほぼ系統的に網羅されていましたし。
以前に外国の作品を読むなら是非読んでおくと役に立つものとして「ギリシャ神話」と「聖書」を挙げたことがありますが、この物語もそうなんです。
今話題の「ダ・ビンチ・コード」にも聖杯が出てきますね。
パルシファルと円卓の騎士たちの聖杯探索の冒険物語を読んでいれば、また違った楽しみと理解が「ダ・ビンチ・コード」からも得られます。
「ロビン・フッド」物とか「アイバンホー」とかイギリスの色々な冒険小説にも関連があったのじゃなかったかしら?
「インディ・ジョーンズ」にも聖杯を探す作品がありました。
そうじゃなくても「アーサー王の誕生からその死(アヴァロンでの長い眠り)」までの物語の中にちりばめられた多くのロマンスと冒険は絶対わくわくさせてくれます。
読めば好きな騎士が必ず出来ますって!請合いますよ。
私も子供の頃に心の中にある騎士を抱いてしまったので、この年になっても王子様(円卓の騎士には王子が多いんです)・「私の騎士」待望論者?なんです・・・トホホ。
そして何時かはケルトの地を踏み、ティンタジェル城を見るんだ!!!と、思っています。
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鉄道員(ぽっぽや)

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浅田次郎著

「雑誌以外の本って余り読まないわ。」という人に尋ねられたことがある。
「読む本ってどうやって見つけるの?読書が趣味なんでしょ?」
「う~ん、色々だけどね。人から教えられたり、本屋さんや図書館でたまたま見つけることもあるけれど・・・そういえば本屋さんで見つける時に面白い出会いもあるのよ。」
と、この本を見つけたときの出会い話をしたことがある。

それまでこの作家の作品を手に取ったことは無かったのだが、「好きだ。」と言った友人がいたのを思い出して、本屋の棚をずーっと見ていった。
かなり沢山の本が並んでいて「ほおぅ!」
そのときに目に付いたのがある短編集だった。
作家に注目する時、私は短編集から入ることが多い。
魅力的な凝縮された短編に出逢うと「ではこの人の長編にトライしてみるか!」という気になるのだろう。
その時もこの短編の題「鉄道員」というのに心ひかれたのだ。
昔この題のイタリア映画だったかな?いい映画があった!
なんとなく旅情を刺激されるし、憧れとか、郷愁とか・・・
それに「ぽっぽや」というルビがまたゆるやかでいながらプロ的な何かを表現していて、思わず手に取ったのだ。
が、その日はもう時間が無くて数ページ目を通しただけで本を棚に返さなければならなかった。
私は親友になる本には慎重だ。
しかし、場合によっては数ページで確信して買い込むこともあるが(ロザムンド・ピルチャーさんの時は「花束」で確信した!が)、この時はそこまでいたらなかったので、次回の楽しみに取っておくことにしたのだ。
結局その後2回の本屋さん通いで(すいません)この「ぽっぽや」を読み通してしまった。
予感にたがわず途中涙で目は曇りかけるし、心は優しくなっていくし・・・普段だったらこの本確実にゲットして帰るはずだった。
ところがこぼれかけた涙のせいで私は本屋から慌てて退散し、その日買わなかったのだ。
そしてこの話をその人に何気なく話したのだが・・・それが運命の分かれ道?

話を聞いたその人が言い放ったのだ。
「へぇっ、読書ってみみっちい趣味なのねぇ!ただ読みじゃん。」
物凄く素敵な作品だと思ったんですよ。
心がふっと優しい異次元に運ばれて柔らかく揉みほぐされて返されるような。
でもその一言!
私は階段を踏みはづしてドッタンと落ちて、尾骶骨にひびが入ったような痛みをがっつんと喰った感じ!
浅田さんと「み・みみっちい?」が妙に結びついちゃって?それ以来まだ浅田さんの棚に近づいておりません。
あれからもう7、8年以上もっとかな?経つというのにね。
最も、その後映画は見ましたよ。健さんのファンだしぃ。
ここで白状しちゃったから、免罪符!
さぁ、次の段階に進みますかな。
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霊験お初捕物控

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宮部みゆき著

この間「日暮らし」を書いた時に軽口で「霊験お初より嘘っぽいよ~!」なんて書いてしまったから、ちょっと気になって、お初の事を書こうかなぁ?

日暮らし

「嘘っぽい!」といってしまっては全くあの作品群を楽しむ意味がなくなってしまうような気がするので。
私は第六感の鋭いたちではないし、ましてや第3の目も余分な耳も持ち合わせていない。
金縛りにあったことも無ければ、事故現場でいやな風に吹かれたこともないし、背後霊が見えたことも無い。
と言うわけでつまらないことこの上も無い人間だが、聞くもの見るもの読むもの何でも楽しもうと言う欲だけは長けている。
というわけで、このシリーズは根岸肥前守的素質を持つ読者に「おお、おおっ!」と頷かせてくれる霊能話が見事な作品たちなのだ。

私が読んだ「お初もの」は「かまいたち」に収録された中篇の「迷い鳩」と「騒ぐ刀」長編の「震える岩」と「天狗風」だが、その後このシリーズの作品が出ているかどうかは知らない。
願わくばお初がまた一つ、また一つと年を取っていったなら、その能力がどう変わっていくのかも知りたいところだ。それはお初の人格をも左右することになるだろうから、「う~ん、この先は難しいかも・・・」とも思ってはいるのだが。
最初に読んだ中篇では、私は面白い着目と展開だと思って読み、宮部さんは「超能力の人の物語を創造するのに超能力があるんだなぁ。」とえらく感心した。
彼女は並々ならぬ好奇心をある種の才能に抱いているのだなぁと。
漠然とだが私はこう思っているところがある。
「神は与えたものを何十倍にして要求する。」
だからいわゆる神に多くを与えられた人は多すぎる返済に押しつぶされるか、最高の仕事をして身を削り早死にするかだ。
ゴッホのように?
ほんの少し人より多く与えられた人で職人気質の人は、自分を磨き上げていく楽しさで長生きできる。
そして残りの大多数の命だけ与えられた人間がまぁ普通に生きる。
怠惰な人間の言い訳!にすぎないか。へへへ。
というわけで、多くを与えられすぎたお初さんはその能力を発揮する度に悲劇に直面するわけで、それを食い止め解決しようと努力すればするほど恐ろしい命を削るような力が要るわけで・・・多くの作品を結実するのは難しい・・・?なんて作者の術中にはまり込んでいるわけです。

この四作品の中では「震える岩」に一番の時代小説の醍醐味を感じる。宮部さんの秀逸な時代感覚が生きていて、謎解きの妙と時代小説を読む歓びがわくわくと煽り立てられるようで読みふけってしまった。
だが、お初がお初に付与された超能力者という性格を一番発揮できている物語的な醍醐味は「天狗風」の方にあるような気がする。
女のどろどろした怨念は目をそらしたいようなものだが、親子・姉妹の目に見えぬ葛藤はどの時代にもあるもので、その誰にも普遍なものを足場に阿片密売などの捕物帳要素がてんこ盛りの大サービスで一気に読ませてもらった。
四作品ともじつに面白いのだ!
お初の能力が無ければ成り立たない物語を、だから「嘘っぽい」などと言ってしまっては本を読む楽しさもなくなってしまうんですぞ!
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スペシャル エディション ナルニア国物語

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これは本の内容について書こうというのではありません。
本は本でも文字通り「本」そのもののお薦めです。
何が「スペシャル」で、どう「エディッション」なんだろう?
図書館の「検索」でたまたま見つけて借りてみてびっくりしました。

「スペシャル エディション ナルニア国物語」
C・S・ルイス作 ポーリン・ベインズ絵 瀬田貞ニ訳
岩波書店
です。
(7600円+税)という豪華本です。

まず重い!
私は子供向けの7冊からなる軽い!本で1冊ずつ読みましたから、
色付きの挿絵のものではありませんでしたし、この物語が1冊になってしかも美しくて想像力にピッシィッ!と、はまる絵入り本を見たのは初めてでした。
読むのも大変!
イギリスの貴族の館の図書館になら必ず置いてありそうながっちりした美しい書見台が是非にも欲しいところです。
これを支えて読み続けるには根気の他に腕力が要ります。
だから絶対これは子ども向けの本ではありません。
でも、全然違いました!
この本で読み直してみたら、まるで物語が違うような気がし始めてしまいました。
ええ、全く!
1冊づつ読んだときには感じ取れなかった壮大な枠組みとより大きなスリルと感動が本からあふれ出てくるようでした。
これは昔思っていたよりも凄い!物語なんだということがズンズン胸に響いてくるようなんです。

この物語は少なくとも読む本を選ぶべきだったんだっってことが今更に分かりました。
この物語への愛情がずうっと大きくなりそうです。
「ナルニア国物語」を初めて読むんだったら、是非この本で取り付いてもらいたいものです。
「ナルニア国物語」は子どものための想像力に溢れた楽しいSFチックな冒険お伽噺だけでは無いんです。
この物語の冒頭で「世界の創造」がされるんですけれども、1冊づつ読むとただ「そこから物語りは始まったんだ!」に過ぎないのに、この大きな本で読み始めると、創造の感動が全編を通じて心に鳴り響き続けているようなのです。
そして作品の気持ちをぴったり鼓舞してくれるような挿絵がまた心に響くのです。
と言っても、ちょっとこの本は買えそうも無いんですけれど。
高い?ええ、勿論!
それに我が家にはこの本を立てておける高さの書棚が今は無いんですよ。
こんな時にはヤッパリ図書館を利用しましょう?

日暮らし

題名INDEX : ハ行 207 Comments »

宮部みゆき著

本当なら「ぼんくら」を先に書くべきだなぁと思いつつ、今読み終わったばかりだから、フレッシュなうちに・・・。
「ぼんくら」は読み終わったからと父が置いて帰った。
好きな宮部さんの作品だから直ぐ飛びついて読んでしまった。
一気に読んで面白かったんだけれど、ちょっとこう思ったのだ。
「宮部さん、一息入れて遊んだな?肩の力抜きまくって、思いっきり気楽に楽しんで書いたんだな。」
だから?読む方も思いっきり楽しくすっ飛ばして読んでしまったけれど、ちょっとそれきりっていう感じだったかな。
それに人物造形が今ひとつなりきっていないと言うか「余りにも作り物っぽいや!」って言う気がして。
主人公の「ぼんくら」さんも登場人物も皆面白かったのは確か!
でも途中「おい、黒豆さんはあれっきりかい?」とか「うへぇ、霊験お初より嘘っぽいよ!こんなのいるわけ無いでしょが!」とか突っ込みながら読んだのも確か!
(でも霊験お初は大好きです!念の為)
だから、「日暮らし」が出た時、狭い我が家にまた蔵書が増えるのもなぁ・・・なんて思って、図書館に予約したのだ。
それがナント!今の図書館は凄いよ。
「260人待ち」なんて、出るんだから。
私みたいなファンが多いのかしら?ゴメンナサイ、宮部先生!
そして、忘れた頃に図書館からメールのお知らせ。

貰ってきた日に「ぼんくら」よりモット一息に、寝ないで読み上げてしまった!と言うわけ。
待っている間に頭の中で彼らがお酒のようにまろやかに成熟していたのかなぁ?
今度はすっきり飲み込んで突っ込みいれる間もなく楽しんでしまった。
実際作品そのものも熟成していたんじゃないだろうか。
宮部さんの頭の中で一人一人の個性も物語も。
「いやぁ、人物がなんとも皆いいねぇ!」って言うのが今回の合いの手!
あの長屋顛末記の後日談としても。
エピソードそのものにはちゃんと毒も凄みも悪気もあるのに読後がまろやかなのは人物の良さもあるけど、締めくくりのハッピーエンドもあるけれど、文体の・会話のお遊びもあるからだねぇ。
こっちも主人公の性格があやふや(ぼんくら読んだ段階ではね)なりに持ち味が飲み込めて物語の顛末をじっくり味わう「下地が熟成されていた!」みたいなんだ。
こんな旦那と一族郎党各町内に一揃い欲しいなぁ!
おでこや馬面はそこらで見られそうだけど、でも弓乃助に会ったら・・・全部お見通し?
そりゃちと剣呑・・・わたしゃすたこら・・・だわさ。
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